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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「El Monstruo resucitado(甦った怪物)」 (1953)

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監督:チャノ・ウルエタ
製作:セルジオ・コーガン
   アベル・サラザール
原案:ディノ・マイウーリ
脚本:チャノ・ウルエタ
撮影:ヴィクトル・エラーラ
特殊メイク:アルマンド・メジェール
音楽:ラウル・ラヴィスタ
出演:ミロスラヴァ
   カルロス・ナヴァーロ
   ホセ・マリア・リナレス=リヴァス
   フェルナンド・ワグナー
   アルベルト・マリスカル
   ステファン・ベルネ
メキシコ映画/80分/モノクロ作品




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<あらすじ>
東ヨーロッパの某国。特ダネに飢えた野心家の女性新聞記者ノラ(ミロスラヴァ)は、編集長ゲラシモス(フェルナンド・ワグナー)に相談したところ、とある謎めいた新聞募集広告の追跡取材を提案される。その広告には匿名で「知的で洗練された美しい女性を求む」とある。早速、彼女は広告に記された連絡先に応募するのだった。
待ち合わせ場所の波止場に現れたのは、覆面マスクを被った不気味な男ヘルマン(ホセ・マリア・リナレス=リヴァス)。ギョッとしたノラだったが、しかし特ダネのためと考えて彼の後をついていく。案内されたのは古い墓地のそばに建つ怪しげな邸宅。2人を出迎えた挙動不審な召使ミーシャ(アルベルト・マリスカル)もノラを不安にさせる。しかし、芸術に造詣が深く繊細で博識なヘルマンの人柄に、やがて彼女は好感を抱いていく。ヘルマンもまた、インテリで気品のあるノラに惹かれている様子だ。
おのずと、覆面マスクに隠されたヘルマンの素顔に関心を抱くノラ。だが、ヘルマンはマスクを取ることを躊躇する。生まれつきの醜い容姿ゆえ、幼い頃から差別を受け続けたという彼は、素顔を見せることでノラに嫌われることを恐れたのだ。見た目で人を嫌ったりなど絶対にしないとヘルマンを説得するノラ。勇気を出してマスクを取った彼の素顔にノラは強い衝撃を受ける。だが、彼の気分を害さないためにも努めて平静を装い、再会を約束して屋敷を後にする。
実は、ヘルマンの正体はマッド・サイエンティストのリン博士だった。かつて天才的な整形外科医として名をはせたリン博士だったが、その醜い容姿ゆえに酷い扱いを受けて自らの死を偽装。世間の人々を自分と同じように醜くするため、秘かに邪悪な研究を重ねていたのだ。募集広告はその実験台を探すことが目的だったのだが、美しく心優しいノラにすっかり恋をしてしまった。彼女こそ自分の運命の女性だ、もう世間への復讐なんてどうだっていい。博士はすっかり有頂天となる。
その頃、レストランで上司ゲラシモスに取材の報告をするノラ。ところが、彼女の後を追いかけてきたリン博士がその会話を物陰で聞いていた。やはり自分は騙されていたのか、彼女もほかの連中と同じだったのか。怒り狂った博士は復讐を決意する。彼は自殺した美青年の死体に、自分の命令に従うよう拷問で洗脳した狂人の脳みそを移植。アリエル(カルロス・ナヴァーロ)と名付けたこの人造人間にノラを誘拐させ、彼女を自分と同じような怪物に変えてしまおうとするのだが、ノラを一目見たアリエルもまた彼女に恋をしてしまう…。
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今では南米随一のホラー映画大国とも呼べるメキシコ。そのルーツは'30年代にまで遡ることが出来る。当時ユニバーサル・ホラー『魔人ドラキュラ』('31)のスペイン語版がメキシコでも公開され、予想以上のスマッシュヒットとなったことから国産ホラー映画の製作が始まったのだ。とはいえ、それでもなお当時のメキシコ映画の主流はメロドラマと西部劇。それなりに需要は見込めるものの、なかなか客足が伸びないジャンルでもあった。
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一方、'50年代に入るとメキシコでは奇抜なマスクを被ったレスラー(ルチャードール)が派手なパフォーマンスを披露する格闘技「ルチャ・リブレ」が、当時始まったばかりだったテレビ放送を通じて国民的な人気を博し、映画界でもルチャドールを主演に据えたルチャ・リブレ映画が量産されるようになる。そうした作品では、ヒーローの敵役として吸血鬼やミイラ男などのホラー・モンスターが登場することも多かった。これが、結果としてメキシコにおけるホラー映画ブームの下地を作ることになったと言えるかもしれない。
