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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「Io, Emmanuelle」aka A Man for Emmanuelle (1969)

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監督:チェザーレ・カネヴァーリ
原作:グラツィエラ・ディ・プロスペロ
脚色:チェザーレ・カネヴァーリ
脚本:チェザーレ・カネヴァーリ
   グラツィエラ・ディ・プロスペロ
   ジュゼッペ・マンジョーネ
撮影:クラウディオ・カトッツォ
音楽:ジャンニ・フェリオ
主題歌:ミーナ
出演:エリカ・ブラン
   アドルフォ・チェリ
   パオロ・フェラーリ
   ミラ・サンノネール
   サンドロ・ピッツォケーロ
   リア・ロー=バルベリ
   ベン・サルヴァドール
イタリア映画/93分/カラー作品




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<あらすじ>
大都会ミラノに暮らす若い女性エマニュエル(エリカ・ブラン)。ある日突然、最愛の男性「教授」が姿を消してしまい、途方に暮れた彼女は人生に絶望してしまう。ルームメイトの親友ジネット(ミラ・サンノネール)は反対に恋人との蜜月を楽しんでいた。憂鬱そうな顔をしているエマニュエルに、幸福の絶頂にいるジネットが言う。「さっさと立ち直らないと、ベランダから飛び降りて自殺しちゃうわよ」と。自分でもそんな気がして恐ろしくなったエマニュエルはアパートを出ていく。
街中をさまよい歩いたエマニュエルは、知人のベストセラー作家(サンドロ・ピッツォケーロ)の部屋へたどり着く。以前から自分に好意を寄せる彼に身を投げ出すエマニュエル。しかし、ひとしきり抱いた後は自慢話ばかり続ける作家に苛立ち、書き上げたばかりの原稿に火をつけて部屋を去る。
通りでは学生のデモ隊が警察と衝突を繰り広げている。その混乱に巻き込まれたエマニュエル。行きつけの高級ブティックを訪れた彼女は、経営者の友人ラファエロ(パオロ・フェラーリ)に「いますぐここで抱いて」と懇願する。しかし、すぐに気が変わったエマニュエルは、彼の妻が浮気をしていると告げて店を飛び出し、目の前にいた美しい若者(ベン・サルヴァドール)のバイクに飛び乗って走り去る。
若者の部屋へ上がり込んだエマニュエルだったが、彼は自己愛の強いナルシストだった。「あなたも結局、私の痛みを癒してくれない」。失望した彼女は空港へ向かう。そこで中年男の車に乗り込むものの、彼に妻子があると知って嫌悪感を抱き、肉体を求める男を拒絶してレストランへ向かう。すると、テーブルの向かいの席にレズビアンのアニタ(リア・ロー=バルベリ)が座る。孤独に苛まれるエマニュエルは、レストランのトイレで彼女に身を任せようとするが、しかしやはり無理だった。
新聞社の同僚サンドロ(アドルフォ・チェリ)のもとを訪ねるエマニュエル。怪我をした彼を介抱しているうち、つい情にほだされて寝てしまうものの、それでも彼女の心は満たされない。夜の街をあてどもなく歩くエマニュエルは、偶然すれ違ったジネットから「教授」が交通事故で亡くなったことを知らされる…。
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世界で最初の映画版『エマニエル夫人』と呼ばれる作品だが、しかし厳密に言うとちょっと違う。'59年に初版本が匿名で出版され、その大胆かつ自由な性描写でセンセーションを巻き起こした作家エマニュエル・アルサンの官能小説「エマニュエル」。その反響の大きさから本家がシリーズ化される一方、ヒロインのエマニュエルの名前を借りただけの亜流小説も登場した。そう、本作はエマニュエル・アルサンの書いた本家シリーズ(実際は夫の著作だったらしいが)ではなく、その亜流小説の映画化なのである。
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本作で描かれるエマニュエルは、メンタルに問題を抱えた孤独な若い女性だ。どうやらセラピストにかかっているらしく、その主治医「教授」と長く恋愛関係にある様子。ところが、ある日突然その「教授」が理由も分からぬまま音信不通となってしまう。たちまち極度の不安と鬱に襲われ、自殺願望が頭をもたげるエマニュエル。居ても立ってもいられなくなった彼女は、ミラノの街をさまよいながら次々と男たちに身を任せるものの、誰一人として彼女の孤独と痛みを癒すことはできない。愛情に飢えて心を病んだ暗い面持ちのエマニュエルは、あの『エマニエル夫人』の華麗なヒロイン像とは似ても似つかない。
