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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「ドラキュラ血のしたたり」 Twins of Evil (1971)

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監督:ジョン・ハフ
製作:ハリー・ファイン
   マイケル・スタイル
脚本:チューダー・ゲイツ
撮影:ディック・ブッシュ
特殊効果:ジャック・ミルズ
音楽:ハリー・ロビンソン
出演:ピーター・カッシング
   デニス・プライス
   メアリー・コリンソン
   マデレイン・コリンソン
   イソベル・ブラック
   キャスリーン・バイロン
   ダミアン・トーマス
   デヴィッド・ウォーベック
   カーチャ・ワイエス
   ルアン・ピータース
イギリス映画/87分/カラー作品




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<あらすじ>
両親と死に別れた一卵性双生児の姉妹、マリア(メアリー・コリンソン)とフリーダ(マデレイン・コリンソン)は、住み慣れたイタリアのヴェネチアを離れて、中欧ののどかなカルンシュタイン村に暮らす叔父と叔母のもとへ身を寄せる。
叔父グスタフ(ピーター・カッシング)は厳格な清教徒で、狂信者集団「ブラザーフッド」のリーダーとして魔女狩りを行っており、貞淑ではない若い女性に魔女のレッテルを貼っては次々と火あぶりにしていた。その非道ぶりに村の若者アントン(デヴィッド・ウォーベック)は怒りを覚えていたが、ほかの住民はグスタフと「ブラザーフッド」を恐れて口をつぐむばかりだった。
そんなグスタフの天敵が、地元を支配する貴族カルンシュタイン伯爵(ダミアン・トーマス)。酒とセックスに溺れて享楽の限りを尽くす伯爵をグスタフは目の敵にしているが、しかし皇帝と親しく強大な権力と莫大な富を牛耳る彼には、さすがの「ブラザーフッド」も手が出せない。危害を加えようものなら、村人もろとも皆殺しにされかねないからだ。
そんなある晩、趣味で黒ミサを行っていたカルンシュタイン伯爵は、いけにえの儀式の真似ごとでは飽き足らなくなり、本当に殺人を犯してしまう。すると、その流れ出た血によって先祖の女吸血鬼ミルカーラ(カーチャ・ワイエス)が生き返り、伯爵を吸血鬼へと変えてしまう。それ以来、村では次々と若い女性が変死を遂げる。
初めての田舎生活に退屈するマリアとフリーダ。控えめで大人しいマリアに対して自由奔放で勝気なフリーダは、カルンシュタイン城の噂を聞いて強い興味を抱き、夜な夜な家を抜け出すようになる。そんなフリーダを見初めた伯爵は彼女を城へと招き、その血を吸うのだった。なぜなら、悪人は吸血鬼に噛まれても死なず、同じように吸血鬼となるからだ。
かくして、吸血鬼へと生まれ変わったフリーダは村人を襲い始めるのだが、運悪く「ブラザーフッド」に見つかって捕らえられてしまう。自分の姪が吸血鬼と知ってうろたえるグスタフ。しかし、「ブラザーフッド」の掟に従って彼女を火あぶりにすることを決める。ところが、事態を知ったカルンシュタイン伯爵が、秘かにフリーダとマリアを入れ替えていた。その事実に気付いたアントンは、マリアを救うため処刑を中止させようとするのだったが…。
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ハマー・フィルムによる「カルンシュタイン三部作」の最後を飾る作品だ。『フランケンシュタインの逆襲』('57)と『吸血鬼ドラキュラ』('58)の大ヒットを皮切りに、久しく途絶えていたゴシック・ホラー映画のリバイバル・ブームを巻き起こし、ブリティッシュ・ホラーの殿堂として一時代を築き上げたハマー。しかし、アミカスやテイゴンといった競合他社が次々と台頭し、より刺激的な内容のイタリアン・ホラーも市場を拡大。また、時代の流れに伴って大衆の嗜好も変化し、『ローズマリーの赤ちゃん』('68)のように身近でリアルな恐怖を描いたモダン・ホラーが好まれるようになると、ゴシック路線をお家芸とするハマー作品の勢いも急速に衰えていく。
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さらに、'60年代末にもなると欧米先進国での映画検閲が緩和され、映画における性描写や残酷描写が次第に過激となるに従い、かつてはエログロと揶揄されたハマー作品の印象もいつしか古臭いものとなる。そうした状況下で生き残りをかけたハマーは、マンネリ化した作風から脱却するため積極的に若く新しい才能を起用し、時代の風潮にも合わせて大胆なセックスやバイオレンスを作品に盛り込んでいく。その中から生まれたのが「カルンシュタイン三部作」だったのである。
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シェリダン・レ・ファニュの古典的な吸血鬼文学「カーミラ」の世界観をベースにした「カルンシュタイン三部作」。吸血鬼として甦った美しきカルンシュタイン伯爵夫人ミルカーラが、その出自と身分を隠してカーミラと名乗り、うら若き乙女たちを毒牙にかけていく。ハマーはそのレズビアン的なテーマを前面に押し出し、若い女性のヌードをふんだんにフィーチャーすることで、新しい世代の観客層にもアピールしようとしたのだ。
