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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「欲情の血族」 La morte ha sorriso all'assassino (1973)

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監督:アリスティド・マッサチェージ
製作:フランコ・ガウデンツィ
原案:アリスティド・マッサチェージ
脚本:アリスティド・マッサチェージ
   ロマーノ・スカンダリアート
   クラウディオ・ベルナベイ
撮影:アリスティド・マッサチェージ
衣装:クラウディオ・ベルナベイ
音楽:ベルト・ピサーニ
出演:エヴァ・オーリン
   クラウス・キンスキー
   ジャコモ・ロッシ・スチュアート
   アンゲラ・ボー
   セルジョ・ドリア
   アッティリオ・ドッテシオ
   マルコ・マリアーニ
   ルチアーノ・ロッシ
イタリア映画/88分/カラー作品




<あらすじ>
物語の始まりは1906年。青年フランツ(ルチアーノ・ロッシ)は、最愛の妹グレタ(エヴァ・オーリン)の亡骸を前に復讐を誓う。彼女を死に追いやった人々を同じ目に遭わせると。生前のグレタはフランツと近親相姦的な関係にありつつ、年上の裕福な医師ハーバート(ジャコモ・ロッシ・スチュアート)の愛人でもあった。
それから3年後。一台の馬車が事故を起こして転倒する。近隣の屋敷に住むウォルター(セルジョ・ドリア)とエヴァ(アンゲラ・ボー)のドン・ランヴェンスブルック夫婦が駆け付けると、不幸にも御者は既に死んでいたものの、車内から一人の若い女性が助け出された。それはあのグレタだった。事故のショックで記憶を失っているものの、胸に下げたペンダントから名前は判明する。ウォルターとエヴァは、グレタの記憶が戻るまで屋敷に滞在させることにした。
エヴァを往診したスタージェス医師(クラウス・キンスキー)は、彼女の心臓が動いていないことに驚く。試しに彼女の目に針を突き刺しても全く平気だった。そのまま何事もなかったようにして屋敷を後にしたスタージェス医師は、取り憑かれたようにして死体蘇生術の研究に没頭するが、何者かによって首を絞めて殺される。また、グレタの秘密を知っている様子のメイドも、同じく何者かに射殺されてしまった。
一方、美しく謎めいたグレタに、たちまちウォルターもエヴァも魅了されていく。しばらくは幸福な日々が続いたが、しかしグレタがウォルターと姦通している現場をエヴァが目撃してしまう。嫉妬に燃えたエヴァはグレタを屋敷の地下室に閉じ込め、レンガで壁を作って封印してしまう。そして、夫にはグレタが突然去ってしまったと告げるのだった。
ダニック警部(アッティリオ・ドッテシオ)の捜査もむなしく、2週間以上が経ってもグレタの消息は掴めなかった。ある晩、屋敷で華やかな仮装パーティが催され、その来客の中にグレタの姿を発見したエヴァは衝撃を受ける。その直後、彼女は屋敷の最上階から転落して死亡してしまった。エヴァの葬儀が行われることとなり、ウォルターの父親が到着する。それは、グレタの元愛人である医師ハーバートだった。墓地でグレタを見かけたハーバートは、思わず彼女の後を追いかけるのだったが…?

およそ30年間のキャリアで200本近くの低予算映画やアダルトビデオを手掛け、『猟奇変態地獄』('77)や『ビヨンド・ザ・ダークネス/嗜肉の愛』('78)、『猟奇!喰人鬼の島』('80)、『カリギュラ2』('82)など、本人が「純粋に金儲けのためだけに作った」と豪語するクズ同然の迷作C級映画を世に送り出したジョー・ダマート監督。その彼が唯一、本名のアリスティド・マッサチェージ名義で発表した作品が、当時売れっ子だったスウェーデン人女優エヴァ・オーリンを主演に迎えたゴシック・ホラー『欲情の血族』である。

基本的なストーリーは至極単純。20世紀初頭の中央ヨーロッパを舞台に、非業の死を遂げたうら若き美女グレタが、古代アステカの呪術を学んだ兄フランツによって死霊として蘇り、自分を捨てた愛人ハーバートやその関係者に復讐を果たしていくというお話だ。ただし、ジョー・ダマート作品の御多分に漏れず、脚本の出来はかなりいい加減だ。明らかに辻褄の合わない設定、説明不足で意味の分からない展開が盛りだくさん。そもそも、死霊として蘇ったグレタの位置づけも曖昧で、幽霊なのかゾンビなのか最後までいまいちハッキリとしない。都合よく両者の美味しいところ取りをしたという印象。なので、もはや何でもありみたいな感じになってしまう。これはちょっと頂けない。

もともとマッサチェージが自身の書いた走り書きメモを基に、撮影監督時代からの友人ロマーノ・スカンダリアートと手分けして脚本を執筆し、本作で美術と衣装を担当するクラウディオ・ベルナベイがタイプで清書してまとめたという。さらに、撮影を進めながら次々と思いつきで修正や書き足しを行ったらしく、おかげで結果的に行き当たりばったりな部分が目立つことになってしまったのだ。まあ、イタリアの低予算映画を見慣れたコアなマニアであれば、はなからジョー・ダマート作品に真っ当な脚本など期待していないとは思うのだが(^^;

