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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「ブラッディ・マリー/邪悪なカクテル」 Mary, Mary, Bloody Mary (1975)

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監督:フアン・ロペス・モクテズマ
製作:ロバート・ヤミン
   ヘンリー・ボーリンジャー
製作総指揮:ハイメ・ヒメネス・ポンズ
原案:ドン・リコ
   ドン・ヘンダーソン
脚本:マルコム・マーモアスタイン
撮影:ミゲル・ガルソン
絵画:ローサ・ローゼンバーグ
音楽:トム・バーラー
出演:クリスティナ・フェラーレ
   デヴィッド・ヤング
   エレナ・ロホ
   アーサー・ハンゼル
   エンリケ・ルセーロ
   スサーナ・カミーニ
   ホセ・アンヘル・エスピノーサ
特別出演:ジョン・キャラダイン
メキシコ・アメリカ合作/101分/カラー作品




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<あらすじ>
メキシコへ移住したアメリカ人女性メアリー(クリスティナ・フェラーレ)は、その独創的な作風が世間から注目されているシュールレアリズム画家だ。美しく聡明でチャーミング。誰からも好かれているメアリーだが、実は絶対に知られてはならない秘密を抱えている。人間を殺してその血を吸わねば生きていけない体質の持ち主だったのだ。
ある雨の晩、ドライブ中に車が故障して困った彼女は、助けを求めて迷い込んだ空き家で、雨宿りしていた一人旅中のアメリカ人青年ベン(デヴィッド・ヤング)と知り合う。真面目で親切な彼に好感を持ったメアリーは、殺して血を吸うことをためらう。意気投合してドライブを続けた2人は急速に深い仲となっていくのだが、その間にメアリーが行きずりの人々を殺害していることなど、もちろんデヴィッドは想像すらしていなかった。
その頃、メキシコ警察のポンス警部(エンリケ・ルセーロ)は、不可解な連続殺人事件に頭を抱え、FBIの捜査官コスグローヴ(アーサー・ハンセル)に捜査協力を仰ぐ。犠牲者はいずれも睡眠薬を飲まされたうえで、鋭利な刃物で喉元を突き刺されており、奇妙なことに全身から大量の血液が抜き取られていた。それはさながら、吸血鬼の仕業のようだった。
自宅へ戻ったメアリーはベンと一緒に暮らすことになる。しかし、彼女にはグレタ(エレナ・ロホ)というレズビアンの愛人がいた。あからさまに嫉妬をするグレタに手を焼いたメアリーは、大盛況に終わった新作展示会を途中で抜け出し、グレタを殺害して何食わぬ顔で警察に通報する。ポンス警部とコスグローヴ捜査官は、流れ者のベンに疑惑の目を向ける。
一方、メアリーの知らぬところでもう一人の吸血殺人鬼が暗躍していた。新聞報道で事件を知った彼女は首を傾げる。私以外にも同じような体質の人間がいるのだろうか?やがて謎の吸血殺人鬼はメアリーの周辺に出没するようになり、カーニバルの雑踏の中で彼女は命を狙われる。恐怖に怯えるメアリー。実は、その謎の吸血殺人鬼こそ、彼女の行方不明になった父親(ジョン・キャラダイン)だったのだ…。
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メキシコが生んだカルト映画の奇才フアン・ロペス・モクテズマ。アレハンドロ・ホドロフスキーやフェルナンド・アラバルの前衛芸術集団ル・パニックの一員として、『ファンドとリス』('67)や『エル・トポ』('70)のプロデューサーを務めた彼は、自らもシュールリアリズム的な実験映画の監督として、コアな映画マニアの間で高い評価を受けている。
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中でも特に有名なのは、エドガー・アラン・ポーの名作文学をインディへニスモ的な世界観で再構築したアバンギャルドな怪奇幻想譚『ター博士の拷問地下牢』('72)と、抑圧された修道院の中で悪魔崇拝に傾倒していく若い尼僧の狂気を詩情豊かなアナーキズムで描いたオカルト映画『鮮血の女修道院/愛と情念の呪われた祭壇』('77)の2本。その間にアメリカとの合作で発表した異色のヴァンパイア映画が、この『ブラッディ・マリー/邪悪なカクテル』だ。
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主人公はロサンゼルスからメキシコへ移住したアメリカ人女性メアリー。誰が見てたって清楚で知的な美人の彼女は、独創的な世界観を持つシュールリアリズム画家として注目されているが、その裏で周囲に絶対知られてはならない秘密を抱えていた。というのも実は彼女、人間を殺してその血を吸わねば生きていけない吸血鬼だったのだ。
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ただし、いわゆるドラキュラ的な吸血鬼とはちょっとばかり違う。端的に言えば、人間の血を吸いたいという強烈な衝動を抑えられない体質の持ち主。それ以外はいたって普通の健康な女性だ。ここで「おや…?」と気付いたホラー映画ファンも多いに違いない。そう、本作における吸血鬼の設定は、この2年後に作られたジョージ・A・ロメロ監督の名作『マーティン/呪われた吸血少年』('77)とソックリなのである。
