なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「古城の亡霊」 The Terror (1963)

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監督:ロジャー・コーマン
製作:ロジャー・コーマン
製作総指揮:ハーヴェイ・ジェイコブソン
脚本:レオ・ゴードン
   ジャック・ヒル
撮影:ジョン・ニコラウス
美術:ダニエル・ホーラー
音楽:ロナルド・ステイン
出演:ボリス・カーロフ
   ジャック・ニコルソン
   サンドラ・ナイト
   リチャード・ミラー(ディック・ミラー)
   ドロシー・ニューマン
   ジョナサン・ヘイズ
アメリカ映画/79分/カラー作品




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<あらすじ>
時は1806年。ナポレオン軍の将校アンドレ・デュヴァリエ中尉(ジャック・ニコルソン)は、仲間とはぐれて寂れた海岸へとたどり着く。そこで彼はヘレン(サンドラ・ナイト)と名乗る美しい女性と出会い、彼女に心を奪われるのだったが、どこか謎めいたところのあるヘレンは波間に姿を消し、彼女を追いかけて海へ飛び込んだデュヴァリエ中尉は気を失う。
意識を取り戻したデュヴァリエ中尉は、カトリーナ(ドロシー・ニューマン)という老女の小屋に運び込まれていた。ヘレンのことを訪ねる中尉。しかし、カトリーナはそんな女は知らない、ヘレンといえば私が飼っている鳥だという。その晩、小屋から飛び立った鳥の後を追ったデュヴァリエ中尉は、あのヘレンと再会した。
ところが、ヘレンは中尉を底なし沼へ沈めようとする。間一髪でデュヴァリエを助けたのは、カトリーナの下男グスタフ(ジョナサン・ヘイズ)。彼によると、ヘレンはカトリーナに操られているという。そして、真相を知りたければ、崖の上の古城に住む男爵を訪ねるようアドバイスするのだった。
グスタフの言葉に従って古城へとたどり着いたデュヴァリエ中尉。ふと見上げると、城の窓からヘレンの姿が見える。しかし、中尉を迎え入れたフォン・レッペ男爵(ボリス・カーロフ)は、それは何かの見間違えだと語り、一枚の肖像画をデュヴァリエに見せる。それはヘレンと瓜二つの女性。だが、肖像画のモデルはフォン・レッペ男爵夫人イルサで、しかも20年前に他界していた。
にわかに真実を受け入れることの出来ないデュヴァリエ中尉。その晩、彼は城の礼拝堂へ入っていくヘレンの姿を目撃し、その後を追いかけるが見失ってしまう。男爵の執事ステファン(ディック・ミラー)は、すぐに城から出ていくようデュヴァリエに忠告。何か秘密があると直感したデュヴァリエは、本当のことを告白するようドフォン・レッペ男爵に迫る。
おもむろに忌まわしい過去を語り始める男爵。かつて妻イルサの浮気現場に遭遇した彼は、嫉妬のあまり彼女を自ら手にかけ、不倫相手エリックもステファンが殺害したのだという。ところが、2年ほど前からイルサの亡霊が城内に出没するようになった。果たして、なぜ彼女は死後の世界から蘇ったのか?やがて、さらなる意外な真相が明らかとなる…。
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『アッシャー家の惨劇』('60)や『恐怖の振子』('61)、『赤死病の仮面』('64)など、一連のエドガー・アラン・ポー原作のホラー映画でヒットを飛ばしていたロジャー・コーマン監督が、その合間を縫って作った「ポー風」のゴシック怪奇譚である。ストーリー自体は完全なオリジナル。脚本を書いたのは、当時たびたびコーマン監督と組んでいた脚本家で本職は俳優のレオ・ゴードン。愛弟子のジャック・ヒルが手直しを担当した。しかし、出来上がった作品はまさにポー映画そのもの。コーマン自身も本作をポー映画シリーズの一つと見なしているそうだ。
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しばしば「たったの2日間で撮影された映画」として語られがちな本作だが、実際はちょっとばかり事情が違ったようだ。当時、エドガー・アラン・ポーの「大鴉」を映画化したホラー・コメディ『忍者と悪女』('63)を撮り終えたばかりだったコーマン監督。その豪華な城のセットを使い回してもう1本映画を作ってしまおうと考えた彼は、同作に出演した大御所怪奇映画俳優ボリス・カーロフと新人ジャック・ニコルソンを引き続き起用することにする。しかし、城のセットを使うことが出来るのは2日間だけだった。そう、2日間で撮り終えたと言われているのは、あくまでも古城を舞台にしたシーンのみだったらしいのである。
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ひとまず、その2日間でボリス・カーロフの出番を全て撮影したというコーマン。というのも、既にカーロフは次の仕事が入っていて、数日後にはロンドンへ行かねばならなかったのだ。それ以降は、フランシス・フォード・コッポラやジャック・ヒル、モンテ・ヘルマンなど複数の弟子たちが代わる代わる監督を担当。中にはジャック・ニコルソンが演出を手掛けたシーンもあるそうなのだが、いろいろと追加撮影や編集を重ねていった結果、実は最終的な完成までに9か月を要したのだそうだ。なので、低予算のB級映画としては、むしろえらく時間がかかった作品だと言えるだろう。
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舞台はフランス皇帝ナポレオン1世が中央ヨーロッパを征し、神聖ローマ帝国が1000年の歴史に幕を閉じた1806年。遠征先で所属部隊とはぐれた若きフランス軍将校デュヴァリエ中尉(ニコルソン)が、たまたま見かけたミステリアスな美女ヘレン(当時ニコルソン夫人だったサンドラ・ナイト)に夢中となり、世にも奇妙で不可解な出来事に巻き込まれていく。ヘレンの姿を追い求めて、崖の上にそびえ立つ古城へとたどり着いたデュヴァリエは、ヘレンの正体が20年前に亡くなったフォン・レッペ男爵夫人イルサの亡霊だと知らされるのだ。