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そのような状況下で劇場公開されたのが、メキシコで最初の本格的なSFホラーとも呼ばれる『El Monstruo resucitado(甦った怪物)』。『フランケンシュタイン』を下敷きに『美女と野獣』の要素を盛り込んだ本作は、当時の国産ホラー映画としては異例の大ヒットを記録。これを機にホラーはメキシコ映画界でもメジャーなジャンルとなり、まるで堰を切ったように数多くのホラー映画が作られるようになったのだ。
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主人公は生まれつき容姿が極端に醜く、それゆえ世間に対して強い恨みを持ったマッド・サイエンティストのリン博士。世界中の人々を自分と同じような怪物に変えるとの野望に燃える彼は、その実験台として研究室に連れ込んだ心優しき美女ノラに恋してしまう。ところが、ノラは特ダネを狙って接触してきた新聞記者だった。一度はノラのために心を入れ替えようと誓ったリン博士だったが、事実を知ってさらなる復讐心に燃えることとなる。
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で、その復讐手段というのがイケメン人造人間の開発(!)。自分に絶対服従するよう拷問で洗脳した狂人を地下室に飼っていたリン博士は、盗んだ美青年の死体に狂人の脳みそを移植することで、奴隷のごとき人造人間を完成させる。そして、アリエルと名付けたこの「美しき怪物」にノラを誘拐させるわけだが、予想外の事態が起きることになる。実はアリエルもまた、ノラに恋してしまったのだ。
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監督はサイレント映画の時代から活躍する大ベテランのチャノ・ウルエタ。ドイツ表現主義の影響を受けたカメラアングルやゴシックムードは、恐らく一連のユニバーサル・ホラーをお手本にしているのだろう。強引な展開の目立つストーリーはあからさまに子供騙しだし、セリフも役者の芝居も滑稽なくらいに大袈裟、舞台劇のようなセットも見るからに安っぽい。その後も数々の低予算ホラー映画を撮ることになるウルエタ監督は、「メキシコで最も多忙なホラー映画監督」と呼ばれることになるのだが、しかしその一方で、フェルナンド・メンデスやラファエル・バレドンといったメキシカン・ホラーの巨匠たちに比べると評価は著しく低い。本作もその例外ではないと言えよう。
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ただ、人造人間ではなくその生みの親である科学者を醜悪なモンスターとして設定することで、真の怪物とはいったい何なのか?という『フランケンシュタイン』の根源的テーマを際立たせる着眼点はとても興味深い。覆面マスクを被ったリン博士の醜い素顔が暴かれる衝撃シーンも、ロン・チェイニー版『オペラの怪人』('25)を彷彿させる。特殊メイクのデザインもなかなかインパクト強烈。映画館の暗がりでこれを見た当時の観客が、少なからずショックを受けたであろうことは想像に難くない。その歴史的な価値を含めて、ホラー映画ファンなら一度は見ておいて損はないだろう。
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ちなみに、ヒロインのノラを演じているミロスラヴァは、当時メキシコで絶大な人気を誇ったチェコ出身の美人女優。本作の舞台が東ヨーロッパ某国に設定されているのもそのためだ。ユダヤ人であることから幼少期にナチスの台頭するヨーロッパを逃れ、ハリウッド映画を経てメキシコに活動拠点を置いた。しかし本作の3年後に睡眠薬の過剰摂取で自殺。理由はハッキリとしていないが、一説にはエヴァ・ガードナーとも浮名を流したスペインの国民的闘牛士ルイス・ミゲル・ドミンギンに振られたことが原因とも言われている。享年30歳という若さだった。
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なお、クレジットで目を引くのは、本作の原案をイタリアの脚本家ディノ・マイウーリが手掛けていること。『黄金の眼』('67)や『ミラノの銀行強盗』('68)、『ガンマン大連合』('70)などで有名なイタリアン・アクションの名脚本家が、どのような経緯で遠く離れたメキシコのホラー映画に関わったのか。しかも、当時はまだイタリアン・ホラーが産声を上げる前ということもあって、なおさらのこと興味をそそられる。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
モノクロ/スタンダードサイズ(1.37:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:スペイン語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:80分/発売元:One 7 Movies
特典:ポスター・ギャラリー/イタリア版フォトノベル(PDF)



by nakachan1045 | 2019-04-03 06:23 | 映画 | Comments(0)

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