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狙った行きずりの男女に睡眠薬を飲ませ、そのすきに髪を留めるバレッタの中に隠したペティナイフで相手の喉元を突き刺し、傷口から溢れ出る新鮮な血液を飲み尽くすメアリー。本当はこんなことしたくはないが、しかし「血を飲みたい」という強い欲求に抗うこともできない。そんな彼女が善良で心優しい若者ベンと出会って恋に落ちるのだが、彼のことを愛せば愛するほど秘密が重荷になっていく。
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しかも、周辺では自分と同じ吸血癖を持った謎の殺人鬼が暗躍し、警察の捜査網も狭まってくる。宗教的なモチーフの色濃かったロメロの『マーティン』とは違って、本作はそんなメアリーがベンへの純粋な愛情を貫くのか、それとも己の呪われた吸血衝動に従うことを選ぶのかに焦点を絞った、猟奇サスペンス的でサイコロジカルなラブストーリーとなっている。
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前衛的で民族主義的な作風が強烈なインパクトを残す『ター博士の拷問地下牢』や『鮮血の修道院』とは一線を画す、スタイリッシュで洗練されたモダンな作風を披露するモクテズマ監督。フラッシュバックやサブリミナル効果を駆使した、どことなくシュールで幻想的な語り口に彼らしさを感じるものの、しかし全体的にはアメリカ映画のような印象を受けるのは少なからず意外だ。そこは恐らく、本作がモクテズマ自身のオリジナル企画ではなく、あくまでも雇われ仕事だったことが関係しているのかもしれない。
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もともと本作は、キャサリン・ロス主演の『愛のさざなみ』('70)を手掛けたプロデューサーコンビ、ロバート・ヤミンとヘンリー・ボーリンジャーの企画だった。しかし、すでに決まっていたセントルイスの出資者が、諸事情で予算の半分しか資金を提供できなくなり、知人のつてをたどって援助を求めたのがメキシコのモクテズマだったのである。
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メキシコで出資者を探すことに協力し、その仲介役も買って出たモクテズマは、契約をまとめる際に自身が監督を務めることを条件に盛り込んだという。ヤミンとボーリンジャーは戸惑ったが、しかし知人に尋ねたところ、モクテズマはホラー映画に造詣の深い有能な映画監督だという。とりあえず資金集めが急務だった2人は、それならば…ということで、その条件を呑んだのだそうだ。
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主演はアメリカの人気テレビ司会者として、そしてマックスファクターの広告塔を長年務めたモデルとして有名なクリスティナ・フェラーレ。当時駆け出しの女優でもあった彼女に映画スターの可能性を見出したヤミンとボーリンジャーは、出資者を説き伏せて無名の彼女をメアリー役に起用する。ただし、一つだけ問題があった。彼女の当時の夫ジョン・デロリアンである。
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『バック・トゥ・ザ・フューチャー』('85)でもお馴染みのスーパーカー、デロリアンの開発者としても有名なアメリカ自動車業界の大物デロリアンは、愛妻の仕事にもいちいち首を突っ込んでくるほど過干渉な旦那だったらしい。エージェントによると、クリスティナ本人はヌードシーンやベッドシーンも必要とあらば応相談だが、しかし夫が絶対に首を縦に振らないという。そこで制作陣は、デロリアンがメキシコの撮影現場へ足を運ぶ前にクリスティナを説得し、ヌードシーンとベッドシーンを先に撮り終えておかねばならなかった。彼女が女優として大成しなかったのは、恐らく旦那のせいだったのかもしれない。
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メアリーが恋に落ちる好青年ベンには、『ダーティ・ソルジャー/野良犬軍団』('81)にも出ていたデヴィッド・ヤング。また、メキシコ側出資者の要望でメキシコ人の有名スターを起用する必要があったことから、当時メキシコのトップ女優だったエレナ・ロホがレズビアンのグレタ役で顔を出している。また、メアリーの父親役を演じている名優ジョン・キャラダインも、米国市場で知名度のあるベテラン俳優をというメキシコ側のご指名だったそうだ。
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かくして、アバンギャルドな映像作家フアン・ロペス・モクテズマの意外な一面を垣間見れる作品として、ロメロの『マーティン』を先駆けたリアリズム路線のヴァンパイア映画として興味深い隠れた名作。クライマックスの漠然とした後味の悪さも格別だ。なお、劇中でメアリーの作品として登場する絵画の数々は、メキシコの有名な女流シュールリアリズム画家ローサ・ローゼンバーグの作品。こちらも一見の価値ありだ。
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評価(5点満点):★★★★☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/音声:2.0ch Dolby Digial Mono/言語:英語/地域コード:ALL/時間:91分/発売元:Code Red/Kino Lorber
特典:製作者ヘンリー・ボーリンジャーのインタビュー(約14分)



by nakachan1045 | 2019-03-03 14:13 | 映画 | Comments(0)

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