なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「地獄の戦士ブラストファイター」 Blastfighter (1984)

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監督:ジョン・オールド・ジュニア(ランベルト・バーヴァ)
製作:ルチアーノ・マルティーノ
原案:フランク・コスタ(ダルダノ・サケッティ)
   モランド・マクモランド(モランド・モランディーニ)
脚本:マックス・フォン・リット(マッシモ・デ・リータ)
   ルカ・フォン・リット(ルカ・デ・リータ)
撮影:ローレンス・バノン(ジャンロレンツォ・バッタリア)
編集:ボブ・ホイーラー(ロベルト・ステルビーニ)
音楽:アンドリュー・バリモア(ファビオ・フリッツィ)
出演:マイケル・ソプキフ
   ヴァレリー・ブレイク(ヴァレンティーナ・フォルテ)
   ジョージ・イーストマン(ルイジ・モンテフィオーリ)
   マイク・ミラー(ステファノ・ミンガルド)
   リチャード・レイモンド(オッタヴィオ・デラクア)
   パトリック・オニール(マッシモ・ヴァンニ)
   エリザベス・フォーブス
   カール・サヴェージ
   マイケル・サロヤン(ミケーレ・ソアヴィ)
イタリア・フランス合作/89分/カラー作品




<あらすじ>
元警官のタイガー・シャープ(マイケル・ソプキフ)が、6年の刑期を終えて刑務所から出てくる。かつては優秀な警官だったタイガーだが、愛する妻を殺した犯人を証拠不十分のまま射殺し、裁判で実刑を食らったのだ。車で迎えた親友ジェリーは、最新鋭の軍用ライフル銃をタイガーに手渡す。
このライフルを使って、残る黒幕の悪徳弁護士を始末するつもりのタイガー。しかし、ギリギリで彼は引き金を引くことを思いとどまる。もう殺人や暴力はご免だった。生まれ故郷の田舎町へ舞い戻ったタイガーは、ライフルを山小屋の床下に隠して封印する。
町では不良の若者たちが威張って幅を利かせていた。リーダーのウォリー(ステファノ・ミンガルド)は、タイガーの幼なじみで親友だったトム(ルイジ・モンテフィオーリ)の弟。若者たちは森の動物を片っ端から密猟し、中国人の密売人に高値で売り払っていた。動物の臓器は漢方薬の貴重な原料になるからだ。これに腹を立てたタイガーが抗議したところ、よそ者を嫌う若者たちから目をつけられるようになる。
徐々にエスカレートしていく若者たちの嫌がらせ。頭にきたタイガーは中国人の密売人を追い出し、その作業場を徹底的に破壊する。一触即発の緊迫した事態をひとまず収めたのはトム。彼の仲裁によって若者たちは一旦引き下がるが、しかしこれで問題が解決したわけではなかった。
そんな折、祖父母のもとに預けられていたタイガーの娘コニー(ヴァレンティナ・フォルテ)が、父親を訪ねてやって来る。さらに、コニーの恋人ピート(ミケーレ・ソアヴィ)や親友ジェリーも山小屋にやって来た。お互いに複雑な想いを抱えつつ、徐々に気持ちを通わせていくタイガーとコニー。ところが、再び若者たちの嫌がらせが始まり、調子に乗った彼らはピートとジェリーを殺害してしまう。
若者たちにレイプされかけたコニーを救い出すタイガー。辛うじて山中へと逃れた2人だが、ウォリーに率いられた若者たちがライフルを手に後を追う。殺人の目撃者は一人たりとも生かしてはおけないからだ。ウォリーはさらなる応援を町から呼び寄せ、かくして森と川と山を舞台にした大規模な人間狩りがスタートする…。

ずばり、イタリア版『ランボー』('82)である。かつて世界に冠たるパクり映画大国だったイタリア。『007』シリーズから『ジョーズ』に『スター・ウォーズ』、『E.T.』に『インディ・ジョーンズ』に『コナン・ザ・グレート』などなど、ありとあらゆる大ヒット映画(基本的にハリウッド映画)をパクりまくったイタリアの映画人たちだが、もちろんスタローン主演の『ランボー』シリーズとて例外ではなかった。

