なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
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「種鬼」 Seeding of a Ghost (1983)

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監督:ヤン・クァン
製作:モナ・フォン
   ウォン・カーイー
製作総指揮:ラン・ラン・ショウ
原案:カンバー・フアン
脚本:イーフン・ラム
撮影:リー・ファンイ
音楽:シン・チンユン
   スー・チェンホウ
出演:フィリップ・コウ
   ノーマン・チュー
   マリア・ユン
   フン・サン・ナム
   フー・リンチー
   ワイ・カマン
   アラン・シット
   バク・マンビュウ
特別出演:ワン・ユン
     ティエン・マ
香港映画/90分/カラー作品




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<あらすじ>
ある晩、平凡なタクシー運転手チャウ(フィリップ・コウ)は、群衆に追われた墓泥棒の男をひいてしまう。ところが、次の瞬間に墓泥棒はタクシーの後部座席に座っていた。彼の正体は黒魔術師だったのだ。自宅まで送り届けたチャウに黒魔術師が言う。不幸が続くから気を付けるようにと。
結婚3か月目のチャウには、アイリーン(マリア・ユン)という美しい妻がいる。カジノのディーラーとして働いている彼女は、客の裕福なビジネスマン、ファン(ノーマン・チュー)に言い寄られていた。はじめは無視していたアイリーンだったが、ハンサムでリッチなファンに惹かれていき、お互いに既婚者であることも忘れてのめり込んでいく。
だが、ファンにとってアイリーンとの関係は火遊びだった。デートの帰りに車で口論になった2人。煮え切らないファンに怒ったアイリーンは車を降りて歩き出す。すると、通りがかった2人組のチンピラ(フン・サン・ナム、フー・リンチー)に追いかけられ、近くの廃墟となったマンションへ逃げ込んだアイリーンだったが、レイプされた上に屋上から転落死してしまった。
その頃、タクシーの無線でマンションへ呼び出されたチャウは、そこで妻の死体を発見する。無線の主はアイリーンの幽霊だったのだ。警察は第一発見者であるチャウに疑いをかける。無線で呼び出されたなんて怪しい。タクシー会社の無線係も否定している。
しかし、愛人ファンの存在が浮かび上がり、さらにはチンピラ2人組の身元も判明した。警察は彼らを取り調べるが、決定的な証拠はなかった。妻の浮気を知ってショックを受けるチャウ。自分たちの犯行がバレることを恐れたチンピラたちは、いっそのことチャウを殺してしまおうとするが、あえなく反撃されてしまう。
警察が頼りにならないと考えたチャウは、いつぞやの黒魔術師を訪ねて助けを請う。黒魔術で復讐して欲しいと。渋々ながら引き受けた黒魔術師は、アイリーンの墓から腐敗した死体を盗み出し、黒魔術を使って命を吹き込む。次々と奇妙な現象に襲われるファンとチンピラたち。やがて、チンピラコンビの弟分がマンションから転落死し、兄貴分ピーターも背骨が飛び出して悶絶死する。すると、そのピーターの亡霊とアイリーンのゾンビがセックスをはじめ、ゾンビの腹に新たな生命が宿る。黒魔術師によると、それが復讐の鍵だった。
一方、ファンの妻(ワイ・カマン)がアイリーンの悪霊に憑依される。驚いたファンは名高い道士(バク・マンビュウ)に悪霊払いを依頼。道士と黒魔術師の魔法バトルが繰り広げられ、結果的に黒魔術師が破れてしまう。一人残されたチャウは自らの血をアイリーンのゾンビに輸血。これで復讐の呪いが完成し、ファン夫婦に凄まじい恐怖が襲い掛かる…。
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知る人ぞ知る、'80年代香港スプラッターの怪作である。かつて香港ホラーといえば、『幽幻道士』('85)をはじめとするお子様が見ても安心なキョンシー映画、『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』('87)に代表されるロマンティックな武侠ファンタジーの印象が強かった。香港映画と血みどろスプラッターが結びつくようになったのは、『八仙飯店之人肉饅頭』('93)や『エボラ・シンドローム/悪魔の殺人ウィルス』('96)が大ヒットした辺りからか。純然たるホラーではないものの、日本軍731部隊による人体実験を描いた『黒い太陽七三一』('88)が日本で話題になったのも、確か90年代半ば頃だったはず。なので、筆者も昔は「香港ホラー=グロ描写は基本的に大人しめ」という先入観を抱いていたもんだった。
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ところが、である。'83年に製作された本作『種鬼』(残念ながら日本では劇場未公開&ビデオ未発売)は、まさかまさかのエログロ描写オンパレード。女優さんたちは次々に意味もなくヘアヌードになるわ、グチョグチョの内臓や汚物はバンバン飛び散るわ、『エイリアン』と『遊星からの物体X』と『デッドリースポーン』を合体させたようなクリーチャーも暴れまわるわと、まさしく上よ下よの大騒ぎ。しまいには、ミイラ化したゾンビ美女と死んだ男の幽霊が空中浮遊ファックしてご懐妊、という前代未聞の悪趣味エロシーンまで登場(笑)。さすがに検閲でもかなり揉めたらしく、'88年に香港でレーティング・システムが導入されると、本作は成人指定に当たるカテゴリーⅢに分類されることとなった。
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基本的にはオカルト路線のリベンジ物。最愛の妻をレイプされた上に殺されたタクシー運転手が、黒魔術師の力を借りて腐乱した妻の死体を復活させ、その怨念パワーによって次々と恨みを晴らしていくというお話。香港では同時期に『養鬼(悪魔の胎児)』('82)や『魔 デビルズ・オーメン』('83)、『魔胎』('83・日本未公開)などのオカルト映画が立て続けに作られており、さながらオカルト映画ブームの様相を呈していた。その原点と言われるのが、『エクソシスト』('73)の影響を受けた黒魔術ホラー『頭降(Black Magic)』('75・日本未公開)。'80年代前半がブームのピークだったようだが、本作はその中でも特にエログロ指数が高いことで知られている。
