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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「コリンヌ・クレリー/濡れたダイヤ」 E tanta paura (1976)

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監督:パオロ・カヴァーラ
製作:ギュイ・ルオンゴ
製作総指揮:エルマンノ・クルティ
      ロドルフォ・プティニャーニ
脚本:ベルナルディーノ・ザッポーニ
   パオロ・カヴァーラ
   エンリコ・オルドイーニ
撮影:フランコ・ディ・ジャコモ
音楽:ダニエレ・パトゥッキ
出演:ミケーレ・プラチド
   コリンヌ・クレリー
   イーライ・ウォラック
   トム・スケリット
   クイント・パルメジャーニ
   エディ・フェイ(エドゥアルド・ファイエタ)
   ジョン・スタイナー
   ジャック・エルリン
   チェチリア・ポリッツィ
   グレタ・ヴァヤン
   サラ・チェッカリーニ(サラ・クレスピ)
   エンリコ・オルドイーニ
イタリア映画/95分/カラー作品




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<あらすじ>
イタリアのミラノで連続殺人事件が発生する。犠牲者はマッティア・グランディとラウラ・ファルコニエリ。どちらも上流階級の富裕層で、死体の近くにはドイツの精神科医ハインリッヒ・ホフマンの書いた有名な絵本「もじゃもじゃペーター」の挿絵が残されていた。
ミラノ警察の担当刑事ロメンツォ(ミケーレ・プラシド)は、彼らが動物愛護団体「ファウナ愛好クラブ」の創設メンバーだったことに気付く。同クラブは4年前にスキャンダル事件を起こして閉鎖に追い込まれていた。というのも、集会に参加した売春婦ローサ(サラ・クレスピ)が急性アルコール中毒で死亡し、動物愛護団体の看板の裏で麻薬や乱交に興じる秘密クラブだったことが明るみになったのだ。
主催者の名前はホフマン(ジョン・スタナー)。今回の連続殺人が4年前のスキャンダル事件と関係していることを確信するロメンツォだったが、そのホフマンは事件発覚後に国外へ逃亡し、脳腫瘍のためアムステルダムで死亡していた。そうこうしているうちに、グランディの殺人に関与していた疑いのある娼婦メニコーニも殺害される。
その頃、「ファウナ愛好クラブ」の会員だった裕福なビジネスマン、スカナヴィーニ(クイント・パルメジャーニ)が、ピエトロ・リッチョ(イーライ・ウォラック)が経営する大手探偵事務所を訪れる。警察が頼りないので独自に犯人を捜して欲しいというのだ。スカナヴィーニ曰く、スキャンダル事件の舞台となったホフマン邸に謎を解く鍵があるという。
一方、同じ高級アパートに住むフランス人モデル、ジャンヌ(コリンヌ・クレリー)と親しくなったロメンツォ刑事は、彼女が「ファウナ愛好クラブ」の会員だったことを知る。警察に情報提供しているリッチョからホフマン邸のことを聞いた彼は、ジャンヌと連れ立って今や廃墟となった屋敷を訪れた。そこでジャンヌは、ホフマンがアフリカから密輸した猛獣をヨーロッパ各地の動物園やサーカスに売り飛ばしていたこと、ローサの死因が遊び半分で猛獣をけしかけられた末の心臓発作だったこと、その死体を引き取ったのがアゴスティーノ(クラウディオ・ズケット)という前科者のヒモだったことを打ち明ける。
連続殺人の犠牲者はさらに増えていく。政治家ビコッツィがテレビのインタビュー中に射殺され、身の危険を感じて国外へ逃げようとしたスカナヴィーニもスイス国境近くで車にひき逃げされた。アゴスティーノの部屋を調べたロメンツォ刑事は、彼が犯人だと思われる証拠を見つけたことから逮捕するものの、その直後に新たな殺人事件が起きる。
捜査に行き詰ったロメンツォ刑事。そこで彼は、4年前にスキャンダル事件を担当したものの、数か月前から行方不明になったデルレ刑事(ジャック・エルリン)に注目し、彼がアパートに残した資料を探っていたところ、ある意外な真相へとたどり着くのだった…。
