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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「幽霊と未亡人」 The Ghost and Mrs. Muir (1947)

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監督:ジョセフ・L・マンキーウィッツ
製作:フレッド・コールマー
原作:R・A・ディック
脚本:フィリップ・ダン
撮影:チャールズ・ラング
音楽:バーナード・ハーマン
出演:ジーン・ティアニー
   レックス・ハリソン
   ジョージ・サンダース
   エドナ・ベスト
   ヴァネッサ・ブラウン
   アンナ・リー
   ロバート・クート
   ナタリーウッド
アメリカ映画/104分/モノクロ作品




<あらすじ>
20世紀を迎えたばかりのロンドン。1年前に夫エドウィンと死別した未亡人ルーシー・ミューア(ジーン・ティアニー)は、口うるさい義理の姉や姑との息苦しい生活から解放されるべく、幼い娘アンナ(ナタリー・ウッド)と実家から連れてきた家政婦マーサ(エドナ・ベスト)を伴って家を出ることにする。女一人で生きていけるわけない!と猛反対されるが、夫の残した株でなんとかやっていける自信はあった。
海の見える場所に住むことが憧れだったルーシーは、美しい港町ホワイトクリフを定住先に選ぶ。地元の不動産業者クーム氏(ロバート・クート)のオフィスで物件を探した彼女は、カモメ館と呼ばれる激安物件に興味を惹かれるのだが、なぜかクーム氏は「ここだけはお勧めできない」という。強引に押し切る形で物件を見に行ったルーシー。そこはまさに彼女が思い描いていた通りの美しい屋敷だった。すると、突然家中に不気味な笑い声が響き渡る。そう、ここは自殺した元家主グレッグ船長の幽霊が出るお化け屋敷だったのだ。
「幽霊が出るのね、面白いわ!」ますますカモメ館が気に入ったルーシーは、ここに住むことを決意する。引っ越しが完了したその日の夕方、ルーシーの前にグレッグ船長(レックス・ハリソン)の幽霊が現れた。横柄で口の悪い船長に呆れつつも、正直な人柄に少なからず好感を持つルーシー。死因が実は自殺ではなくガス中毒の事故死だったことにも安心した。この世を恨んで死んだわけじゃないから。一方のグレッグ船長も、頑固で負けず嫌いなルーシーのことを気に入る。
そんなある日、義理の姉と姑がロンドンからやって来る。会社の倒産で株券が紙切れ同然になったというのだ。それでもなおロンドンへ戻るつもりはないと2人を追い返したルーシーだが、これからの生活のことが心配でならない。すると、その様子を見ていたグレッグ船長が、ある提案を申し出る。自分の生前の冒険譚を話して聞かせるから、それを小説にまとめて出版すれば必ずベストセラーになる。そうすれば、女一人でも十分自活できるはずだと。
かくして、一致協力しながら小説を書き始めたルーシーとグレッグ船長。その過程で2人はお互いのことを理解し、いつしか深い愛情で結ばれるようになる。やがて小説は完成。ルーシーはグレッグ船長が指示した出版社社長スプロウル氏のもとへ原稿を持ち込む。当初は女の書いた小説なんて読む価値がないと断られるが、ルーシーは断固として引き下がらない。渋々原稿を読み始めたスプロウル氏は、その面白さに夢中となり、すぐさま出版することを約束した。
そんなルーシーに目を付けたのが、児童小説のベストセラー作家フェアリー氏(ジョージ・サンダース)。都会的で洗練された紳士の彼にルーシーも強く惹かれる。グレッグ船長の目には軽薄な女たらしにしか見えないが、しかし「生身の男」とルーシーが結婚して幸せになってくれるならばと考え、ルーシーの前から姿を消す。自分の存在は夢だったのだと彼女が思い込むように仕向けて。
ところが、ある日ルーシーは偶然、フェアリー氏に妻子がいること、結婚を餌に女性を騙す常習犯だったことを知る。深くショックを受けた彼女は、もう男なんてこりごり、これからはマーサと2人でアンナの子育てだけを考えて生きていくことを心に誓う。
それから10数年後、大学生になったアンナ(ヴァネッサ・ブラウン)が婚約者を連れてホワイトクリフに戻ってくる。今ではすっかりグレッグ船長の存在が夢だったと信じているルーシーに、アンナは幼い頃グレッグ船長と遊んだ思い出を話し始める…。