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三部作全ての脚本を手掛けたのは『バーバレラ』('67)のチューダー・ゲイツ。1作目の『ヴァンパイア・ラヴァーズ』('70)は「カーミラ」のほぼ忠実な映画化で、カーミラ役を演じた女優イングリッド・ピットの艶めかしい魅力も手伝って大評判となった。しかし、そのピットが主演のオファーを断った2作目『恐怖の吸血美女』('71)は当時も今もいたく不評で、そのせいなのか続く『ドラキュラ血のしたたり』ではレ・ファニュ作品の要素は最小限に止められ、カルンシュタイン伯爵夫人ミルカーラも僅かしか登場せず、レズビアン的な表現もほとんど見られない。
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物語は「カーミラ」の前日端的な要素を含んでおり、なおかつ清教徒(中欧を舞台にした本作の場合、ユグノーと解釈するのが歴史的に正しいかもしれないが)の集団が登場することから察するに、恐らく時代設定は17世紀後半と考えるのが妥当だろう。主人公は美しき双子の姉妹マリアとフリーダ。顔はそっくりでも性格は正反対。保守的なマリアは控えめで大人しい貞淑な娘だが、自由奔放なフリーダは好奇心旺盛で活発なおてんば娘だ。そんな2人は両親が亡くなったことから、生まれ育った華やかな水の都ヴェネチアから遠く離れた中央ヨーロッパの田舎、カルンシュタイン村へと移り住むことになる。
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姉妹の叔父と叔母が暮らすカルンシュタイン村は、一見したところのどかで平和なのだが、実は狂信的な清教徒集団「ブラザーフッド」による魔女狩りが横行していた。そのリーダーというのが、ほかでもない叔父のグスタフである。厳格なキリスト教徒であるグスタフは、聖書の教えを守らなかったり疑問を抱いたりする人間を許せず、彼らを罰することを生きがいにしているような独善的人物だ。「ブラザーフッド」が標的にするのは、いつまでも独身で結婚しない女、貞操を守ろうとしない女、男の言うことに従順ではない女。要するに、自分たちが気に食わない女性は全て悪魔に魂を売った「魔女」であり、彼女らの汚れた魂を浄化して天国へ送ってあげる善行として、血生臭い魔女狩りを正当化していたのである。
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そんな「ブラザーフッド」の天敵が、地元の領主であるカルンシュタイン伯爵だ。夜な夜な城で酒池肉林の宴を開いては、あらゆる悪徳に溺れているカルンシュタイン伯爵のことを、グスタフをはじめとする「ブラザーフッド」の面々は悪魔の化身として忌み嫌っている。しかし、相手は領主様であるうえに皇帝の寵愛を受ける大貴族。うかつに手を出そうものなら全員まとめて縛り首だ。かたや残酷非道な狂信者、かたや腐敗した悪徳貴族。このまるで対照的な「悪と悪」が拮抗するシチュエーションがなかなか面白い。
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で、実際に悪魔崇拝者であるカルンシュタイン伯爵は、部下に命じて黒ミサごっこを楽しんでいたのだが、そのうち真似事だけでは飽き足らなくなってしまい、本当にいけにえの女性を殺害して悪魔に捧げてしまう。すると、その流れ出た血によって、先祖のカルンシュタイン伯爵夫人ミルカーラが吸血鬼として甦り、彼女に血を吸われた伯爵もまた吸血鬼と化す。ちなみに本作では、吸血鬼の犠牲者が必ずしも吸血鬼になるとは限らない。普通の人間はそのまま体中の血を奪われて息絶え、邪悪な性格の人間だけが吸血鬼として永遠の命を手にする。しかも、吸血鬼は日の光を浴びても平気で、彼らを殺すには首をはねるか火で燃やすしか方法がない。
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こうした少々複雑な状況を背景に、退屈な田舎生活やガチガチに厳しい叔父に反発したフリーダがカルンシュタイン伯爵に魅せられ、自ら進んで血を吸われることになる。もちろん、もともと「悪女」の資質を持っている彼女は当然のごとく吸血鬼へと変貌。何も知らずその変化に心配するマリアをよそに、まるで水を得た魚のように嬉々として村人を襲っていくようになる。この対照的な双子姉妹を、人間の善と悪の象徴として描いていくあたりも本作の大きな特徴だ。
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主演は、当時「プレイボーイ史上初の双子プレイメイト」として注目を集めていた、メアリーとマデレインのコリンソン姉妹。すでに『フランケンシュタイン死美人の復讐』('67)のスーザン・デンバーグや、『恐竜時代』('70)のヴィクトリア・ヴェトリでプレイメイトを起用した実績のあるハマーは、コリンソン姉妹の話題性に当て込んでいたようだ。もともと「Vampire Virgins」というタイトルだった本作は、主人公姉妹に双子という設定はなかったものの、彼女たちがキャスティングされたことで脚本を修正。2人とも演技は全くの素人で、女優になる野心もゼロだったそうだが、恐らくこのチャンスを存分に楽しんでいたのだろう、生き生きとしたナチュラルな芝居には新鮮な魅力がある。ただ、マルタ島出身の彼女たちは英語の訛りが強かったため、セリフは全て英国人の女優が吹き替えたそうだ。
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そんな双子姉妹の叔父グスタフにはハマーの重鎮ピーター・カッシング。珍しく憎まれ役を演じているわけだが、決して根っから悪人というわけではなく、中盤で善良なマリアをフリーダと間違えて火あぶりにしようとしたことにショックを受け、自分がこれまで魔女だと思って処刑してきた女性たちは無実だったのかもしれない…と己の罪深さの気付くこととなる。で、反「ブラザーフッド」の若者アントン率いる村人たちと和解し、ラストは一致団結して吸血鬼退治に乗り出すわけだ。
