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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「ダブルマン」 The Double Man (1967)

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監督:フランクリン・J・シャフナー
製作:ハル・E・チェスター
原作:ヘンリー・S・マックスフィールド
翻案:フランク・ターロフ
脚本:フランク・ターロフ
   アルフレッド・ヘイズ
撮影:デニス・クープ
音楽:アーニー・フリーマン
出演:ユル・ブリンナー
   ブリット・エクランド
   クライヴ・レヴィル
   アントン・ディフリング
   モイラ・リスター
   ロイド・ノーラン
   ジョージ・ミケル
   ブランドン・ブレイディ
   ジュリア・アーナル
   デヴィッド・バウアー
   ロナルド・ラッド
イギリス映画/104分/カラー作品




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<あらすじ>
CIA諜報員ドン・スレイター(ユル・ブリンナー)のもとに、16歳の息子ロバートが急死したとの電報が入る。送り主は元MI5諜報員で、今はオーストリアのインターナショナル・スクールを経営する旧友フランク・ウィートリー(クライヴ・レヴィル)。妻を亡くしたスレイターは、一人息子のロバートをウィートリーに預けていたのだ。
息子の死因はスキー場での転落事故だという。電報を受けたスレイターは、すぐさまオーストリアへと向かう。そのことを後から知らされた上司エドワーズ(ロイド・ノーラン)は、事故がスレイターをおびき寄せるための罠ではないかと心配する。スパイの世界で「事故」にはたいてい裏があるからだ。
ドイツとの国境近くにある真冬のスキー・リゾート地に到着したスレイター。息子の葬儀を終えて帰国しようとしたが、何者かがスレイターの荷物に息子の上着を紛れ込ませていた。その上着にはポールで刺したような穴が空き、血痕も付いている。息子は事故死じゃない、何者かに突き落とされたのだと確信したスレイターは、ウィートリーの反対を押し切って独自に捜査を始める。
そんなスレイターの様子を秘かに監視している男たちがいた。東ドイツ秘密警察のバートホルド大佐(アントン・ディフリング)とその部下たちだ。彼らは、ある目的のためにスレイターをヨーロッパへおびき寄せるべく、息子ロバートを殺害して事故死を偽装したのである。
事故当日の息子の足取りを追うスレイターは、スキーリフトの監視員から女性1人と男性2人がロバートと同じリフトに乗っていたという情報を掴む。男性2人の身元は分からなかったが、女性は大富豪の英国人キャリントン夫人(モイラ・リスター)の秘書ジーナ(ブリット・エクランド)だった。ジーナによると、男2人のうち1人はスキーマスクをかぶっており、なぜかロバートと親しげに話していたという。
キャリントン夫人の邸宅で開かれたパーティに出席したスレイター。そこにはバートホルド大佐らの姿もあった。すると、大佐の部下マックス(ジョージ・ミケル)を見かけたジーナは、彼がリフトでロバートと話していた男2人の片割れだと気付く。そのことを知らされたスレイターは、マックスを追って村はずれの農家へとたどり着く。
だが、そこではバートホルド大佐らが待ち構えており、スレイターは囚われてしまった。実は大佐らは整形手術でスレイターと瓜二つに変身した替え玉を用意しており、その替え玉とワシントンに送り込んでアメリカの軍事機密を手に入れようと画策していたのだ。
その頃、エドワーズの指示を受けてCIAチューリッヒ支局の諜報員ミラー(デヴィッド・バウアー)が、スレイターを無事にアメリカへ送り届けるため村へ到着する。しかし、彼の前に現れたのは替え玉の東ドイツ諜報員カールマー(ユル・ブリンナー2役)だった。その間にバートホルド大佐らはスレイター本人を始末しようとするのだが…。
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※下記レビューには一部ネタバレが含まれます。

