なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
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「忍者秘帖 梟の城」 Owl's Castle (1963)

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監督:工藤栄一
企画:橋本慶一
   三村敬三
原作:司馬遼太郎
脚本:池田一朗
撮影:わし尾元也
美術:富田治郎
音楽:鈴木静一
出演:大友柳太朗
   大木実
   高千穂ひづる
   本間千代子
   立川さゆり
   河原崎長一郎
   原健策
   河野秋武
   戸上城太郎
   阿部九州男
   三島雅夫
   菅貫太郎
   花沢徳衛
日本映画/91分/カラー作品




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<あらすじ>
天正九年、織田信長は伊賀を攻略。羽柴秀吉の率いる軍勢によって、伊賀忍者は大敗を喫してしまう。両親と妹を一度に失った忍者・葛篭重蔵(大友柳太朗)は、秀吉への復讐を誓いつつ、仲間と共に辛うじて逃げ延びるのだった。
それから10年後、信長は明智光秀によって殺され、世の中は豊臣秀吉の天下に。おとぎ峠の山奥で下忍の黒阿弥(河野秋武)らと暮らす重蔵のもとへ、恩師・下柘植次郎左衛門(原健策)とその娘・木さる(本間千代子)が訪れ、「秀吉暗殺」の仕事を持ちかける。
依頼人は茶人としても知られる豪商・今井宗久(三島雅夫)。その養女・小萩(高千穂ひづる)に案内された重蔵だったが、そこで待ち受けていたのは罠だった。小萩は彼の能力を試したのである。見事に罠を切り抜け、宗久と対面した重蔵は、秀吉暗殺計画の黒幕が徳川家康であることを見抜く。
その頃、かつて重蔵の無二の親友だった風間五平(大木実)は、忍びの世界に嫌気がさしたことから、名前を石川五右衛門と変えて武士になり、京都奉行・前田玄以(菅貫太郎)に仕えていた。だが、甲賀忍者・摩利支天洞玄(戸上城太郎)に正体を見抜かれ、秀吉暗殺を目論む重蔵を討ち取るよう命じられる。
来る暗殺計画の決行に備え、散り散りになった伊賀者たちの召集を黒阿弥に指示する重蔵。そんな彼の前に五平が姿を現し、お互いにとって有利な取引を持ち掛ける。にべもなく断った重蔵は、それが師匠・左衛門の入れ知恵だと気付く。娘・木さるの将来を案ずるあまり、徳川と豊臣のどちらが勝っても己の立場が危うくならぬよう、左衛門は保身の策を練っていたのだ。
失望した重蔵は一旦、暗殺計画から手を引くことに。兼ねてから重蔵に思いを寄せていた小萩は、このまま忍びの世界から足を洗って、自分と一緒になって欲しいと懇願する。実は彼女もまた忍者。洞玄のもとで重蔵暗殺の命を受けていたのだ。一方、計画が狂ったことに困り果てた左衛門は、万が一の時のため豊臣側で邪魔になる洞玄を始末しようとするが、返り討ちにあって殺されてしまう。
これを機に、五平と甲賀忍者が動き出した。黒阿弥に恨みを持つ元伊賀者・名張の耳(花沢徳衛)の手引きで、伊賀忍者たちの隠れ家が襲撃され皆殺しにされてしまったのだ。復讐に燃える重蔵は洞玄を亡きものにし、伊賀忍者の悲願である秀吉暗殺を全うするべく伏見城へと単身乗り込んでいく…。
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司馬遼太郎の直木賞受賞作『梟の城』の最初の映画化である。当時はテレビドラマ『隠密剣士』('62~'65)や大映映画『忍びの者』('62)シリーズの大ヒットにより、日本全国に時ならぬ忍者ブームが巻き起こっていた時期。「時代劇は東映」との謳い文句で、戦後の時代劇映画の黄金期を牽引してきた東映が、このブームに便乗しないわけはなかろう。折しも、テレビの台頭で日本の映画産業に陰りが見え始め、東映京都撮影所も大規模なリストラを余儀なくされていた。本作に続いて『十七人の忍者』('63)や『忍者狩り』('64)シリーズ、『くの一忍法』('64)シリーズを連発した東映にとって、忍者ブームは起死回生のチャンスと映ったのかもしれない。
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と同時に、本作は東映による集団抗争時代劇路線の先駆けだったようにも思う。そもそも東映の時代劇映画と言えば、『いれずみ判官』シリーズや『旗本退屈男』シリーズのように、老若男女が楽しめる明朗快活で勧善懲悪な大衆娯楽路線が身上。歌舞伎的な様式美を重視した華やかなチャンバラを多用し、片岡千恵蔵や市川右太衛門といった時代劇スターをカッコよく見せることで観客の拍手喝采を浴びた。しかし、徹底してリアリズムを打ち出した『七人の侍』('54)や『用心棒』('61)など一連の黒澤明作品、ダークなアンチヒーローを描いた大映の『座頭市』シリーズや『眠狂四郎』シリーズなどが台頭し、'60年代に入ると単純明快な東映時代劇はすっかり飽きられてしまう。
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そこで打ち出されたのが、血で血を洗う武家社会の非情な権力争いを生々しく描いた『十三人の刺客』('63)や『大殺陣』('64)などの集団抗争時代劇路線だった。『十七人の忍者』や『忍者狩り』シリーズもその系譜に属するわけだが、本作においても権力者たちの思惑に翻弄される忍者同士の熾烈な殺し合いに、その先駆的な要素を見出すことが出来る。本作の工藤栄一監督が『十三人の刺客』と『大殺陣』を撮っているのも恐らく偶然ではなかろう。
