なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
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「ローマの奴隷市場」 The Revolt of the Slaves (1960)

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監督:ヌンツィオ・マラソンマ
製作総指揮:パオロ・モッファ
脚本:ドゥッチョ・テッサリ
   ステファノ・ストルッキ
撮影:チェチリオ・パニアグア
美術:ラミロ・ゴメス
第二班監督:ドゥッチョ・テッサリ
音楽:アンジェロ・フランチェスコ・ラヴァニーノ
出演:ロンダ・フレミング
   ラング・ジェフリーズ
   ダリオ・モレーノ
   エットーレ・マンニ
   ワンディサ・グイダ
   セルジュ・ゲンズブール
   フェルナンド・レイ
   ラファエル・リヴェレス
特別出演:ジーノ・チェルヴィ
イタリア・スペイン・フランス合作/103分/カラー作品




<あらすじ>
西暦300年代の初頭。古代ローマ帝国では、マクシミヌス帝(ダリオ・モレーノ)によるキリスト教徒の迫害が行われていた。ある日、皇帝も一目置く大富豪クラウディオ(ジーノ・チェルヴィ)は、広場で近衛兵を相手に大立ち回りを演じた剛腕の奴隷ヴィビオ(ラング・ジェフリーズ)に興味を持ち、その場で彼を買い上げて自宅へと連れ帰る。
クラウディオにはクラウディア(ロンダ・フレミング)という一人娘がいた。ヴィビオとクラウディアは一目で惹かれあうが、しかし博愛主義者の奴隷ヴィビオと傲慢で気の強いお嬢様のクラウディアの間には、身分の違いだけではない大きな溝があった。
そんなクラウディアの親友が、心優しい従妹のアグニース(ワンディサ・グイダ)。アグニースは高潔な近衛隊長セバスチャン(エットーレ・マンニ)と愛し合っていた。彼女に横恋慕する政治家ヴァレリオ(フェルナンド・レイ)は、秘密警察のコルヴィーノ(セルジュ・ゲンズブール)にアグニースの身辺調査を依頼する。
ある晩、コルヴィーノが外出したアグニースを尾行すると、キリスト教徒の集会へ辿り着く。アグニースはキリスト教徒だったのだ。すぐに、コルヴィーノは彼女を含むキリスト教徒たちを逮捕。連行されるキリスト教徒たちを助け出したのは、自らも信者であるヴィビオだった。
アグニースとヴィビオがキリスト教徒だと知ってショックを受けつつ、彼らをコルヴィーノの魔手から守ろうとするクラウディア。しかし、キリスト教徒への迫害は激しさを増していき、クラウディアも巻き添えとなってコルヴィーノに大量検挙されてしまう。娘を救い出そうとした父親クラウディオは、マクシミヌス帝の逆鱗に触れて殺害され、その財産を没収されてしまった。
囚われの身となったクラウディアやキリスト教徒たちを助けたのが、実は信者たちのリーダー的存在だったセバスチャン。しかし、その彼もコルヴィーノに正体を見破られ、マクシミヌス帝から死刑を宣告される。事態を知ったクラウディアは単身ローマへと戻り、身の潔白を証明して地位と財産を取り戻し、ヴィビオらキリスト教徒を救うための策を練るのだが、しかし残酷なマクシミヌス帝は円形競技場で信者たちの大量処刑を見世物にしようとする…。

'50年代末から'60年代初頭にかけて、世界的にブームとなったイタリア産のスペクタクル史劇映画。もともと、イタリアにはサイレント時代から史劇映画の伝統があり、『クオ・ヴァヂス』('12)や『カビリア』('14)などは、草創期のハリウッド映画にも多大な影響を及ぼすほどの評判となった。その後、第二次世界大戦の影響などもあってイタリアの史劇映画は下火となるが、しかし思いがけないところから復興のチャンスがもたらされる。

スタジオシステムの崩壊によって、大幅なコスト削減を迫られた'50年代半ばのハリウッド。大手スタジオが目をつけたのは、ヨーロッパ最大の映画撮影所チネチッタを擁し、そのうえ人件費が格段に安いイタリアだった。しかも、イタリアには古代ローマの遺跡があちこちに存在する。歴史劇を撮影するには絶好の場所だ。その結果、史上初のシネマスコープ映画『聖衣』('53)を筆頭に、『トロイのヘレン』('56)や『ベン・ハー』('59)、『クレオパトラ』('63)、『ローマ帝国の滅亡』('64)などのハリウッド製スペクタクル史劇大作が、イタリアのローマで撮影されるようになったのだ。

こうした時代の流れに便乗するかのごとく、イタリアでは再び国産史劇映画の製作が盛んになっていく。なにしろ、ハリウッド製史劇映画で使用したセットや衣装を流用すれば予算を浮かせられるし、それらの作品に駆り出されて経験を積んだ地元スタッフも大勢いる。かくして、カーク・ダグラス主演の『ユリシーズ』('54)やアンソニー・クイン主演の『侵略者』('54)など、ハリウッドの大物スターを招いたハリウッド映画ばりの大作映画から、アメリカの有名ボディビルダーであるスティーヴ・リーヴスを主演に抜擢した『ヘラクレス』('58)や、無名のハリウッド俳優リチャード・ハリソンを起用した『豪勇ペルシウス大反撃』('63)みたいなB級映画まで、数えきれないほどのスペクタクル史劇がイタリアで量産されたというわけだ。