その一方で、映像の見栄えは意外にも上出来だ。マリオ・バーヴァを例に挙げたら褒めすぎかもしれないが、しかしミステリアスでエレガントな香しいゴシック・ムードは、少なくともリカルド・フレーダやアントニオ・マルゲリティ辺りのレベルには十分到達しており、とてもこれがあのジョー・ダマートの監督作とは思えない。得意の手持ちカメラによる移動撮影に加え、スローモーションやソフト・フォーカス、ワイド・アングルにレンズフレアなど、ここぞとばかりに様々な撮影テクニックを駆使しており、そうとう気合の入った作品だったことが伺える。シェリダン・レ・ファニュの『カーミラ』や、エドガー・アラン・ポーの『黒猫』に『赤死病の仮面』など、古典的な怪奇幻想文学の要素を随所に取り込んでいるのも効果的だ。

もちろん、ダマート作品の醍醐味である過激なエログロ演出もたっぷり用意されている。中でも見どころは、あの『ゾンゲリア』('81)を先駆けた眼球ぶっ刺しシーン。エヴァ・オーリンの青く澄んだ瞳に針が貫通する様子は、ダミーヘッドの完成度が高いこともあり、なかなか衝撃的である。他にも、カミソリで顔面をバッサリ切る、人間の体をドアに釘で打ち付ける、猫に顔をズタズタにされて眼球がこぼれ落ちるなどの血みどろ描写を楽しませてくれる。エヴァ・オーリンの入浴ヌードなどのサービスショットも見どころ。見世物小屋的な下世話さもちゃんと忘れていない。

そのエヴァ・オーリンだが、『キャンディ』('68)でセンセーションを巻き起こしたロリータ美少女も、本作の撮影当時は22歳で、すでに大人の雰囲気を醸し出している。なので、さすがに『キャンディ」の頃の初々しさは影をひそめつつあるものの、やはり相変わらず天使のように美しい。このおよそ1年後に結婚・引退してしまったことは惜しまれる。マッド・ドクターのスタージェス医師を演じる怪優クラウス・キンスキーは、クレジット上だと主演扱いであるものの、実際の出番はほんのちょっとだけ。イタリアン・ホラーやマカロニ西部劇で活躍したジャコモ・ロッシ・スチュアートも、終盤になってようやく登場したと思ったら、ものの10分くらいで殺されてしまう。なお、グレタの兄フランツ役を演じているルチアーノ・ロッシは、ジャッロ映画やマフィア映画のサイコパス役でお馴染みだが、晩年は精神病を患ってホームレスになってしまったそうだ。

そんなこんなで、いろいろと欠点はあるものの、ジョー・ダマート作品としてはすこぶる出来の良い作品。しかも、たったの3週間弱(一部に8日間という説もある)で撮り終えたというのだから立派なもんだ。監督自身も完成度には満足していたらしく、それまで撮影監督としてしか使っていなかった本名を、初めて監督名義に使用したのも、その自信の表れだったのだそうだ。撮影が終了した直後には、「これからはちゃんとした映画も撮りたい」「みんなに才能を認めてもらいたい」とも語っていたという。しかし、興行成績は期待していたほど振るわず、以降はお金のためと割り切ったゲテモノ路線に専念し、監督として本名を使うことも2度となかった。

なお、日本ではVHS時代にビデオレンタルで発売されたきり。アメリカとイギリスで'18年に発売されたArrow Films社のブルーレイは、35ミリのカメラネガフィルムから2K解像度でテレシネされ、レストア作業が施されている。全体的にフィルムグレインは濃いめだが、画質そのものは極めてクリアかつ鮮明だ。音声は英語版とイタリア語版を収録しており、選択した言語によってオープニングとエンディングのクレジット表記も英語とイタリア語のどちらかで再生される。特典映像の目玉は、なんといってもエヴァ・オーリンの最新インタビューであろう。'90年代に1度だけカムバックしたことはあるが、カメラの前に立つのは恐らくそれ以来のこと。極めて貴重だ。一瞬「え?誰!?」と思ってしまったくらい、すっかり別人のようなお婆さんになってしまったものの、上品で落ち着いたインテリジェントな雰囲気は良い年齢の重ね方をしている印象。綺麗な老婦人といった趣きだ。40分以上に渡るロング・インタビューで、自身の生い立ちからキャリアの歩み、そして全出演作の想い出をたっぷりと語っている。ファンは必見だ。



評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85;1)/1080p/音声:1.0ch リニアPCM/言語:英語・イタリア語/字幕:英語/地域コード:A/時間:88分/発売元:Arrow Films
特典:ホラー映画評論家ティム・ルーカスによる音声解説/ジョー・ダマート監督インタビュー('99年制作・約6分)/女優エヴァ・オーリンのインタビュー('18年制作・約43分)/映画評論家キャット・エリンジャーによるビデオエッセイ('18年制作・約21分)/オリジナル劇場予告編/スチル・ギャラリー



by nakachan1045 | 2019-01-08 01:38 | 映画 | Comments(0)

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