なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「アンビュランス」 The Ambulance (1990)

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監督:ラリー・コーエン
製作:モクテスマ・エスパルザ
   ロバート・カッツ
脚本:ラリー・コーエン
撮影:ジャック・ヘイトキン
音楽:ジェイ・チャタウェイ
出演:エリック・ロバーツ
   ジェームズ・アール・ジョーンズ
   ミーガン・ギャラガー
   レッド・バトンズ
   リチャード・ブライト
   ジャニーン・ターナー
   ニコラス・チンランド
   ジム・ディクソン
   スタン・リー
   ジル・ギャッツビー
   ローレン・ランドン
特別出演:エリック・ブレイデン
アメリカ映画/96分/カラー作品




<あらすじ>
大都会ニューヨーク。コミック・アーティストのジョシュ(エリック・ロバーツ)は、いつもランチタイムに見かける美女シェリル(ジャニーン・ターナー)に思い切って声をかける。ところが、糖尿病の持病を持つシェリルはジョシュの目の前で体調を崩してしまい、救急車で近くの病院へと運ばれていく。その様子を遠くから見ている怪しげな人物がいることに彼は気付かなかった。
その日の夕方、仕事を終えたジョシュは救命士から告げられていた病院へシェリルの見舞いに行くものの、そのような女性は運ばれてきた形跡がないという。よその病院も当たったがシェリルの消息は掴めず。その頃、シェリルは正体不明のドクター(エリック・ブレイデン)の闇クリニックに監禁されていた。救急車は偽物だったのだ。ここは臓器売買ビジネスの拠点で、他にも大勢の糖尿病患者が拉致されている。順番にドクターが「処置」していくため、シェリルはあと数日の命だった。
一方、警察へ相談に訪れたジョシュだったが、スペンサー警部(ジェームズ・アール・ジョーンズ)からは軽くあしらわれてしまう。そこでジョシュは似顔絵を大量にコピーして街中で配ったところ、シェリルのルームメイト、ジェリリン(ジル・ギャッツビー)を見つける。実はジェリリンもシェリルと同じく糖尿病を患っていた。留守番電話にシェリルからSOSのメッセージが入っていたことから、ジョシュとジェリリンは指定された待ち合わせ場所へ向かったものの、待ち構えていた偽救急車にジェリリンが拉致されてしまう。敵の罠だったのだ。
さらに、自宅で牛乳を飲んだジョシュが発作を起こして倒れてしまう。これも敵の罠だ、毒を盛られたに違いないと直感したジョシュは逃げようとするものの、隣人の呼んだ救急車に押し込められてしまう。だが、気が付くと普通の病院に収容されていた。ただの食中毒だったらしい。おかげで、騒動を知ったスペンサー警部からはただの妄想狂ではないかと疑われるジョシュ。ところが、その晩彼は病室から誘拐されそうになり、間一髪のところを同室の老人エリアス(レッド・バトンズ)に助けられる。誘拐犯はジョシュをこの病院に運んできた緊急救命士たちだった。
エイリアスはベテランの新聞記者。ジョシュの話に興味を持った彼は、偽救急車の捜索に協力を申し出る。まずは市内で行方不明になった糖尿病患者のデータを知らべるため新聞社へ立ち寄った2人。ところが、ここにも偽救急車が待ち構えていてエリアスを誘拐し、ジョシュからの通報を受けて駆け付けたスペンサー警部も殺されてしまう。途方に暮れるジョシュ。そんな彼に協力を申し出たのはスペンサー警部の部下サンディ巡査(ミーガン・ギャラガー)だった。中古救急車の払い下げルートから首謀者を調べていくジョシュとサンディ巡査。そんな2人を、例の偽救急車が執拗に狙う…。