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ただし、ぶっちゃけ初めの40分くらいは少々退屈である。主人公チャウの美人妻アイリーンが金持ちのプレイボーイに弄ばれ、行きずりのチンピラ・コンビに拉致・強姦された挙句に殺され、警察のちんたらした捜査に苛立ったチャウが黒魔術師に復讐を依頼する…までの前置きが必要以上に長いのだ。見どころと言えば、せいぜい大陸書房のイメージビデオみたいな女優のシャワー・シーンやベッド・シーンくらい。まあ、カンフー・アクションばりに体を張ったレイプ・シーンは、さすが香港映画といったところで妙に感心するのだけど(笑)。
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だが、墓から掘り起こされたアイリーンの腐乱死体を、黒魔術で復活させる辺りから一気にエンジンがかかり始める。アイリーンの怨念によって、口から大量のミミズを吐き出したり、トイレから汚物が噴き出すポルターガイスト現象に襲われたりするチンピラたち。プレイボーイのファン氏なんか、悪霊に憑依された妻に巨大なマッチ棒(!)でアナルをガンガン責められて大絶叫。香港映画の悪霊はやることが奇想天外過ぎて意味がよく分かりません(笑)。
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で、怨念パワーがエスカレートした挙句、チンピラたちは相次いで死亡。特に悲惨なのが兄貴分ピーターで、背中から背骨が飛び出してのたうち回った挙句に悶絶死するわけだが、ここからさらに予想外の意表を突く展開が!なんと幽体離脱したピーターの亡霊が、ゾンビ化したアイリーンの死体と空中を浮遊しながら、くんずほぐれつのセックスを始めてしまうんですよ!もうね、はっ!?としか言いようがございません(笑)。しかも、ピーターの亡霊というのが線画で描かれたアニメーション。『バタリアン』に出てくる「オバンバ」みたいなアイリーンのゾンビはアニマトロニクス仕様のダミーボディ。この2体が宙を舞いながら濃厚に絡み合うわけなのだが、その光景の世にも珍妙なことときたら!映画史上屈指の迷シーンと言えよう。
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で、その結果アイリーンはゾンビなのにご懐妊。しかも、黒魔術のパワーで胎児は妊娠したファン夫人の胎内へとテレポートされ、『エイリアン』のチェストバスターよろしく膨れ上がった腹を突き破って飛び出す。ここからは阿鼻叫喚のクリーチャー・パニックの始まり。物体Xのごとくグチョグチョに変態する赤ちゃんは、たちまち『デッドリー・スポーン』のエイリアンみたいな牙だらけのモンスターへと成長し、逃げ惑う人々に次々と襲い掛かっていく。モンスターの口からさらに顔が飛び出すという仕掛けにもニンマリ。特殊メイクのスタッフ、いい仕事しております。まあ、無関係の人たちを大勢巻き込んでいる時点で、もはや復讐もへったくれもなくね!?とは思うのだけど(笑)。
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監督はポルノ時代劇からカンフー・アクションまで、なんでもござれの職人監督ヤン・クァン。主人公チャウ役のフィリップ・コウは、カンフー映画ファンならお馴染みのアクション俳優で、映画監督としてもかなり多作だった人だ。また、ファン氏役を演じているノーマン・チューも、'70年代から数多くのカンフー映画や武侠映画で活躍した有名スター。アイリーン役のマリア・ユン(別名マリア・ジョー)は元ミス・コリアの韓国人で、カンフー映画『リーサル・パンサー』('90)にも主演していた。ファン夫人役のワイ・カマンは、撮影当時フィリップ・コウの恋人だったそうだ。また、後にジャッキー・チェンの『ポリス・ストーリー』シリーズなどのスタントマンとして有名になるアラン・シットが、チャウに妻殺しの嫌疑をかける若手刑事役として顔を出している。
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なお、本国・香港やアメリカでDVD発売されてきた本作だが、ブルーレイ化されているのは今のところイギリスだけ。'09年に制作されたデジタル修復版がマスターとして使用されており、画質は驚くほどクリアかつ鮮明だ。意外にもハイクオリティな特殊メイクやSFXのディテールも細部まで確認できる。また、ドニー・イェン主演の『COOL』('98)やジャッキー・チェン主演の『メダリオン』('03)の脚本家で、無名時代に俳優として香港映画に出演していたベイ・ローガンによる音声解説も、親しい友人だったフィリップ・コウとの思い出話など話題が豊富で興味深い。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ&DVD情報(イギリス盤)
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch リニアPCM Stereo/言語:広東語/字幕:英語/地域コード:B/時間:90分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Stereo/言語:広東語/字幕:英語/地域コード:2/時間:90分
発売元:88 Films
特典:ベイ・ローガンによる音声解説/映画評論家ケイラム・ウェデルが語る香港ホラーの歴史(約20分)

by nakachan1045 | 2018-12-08 12:03 | 映画 | Comments(0)

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