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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「パリの恋人」 Funny Face (1957)

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監督:スタンリー・ドーネン
製作:ロジャー・イーデンス
脚本:レオナード・ガーシェ
撮影:レイ・ジューン
視覚コンサルタント:リチャード・アヴェドン
協力:ハーパース・バザー
美術:ハル・ペレイラ
   ジョージ・W・デイヴィス
衣装:イーディス・ヘッド
   ユベール・ド・ジヴァンシー
振付:ユージーン・ローリング
   フレッド・アステア
音楽:ジョージ・ガーシュウィン
   アイラ・ガーシュウィン
出演:オードリー・ヘプバーン
   フレッド・アステア
   ケイ・トンプソン
   ミシェル・オークレール
   ロバート・フレミング
   ドヴィマ
   スージー・パーカー
   サニー・ハートネット
   ジャン・デル・ヴァル
   ヴァージニア・ギブソン
   スー・イングランド
   ルタ・リー
   アレックス・ジェリー
   イフィジェニー・カスティリオーニ
アメリカ映画/105分/カラー作品




<あらすじ>
世界的な超一流ファッション雑誌「クオリティ」の編集部では、辣腕編集長マギー・プレスコット(ケイ・トンプソン)が自ら最新トレンドカラーとしてピンクを選び、他誌から引き抜いた有名なカメラマン、ディック・アヴェリー(フレッド・アステア)と共に、最新号のグラビア写真のコンセプトに知恵を絞る。キーワードは「美しさ」と「知性」。そこで彼らは、ファッションとはおよそ似つかわしくない場所、堅苦しい雰囲気の本屋で写真を撮ることを思いつく。
すぐさまニューヨークの街へ繰り出した撮影隊は、グリニッジ・ヴィレッジでそれらしい書店を発見し、ずかずかと押しかけて勝手に撮影を始める。ビックリしたのは店番を務める哲学者志望の女性ジョー(オードリー・ヘプバーン)。店内を滅茶滅茶にされたうえ、無理やりモデルの真似事までさせられ、すっかり呆れ返るのだった。そんな彼女を少々気の毒に思ったディックは、撮影終了後に後片付けを手伝おうとするが、ジョーはその好意に感謝しつつもやんわりと断る。
出版社へ戻って写真を現像したディックは、そこに映ったジョーの顔立ちにひらめくものがあり、彼女を最新号のグラビアモデルに使おうとマギーに提案する。半信半疑のマギーだったが、編集部へ呼び寄せる口実として注文した本を届けに来たジョーを改めて見て、今までのモデルにはない個性と知性があると納得。彼女を新人モデルとして売り出すことにする。しかし、ファッションに全く興味のないジョーは猛反発。社内を逃げ回った末に、ディックの現像室に駆け込む。
そもそも自分にはモデルなんて向いていないというジョーを説得するディック。グラビアの撮影でパリへ行けると知った彼女は、合間の自由時間に憧れのパリを散策できる、もしかしたら尊敬する哲学者フロストル教授(ミシェル・オークレール)にも会えるかもしれないと考え、一転してモデルの仕事を引き受けることにした。
かくして、花の都パリへとやって来たジョーとディック、そしてマギー。夜更かしをして試着に送れたジョーだったが、人気デザイナー、ポール・デュヴァル(ロバート・フレミング)のドレスに身を包んだ彼女を見て、誰もがうっとりとする。パリ市内の各地名所で行われたグラビア撮影も順調で、ジョーのファッションモデルぶりも板についてくる。なによりも、仕事を通じてジョーとディックはお互いへの気持ちを確かめ合うようになった。
そんなある晩、近くのカフェでフロストル教授の講演会があると知ったジョーは、出演するイベントのことも忘れて講演会に参加する。探しに行ったディックは、若くてハンサムなフロストル教授と夢中になって話をしているジョーを見つけ、ついつい嫉妬して教授に失礼な態度を取った挙句、無理やりイベント会場へジョーを連れていく。これが原因で2人は大げんかを繰り広げ、イベントは台無しになってしまった。すっかりへそを曲げたジョーを、フロストル教授の自宅から連れ戻そうとするディックとマギーだったが…。

今年で生誕90周年を迎えた「銀幕の妖精」オードリー・ヘプバーン。息子ルカ・ドッティ氏が脚本に携わるテレビの伝記ドラマ・シリーズの製作も先ごろ発表されたが、その世界的な人気は死後26年を経た今もなお相変わらず根強い。フェミニンでありながらも性の生々しさを感じさせないユニセックスなイメージ、流行に左右されることのないシンプルでエレガントなファッション、そして本人の人柄を映し出したような感受性豊かで嘘偽りのない瑞々しい演技。古今東西・老若男女を問わず愛されるエバーグリーンな魅力に加えて、ウィリアム・ワイラーやスタンリー・ドーネン、ビリー・ワイルダーといった名だたる巨匠たちによる優れた作品に恵まれたことも幸いだったと言えるだろう。

オスカーに輝く出世作『ローマの休日』('53)を筆頭に、『麗しのサブリナ』('54)や『昼下がりの情事』('57)、『ティファニーで朝食を』('61)、『シャレード』('63)、『マイ・フェア・レディ』('64)などなど、決して多くはない出演作の大半が今なお映画ファンに愛される名作ばかりだ。それだけ本人が作品を厳選していたのだろうし、なにより彼女自身が巨匠たちを惹きつけインスピレーションを与える存在だったのだろう。その中でも特に、『ティファニーで朝食を』や『シャレード』と並んで筆者が愛してやまない作品が、このカラフルでファッショナブルなミュージカル映画『パリの恋人』である。