ホラーからサスペンス、アクション、特撮モンスターに至るまで、マニア心をくすぐる良質なB級娯楽作品で根強いファンを持つ、カルト映画の巨匠ラリー・コーエン。もともとテレビの脚本家だった彼は、『逃亡者』や『ラット・パトロール』、『インベーダー』、『刑事コロンボ』など数多くの名作ドラマを手掛け、当時からハリウッド業界では卓越したストーリーテラーとして高く評価されていた。映画界に進出してからはメジャーとインディーズの中間という絶妙な立ち位置をキープし、自らプロデューサーも兼任することで比較的自由な創作活動を続けることが出来た。これは、そんな彼が珍しく他のプロデューサーのもとで、監督と脚本に専念したサスペンス映画である。

テーマはずばり「殺人救急車」。怪我や病気で倒れた人を救うはずの救急車が、次々と患者を怪しげな闇クリニックへ送り込み、臓器売買や人体実験のために殺していく。我々の日常生活において非常に身近で、なおかつ本来なら危険ではないものに生命を脅かされるという設定は、ラリー・コーエンが得意とするパターンのひとつ。可愛いはずの赤ん坊を異形のモンスターとして描いた『悪魔の赤ちゃん』('73)、神のお告げによって人々が殺人を犯す『ディーモン/悪魔の受精卵』('76)、美味しいアイスクリームに人類が侵略されていく『ザ・スタッフ』('85)、市民を守るはずの警官が不死身の怪物として殺戮を繰り広げる『マニアック・コップ』('88)。患者を誘拐する殺人救急車というのは、ソビエト崩壊直後のロシアで一時期噂になったが、しかし映画の世界ではありそうでなかったネタだ。

主人公はロマンチストで思い込みの強いコミック・アーティスト、ジョシュ。なんと彼、あのマーベル・コミックのスタッフという設定で、アメコミの神様スタン・リーが本人役で登場するほか、有名な日系人コミック・アーティストのラリー・ハマも同僚として顔を見せる。しかも、劇中でジョシュが担当している架空のコミックのタイトルは「ドクター・ストロング」(笑)。ちなみに、ラリー・コーエンとスタン・リーはプライベートでも親しく、本作に続いて『ドクター・ストレンジ』を共同で映画化するという企画もあったらしいのだが、当時は『スーパーマン4』が大コケするなどヒーロー映画不遇の時代だったため頓挫してしまったらしい。

それはともかく、いつもランチタイムに街中で見かける美女シェリルに片思いしていたジョシュは、思い切って声をかけてデートに誘うものの、その場で彼女が急に体調を崩して倒れてしまう。どうやら糖尿病を患っているらしい。すると、どこからともなくサイレンを鳴らして到着した救急車。誰かが呼んでくれたものと思い、救命士に搬送先の病院を確認したうえでシェリルを見送るジョシュ。しかし、教えられた病院にはシェリルが運び込まれた形跡はなく、近隣の病院を当たっても手掛かりは全くなし。忽然と消息を絶ってしまったのである。

これはどう考えてもおかしい、彼女の身に何か起きたに違いない。そう考えたジョシュは警察に相談するものの、担当のスペンサー警部は「君の思い込みでは?」「証拠もないのに動けるわけないだろ」と取り付く島なし。得意のイラストでシェリルの似顔絵を描いて自ら彼女の行方を捜し始めるジョシュだったが、まるでそんな彼の行動を監視しているかのように、次々と関係者が例の救急車によって誘拐され、ジョシュの身にも危険が迫っていく。やがて、被害者のいずれもが糖尿病患者であることに気付くジョシュ。病院で知り合った新聞記者の老人エリアスや美人女性警官サンディに助けられ、徐々に核心へと迫っていく彼だったが…。

実は違法クリニックを経営する謎のドクターが、中古で手に入れた偽救急車と救命士の扮装をした手下を使って次々と糖尿病患者を誘拐し、人体実験や臓器売買に利用するため殺していたというのが真相。といっても、いろいろと基本設定の詰めが甘いというか、犯行手口のディテール描写が少々大雑把すぎることは否めないだろう。よくよく考えると都合が良すぎる、辻褄が合わない、展開が唐突過ぎるといったプロットの粗が目立つのだよね。「殺人救急車」という抜群のアイディアに、あれこれと後から肉付けしてみたものの、いまひとつ上手くまとまりきらなかったという印象だ。