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当然といえば当然だが、作風もまた大きく異なる。登場人物たちのモノローグを多用した観念的で哲学的な難しいセリフ、手持ちの移動カメラを駆使したヌーヴェルヴァーグ風の実験的な演出、作品全体を包み込むアンニュイな気だるいムード。エロティックな描写もそれなりに含まれているものの、しかしソフトポルノというよりはアバンギャルドなアート映画といった印象だ。
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ただ結論から言うと、ゴダールとポランスキーとルルーシュを混ぜこぜにしたような本作の試みは、とてもじゃないが成功しているとは言えないだろう。難解で意味深なように聞こえるセリフも実はスノッブを気取っているだけで中身は空虚だし、奇をてらってみただけの稚拙なカメラワークは学生映画的な自己満足の域を出ないし、アンニュイな気だるいムードも要するに意味のない退屈で無駄なシーンが多いだけだったりする。
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監督・脚本はエログロ残酷映画『ゲシュタポ卍(ナチ)収容所』('77)で知られるチェザーレ・カネヴァーリ。'60年代半ばからC級クラスのチープなスパイ映画やマカロニ西部劇などを撮っていた人だが、本作ではなにを血迷ったのか畑違いの芸術路線にチャレンジして見事(?)に自爆している。当時のベトナム反戦や社会主義革命の気運に感化されたのだろう、エマニュエルが学生デモ隊と警官隊の衝突に巻き込まれたり、ショーウィンドーに飾られた兵隊人形や戦車の玩具に爆撃や悲鳴のSEを被せてみたり、怯えるエマニュエルがレストランを見回すと客がみんな兵隊服の操り人形に見えたり、新聞記者サンドロに革命闘争の理念を叫ばせてみたりするのはいいのだが、どれも劇中においては何一つとして意味をなしていない。ただの雰囲気作りにしか過ぎないのだ。
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ただし、『荒野の1ドル銀貨』('65)や『ビッグ・ガン』('72)などで有名なジャンニ・フェリオによる、クールでファンキーなフリージャズ風の音楽スコアは文句なしに素晴らしい。当時の彼は、あのカンツォーネの女王ミーナに多数の楽曲を提供しており、後にダリダとアラン・ドロンがフランス語カバーした『あまい囁き』も彼の作品なのだが、本作でもそのミーナが官能的で情熱的なテーマソングを歌って強い印象を残す。やはり当時のイタリアの映画音楽にハズレはない。
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もちろん、'60~'70年代のイタリア産B級娯楽映画に欠かせないセクシー女優エリカ・ブランも美しい。どちらかというと、マカロニ西部劇やジャッロの色添えな役回りの多かった彼女だが、本作は『呪いの館』('66)や『淫虐地獄』('71)と並ぶ数少ない堂々たる主演作の一つである。ただし本人はB級映画ばかりのキャリアに不満を持っていたらしく、'70年代後半には舞台女優へと転身して真っ当な評価を得るようになり、近年は渋い名脇役女優としてプピ・アヴァティ監督やセルジョ・カステリット監督など名匠の作品で活躍している。
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評価(5点満点):★★☆☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:イタリア語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:93分/発売元:TeleVista
特典:フォトギャラリー



by nakachan1045 | 2019-02-10 10:33 | 映画 | Comments(0)

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