オードリーが演じるのは、グリニッジ・ヴィレッジのお堅い古本屋で働く哲学者志望の意識高い系女子ジョー。お洒落よりも読書、外見よりも中身、恋愛よりも勉強を重んじる少々頭でっかちな彼女が、ひょんなことから超一流ファッション誌のモデルに起用され、憧れの都パリでときめく恋の花を咲かせ、やがて洗練された大人の女性へと成長する。なんともたわいないシンデレラ・ストーリーではあるし、インテリを小バカにしたところも鼻につくし、ご都合主義も甚だしい展開が目立つことも否めないが、しかしそんな突っ込みどころ満載の脚本を補って余りあるのが、高級ファッション雑誌のグラビアがそのまま動き出したかのようなスタイリッシュでハイセンスな演出だ。

ヴィジュアル・コンサルタントを務めたのは、当時ファッション業界で時の人だった写真家リチャード・アヴェドン。さらに世界的なファッション雑誌「ハーパース・バザー」が全面協力し、ウルトラポップでハイパーモダンなビジュアル・イメージを作り上げている。中でも、アヴェドンのミューズだったスージー・パーカーやドヴィマなど当時の超有名スーパーモデルを散りばめた冒頭のミュージカル・ナンバー「Think Pink!」や、ジヴァンシーのドレスに身を包んだオードリーが様々な表情を見せるパリのグラビア撮影シーンは本作の白眉。思わずうっとりと見惚れてしまう。

パリの薄暗いカフェでオードリーが披露する、アバンギャルド風なモダンダンスもむっちゃお洒落でキュート!まあ、確かに『恋愛準決勝戦』('51)や『雨に唄えば』('52)などMGMミュージカルの傑作を撮ったスタンリー・ドーネンにしては、全体的にミュージカル演出のダイナミズムや技巧の物足りなさは認めざるを得ないが、しかし時代に色褪せないフレンチ・モードとハリウッド・ミュージカルの融合には、そのほかのミュージカル映画とは明らかに一線を画した魅力がある。さながら、長尺版のMTVといった感じだ。そう考えると、後にホイットニー・ヒューストンやビヨンセのプロモクリップで本作がコピーされたのも納得であろう。

また、テクニカラーの威力を思う存分発揮した鮮やかな色彩設計も素晴らしい。撮影監督のレイ・ジューンは圧倒的にモノクロ映画の仕事が多かったカメラマンだが、カラフルな配色のセンスは実に見事だ。『7年目の浮気』('55)のジョージ・W・デイヴィスと『ティファニーで朝食を』のハル・ペレイラによる、洗練の極みとも言うべき美術デザインがまたテクニカラーに映える。古き良きパリのロケーションもノスタルジックで美しい。なんとも贅沢な映画である。

リチャード・アヴェドンをモデルにした写真家ディックを演じているのは、当時56歳だった「ミュージカル映画の神様」フレッド・アステア。さすがに27歳のオードリーの相手役として年を取り過ぎている気がしないでもないが、まあ、当時のハリウッド映画では親子ほど年の離れた男女カップルは珍しくないので、仕方がないと言えば仕方がないだろう。『昼下がりの情事』のゲイリー・クーパーだって56歳だったしね。男優はいつまでも二枚目ヒーロー役を出来るけど、女優はどんどん世代交代していく。そんな時代だったわけです。

それはさておき、相変わらず安定感抜群のミュージカルシーンを披露するアステアだが、逆にいうと強く印象に残るようなパフォーマンスとは言い難い。あくまでもオードリーのサポートに回っているという感じだ。むしろ本作で目を引くのは、その強烈な個性で前半のストーリーをグイグイと引っ張る編集長マギー役のケイ・トンプソンだろう。MGMミュージカル映画のボーカル・アレンジャーとして辣腕を振るい、ナイトクラブの女王として全米のステージに立ち、世界中の少女に愛された絵本「エロイーズ」シリーズの作家としても知られるマルチな才女。大役を演じた映画は本作くらしかないものの、その堂々たる歌とダンスはアステアにも全く引けを取らない。実にカッコいいオバサマである。ちなみに、本作でイーディス・ヘッドが用意したコートを気に入らなかった彼女は、自腹でジバンシーのコートを買って着用したそうだ。

なお、日本やヨーロッパでは製作元のパラマウントから発売されているブルーレイだが、なぜかアメリカ本国ではワーナーからのリリース。'14年に出た最初のバージョンは、一見したところピッカピカの超高画質だったのだが、大画面モニターやプロジェクターで再生すると粗が目立つという問題が発生し、'17年に本編をリマスターした新バージョンが発売された。どちらもジャケット裏のコピーライト表記が'14年になっているので紛らわしいが、表ジャケットのタイトルロゴで両者の違いを判別できる。「FUNNY FACE」のAがエッフェル塔に重なっているのが'14年版、ギリギリ重なっていないのが'17年版。このアメリカ盤ブルーレイのみ特典映像が収録されている(日本盤BDは特典なし)ので、ファンならば是非手に入れておきたいところだ。

評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)※'17年バージョン
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:5.1ch DTS-HD Master Audo、2.0ch Dolby Digital/言語:英語・フランス語・スペイン語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:ALL/時間:105分/発売元:Warner Home Video
特典:ドキュメンタリー「Kay Thompson: Think Pink!」('09年制作・27分)/ドキュメンタリー「This is Vistavision」('09年制作・約25分)/ドキュメンタリー「Fashion Photographers Exposed」('09年制作・約18分)/ドキュメンタリー「The Fashion Designer and his Muse」('07年制作・約8分)/ドキュメンタリー「Parisian Dreams」('07年制作・約8分)/オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2019-01-24 18:06 | 映画 | Comments(0)

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