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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「海の征服者」 The Black Swan (1942)

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監督:ヘンリー・キング
製作:ロバート・バスラー
原作:ラファエル・サバティーニ
脚色:シートン・I・ミラー
脚本:シートン・I・ミラー
   ベン・ヘクト
撮影:レオン・シャムロイ
美術:リチャード・デイ
   ジェームズ・バセーヴィ
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演:タイロン・パワー
   モーリン・オハラ
   レアード・クリーガー
   トーマス・ミッチェル
   ジョージ・サンダース
   アンソニー・クイン
   ジョージ・ズッコ
   エドワード・アシュリー
アメリカ映画/85分/カラー作品




<あらすじ>
17世紀後半のカリブ海。長きに渡る大英帝国とスペインの覇権争いがようやく終結した。英国王チャールズ2世の恩赦受けた悪名高き海賊ヘンリー・モーガン(レアード・クリーガー)は、ジャマイカ総督に任命されてカリブ海の海賊一掃に乗り出す。
かつての仲間たちを集め、もはや海賊の時代は終わったと宣言するモーガン。右腕的存在であるジェイミー(タイロン・パワー)やトム・ブルー(トーマス・ミッチェル)らはモーガンの説得に応じて海賊を廃業するが、権力側に付くことを良しとしないリーチ(ジョージ・サンダース)やウォガン(アンソニー・クイン)らは反旗を翻すのだった。
ジャマイカ総督としてのモーガンの仕事は前途多難だった。前任者のデンビー卿(ジョージ・ズッコ)ら貴族たちはモーガンを快く思わず、議会はなかなかスムースに進行しない。ジェイミーはデンビー卿の一人娘マーガレット(モーリン・オハラ)を見初めるが、彼女もまた元海賊たちを毛嫌いし、ジェイミーの強引なアプローチにも強く反発する。
その頃、カリブ海ではイギリスの貿易船が次々と海賊に襲われ、甚大な被害を被っていた。しかも、相手は貿易船の日程や航路を詳細に把握して待ち伏せしている。デンビー卿ら議員たちはモーガンが裏で手を引いていると主張し、総督の罷免を求めて議会は紛糾する。
実は、マーガレットの許婚でもあるイングラム卿(エドワード・アシュリー)が、分け前に与るためリーチら海賊に情報を流していたのだ。そうとは知らぬモーガンは、ジェイミーら部下たちにリーチ一味を一網打尽にするよう命じるが、その情報も筒抜けだったため成果が上がらなかった。
モーガンに状況を報告するためジャマイカへ一時戻ったジェイミーは、マーガレットがイングラム卿と結婚すると知って彼女を誘拐。そのまま戦艦に搭乗して再び海賊たちを捕えようとするも、反対にリーチ一味に追い詰められ捕虜となってしまう…。

'30年代に『シカゴ』('37)や『世紀の楽団』('38)でロマンティックな二枚目俳優としてハリウッドのトップに君臨し、さらに『怪傑ゾロ』('40)で剣劇アクション・スターへと華麗なる転身を遂げたタイロン・パワー。これはそんな彼が、まさに全盛期の真っ只中で主演し、代表作の一つにも数えられている海賊映画の傑作だ。

これがとにかく面白いのなんのって!舞台は17世紀後半のカリブ海周辺。大英帝国とスペインの覇権争いに終止符が打たれたとされているので、恐らくマドリード条約が結ばれた1670年頃の設定なのだろう。当時はイギリスの海賊たちがスペイン領を荒らしまわり、金銀財宝を奪ったり女性を誘拐して売り飛ばしたりしていた。で、それを大英帝国はあえて野放しにしていた。劇中でタイロン・パワー演じるジェイミーが、「(チャールズ2世の)汚れ仕事を引き受けているのは俺たちだ」というセリフがあるように、海賊を軍隊の代わりとして都合よく使っていた側面があったのだろう。しかし、マドリード条約の和平協定によって、逆に彼らは大英帝国のお荷物となるわけだ。

そこで白羽の矢を立てられたのは、カリブ海にその名を轟かした実在の海賊王ヘンリー・モーガン。英国王室から形だけのナイト・バチェラー(騎士団に属さない最下級の爵位)を与えられたモーガンは、カリブ海の海賊を一掃する目的でジャマイカ総督に任命される。ただし、正確な彼の総督就任時期は1680年なので、その辺はストーリーの便宜上都合よく変えられている。まあ、あくまでも史実に基づいた真面目な歴史劇ではなく、史実からインスパイアされた娯楽映画なので、細かいことは目をつぶって構わないだろう。

で、主人公のジェイミーをはじめモーガンを尊敬する海賊たちは、彼の説得に応じて海賊稼業から足を洗って公職に就くことを選ぶのだが、その一方でモーガンのことを「裏切り者」「海賊の面汚し」として非難する反対派たちは、「1か月以内に英国領海から出ていくように」という彼の警告を無視して、引き続き略奪行為を繰り返していく。しかも、ターゲットは英国籍の貿易船だ。ただでさえ、元海賊ということで議会から白い目で見られているモーガンやジェイミーたちは、海賊どもとグルではないかと疑われて立場が危うくなる。そこで、モーガンの命を受けたジェイミーやトム・ブルーら歴戦の勇士たちが、かつての仲間でもある海賊を一網打尽にすべく大海原へと繰り出すというわけである。