実にチャーミングで微笑ましい、それでいて深い感動と味わいのあるロマンティックなファンタジー映画である。一言で申すなら、幽霊と人間のささやかな恋物語。同じくレックス・ハリソンが主演したノエル・カワード原作の『陽気な幽霊』('45)や、スピルバーグ監督『オールウェイズ』('89)の元ネタになった『A Guy Named Joe』('43)など、'40年代当時はこの種のファンタジー映画が大変な人気を集めていた。戦争が多くの人々の暮らしに深い傷跡を残したこの時代、現実逃避的な作品が求められたことは想像に難くない。

舞台は第二次産業革命によって近代化が著しく進んだ、19世紀から20世紀への変わり目のイギリス。上流階級の若く美しい未亡人ルーシーは、長男の嫁として姑や義理の姉に気を使い、あれこれと口出しをされる息苦しい生活に嫌気がさし、幼い娘アンナと家政婦マーサを連れて家を出ていくことにする。しかし周囲は猛反対。亭主のいない女が家族を養えるわけがない、女は家に従属するのが当たり前、ってなわけだ。科学技術は進歩しても世間の価値観は封建時代のまま。女性の社会的地位はまだまだ低い。それでもなお、自分の意思を通して自立の道を歩もうとするルーシーは、当時としては独立心旺盛で進歩的な女性と言えるだろう。

そんな彼女が新居として選んだのが、海辺に面した美しい白亜の邸宅「カモメ館」。家賃は激安なのに誰も寄り付かないこの屋敷、実は幽霊が出ると噂のお化け屋敷だったのだ。ところが、何事にも前向きで明朗快活なルーシーは、「幽霊が出るのね!面白いじゃない!」と即決。まあ、こんな掘り出し物の物件はなかなか出てこないし、そもそも幽霊の存在についても実際は半信半疑。とにかく今は生活の基盤を立て直すことが先決だったのである。

で、案の定と申しますか、引っ越しした当日の夕方、時計の鐘の音と共にやっぱり出ました幽霊(笑)。その正体は、4年前に自殺したとされる屋敷の元住人グレッグ船長だ。自殺した人の幽霊なんて、この世を恨んでいるみたいで怖いと思っていたルーシーだが、よくよく話を聞いてみるとガスヒーターの前で居眠りをしたことが原因の事故死だったらしい。なら安心ね、良かったわ!って、オイオイ良かったじゃねえだろ、と突っ込みたくなりますが、そんな天然ボケもご愛敬。自分が設計して建てた「カモメ館」に愛着の強いグレッグ船長は、これまでわざと人を遠ざけるために化けて出ていたのだが、屋敷を心から気に入っている様子のルーシーを新たな住人として認めることとなる。

ただし、このグレッグ船長、根っからのマッチョな船乗り気質で、言葉は乱暴だし態度も横柄。なにより女性への偏見が著しく強く、「女はすぐ感情的になる愚かな生き物だ」「女は金のために男と結婚する」などと、男尊女卑丸出しな発言を悪気なくバンバンと連発する。当然、誇り高きルーシーは猛反発。お互いに本音でやりあう2人のユーモラスで丁々発止なやり取りが、社会に根強い女性蔑視的な価値観を浮き彫りにし、その根本的な誤解や矛盾に鋭く斬り込んでいく。ここら辺は、女性映画の巨匠と言われたジョセフ・L・マンキーウィッツの真骨頂であろう。

そんな微笑ましくも賑やかな毎日を通じて、生活力に乏しいお嬢様育ちのルーシーは、社会から押し付けられる女性の役割に囚われない新たな生き方を模索し、昔気質で独善的なグレッグ船長もまた、女性に対する先入観や男性優位主義的な考え方を改めていく。そんな折、ルーシーが生活の頼りにしていた株券が紙切れ同然になるという不測の事態が発生。やはり女性の自立なんて非現実的な夢だったのか…と諦めかけたところ、グレッグ船長が助け舟を出す。世界の大海原を旅した自分の冒険譚を話して聞かせるから、それを本にまとめて出版すればいい、絶対ベストセラーになるから印税がかっぽり入るはずだというのだ。

ん~、それってちょっとばかり博打が過ぎやしませんか?と思うのだが、まあ、あくまでもファンタジーですから(笑)。ってなわけで、二人三脚で本の執筆に取り組むルーシーとグレッグ船長。その過程で2人はお互いへの理解をなお一層のこと深め、本が書きあがる頃には深く愛し合うようになる。とはいえ、幽霊と人間の恋愛が成就することなど考えられない。グレッグ船長はルーシーへの想いをぐっとこらえ、生身の男性との幸せを探すべきだと説得する。