このようなイタリア産史劇映画ブームの真っ只中に作られたのが『ローマの奴隷市場』。主演のロンダ・フレミングは大物製作者デヴィッド・O・セルズニクの秘蔵っ子として映画デビューし、その燃えるような赤毛がテクニカラーに映えることから「テクニカラーの女王」とも呼ばれたハリウッドのトップ女優である。『OK牧場の決斗』('57)などの西部劇やフィルムノワールで気の強いヒロインを演じて人気を博した人だが、しかしどちらかというと演技力よりも容姿で注目されたことは否めず、女優としての決定的な代表作には恵まれなかった。本作でイタリア映画の仕事を引き受けたのも、恐らく当時ハリウッドでのキャリアが尻つぼみになりつつあったからなのだろう。

そのロンダ・フレミングが演じるのは、古代ローマの大富豪令嬢クラウディア。傲慢で鼻持ちならない支配層の女性だが、運命のいたずらによって屈強な奴隷の若者ヴィビオと恋に落ちてしまう。しかも、当時のローマ帝国ではキリスト教徒が迫害されていたのだが、愛するヴィビオばかりか無二の親友である従妹アグニースまでもがキリスト教徒であると判明。彼らと接するうちに自由と平等の精神を理解し始めたクラウディアは、暴君マクシミヌス帝の迫害政策に抵抗するキリスト教徒の蜂起に力を貸すこととなる。

後にイタリア産アクション映画の名監督となるドゥッチオ・テッサリが、『地獄の戦場コマンドス』('68)のステファノ・ストルッキと共に原案・脚本を手掛けたことになっているが、実をいうとスクリーンにクレジットされていない原作がある。それが、本作以前にも巨匠アレッサンドロ・ブラゼッティによって映画化されたことのある、イギリスのカトリック枢機卿ニコラス・ワイズマンが1854年に出版したキリスト教啓蒙小説『ファビオラ』だ。

クリスチャンが迫害された古代ローマ時代を舞台に、キリスト教の教えに目覚めていく貴族の娘ファビオラの数奇な運命を描いた作品だが、本作『ローマの奴隷市場』では小説版の骨格を大雑把に拝借しつつ、登場人物の名前や設定などに大胆な脚色を施している。全体的に見ると、『ファビオラ』の映画化というよりもオマージュに近い。本編に原作がクレジットされていないのはそのためだろう。

キリスト教徒の根絶に異常なまでの執念を燃やす秘密警察コルヴィーノが、スパイ網を張り巡らせて情報取集し、拷問や脅迫による尋問捜査で信者を追い詰めていく様は、さながら戦時中のナチスによるユダヤ人迫害を想起させる。諜報サスペンスあり、剣劇アクションあり、群衆パニックありの賑やかな内容だが、しかしいまひとつ盛り上がりに欠けるのは、当時66歳の大ベテラン、ヌンツィオ・マラソンマ監督の少々真面目過ぎる演出のせいかもしれない。なんというか、杓子定規で面白みに欠けるのだ。

また、『ロード島の要塞』('60)や『ポンペイ最後の日』('60)のような特撮を駆使した見せ場も全くないため、スペクタクル史劇映画に必要不可欠なスケール感に乏しいことも否定できない。古代ローマのキリスト教徒迫害と言えば、円形競技場に押し込めた信者たちをライオンに食わせる…なんて逸話が有名だが、本作ではチラリとライオンの群れが登場するものの、近衛兵を追い払うために檻から解き放たれるだけで、そのままさっさとどこかへ消えてしまう。さすがにちょっと物足りない。

奴隷の若者ヴィビオ役のラング・ジェフリーズはアメリカのテレビ俳優で、本作を機にイタリア映画で活躍するようになった。マクシミヌス帝を演じているダリオ・モレーノは、フランス映画で活躍したトルコ人俳優。セバスチャン役のエットーレ・マンニは史劇映画や戦争映画のヒーローとして有名なタフガイ俳優で、アグニース役のワンディサ・グイダも史劇映画やスパイ映画のヒロインとして引っ張りだこだった女優だ。また、クラウディアの父親を演じるジーノ・チェルヴィは戦前からの大御所俳優で、『ファビオラ』にもファビオラの父親役で出演していた。

しかし、本作のキャストで特筆すべきなのは、悪役コルヴィーノに扮しているセルジュ・ゲンズブールであろう。当時はまだ歌手としてデビューして間もない頃。細くてヒョロっとした体つきと爬虫類系の顔立ちが印象的で、薄気味の悪い存在感を醸し出している。また、アグニースに横恋慕する腹黒い政治家役として、無名時代のフェルナンド・レイが顔を出しているのも要注目だ。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/時間:103分/発売元:Kino Lorber/MGM
特典:オリジナル劇場予告編(英語版)



by nakachan1045 | 2018-12-15 20:34 | 映画 | Comments(0)

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