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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「ナイト・ウォーカー 夜歩く人」 The Night Walker (1964)

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監督:ウィリアム・キャッスル
製作:ウィリアム・キャッスル
脚本:ロバート・ブロック
撮影:ハロルド・E・スタイン
編集:エドウィン・H・ブライアント
音楽:ヴィック・ミジー
出演:ロバート・テイラー
   バーバラ・スタンウィック
   ロイド・ボックナー
   ジュディス・メレディス
   ハイデン・ローク
   ロシェル・ハドソン
   マージョリー・ベネット
   ジェス・バーカー
アメリカ映画/86分/モノクロ作品




<あらすじ>
発明家として財を成した盲目の億万長者ハワード・トレント(ハイデン・ローク)は、長年連れ添った妻アイリーン(バーバラ・スタンウィック)の浮気を疑っていた。なぜなら、毎晩のように寝言で恋人らしき男に愛を囁いているからだ。
ハワードは唯一豪邸に出入りしている顧問弁護士バリー・モーランド(ロバート・テイラー)が浮気相手ではないかと睨むが、しかしバリーは全くの潔白だった。そもそも、アイリーンは夢の中に出てくるハンサムな若い男に実生活で全く見覚えがない。しかし、それはあまりにもリアルな夢だった。
そもそも、嫉妬深い夫との結婚生活に疲れ切っていたアイリーン。ある晩、夫婦喧嘩をした直後にハワードの研究室が爆発し、作業をしていたハワードが死亡する。ただし、激しい爆発のせいで彼の死体は見つからなかった。警察は原因究明のため、研究室に誰も立ち入れないよう鍵をかけてしまう。
夫の遺産を相続して、広い豪邸に一人で暮らすことになったアイリーン。だが、身の毛のよだつような悪夢を見たことから、彼女は家にいることが恐ろしくなり、結婚前から自らが経営する美容院の居住スペースに仮住まいすることにする。その晩から、再び例の若い男(ロイド・ボックナー)が夢に出てくるようになった。
夢にしては全てが現実的過ぎると感じたアイリーンは、バリーを伴って記憶にある場所を探す。すると、夢の中に出てきたアパートや教会が実在することが判明する。だが、若い男の目撃証言はなく、その正体を掴むことは出来ない。誰かがアイリーンを陥れようとしているのか、それとも彼女の精神状態がおかしいのか。やがて、謎を探り始めたバリーの命が狙われ、アイリーンの身にも危険が迫る…。

映画館内にワイヤーで吊るした骸骨を飛ばす、ショック・シーンで観客の座席に電気を流してドッキリさせる…などの様々な仕掛けで人気を博し、ギミック映画の帝王と呼ばれたホラー映画監督ウィリアム・キャッスル。コロンビア映画のトレードマークである女神の首をはねるラストが話題を呼んだ『血だらけの惨劇』('64)を最後に、長年に渡るコロンビアとの契約を打ち切ったキャッスルは、新たにユニバーサル映画と3作品の配給契約を結ぶ。その第1弾が本作『ナイト・ウォーカー 夜歩く人』('64)だった。

主人公は初老の美しき大富豪夫人アイリーン。夫ハワードは発明家として財を成した名士だが、視力を失ってからというものの猜疑心の塊となってしまい、結婚生活は既に破綻したも同然だ。そのうえ、アイリーンは夜な夜な見る夢にも悩まされていた。夢の中に出てくるのは見ず知らずの若い男性。ハンサムな彼の甘い誘惑は抗しがたく、ついつい寝言で彼を求めてしまう。貞淑なアイリーンはそんな自分が情けない。しかも、夢とは思えないくらいリアル。私ったらどうかしている、頭がおかしくなっちゃったのかしら…?というわけだ。

で、妻が浮気しているんじゃないかと気が気でないハワードは、背が高くてハンサムな顧問弁護士バリーに疑いの目を向ける。部外者で屋敷への出入りを許されているのはバリーだけだからだ。濡れ衣を着せられたバリーはたまったもんじゃないが、しかし実のところ彼もアイリーンもお互いのことを少なからず意識はしている。正直まんざらでもないのだが、しかし一線を越えるには失うものが大きすぎる。とりあえず、プラトニックな関係といったところか。

そんなこんなでハワードの嫉妬心はヒートアップする一方。堪りかねたアイリーンが夫に罵詈雑言を浴びせた矢先、ハワードがいつも籠っている研究室で大爆発が発生し、アイリーンは一夜にして未亡人となってしまう。ただし、ハワードの死体は見つからず。警察は爆発の衝撃で木っ端みじんになったものと考え、さらなる現場検証が必要ということで、研究室に鍵をかけて立ち入り禁止にする。

それ以来、イケメン男に誘惑される夢を見なくなったアイリーンだが、しかし今度は死んだはずの夫ハワードに襲われる悪夢を見て震え上がる。もうこの家には1日たりとも居られない。でも、今すぐ売り払って引っ越すわけにもいかない。そこで彼女は、自らが経営する美容室の居住スペースで当面寝泊まりすることにするのだが、するとまたまた夢の中に例の怪しげなイケメン男が現れ、アイリーンを不可思議な世界へと誘っていく。蝋燭に囲まれた奇妙なアパートでの逢引き、蝋人形たちに見守られた真夜中の教会のウェディング。夢ならもう醒めて!お願い!と思ってハッと目を覚ますとベッドの中だった。

