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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「二つの顔の貴婦人」 The Wicked Lady (1983)

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監督:マイケル・ウィナー
製作:メナハム・ゴーラン
   ヨーラム・グローバス
原作:マグダレン・キング=ホール
脚本:レスリー・アーリス
   マイケル・ウィナー
台詞:ゴードン・グレノン
   エイミー・スチュアート
撮影:ジャック・カーディフ
衣装:ジョン・ブルームフィールド
美術:ジョン・ブリザード
音楽:トニー・バンクス
出演:フェイ・ダナウェイ
   アラン・ベイツ
   ジョン・ギールグッド
   デンホルム・エリオット
   プルネラ・スケイルス
   オリヴァー・トビアス
   グリニス・バーバー
   ジョーン・ヒックソン
   マリーナ・サーティス
イギリス映画/99分/カラー作品




<あらすじ>
17世紀中頃のイングランド。付近一帯で最も裕福な領主スケルトン卿(デンホルム・エリオット)と婚約した令嬢キャロライン(グリニス・バーバー)は、間近に控えた挙式に親友バーバラ(フェイ・ダナウェイ)を招く。ところが、バーバラは自分の美貌を武器にしてスケルトン卿を誘惑。親友の裏切りなど想像も及ばないキャロラインは、バーバラとスケルトン卿の仲を知って潔く身を引くことにする。愛する2人の幸せを願って。
しかし、派手好きで遊び好きのバーバラは、平凡で退屈な田舎生活にすぐ飽きてしまう。金持ちと結婚すれば毎日が贅沢三昧、と思っていたら大間違いだったのだ。ある晩、バーバラと犬猿の仲である義理の姉ヘンリエッタ(プルネラ・スケイルス)が屋敷を訪れる。カード賭博でヘンリエッタに負けたバーバラは、母親の形見である大切なブローチを現金の代わりに取られてしまう。
そこで彼女は、近ごろ世間を騒がせている神出鬼没の追いはぎ、ジャクソンのことを思い出す。屋敷の秘密トンネルを抜け、男装の覆面姿で拳銃を片手にヘンリエッタの馬車を待ち伏せするバーバラ。追いはぎジャクソンを名乗った彼女は、憎きヘンリエッタの身ぐるみを剥いで、まんまとブローチを取り戻すのだった。
この一件で、犯罪のスリルと快感を覚えてしまったバーバラは、毎晩のように刺激を求めて略奪行為を繰り返す。するとある晩、本物のジャクソン(アラン・ベイツ)が彼女の前に現れる。その野性味あふれる豪快な男らしさに夢中となるバーバラ。一方、自分のなりすましが女性だと知って驚いたジャクソンも、彼女の美貌と根性に惚れ込んでいく。以来、男女の関係になった2人は、コンビで略奪行為を続けるようになった。
しかし、より強い刺激を求めたバーバラが、金塊輸送の馬車を狙ったことから歯車が狂い始める。誤って護衛兵を射殺してしまった彼女は、慌てて逃げる際にハンカチーフを落としてしまったのだ。犯行現場でハンカチーフを見かけ、バーバラの犯行だと気付いた真面目な執事ホガース(ジョン・ギールグッド)は、口外しない代わりとして罪を悔い改めるよう彼女に迫る。2度と略奪行為をしないと誓ったバーバラだったが、秘かにホガースの飲み物に毒を盛って殺してしまう。
これで邪魔者はいなくなった。喜び勇んでジャクソンのもとへ駆けつけたバーバラは、見知らぬ若い女(マリーナ・サーティス)と浮気している彼を見つけて激怒。すぐさま治安当局に密告し、ジャクソンはあえなく逮捕されてしまう。そんな折、久々に再会したキャロラインの婚約者キット(オリヴァー・トビアス)が、かつて一目惚れした貴公子だと知ったバーバラは、今度は彼を自分のものにしようと狙うのだったが…。

'70年代にチャールズ・ブロンソンとのコンビで『狼よさらば』('74)などのヒット作を連発し、ハリウッドきっての売れっ子となった英国人監督マイケル・ウィナー。そんな彼の輝かしいキャリアに大きなミソをつけ、B級映画監督へと転落するきっかけとなった作品が、このキャノン印のエログロ歴史活劇『二つの顔の貴婦人』('83)である。

舞台は17世紀半ばのイングランド。欲しいものはどんな手段を使ってでも手に入れ、飽くなき欲望と本能のままに生きる邪悪な貴婦人バーバラは、親友キャロラインの裕福な婚約者を横取りしたばかりか、刺激の少ない田舎暮らしの退屈しのぎとして、追いはぎという犯罪行為にまで手を染める。当時は上流階級の馬車を襲って金銀財宝を奪う、Highwaymanなる追いはぎが一種の義賊として英国庶民に持て囃された時代。バーバラは覆面の男装姿に身を包み、名うての追いはぎジャクソンに成りすまして略奪行為を重ね、やがてジャクソン本人とも深い仲となり、その悪行をどんどんとエスカレートさせていく。

実は、このバーバラにはモデルとなった歴史上の人物がいる。それが、イングランド東部に位置するハートフォードシャーの領主で、ヘンリー8世やエドワード6世とも近しい関係にあった大貴族フェラーズ家の女相続人キャサリンだ。彼女が実は追いはぎだったというのは、あくまでも事実無根の憶測に過ぎないのだが、イギリス庶民の間では有名な伝説として長いこと語り継がれ、女流作家マグダレン・キング=ホールの小説『Life and Death of the Wicked Lady Skelton』の元ネタとなった。その小説を最初に映画化したのが、レスリー・アーリス監督・脚本の古典的英国映画『妖婦』('45)。本作『二つの顔の貴婦人』は2度目の映画化に当たる。