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グアルティエロ・ヤコペッティ監督の元祖モンド映画『世界残酷物語』('62)の実質的な監督(クレジット上は助監督)と言われ、ヤコペッティをモデルにしたドキュメンタリー映画監督の傍若無人を描いた問題作『野性の眼』('67)でも知られるパオロ・カヴァーラ監督による猟奇犯罪サスペンス、つまりジャッロである。カヴァーラ監督のジャッロといえばジャンカルロ・ジャンニーニ主演の『タランチュラ』('71)が有名だが、本作もその昔はあちこちのレンタルビデオ店に置いてあったもんだ。
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ただしこれ、ジャッロ映画ブームが下火になった'76年に制作されていることもあってか、いわゆるアルジェント系の正統派ジャッロとはちょっと趣きの異なる仕上がりだ。むしろどちらかというと、ジャッロ的な要素の濃厚なユーロクライム・アクションといった印象。ちょうど当時はジャンルの過渡期で、ジャッロに代わってポリツィオテスキと呼ばれる犯罪ドラマの人気が興隆しつつあった。なにしろお互いに親和性の高いジャンルゆえ、マッシモ・ダラマーノ監督の『La polizia chiede aiuto』('74)やマリオ・カイアーノ監督の『...a tutte le auto della polizia』('75)など、両者を融合する試みは少なくなかったのである。
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舞台は大都会ミラノ。富裕層の男女が次々と殺害され、彼らが動物愛護団体を看板に掲げた秘密クラブのメンバーだったことが判明する。しかし犯行の手口も場所もまるでバラバラ。犯人は神出鬼没で、とても単独犯の仕業とは思えない。連続殺人事件の謎を解くカギとなるのは、死体のそばに置かれた絵本『もじゃもじゃペーター』の挿絵、そして4年前に秘密クラブのパーティで起きた若い売春婦の変死事件。捜査を進めるロメンツォ刑事は、やがて世界を股にかけたダイヤ密輸網の存在に気付くこととなる。
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ということで、血生臭い連続殺人事件の謎がさらに謎を呼ぶ前半こそジャッロの趣きだが、ストーリーが進むにつれ事件の背景にある現代社会の腐敗したモラルや刑事司法システムの欠陥へと焦点が移り、やがてフェルナンド・ディ・レオ的な犯罪アクション映画の様相を呈していく。イーライ・ウォラック演じるリッチョが経営する高級探偵事務所が、警察よりも遥かに設備や人材が充実しているというのも、当時の時代遅れなイタリア警察に対する風刺だ。実際に当時のイタリアではそうした探偵事務所が存在し、民間に犯罪捜査を頼るとはいかがなものかという批判が起きたという事情もあったらしい。
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まあ、その辺は確かに興味深いと言えばそうなのかもしれないが、ぶっちゃけジャッロとして見ると物足りなく感じるというか、なんとなく騙された気分になってしまうことは否めないだろう。殺しの描写もだいぶアッサリしているしね。唯一、売春婦のオバチャンを生きたまま焼き殺すシーンだけはちょっとエグイけれど、全体的には猟奇ホラー的な要素はかなり薄い。
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脚本はカヴァーラ監督とエンリコ・オルドイーニが初稿を書き上げ、フェリーニ映画でお馴染みの大御所ベルナルディーノ・ザッポーニがリライトに参加している。オルドイーニと言えば、『Mrレディの私の男を女にして』('87)や『バイ・バイ・ベイビー』('88)などイタリアン・コメディの監督として有名。なので、本作もナポリ生まれの主人公ロメンツォ刑事がイタリア南部ネタの自虐的ジョークをかますなど、ちょいちょいコミカルな要素が紛れ込んでくる。
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大勢の登場人物の絡んだ複雑な犯罪の構図を手堅くまとめた交通整理役は、『サスペリアPART2』('75)で犯罪スリラー(=ジャッロ)の実績があるザッポーニが担ったのだろうか。上流階級のセレブたちの古代ローマ貴族を彷彿とさせる乱痴気ぶりなどは、まあ、フェリーニ的と言えなくもないしね。とりあえず好き嫌いは別として、あえて特定ジャンルの型にはまらない脚本はなかなか巧みだ。