ただ、アップテンポでオフビートなストーリー展開は絶好調で、数ある突っ込みどころも見ている間はあまり気にならない。というか、シリアスでサスペンスフルな題材のわりにノリはけっこう軽く、軽妙洒脱なセリフやコミカルな演出が散りばめられていることもあって、なるほど、これは基本的にコメディなんだな、それだったら多少設定がいい加減でも許せちゃうかも!なんて思えてしまうのだから不思議なもの。実際、細かいことを気にしなければ、スリルとサスペンスとユーモアのつるべ打ちを存分に楽しめる。鑑賞中も鑑賞後も気楽に構えて、論理的な思考の一切を忘れることが肝心だ(笑)。

ということで、いい意味でも悪い意味でも純粋なB級エンターテインメント。ラリー・コーエン作品群の中では決してベストな部類には入らないものの、憎めない魅力のある愛すべき作品と言えるだろう。見知らぬ女性に恋したがため犯罪事件に巻き込まれる主人公の、危機また危機のドタバタぶりを大熱演するエリック・ロバーツもチャーミングだし、ひょんなことから相棒になる好奇心旺盛な新聞記者の老人を演じる『サヨナラ』('57)のオスカー俳優レッド・バトンズもチャーミング。コーエンは子供の頃からバトンズの大ファンで、本作では念願叶ってのキャスティングだったという。また、スペンサー警部役のジェームズ・アール・ジョーンズも、エキセントリックな変わり者キャラをユーモラスに演じていて楽しい。後にテレビドラマ『ミレニアム』('96~'99)で有名になるミーガン・ギャラガーは、これが映画でデビューだった。

主人公が一目惚れする女性シェリルを演じるのは、『クリフハンガー』('93)でスタローンの相手役を務めた女優ジャニーン・ターナー。本作と同じ年に出演したテレビドラマ『たどりつけばアラスカ』('90~'95)で大ブレイクし、一時期は映画界でも活躍した。当時ミハイル・バリシニコフのガールフレンドだったことから、本作での役名もシェリル・バリシニコフとなっている。そのほか、『ゴッドファーザー』シリーズの殺し屋アル・ネリ役でお馴染みのリチャード・ブライト、ラリー・コーエン作品の常連組ジム・ディクソンとローレン・ランドン、ドラマ『ブラックリスト』('13~)の掃除屋ミスター・カプラン役で知られる女優スーザン・ブロマートも登場。また、謎のドクター役で特別出演しているエリック・ブレイデンは、コーエンが若い頃に脚本を手掛けたテレビドラマ『ラット・パトロール』のドイツ軍将校役で有名な俳優。『タイタニック』('97)では大富豪アスター大佐を演じていた。

なお、日本では劇場公開されずにビデオスルーとなった本作。当初のビデオタイトルは原題に準じて『アンビュランス』だったが、その後テレビ放送された際に『地獄の殺人救急車/狙われた金髪の美女』と改題され、'15年に日本発売されたブルーレイとDVDではこちらのテレビ版邦題が採用されている。筆者は'18年リリースのアメリカ盤BDしか所有していないため、日本盤との画質は比較できないものの、少なくともアメリカ盤BDは低予算のB級映画らしからぬ超ウルトラ高画質。特典のラリー・コーエン監督による音声解説は、あまり意外性のあるエピソードはないものの、やたらと自画自賛の自慢話が多くて笑える。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:96分/発売元:Scream Factory/MGM
特典:ラリー・コーエン監督による音声解説/スチル・ギャラリー/オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2018-11-13 08:58 | 映画 | Comments(0)

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