その『妖婦』を少年時代に見て夢中になったというウィナー監督。ブロンソンと組んだ『狼よさらば』シリーズ第2弾『ロサンゼルス』('82)が、予想を遥かに上回る興行収入を稼ぎ出したことから、制作元キャノン・フィルムより長年の夢だった『妖婦』リメイク企画のゴーサインを得たというわけだ。脚本の執筆にはオリジナル版のレスリー・アーリスを起用。そのため、基本的なストーリーの流れは『妖婦』とほとんど一緒で、セリフや画面構図までソックリなシーンも少なくない。そこはやはり、オリジナルへ対するリスペクトも含まれているのだろう。

ただし、'45年版と大きく違うのは赤裸々なセックスとバイオレンスの描写。ここが賛否の分かれ目でもあると言えよう。実際、公開当時も「下品だ」「不愉快だ」という批判の声が強かった。製作費800万ドルに対して興行収入70万ドル強という大惨敗を喫した理由もそこにある。舞台となる村のあちこちで、木から吊り下げられた犯罪者の腐乱死体。その傍らで、開けっ広げな庶民たちは昼間からセックスのし放題である。それはまさしく『カンタベリー物語』の世界そのもの。ある意味、中世の生々しい英国社会をリアルに描いているとも言える。もしかすると、監督はケン・ラッセルやパゾリーニのような解釈で古典の翻案を試みたのかもしれない。

とはいえ、どう転んだってマイケル・ウィナーはケン・ラッセルでもパゾリーニでもない。もともとオリジナル版『妖婦』自体が決して高尚な芸術作品などではなく、むしろゲインズボロー・メロドラマと称される大衆向け通俗映画のひとつなのだが、さらに露骨で下世話なキワモノ路線へと走ったリメイク版は、結果的にクラシカルな剣劇アクションの装いをまとった純然たるエクスプロイテーション映画となった。それが本作の弱点であり、しかし同時に最大の魅力でもある。要するに、このカルトな胡散臭さがたまらなくいいんですよ。

それに拍車をかけているのが主演女優フェイ・ダナウェイである。前作『愛と哀しみの伝説』('81)で往年の大女優ジョーン・クロフォードの狂気を大袈裟な顔芸(?)でエキセントリックに演じ、良識ある映画ファンからはラジー賞のワースト主演女優賞に輝くほどの失笑を買う一方で、カルトやキッチュをこよなく愛する好事家の一部映画ファンからは喝采を浴びたフェイ・ダナウェイ。本作の悪女バーバラ役でも、その突き抜けたやり過ぎ感はバリッバリに健在だ。

もうね、初登場シーンからして顔に「私はムチャクチャ悪い女です」「いつも邪悪なことしか考えていません」って書いてあるんだもんね(笑)。目をカッと見開いてニタッと笑う表情の作り方なんか、ほとんどギャグの領域。これみよがしにコテコテな悪女演技は、とても天下のオスカー女優とは思えませぬ。続く『スーパーガール』('84)の悪役でもボロクソに言われ、ハリウッドのメインストリームから完全つま弾きにされることになるわけだけど、まあ、それも仕方あるまい。だって本当に酷いんだもん。でも、実はそれこそが本作の見どころでもある。このトゥーマッチ感を楽しめるか否かで本作の評価も決まるだろう。ええ、もちろん私は大好物ですとも。

そんな本作の最大の見せ場が、女同士のキャットファイトならぬ鞭打ちファイトシーン。ヒロインのバーバラと追いはぎジャクソンの愛人が、女の意地をかけてお互いに鞭を振るって戦うのだけど、ジャクソンの愛人役を演じる『新スタートレック』のマリーナ・サーティスが無駄におっぱいポロリするなど、本作の根本的な見世物精神が見事(?)なくらい端的に表れてると言えよう。

無駄と言えば、脇を固めるキャストも無駄に豪華なんだよね。名うての追いはぎジャクソンを演じるのはブリティッシュ・ニューシネマの雄アラン・ベイツ。バーバラに毒殺される執事ホガースが英国演劇界の重鎮サー・ジョン・ギールグッドで、バーバラの色香に毒されるスケルトン卿がデンホルム・エリオット、その姉ヘンリエッタに『ハワーズ・エンド』('92)のプルネラ・スケイルス、色男キット役に『さらば美しき人』('71)のオリヴァー・トビアスという布陣。キャロライン役のグリニス・バーバも、当時のイギリスでは映画にテレビに引っ張りだこだった。また、テレビ『ミス・マープル』シリーズで有名なジョーン・ヒックソンも、スケルトン卿のおば役で顔を出している。

そうそう、『黒水仙』('47)でアカデミー賞に輝く名カメラマン、ジャック・カーディフが撮影を担当していることも忘れてはならないだろう。また、ロック・バンド、ジェネシスのキーボード奏者トニー・バンクスが、バロック調の華麗なる音楽スコアを手掛けているのも要注目。そのほか、衣装デザインも『コナン・ザ・グレート』('82)や『ロビン・フッド』('91)のジョン・ブルームフィールドだし、美術デザインも『ディア・ハンター』('78)や『ニジンスキー』('80)のジョン・ブリザードだしと、スタッフの顔ぶれも無駄に豪華だったりします(笑)。



評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:99分/発売元:Kino Lorber/Sorpion Relasing/20th Century Fox
特典:オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2019-01-15 07:39 | 映画 | Comments(0)

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