'60年代に大量生産された東西冷戦スパイ映画の一つである。当時は『007』シリーズの大ヒットを受けてスパイ映画ブームが花盛り。世界各国の映画界でジェームズ・ボンドもどきの秘密諜報員が大活躍していた。ただし、非情なスパイの世界をシリアスなタッチで描いた本作は、荒唐無稽な『007』シリーズよりもマイケル・ケイン主演の『ハリー・パーマー』シリーズの影響下にあると言えよう。
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主人公はCIAのベテラン諜報員スレイター。常に冷静沈着で感情を一切表に出さない彼は、本部長エドワーズも一目置くエリートスパイだ。そんな彼のもとに、オーストリアから一通の電報が届く。差出人は元MI5の諜報員で、今はスパイの世界から身を引いた旧友ウィートリー。実はスレイター、一人息子ロバートをウィートリーに預けていたのだが、その息子がスキー事故で転落死したというのだ。
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すぐさま、アルプスの麓のリゾート地へと向かうスレイターだが、上司エドワーズはそれが罠ではないかと疑う。実際、息子の遺品を見たスレイターは、事故死に見せかけた他殺だと見抜く。何者かが彼をおびき寄せるために息子を殺害したのだ。そのことを薄々感じつつ、真相究明のために奔走するスレイター。カギとなるのは、たまたま死の直前に息子と同じスキーリフトに居合わせた女性ジーナが目撃したという、スキーマスクを被って親しげに息子へ話しかけた謎の男とその相方の存在だ。
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実は、事件の背後には東ドイツ秘密警察の存在があった。彼らはワシントンに潜入スパイを送り込んで軍事機密を盗むため、スレイターと瓜二つの替え玉を用意していたのだ。そして、息子の死を餌にしてスレイターをヨーロッパへおびき寄せ、本人を抹殺して偽者と入れ替えようと画策していたのである。つまり、スキーリフトで息子に近づいて殺したスキーマスクの犯人は、スレイターの替え玉だったわけだ。
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後半は、まんまとスレイターと入れ替わった偽者がアメリカへ向けて旅立とうとする一方、敵の拘束を逃れたスレイターが陰謀を阻止すべく決死の逃避行を繰り広げる。スパイの「替え玉作戦」というのは劇場版『0011ナポレオン・ソロ/消された顔』('65)でも取り上げられて、正直なところあまり現実味のある作戦計画とは言い難いのだが、本作では綿密に描き込まれた伏線や人間描写の妙によって、もしかするとあり得るかも…?と思わせるようなリアリズムを生むことに成功している。
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しかし、最も興味深いのは主人公スレイターの人物像とその心理描写であろう。東西情報戦の最前線に長いこと身を置いてきた彼は、常に世の中をうがった目で見ており、親友ウィートリーのことすらも決して信用してはいない。そればかりか、息子ロバートへの愛情もどこかへ置き忘れてしまった。犯人探しだって、息子を殺された復讐心ではなくスパイとしての本能と職務が動機だ。ある意味、敵の東ドイツ秘密警察よりも冷酷非情。演じるユル・ブリンナーの謎めいたダークな魅力が際立つ。その非情さゆえ、最後の最後に命拾いすることとなるもまた、大いなる皮肉だ。
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果たして、本物と偽物、西側と東側、両者の間にどれだけの違いがあるのだろうか?美しくも凍てついたアルプスの山麓で繰り広げられる東西スパイの熾烈な戦いを、名匠フランクリン・J・シャフナー監督はどこまでもシニカルな目で見つめていく。そこには正義も悪もない。ただ「敵」と「味方」があるのみ。それすらも実は境界線が曖昧だ。生々しい暴力にこだわったアクションを含め、実に骨太な仕上がり。『猿の惑星』('67)や『パットン大戦車軍団』('70)といった代表作に比べると、地味で目立たない映画であることは確かだが、グレアム・グリーンやフレデリック・フォーサイスの系譜に属する正統派英国スパイ映画として一見の価値は十分にある。
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なお、ロケ地はオーストリアのチロル州にある有名なスキーリゾート地で、アルペンスキー発祥の地とも言われるサンクト・アントン・アム・アールベック。劇中に出てくる広大な雪山はアールベック峠だ。'50年代にイギリスで人気だった美人女優モイラ・リスターが演じるキャリントン夫人の華やかなドレスは、全てクリスチャン・ディオールの特注品。ペチュラ・クラークやフランク・シナトラのアレンジャーとして有名なアーニー・フリーマンの手がけた、ソウルフルでムーディな音楽スコアもキャッチーで魅力的だ。
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脇役で光るのは、やはり親友ウィートリーを演じる名優クライヴ・レヴィルであろう。猜疑心に満ちたスパイの世界に辟易し、スレイターに深い友情を抱きつつも、同時にある種の嫌悪感を隠せない。俺はただ平和に暮らしたいだけだ、お願いだから余計なことに巻き込まないでくれ。そんな揺れ動く複雑な心情を演じて説得力がある。映画出演は決して多くないものの、名作・佳作に恵まれた人でもある。今なお現役で活動しているのだから驚きだ。
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ヒロインのジーナ役には、ピーター・セラーズ元夫人としても有名なセックス・シンボル、ブリット・エクランド。当時は前年の『紳士泥棒/大ゴールデン作戦』('66)でスターダムに躍り出たばかりだった。上司エドワーズ役のロイド・ノーランは、'40年代のハリウッドB級ノワール映画を代表するスター。数々の戦争映画でナチ将校を演じたアントン・ディフリングが、東ドイツ秘密警察のバートホルド大佐というのは妥当な配役であろう。
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評価(5点満点):★★★★☆

参考DVD情報(アメリカ盤) ※オンデマンドDVD-R
カラー/ワイドスクリーン(1.77:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:104分/発売元:Warner Archive
特典:なし



by nakachan1045 | 2019-03-11 08:00 | 映画 | Comments(0)

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