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ストーリーの主軸となるのは、宿敵・豊臣秀吉の命を狙う伊賀忍者たちの復讐劇。かつて織田信長によって滅ぼされた伊賀忍者の残党が、信長の手先として自分たちの親兄弟・仲間を虐殺した太閤・秀吉を暗殺しようとする。その先頭に立つのが、東映時代劇の看板スター、大友柳太朗が演じる忍者・葛篭(つづら)重蔵だ。秀吉暗殺計画を背後で操るのは、太閤を亡き者にして天下を取ろうと画策する徳川家康と、戦乱の世で一儲けを目論む堺の商人・今井宗久。しかし、事態をいち早く察知した京都奉行・前田玄以は立身出世を狙う元伊賀忍者・風間五平(大木実)を手下に抱き込み、配下の甲賀忍者を刺客として送り込んで暗殺計画を阻止しようとする。
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敵側へ寝返った親友・五平との奇妙で複雑な友情、尊敬する恩師・左衛門(原健策)の裏切りに対する失望、そして甲賀忍者のくの一・小萩(高千穂ひづる)との道ならぬ恋。様々な思いが胸の内を去来する中、大切な仲間を次々と失っていく重蔵は、やがて権力者たちの駒として使い捨てにされる忍者の生き方に強い疑問を抱いていくこととなるわけだ。
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スケールの大きな長編小説を90分のプログラムピクチャー枠に収めているため、なにかとストーリー展開が唐突に思えたり、心理描写が食い足りなかったりすることは否めないだろう。師匠の娘・木さる(本間千代子)と重蔵に弟子入りした雲太郎(河原崎長一郎)との恋愛も、戦い疲れた重蔵が次世代の若者へ託す平和と希望の象徴として、必ずしも十分に機能しているとは言い難い。とはいえ、あれもこれもと詰め込み過ぎて冗長になってしまった'99年の篠田正浩版に比べればスッキリして分かりやすいし、なによりもテンポが良いので全く退屈しない。荒唐無稽を排したリアルな忍者映画としての説得力を追求しつつ、映画的な見せ方もちゃんと忘れていないアクション演出も素晴らしい。
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戸上城太郎演じる甲賀忍者・洞玄がフワッと宙に舞う武侠映画的なワイヤーワークには思わずハッとするし、忍者同士の畳みかけるような忍術バトルをシネスコサイズの大画面で余すことなく捉えた流麗なカメラワークにも息を呑む。どことなく妖しげで幻想的な映像美やモダンでダイナミックな画面構図、鮮血飛び散るバイオレンス描写など、従来の東映時代劇とは明らかに一線を画すハードな作風が魅力だ。後にテレビで『必殺』シリーズや『影の軍団』シリーズをヒットさせた工藤監督だけのことはある。
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『怪傑黒頭巾』シリーズや『丹下左膳』シリーズとは一味違う、堅物だけど実直な信念の人・重蔵をストレートに堂々と演じる大友柳太朗はさすがの貫禄。決して上手い役者ではないのだが、根の生真面目な本人のキャラが役柄の性格とマッチしている。対するライバルで親友の五平には、当時松竹を離れてフリーになったばかりの大木実。バリバリの時代劇俳優・大友の好敵手として、現代劇のイメージが強いニヒルでダンディな大木を当てたわけだが、なんだろう、いまひとつ化学反応が起きているとは言い難いんだよね。ここはもうちょっとアクの強い役者を配した方が良かったのかも。
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一方、素晴らしくはまり役なのは小萩を演じる高千穂ひづる。元タカラジェンヌのお姫様女優なわけだけど、本作ではクールで斜に構えた悪女の雰囲気を醸し出してステキ。それでいて、一度恋に落ちたら脇目も振らず一筋。愛する重蔵に「あなた様を殺さねばなりませぬ」と冷たく言い放ちながら、いざという時は彼を守るため味方に刃を向ける。この掴みどころのないところがとてもいい。高千穂ひづるの感情を抑えた芝居も効果的で、「これがわらわの答えじゃ」という決め台詞には痺れた。
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脇役で印象的なのは、重蔵を慕って弟子入りする元コソ泥の若者・雲太郎を演じる河原崎長一郎。この同じ年に『五番町夕霧楼』('63)の純情な青年僧役で有名になるわけだけど、とにかく若いのなんの(笑)。なにしろ、筆者世代だと『スチュワーデス物語』など地味なお父さん役の印象が強いからね。前田玄以を演じる菅貫太郎の、いかにも役人的な冷淡さもいい。さすがは『十三人の刺客』の極悪な若殿様。重蔵の右腕・黒阿弥役の河野秋武もなにげに渋くてカッコいいんだよね。ちなみに、重蔵の師匠・左衛門を演じる原健策は、女優・松原千明の父親。つまり、すみれのお爺さんだ。
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評価(5点満点):★★★★☆

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:2.0ch Dolby Digital mono/言語:日本語/字幕:なし/地域コード:2/時間:91分/発売元:東映ビデオ
特典:フォトギャラリー/予告編



by nakachan1045 | 2018-12-05 13:32 | 映画 | Comments(0)

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