なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「殺し屋は放たれた」 The Killer Is Loose (1956)

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監督:バッド・ベティカー
製作:ロバート・L・ジャック
原案:ジョン・ホーキンズ
   ワード・ホーキンズ
脚本:ハロルド・メドフォード
撮影:ルシアン・バラード
音楽:ライオネル・ニューマン
出演:ジョセフ・コットン
   ロンダ・フレミング
   ウェンデル・コリー
   アラン・ヘイル
   マイケル・ペイト
   ジョン・ラーチ
   ディー・J・トンプソン
   ジョン・ベラディーノ
   ヴァージニア・クリスティーン
   ポール・ブライアー
アメリカ映画/73分/モノクロ作品




<あらすじ>
ロサンゼルスの昼下がり。とある銀行に白昼堂々と2人組の強盗が押し入る。地味で真面目な窓口係のプール氏(ウェンデル・コリー)が果敢にも取り押さえようとするが、犯人たちに殴り倒され逃げられてしまった。捜査に当たったロサンゼルス市警は、犯人たちが銀行の現金回収時間などを詳細に把握していることから、内部に共犯者がいるものと考える。そして盗聴の結果、ほかでもないプール氏が手引きしていたことが判明する。
プール氏の自宅アパートへと駆け付ける刑事たち。すると、ドアの向こうからプール氏が拳銃を発砲してきた。強行突破する警官隊。部屋の暗がりから飛び出してきた人物。サム・ワグナー刑事(ジョセフ・コットン)がとっさに発砲すると、相手はプール氏の若い妻だった。妻の遺体を前にして呆然自失のプール氏は、その場で警察に逮捕される。
愛妻ライラ(ロンダ・フレミング)を同伴し、プール氏の裁判に立ち会ったワグナー刑事。裁判長から有罪判決を言い渡されたプール氏は、ワグナー刑事夫妻をじっと見つめながら「いつかこの借りは必ず返す」と不気味につぶやく。
それから2年半後。模範囚として農作業の手伝いを任されたプール氏は、隙を見て見張り役の看守を殺害し、トラックを奪って逃走に成功する。プール氏脱獄の一報は、すぐさまワグナー刑事にも伝えられた。警察が調べたところによると、プール氏はワグナー刑事への復讐計画を囚人仲間に打ち明けていたらしい。しかも、ターゲットはワグナー刑事ではなく、その妻ライラだった。
ロス市警は一斉に市内へ通じる道路で検問を設けるものの、プール氏は途中で立ち寄った農家で農夫を殺害し、服と車を奪って変装していたため、パトロール警官は気付かなかった。さらに、市内の紳士服店でプール氏と思われる人物がコートを新調したことが判明。ワグナー刑事の自宅を目指していることは明白だった。
もはや一刻の猶予もない。ワグナー刑事は妻を怖がらせないよう、休暇を取ったので一緒に旅行へ行こうと嘘をつき、彼女を外へ連れ出して同僚ギレスピー刑事(マイケル・ペイト)の自宅へ送り届ける。真相を知らないライラは激怒。兼ねてから夫の危険な仕事に不満を抱いていた彼女は、このまま捜査に戻るのなら離婚すると夫に迫る。
本当のことを言い出せないまま自宅へ戻り、囮となってプール氏を待ち構えるワグナー刑事。周辺には同僚の刑事たちが待機している。その頃、ギレスピー夫人メアリー(ヴァージニア・クリスティーン)から真相を知らされたライラは、夫を心配するあまり一人で自宅へと向う。一方、軍隊時代に自分を虐めた元上官フランダース(ジョン・ラーチ)を殺害したプール氏は、その妻から奪った女物コートを着て女性に変装。いよいよワグナー刑事の自宅へ近づくと、そこに何も知らないライラが現れる…。

ランドルフ・スコットやオーディ・マーフィが主演したB級西部劇で知られる、職人監督バッド・ベティカーが手掛けた珍しいフィルムノワール映画だ。ストーリーはいたってシンプル。銃撃戦の最中に誤って妻を殺された銀行強盗犯が、その逆恨みから担当刑事の妻の命を狙う。日本語タイトルは『殺し屋は放たれた』だが、厳密には『殺人者は放たれた』と呼ぶ方が正確かもしれない。

面白いのは、その殺人者が地味で真面目で目立たない平凡な中年男だという点であろう。地方銀行の支店で窓口係を務めるプール氏は、真面目なだけが取り柄の万年平社員。普段は虫一匹も殺すことの出来ない気弱な人物で、戦争中は上官フランダースや仲間たちから腰抜けとバカにされていた。そんな彼が年下の若い妻に贅沢をさせたいがため、つい魔が差して職場を襲撃する銀行強盗に加担してしまう。