ただし、その大半がシリーズ第2弾『ランボー/怒りの脱出』('85)のパクリ。フィリピンのジャングルをベトナムに見立てた、マカロニ印のなんちゃってランボー映画がいったい何本作られたことか!一方で、1作目『ランボー』のコピー作品は意外にも少ない。やはり、ベトナム帰還兵がアメリカの田舎でレッドネック相手に戦うというストーリーは、あまりにもアメリカンなローカル色が強すぎるため、ヨーロッパや東南アジアで安上がりに撮影するわけにもいかなかったのだろう。ベトナム帰還兵をインディアンに置き換えたファブリツィオ・デ・アンジェリス監督の『サンダー』('83)がヒットしてシリーズ化されたが、それ以外となると、この『地獄の戦士ブラストファイター』くらいしか思い浮かばない。

主人公はベトナム帰りならぬ刑務所帰りの元腕利き警官タイガー・シャープ。フラッシュバックで断片的に描かれるところによると、最愛の妻を殺された彼は真犯人を追い詰めるも、悪徳弁護士に守られた犯人に法律の裁きが下せないため、思い余って相手を射殺して7年の懲役刑を食らったらしい。出所したタイガーは親友ジェリーから最新鋭の軍用ライフル銃を手渡され、のうのうとしている悪徳弁護士に制裁を下そうとするが、すんでのところで思いとどまり、生まれ故郷である南部の田舎町で隠遁生活を送ることにする。暴力や憎しみよりも平穏な日常が必要だったのだ。

ところが、である。数十年ぶりに戻った故郷はすっかり様変わりしていた。地元の産業は衰退して町の景色も荒廃し、チンピラみたいなレッドネックの若者たちが威張りくさっている。しかも、彼らは密猟で森の動物たちを片っ端から殺し、中国人の密輸業者に売り払って金を稼いでした。野生動物の臓器は漢方薬の原料として価値があるからだ。

バカな連中のせいで大切な森の自然環境が破壊される。見て見ぬふりの出来ないタイガーは密猟の邪魔をし、たちまちレッドネック集団と対立するようになる。徐々にエスカレートしていく若者たちの嫌がらせ。憤慨したタイガーは相手をコテンパンにぶちのめすが、かえって火に油を注ぐことになってしまう。もはや歯止めの効かなくなったレッドネック集団は暴走する一方だ。

そんな折、祖父母のもとに預けられていたタイガーの娘コニーが訪ねてくる。父親に負けず劣らずの頑固者で気性の激しいコニー。その恋人ピートや親友ジェリーも後から到着し、つかの間の平和な時間を過ごす中で、タイガーとコニーは親子の絆を確かめ合っていく。しかし、そんなところへ暴力集団と化したレッドネックたちが襲来。ピートとジェリーは無残にも殺され、警察へ通報されることを恐れたレッドネック集団は、山へと逃げ込んだタイガーとコニーの親子を亡き者にするべく大規模な人間狩りを始める…というわけだ。

『ランボー』の基本プロットを踏襲しつつ、美しい大自然の描写は『ディア・ハンター』('77)を、激流の川下りシーンは『脱出』('72)を参考にしたという本作。ラスト15分では軍用ライフルを駆使した戦争映画ばりのバトルが繰り広げられ、戦闘マシンと化したタイガーが数えきれないほどのレッドネックたちを木っ端微塵にしていく。主なロケ地はアメリカのジョージア州。オーセンティックなアメリカ映画の雰囲気を醸し出しており、その点では当時の数多のイタリア産B級映画とは一線を画す仕上がりだと言えよう。『脱出』に出てきたバンジョー弾きの身障者の少年が、すっかり成長した姿でチラリと出演しているのも気が利いている。

監督はランベルト・バーヴァ。ご存知、イタリアン・ホラーの巨匠マリオ・バーヴァの息子だ。なにかと偉大な父親と比較され、しばしば「不肖の息子」などと揶揄される人だが、まあ、確かに父親ほどの芸術的才能に恵まれていないことは認めざるを得ない事実だろう。ただ、プログラムピクチャー的なB級エンターテインメントをそつなく仕上げることには長けており、そういう意味で本作などは適任だったのではないだろうか。レッドネックたちがただの頭がイカれたサイコ集団でしかなく、それゆえに荒唐無稽で漫画的な作品となってしまったことは否めないものの、とりあえず見栄え良くまとまっていることは評価できる。