で、ルーシーはグレッグ船長の指示で船乗り好きの社長が経営する出版社へ原稿を持ち込むことに。はじめこそ「女の書いた小説なんてたかが知れている!そんなもん読む価値なし!」と門前払いを食らうのだが、そこは断固として引き下がらないルーシー。根負けした社長が渋々読み始めると、これがとんでもなく面白かった。ということで、その場でめでたく出版が決定。まあ、あくまでもファンタジーですので(笑)。

しかも、夢の出版契約を取り付けたルーシーは、同時に新たな恋を見つける。お相手は児童書のベストセラー作家フェアリー氏。まあ、正確に言えば向こうからナンパしてきたわけだが、なにしろハンサムでお洒落で女心をよく心得た都会的な紳士。グレッグ船長から見ればただの軽薄な女たらしだが、恋愛経験の少ないルーシーはたちまちメロメロになってしまう。

気に食わない相手だけど彼女が幸せになれるならそれでいい。そう考えたグレッグ船長は身を引く決心をし、ルーシーが自分の存在をただの「空想の友達」だったと考えるよう仕向けたうえで、ぷっつりと姿を消してしまう。ところが、彼の「男の勘」は正しかった。どういうことかというと、理想の男性だと思ったフェアリー氏はとんだ食わせ物、結婚を餌に若い女性を騙して弄んでは棄てる既婚者のクソ野郎だったのだ…!

ということで、ファンタジックなロマンティック・コメディの装いをまといつつ、フェミニズム的なメッセージを多分に含んだ作品。2度の世界大戦を経験した公開当時の欧米では、戦場に駆り出された男たちの代わりとして女性の労働人口が飛躍的に増え、後のウーマンリブ運動へと繋がる女性の意識改革が芽生えつつあった。これは、そんな時代の空気を如実に感じさせる映画とも言えるだろう。

マンキーウィッツの演出は軽妙洒脱にして痛快。海辺の町ののどかな風景やヴィクトリア朝風の屋敷の洗練された美術セットを生かし、詩情溢れる幻想的なムードもたっぷりと盛り上げている。フェアリー氏との恋愛トラブルは昼メロ的なベタさ加減が目立つものの、しかし人生の悲哀を湛えた終盤の展開は実に味わい深く、クライマックスの幕引きはただの「ハッピーエンド」に終わることのない感動を与えてくれる。マンキーウィッツ監督と言えば『イヴの総て』('50)や『裸足の伯爵夫人』('54)が代表作に挙げられるものの、本作や『三人の妻への手紙』('49)といった初期の小品佳作もまた捨て難い。

主人公ルーシー役のジーン・ティアニーも素晴らしい。『ローラ殺人事件』('44)などフィルムノワールのファム・ファタールとして語られることの多い女優だが、そのファニーフェイスな美貌とチャーミングな持ち味は、ルビッチの『天国は待ってくれる』('43)や本作のようなロマンティック・コメディでこそ真価を発揮するように思う。もちろん、髭をたくわえたグレッグ船長役を嬉々として豪快に演じる名優レックス・ハリソンも好演だ。

フェアリー氏役のジョージ・サンダースは少々損な役回りだが、その後同じマンキーウィッツ監督の『イヴの総て』で皮肉屋の演劇評論家を演じてオスカーを獲得する。そういえば当時の彼は『レベッカ』('40)や『海外特派員』('40)などヒッチコック作品の常連だったが、家政婦マーサ役でイギリス時代のヒッチコック作品『暗殺者の家』('34)のヒロイン、エドナ・ベストが顔を出している。フェアリー氏の妻役には、英国冒険映画の名作『キング・ソロモン』('37)のヒロインだったアンナ・リー。また、幼少時代の娘アンナ役を子役時代のナタリー・ウッドが演じているのも要注目だ。

評価(5点満点):★★★★★

参考ブルーレイ情報(日本盤)
モノクロ/スタンダードサイズ(1.33:1)/1080p/音声:5.1ch DTS-HD Master Audio・1.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:日本語・英語/地域コード:A/時間:104分/発売元:20世紀フォックス
特典:オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2019-03-12 00:50 | 映画 | Comments(0)

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