仲間の実行犯を止めようとするひと芝居を打ち、まんまと警察の目を誤魔化したかに思えたプール氏だが、あっという間に共犯者であることがバレてしまった。そのうえ、自宅へ押しかけた警官隊に発砲したことから銃撃戦となり、たまたまそこに居合わせた最愛の妻がワグナー刑事の弾に当たって死亡する。もとはといえば自分が蒔いた種であるにも関わらず、発砲したワグナーを逆恨みするプール氏。裁判で懲役刑の判決を受けた彼は、傍聴人席に座るワグナー刑事の隣に寄り添う夫人ライラをじっと見つめ、正気を失ったような表情で報復を誓う。

かくして復讐だけを心の拠り所に刑務所生活を送るプール氏。模範囚として認められた彼は、農作業のボランティア活動に参加を許され、刑務所の外へ出るチャンスを得る。収穫したレタスを農家へ届けるため、看守と一緒にトラックへ乗り込んだプール氏は、隠し持った凶器で看守を殺害。さらに、農夫を殺して服を奪った彼は、次々と凶行を重ねながら警察の検問や捜査を巧みに潜り抜け、ワグナー刑事の自宅を目指す。彼の妻ライラを殺害するために…。

子供の頃から虐められバカにされ続けた中年男が、唯一の理解者であった妻を亡くしたことで理性のタガが外れ、文字通り歩く凶器と化してしまう。完全な逆恨みであるにも関わらず、妻の無念を果たさんとの復讐心に目がくらみ、次々と犯行を重ねながら猪突猛進していくプール氏の姿に背筋が凍る。こんな男に恨まれたらたまったもんじゃない。元上官フランダースの自宅での狂気に満ちた立てこもりや、物陰に隠れた大勢の警官が待ち構える中、女装して通行人を装ったプール氏が帰宅したライラをつけ狙う緊迫のラストなど、ギリギリの限界まで恐怖と緊張感を煽りまくるベティカー監督の演出が冴える。73分というコンパクトな上映時間で、テンポ良く進むストーリー展開も飽きさせない。

だた、その一方で製作から60年以上の時を経て、時代に色褪せてしまった部分があることも否定できないだろう。例えば、プール氏のターゲットが自分ではなく妻だと知らされたワグナー刑事は、そんなバカなことあるまい、だって理屈が通らないじゃないかと苦笑いし、はじめのうちは真面目に取り合わない。ニュースでも映画でもテレビドラマでも、理屈の通らない異常犯罪が日常に溢れかえった現代の観客が見れば、なにを呑気なこと言ってるんだと思ってしまうが、恐らく当時はそれが普通の感覚だったのかもしれない。

そんな感じで、21世紀の今となってはにわかに理解しがたいような描写が、特にワグナー刑事および警察側のドラマでは所々に目立つ。まあ、古い映画を見るうえで、カルチャー・ギャップというのは多かれ少なかれ避けて通れない要素だろう。それが全く気にならない作品も沢山あるのだが、本作の場合は少なからず鑑賞の妨げになってしまう場面がある。女性キャラクターの描き方も古いステレオタイプだし、そもそも担当事件の裁判に刑事たちが妻を同伴して傍聴するというのも首を傾げる。果たして、当時はそういう習慣があったのだろうか?

主人公ワグナー刑事役は、ヒッチコックの『疑惑の影』('52)や盟友オーソン・ウェルズと共演した『第三の男』('49)などでお馴染みの名優ジョセフ・コットン。その妻を鉄火肌の赤毛女優ロンダ・フレミングが演じている。ワグナーの相棒ギレスピーには、ジョン・ウェインの『ホンドー』('53)や『マクリントック』('63)でインディアン酋長を演じていたマイケル・ペイト。その妻メアリーを、傑作ノワール『殺人者』('47)のバート・ランカスターの元恋人役が印象深いヴァージニア・クリスティーンが演じる。また、『ダーティハリー』('71)の警察本部長役で知られる名優ジョン・ラーチが、プール氏の元上官フランダース役で登場。第二次世界大戦に従軍した彼は、戦後しばらくPTSDに悩まされて働けなかったらしく、本作の当時は42歳にしてまだ無名の駆け出し俳優だった。

そして、地味な銀行員転じて復讐に燃える殺人鬼となったプール氏に扮するのがウェンデル・コリー。ロレッタ・ヤング主演の『美しき被告』('49)やヒッチコック監督の『裏窓』('54)で渋い刑事役を演じ、生真面目だったり堅物だったりする役柄が多かった名脇役だが、本作ではそのイメージを逆手に取った怪演で強烈なインパクトを残す。見事な当たり役だ。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:73分/発売元:Classic Flix/United Artists/MGM
特典:なし



by nakachan1045 | 2018-12-18 13:03 | 映画 | Comments(0)

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