シンプルなストーリーにスピーディーな展開。ただでさえ85分というコンパクトな上映時間が、さらに短く感じられるほど脚本にも演出にも一切の無駄がない。ミニチュア・セットを使ったスペクタクルな海洋バトルや、大勢のエキストラを動員したチャンバラ合戦シーンも盛りだくさん。しかも、ミニチュアが全然ミニチュアに見えない。というのも、例えば原題にもなっている海賊船「黒い白鳥」号の模型などは、高さ16フィート(約4.9メートル)、横幅18フィート(約5.5メートル)という超巨大サイズ。それに合わせて建設された特大スケールのミニチュア・セットも、カリブの島と海を細部まで超リアルに再現しており、それこそ実物と見紛うばかりの仕上がりなのだ。まさにこれぞハリウッド映画。第二次世界大戦の真っ只中である、1942年にこれだけ破格の超大作映画を作っていたのだから、そりゃアメリカが戦争に勝つわけですよ。

もちろん、スペクタクルやアクションだけでなく恋愛要素もふんだんに盛り込まれる。ヒーローであるジェイミーと気が強くてお転婆な美しい令嬢マーガレットのロマンスだ。といっても、劇中ではほとんど喧嘩してばかり(笑)。正義感が強くて勇敢で誇り高いマーガレットは、「人殺しの犯罪者のくせに!」「この汚らわしい野蛮人!」とジェイミーの求愛をことごとくはねのける。まあ、そりゃそうだわな。実際、人を殺して財宝を奪ったり女性を拉致して売り飛ばしたりしていたわけだし。とはいえ、卑怯者で強欲な気取り屋の悪徳貴族と婚約しているわけだから、男を見る目はあまりないようですな。

でもって、拒絶されれば拒絶されるほど燃えてしまう様子のジェイミーは、次々と強引なアプローチを繰り広げた挙句、結婚式を控えたマーガレットを誘拐して海賊退治の航海へ出ることになる。ここからがまたひと悶着ふた悶着あり。海賊リーチ一味に捕らえられたジェイミーは、敵の目を欺くためモーガン側から寝返ったふりをし、マーガレットと新婚夫婦を演じることになる。嫌々ながらも同調せざるを得ないマーガレット。お互いにいがみ合いながらも、危機をくぐり抜けるため一致協力するうち、やがて愛情と信頼が生まれていくことになるわけだ。

また、本作はテクニカラーの色彩を存分に生かしたカメラワークがまた素晴らしい。なんというか、まるでレンブラントやベラスケスのバロック絵画が動き出したかのような美しさなのだ。アカデミー賞の撮影賞獲得も当然であろう。撮影監督は『王様と私』('56)や『南太平洋』('58)、『クレオパトラ』('63)などの大御所レオン・シャムロイ。ヘンリー・キング監督とは『キリマンジャロの雪』('52)や『慕情』('55)など数多くの名作で組んでいる。

ハンサムで強くてちょい悪なヒーロー、ジェイミー役を演じるタイロン・パワーもしびれるほどカッコいい。彼もまたヘンリー・キング監督との顔合わせが多く、『シカゴ』や『世紀の楽団』を筆頭に、『地獄への道』('39)や『征服への道』('47)、『狐の王子』('49)に『キリマンジャロの雪』、『陽はまた昇る』('57)などなど、代表作の殆どで組んでいる黄金コンビだ。こうやって振り返ると、タイロン・パワーをハリウッドのトップへと押し上げた最大の功労者がヘンリー・キングだったことがよく分かるだろう。本作などはまさにその真骨頂であり、キング監督の軽快でダイナミックな演出が、タイロン・パワーの颯爽とした魅力を十二分に引き出している。

令嬢マーガレット役は当時まだ22歳で、母国イギリスからハリウッドへ移って間もない頃のモーリン・オハラ。燃えるような赤毛と意志の強そうな美貌が、怖いもの知らずな鉄火肌のお嬢様にピッタリだ。ヘンリー・モーガンを演じているのは、『天国は待ってくれる』('43)の閻魔様や『謎の下宿人』('44)の殺人鬼役で有名な巨体の怪優レアード・クリーガー。本作でも強烈な存在感と豪快な芝居でひときわ異彩を放ちまくる。

強烈と言えば、普段の慇懃無礼な英国紳士的イメージを完全に封印し、特殊メイクで髭面の野蛮な海賊リーチを演じるジョージ・サンダースもインパクト強し。あれ?これ、もしかして…ジョージ・サンダース!?と、本人だと気付くまでに時間がかかりました(笑)。見事な化けっぷりでございます。ジェイミーの右腕トム・ブルー役のトーマス・ミッチェルは、いつもながらの気のいいオジサン。当時20代半ばのアンソニー・クインがまた若い!

なお、日本では残念ながらブルーレイはおろかDVDすら発売されていない本作(パブリック・ドメインの廉価版DVDはあり)。アメリカ盤のブルーレイは素晴らしい高画質で、なによりも初期テクニカラーの人工的な色彩が鮮やかに再現されており、それがある種の絵画的な美しさを一層のこと際立たせている。生前のモーリン・オハラ(これは'06年リリースの米国盤DVD用に収録されたもの)による音声解説も実に楽しい。クラシック映画ファンならば必携だ。

評価(5点満点):★★★★★

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/スタンダードサイズ(1.33:1)/1080p/音声:1.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語・スペイン語・フランス語/字幕:英語・スペイン語・フランス語/地域コード:A/時間:85分/発売元:20th Century Fox
特典:女優モーリン・オハラと映画評論家ルディ・ビールマーの音声解説/オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2018-12-27 16:08 | 映画 | Comments(0)

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