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なお、本作で注目したいのは、そのセレブたちの乱痴気パーティで上映されるエッチなアニメーション。実はこれ、イタリアの有名なアダルト・アニメ作家Gibbaが本作のために制作したオリジナル作品なのだ。唯一の長編作品『Il nano e la strega』('74・英語題King Dick)は残念ながら日本未公開だが、ガブリエル・ラヴィア監督のエロティック・サスペンス『スキャンダラス・鏡の中の背徳』('85)でも彼のアニメが劇中で使用されており、これがまたすこぶる面白いので、機会があれば是非見ていただきたい。
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ダニエレ・パトゥッキによるファンキーなフリージャズ風の音楽スコアもお洒落。パトゥッキは主に『グレートハンティング'84』('83)や『カランバ』('83)などのモンド系ドキュメンタリーを手掛けた人で、さほど知名度のある作曲家ではないのだが、ここでは初期アルジェント作品におけるモリコーネばりのいい仕事をしている。初期アルジェント作品と言えば、本作の撮影監督は『4匹の蠅』('71)を手掛けたフランコ・ディ・ジャコモ。カメラ・オペレーターのジュゼッペ・ランチは、後にタヴィアーニ兄弟やナンニ・モレッティの撮影監督として有名になる。
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主演は後に映画監督としても活躍する名優ミケーレ・プラチドだが、日本人にとってはやはり『O嬢の物語』('75)で一世を風靡した女優コリンヌ・クレリーが最大の売りだろう。ストーリー上の役割はさほど大きくはないものの、とりあえず大胆な濡れ場はしっかりと披露してくれるので良しとしよう。『悦楽の闇』('75)でもプラチドと共演(絡みはなかったけど)した黒人女優メアリー・ルース・リーグも濃厚なベッドシーンに挑戦している。秘密クラブを主宰する怪しげな実業家ホフマン役のジョン・スタイナーは相変わらずといったところか(笑)。
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不思議なのはプラチドの上司役を演じているトム・スケリットだ。ストーリーの後半で存在感を発揮するイーライ・ウォラックに対して、スケリットは完全なる賑やかしというか、なぜわざわざ彼をハリウッドから呼んでキャスティングしたのか首を傾げるような端役。同時期にドゥッチョ・テッサリ監督のコメディ『La madama』('76・日本未公開)にも出ているので、そのついでに引き受けた小遣い稼ぎだったのかもしれない。ちなみに、ウォラックもスケリットもセリフは全て別人による吹き替え。イタリア語版も英語版も同様だ。
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なお、本作は同じメーカーRaro Videoより、イタリア盤とアメリカ盤の2種類のDVDがリリースされているのだが、収録コンテンツに大きな違いがある。イタリア盤は映像マスターが古いうえにレターボックス収録であるのに対し、アメリカ盤はデジタル・リマスター素材をスクイーズ収録している。特典のインタビュー映像や解説コラムデータもアメリカ盤のみの収録だ。ネット購入の際には注意されたし。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:イタリア語・英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:95分/発売元:Raro Vido
特典:脚本家エンリコ・オルドイーニのインタビュー(約13分)/パオロ・カヴァーラ監督の息子ピトロ・カヴァーラのインタビュー(約13分)/俳優ミケーレ・プラチドのインタビュー(約17分)/ファンゴリア編集長クリス・アレクサンダーの解説コラム(PDFデータ)



by nakachan1045 | 2019-02-19 23:43 | 映画 | Comments(0)

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