ちなみに、ジョン・オールド・ジュニアというアングロサクソン系の変名は、父親マリオが『白い肌に狂う鞭』('63)などで使用していた変名ジョン・オールドに倣ったもの。マリオ・バーヴァ=ジョン・オールドの息子だからジョン・オールド・ジュニアというわけだ。そのほかのスタッフやキャストも、イタリア人は全員アングロサクソン系の変名を使ってアメリカ人を装っている(製作者ルチアーノ・マルティーノは本編クレジットなし)。当時はイタリア映画の素性を隠して世界マーケットへ売るため、これが常套的なマーケティング手段だったのだ。

主演はセルジョ・マルティーノ監督の『サイボーグ・ハンター/ニューヨーク2019』('83)の主演で映画デビューした、モデル出身のアメリカ人俳優マイケル・ソプキフ。当時日本ではマイケル・ソプキューと表記され、現在ではallcinemaにマイケル・ソプキーと登録されているが、本人によるとソプキフが正しい発音だ。娘コニー役のヴァレンティーナ・フォルテは、当時ルッジェロ・デオダート監督の恋人だった若手女優。その彼氏役として、本作の助監督も務めるミケーレ・ソアヴィがマイケル・サロヤン名義で顔を出している。また、マカロニ西部劇の悪役としても有名なジョージ・イーストマンことルイジ・モンテフィオーリが、主人公タイガーの親友で宿敵ウォリーの兄トム役として登場。たびたび2人の仲裁を買って出るものの、最終的にダメな弟側についてタイガーと一騎打ちを演じる。

なお、日本では劇場未公開でビデオ発売のみ。海外でも長ことDVD化されないままだったが、'11年にスウェーデンで、'13年に本国イタリアでDVD化され、さらに'15年にはオリジナルネガからHDリマスターされたUK盤DVD&ブルーレイもリリースされた。アメリカのCode Redレーベルから出たブルーレイは、UK盤と同一のHDリマスターに独自でカラコレを施しており、肌の色合いなど全体的に自然な仕上がりだ。しかも、特典映像として主演のマイケル・ソプキフ、ランベルト・バーヴァ監督、ルイジ・モンテフィオーリ、撮影監督ジャンロレンツォ・バッタリアのインタビューも収録。中でも必見はモンテフィオーリのインタビューであろう。

のっけから「俺はランベルト・バーヴァが嫌いだ」と言い放つモンテフィオーリ。「父親の跡を継いだつもりだろうけど、あいつには才能が全くない」「映画監督としても人間としても中途半端だ」「初めて会ったのはマリオが監督した『Rabid Dogs』('74・日本未公開)の撮影現場で、あいつは親父の助監督だったけれど、その頃からバカだった」などなど、文字通り言いたい放題(笑)。しかも、彼は当時出演していたイタリア産B級映画の大半が大嫌いだそうで、「あの頃の映画のことはよく覚えていない。それは俺が年を取って記憶力が弱くなったからではなく、単純に思い出すだけの価値がないからだ」と斬り捨てている。なので、本作がジョン・ブアマンの『脱出』にインスパイアされたことを知らされると、「分不相応な野心だ。まったく呆れるね」とまたもやバッサリ。さらに、ヴァレンティーナ・フォルテのことについて訊かれると、「彼女はあまり大成しなかっただろう?そりゃデオダートなんかと付き合ってりゃ当然だよな」と一笑に付している。



評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/時間:89分/発売元:Code Red
特典:俳優マイケル・ソプキフによる音声解説/俳優マイケル・ソプキフのインタビュー(約8分)/ランベルト・バーヴァ監督のインタビュー(約20分/俳優ルイジ・モンテフィオーリのインタビュー(約10分)/撮影監督ジャンロレンツォ・バッタリアのインタビュー(約12分)/オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2018-12-17 02:10 | 映画 | Comments(0)

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