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やがて明らかとなる20年前に起きた悲劇。妻の不倫を知ったフォン・レッペ男爵(カーロフ)が、自らの手でイルサを殺していたのである。怨霊となって男爵を死に追い詰めようとするイルサ。しかもその背後には、森の中に住む老女カトリーナの存在があった。実は魔女だったカトリーナ。彼女はある理由からイルサの亡霊を魔術で操り、フォン・レッペ男爵に個人的な復讐を果たそうとしていた。というのも、20年前にイルサと一緒に殺された不倫相手というのが、カトリーナの息子だったのだ…。
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とまあ、基本的には「恨み晴らさでおくべきか」という、日本の怪談にも通じる怨念系ゴースト・ストーリーなんだが、いまひとつ腑に落ちない点も少なくない。例えば、物語の冒頭でヘレンは、まるでカトリーナの飼っている鳥(同じくヘレンという名前)の化身であるかのように描かれているのだが、途中からこの設定自体がうやむやになってしまい、結局あの鳥はなんだったのか、そもそもなぜイルサはヘレンと名乗っていたのか、何の答えも出ないまま終わってしまう。魔女カトリーナに操られたヘレン(=イルサ)が、デュヴァリエを底なし沼に沈めようとした理由もちょっと意味不明。その直前に、海へ流されたデュヴァリエをカトリーナが助けたという事実と大きく矛盾する。
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それもこれも、追加撮影のたびに物語を軌道修正したためだったらしい。コーマン監督のインタビューによると、城のセットを使った2日間の撮影以降は組合の規定でコーマン自身が演出に携わることが出来なかった(恐らく『忍者と悪女』の余ったスケジュールで撮影したため)ことから、愛弟子のコッポラに後を引き継がせたのだが、そのコッポラも途中でワーナーから仕事の誘いがかかって離脱。以降、次から次へと監督が代わっていき、そのつど新たな改変が加えられたせいで、仮編集してみたところ全く意味の通らない話になってしまったのだそうだ。
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そこで、当時別の映画を撮影したコーマン自身が急遽追加のセリフを書き上げ、ジャック・ニコルソンとディック・ミラー(男爵の執事役)を使ってラスト近くの「説明シーン」を撮影。これによって辛うじて全体の辻褄を合わせることが出来たというわけだ。「みんな真面目に分析しようとするけど、もともとプロットらしきものなどなかった」と語るコーマン監督。未消化のまま終わった設定も、矛盾したストーリー展開も、行き当たりばったりで作られた本作ならではの「味」と考えるべきなのだろう。
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そんなわけで、ぶっちゃけストーリー自体は刺身のつまみたいなもの。それよりも、AIP作品らしい壮麗でカラフルなゴシック・ムードを堪能すべし。『忍者と悪女』の古城セットに加えて、コーマン監督の次作『怪談呪いの霊魂』('63)のために準備されたセットも一部で使用。また、マット・ペイントで描かれた古城の外観は、『恐怖の振子』のフィルムを流用している。そのため、そこだけ映像の質感が古ぼけているのだよね。冒頭の海岸シーンも幻想的で美しいし、ハマーの『吸血鬼ドラキュラ』('58)を彷彿とさせるラストも悪くない。まあ、特殊メイクはとってもチープだけど(笑)。
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なお、本編中に著作権クレジットが表記されていないため、現在はパブリック・ドメイン扱いになってしまった本作。日本を含む世界中で海賊版まがいの激安DVDが数えきれないほど発売されている。筆者が所有するアメリカ盤ブルーレイも、基本的にはパブリック・ドメイン素材を使用しているのだが、元になった35ミリフィルムの保存状態がかなりいい。新たにHD画質でテレシネをしたうえで、フィルムの傷や汚れを除去するレストア作業が施されている。まあ、全体的には上映用プリントから起こしたことは明白で、ブルーレイとしてパーフェクトなクオリティとは言い難いものの、それでもシーンによってはオリジナル・ネガ並みのきめ細やかな映像を楽しむことが出来る。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ&DVD情報(アメリカ盤2枚組)
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/1080p/音声:5.1ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:スペイン語/地域コード:A/時間:79分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/音声:5.1ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:スペイン語/地域コード:ALL/時間:79分
発売元:Film Chest
特典:レストア版用予告編/修復作業前後の映像比較/封入ポストカード(1枚)




by nakachan1045 | 2018-12-24 14:24 | 映画 | Comments(0)

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