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そのアントン役にはルチオ・フルチ監督の『ビヨンド』('81)などイタリア映画で活躍したデヴィッド・ウォーベック。双子姉妹の心優しき叔母で、夫グスタフの所業に胸を痛めているケイティ役には、マイケル・パウエルとエメリック・プレスバーガーのコンビが手掛けた名作『黒水仙』('47)で、心を病んでしまう若い尼僧シスター・ルースを演じて絶賛された名女優キャスリーン・バイロンが扮している。
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カルンシュタイン伯爵役はもともとクリストファー・リーにオファーされていたが断られたため、当時まだ無名の若手だったダミアン・トーマスを起用。どうやらハマーは彼を「第二のクリストファー・リー」として売り出すつもりだったらしく、実際リーほどではないにせよ貴族的なカリスマ性と色気を兼ね備えたヴァンパイアを堂々と演じているのだが、本人はタイプキャストされることを危惧してハマー作品への出演はこれ1本きりとなった。その後は『将軍』('80)の宣教師アルヴィト役などテレビ俳優として有名になる。
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なお、ル・ファニュの「カーミラ」と唯一関係性のある女吸血鬼ミルカーラには、同年のハマー作品『ハンズ・オブ・ザ・リッパー』('71)にも出ていたカーチャ・ワイエスが扮しているものの、ワンシーンの登場だけで跡形もなく消えてしまう。とりあえず、ここで甦ったミルカーラが若い女性たちを次々と毒牙にかけ、やがて「カーミラ」の物語へと繋がっていくことになるということなのだろう。そういう意味でオリジン的な要素ではあるのだが、だからどうしたと言えなくもない(笑)。なお、カルンシュタイン伯爵の愛人で、吸血鬼となったフリーダの最初の犠牲者となるゲルタ役を演じているルアン・ピータースは、後に一時期だけ人気ロックバンド「5000 Volts」のリード・ボーカリストを務めたことがある。
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監督は当時イギリスのテレビ界で躍進目覚ましかったジョン・ハフ。ハマーは人気スパイ・シリーズ『おしゃれ(秘)探偵』の演出を評価して、彼に白羽の矢を立てたという。従来のハマー路線からの脱却を試みていた当時のハマー作品群にあって、むしろ王道的とも言うべき正統派ゴシック調の演出は興味深く、それでいて'70年代的なフェミニズムの要素を強く押し出す時代感覚の敏感さ、なおかつ観客が期待するエロ要素も忘れていないバランスの良さが印象的だ。まあ、「カルンシュタイン三部作」なのにレズ要素が少ない(というか殆どない)のは若干片手落ちかもしれないが。これを機にハフ監督は、オカルト映画の佳作『ヘルハウス』('73)を世に送り出し、以降も『呪われた森』('80)や『アメリカン・ゴシック』('88)などホラー映画の名手として活躍することとなる。
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アメリカやヨーロッパでブルーレイ化されている本作だが、やはりおススメはSynapse社からリリースされたアメリカ盤だろう。2Kリマスターの施された本編は画質も音質も良好。100点満点とは言えないものの、過去のDVDに比べると格段にクリアで美しい。しかし、なによりの目玉はジョン・ハフ監督やダミアン・トーマスらも出演する、1時間24分にも及ぶ長尺のメイキング・ドキュメンタリーであろう。「カルンシュタイン三部作」に対する考察も深く掘り下げられており、ハマー・ホラー・ファンならば必見だ。
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評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ&DVD情報
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(1.66:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:87分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(1.66:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:英語/地域コード:1/時間:87分
発売元:Dynapse Films
特典:メイキング・ドキュメンタリー「The Flesh and the Fury: X-Posing Twins of Evil」('12年制作・約84分)/ドキュメンタリー「The Props that Hammer Built: The Kinsey Collection」('12年制作・約23分)/スチル・ギャラリー/未公開シーン/音楽スコア&SE再生機能/オリジナル劇場予告編(2種類)/テレビスポット集(2種類)



by nakachan1045 | 2019-03-02 14:19 | 映画 | Comments(0)

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