やっぱり私の頭はおかしいんじゃないかしら、とても夢だとは思えないくらい現実的だったんだけど!?と自らの正気を疑い始めるアイリーン。ところが、バリーの力を借りて昨晩のおぼろげな記憶を辿っていくと、夢に出てきたアパートや教会が実在することが判明。さらに謎を突き止めるべく調査を始めたバリーが命を狙われ、アイリーンもまた危険な目に遭ってしまう。誰かが彼女を陥れようとしているのか、だとしたらその理由とは?閉店後の美容室の暗闇にうごめくハワードの姿。もしかするとハワードの死は偽装だったのではないか?一方的な激しい嫉妬心から、アイリーンとバリーに身勝手な復讐をしようとしているのでは?次から次へと湧き上がる疑問。やがてアイリーンは思いもよらぬ謎の真相を知ることになる…。

というわけで、ヒッチコックの傑作『サイコ』('60)で有名なロバート・ブロックの手掛けた脚本は、アンリ=ジョルジュ・クルーゾーの『悪魔のような女』('55)と、イングリッド・バーグマン主演で映画化された戯曲『ガス燈』からの影響が濃厚だと言えるだろう。スーパーナチュラルなホラー・ミステリーかと思わせておいて、実は巧妙に仕掛けられた罠によってヒロインが精神的に追い詰められていく犯罪サスペンスだったというオチ。勘のいい映画ファンならすぐに真犯人の察しはつくはずだ。犯行動機は、もちろんアイリーンが夫から受け継いだ莫大な財産。本人にも周囲にもアイリーンが正気を失ったと思い込ませ、管理能力なしとして財産を横取りしようというわけだ。

それにしても芝居が過剰に大掛かりで手が込んでいやしませんか?という真実味のなさも含め、天下のロバート・ブロックの脚本にしては凡庸な出来と言わざるを得ないだろう。どちらかというとテレビ向きの作品。『ミステリー・ゾーン』や『四次元への招待』などの1エピソードという印象だ。その一方で、いつもながらのハッタリを効かせたこけおどしに加え、悪夢的な薄気味の悪さをジワジワと煽っていくウィリアム・キャッスル監督の恐怖演出は意外と悪くない。『地獄へつづく部屋』('59)や『ティングラー/背すじに潜む恐怖』('59)といった一連の代表作に比べると、かなり地味な映画であることは否めないものの、それなりに良く出来た低予算プログラム・ピクチャーである。

しかし、本作はそれまで好調にヒットを飛ばしてきたキャッスル監督にとって、想定外の興行的惨敗を招いてしまう。その最大の理由として挙げられるのが主役のキャスティングだ。ヒロインのアイリーン役にはアカデミー主演女優賞候補になること4度の大女優バーバラ・スタンウィック、その相手役には『哀愁』('40)や『クォ・ヴァディス』('51)で有名な二枚目俳優ロバート・テイラー。どちらもハリウッド黄金期を代表するトップスターであり、しかもかつてはゴシップ誌を賑わせた元夫婦という仲。'51年に離婚して以来の初共演ということで、話題性としては十分過ぎるくらいだと思われたことから、キャッスル監督はあえてお得意のギミック商法を封印して、主演スターのネームバリューのみで勝負に出たのだが、これが結果的に大誤算となってしまう。この手のB級映画を好んで見る当時の若い観客にとって、バーバラ・スタンウィックもロバート・テイラーもいまいちピンとこない、ただのオバサンとオジサンに過ぎなかったのだ。

加えて、共演陣も全体的に年齢層が高い。唯一の若手はテレビの脇役女優だったジュディ・メレディスのみ。劇中では「夢の中に出てくる若いハンサムな男」という設定のロイド・ボックナーも、当時は既に40歳を過ぎていた。そのほかは、同年始まったテレビ『かわいい魔女ジニー』のベローズ大佐役で有名なハイデン・ローク、'30年代にRKOの専属女優だったロシェル・ハドソン、チャップリンが御贔屓だった名脇役女優マージョリー・ベネットと、主演コンビを含めて中高年のベテラン俳優ばかり。これはさすがに興行面で厳しかろう。ロバート・テイラーなんか当時53歳とは思えないくらい老けてるしなあ。絶叫シーンを体当たりで熱演したスタンウィックは、本作の大失敗に少なからずショックを受けたらしく、以降はテレビに活動の場を移して大ヒットドラマ『バークレー牧場』で活躍。映画出演はこれが最後となってしまった。

なお、日本では劇場未公開、WOWOWにて放送されたことがあるだけという本作。かつてアメリカでDVDがリリースされた際は、マスターとして使用されたフィルムの状態に問題があって不評を呼んだが、今年になって発売された米盤ブルーレイは概ね画質良好だ。オリジナルのインターポジフィルムからの2Kリマスターで、ところどころフィルムの小さな傷が散見されることからレストア作業まではしていないようだが、全体的には保存状態が良くモノクロの映像もクリアで綺麗だ。



評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio Mono/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:86分/発売元:Scream Factory, Universal
特典:映画史家スティーヴ・ヘイバーマンによる音声解説/オリジナル劇場予告編/ラジオスポット/スチルギャラリー



by nakachan1045 | 2018-12-11 18:33 | 映画 | Comments(0)

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