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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「スパイ戦線」 Carve Her Name With Pride (1958)

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監督:ルイス・ギルバート
製作:ダニエル・M・エンジェル
原作:R・J・ミニー
脚本:ヴァーノン・ハリス
   ルイス・ギルバート
撮影:ジョン・ウィルコックス
編集:ジョン・シャーリー
音楽:ウィリアム・オルウィン
出演:ヴァージニア・マッケンナ
   ポール・スコフィールド
   ジャック・ワーナー
   ドニーズ・グレイ
   モーリス・ロネ
   アラン・ソウリー
   アン・レオン
   ニコール・ステファーヌ
   ビリー・ホワイトロー
イギリス映画/114分/モノクロ作品




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<あらすじ>
第二次世界大戦初期のロンドン。イギリス人の父親(ジャック・ワーナー)とフランス人の母親(ドニーズ・グレイ)の間に生まれたヴィオレット(ヴァージニア・マッケンナ)は、勇敢な兵隊に憧れる世間知らずの無垢な女性だった。フランス軍の若い兵士エティエンヌ・サボ―(アラン・ソウリー)と知り合った彼女は、たちまち恋に落ちて結婚。一女ターニャにも恵まれて幸せな生活を送っていたが、しかし間もなくして夫がエル・アラメインの戦場で命を落としてしまう。
それから半年後。ヴィオレットは戦時経済省のオフィスに呼び出される。夫の遺族年金についての話かと思ったが、実はヨーロッパ戦線でのスパイ活動を行う特殊作戦執行部(SOE)への勧誘だった。ナチス・ドイツ支配下のフランスで対独レジスタンスを支援するため、ヴィオレットのようにフランス語に堪能な若い人材が求められていたのだ。
幼い娘のことを考えて躊躇するヴィオレットだったが、しかし夫の死を無駄にしたくないとの思いから志願することにする。両親には応急看護部隊で働いていると嘘をつき、スパイとしての訓練を受けるヴィオレット。めきめきと才能を伸ばしていった彼女は、SOEの有能な将校フレイザー(ポール・スコフィールド)にも実力を認められる。その一方で、本当のことを家族にも友人にも明かせないもどかしさに苦しむが、しかし両親は彼女が危険な仕事に就いていることを薄々感づいていた。
そして、いよいよヴィオレットに最初の任務が下る。フランス国内のレジスタンス・グループと接触し、ドイツからフランスへの軍事輸送経路にある橋を爆破することが彼女の役目だった。現地で後方支援するのはレジスタンスの信頼も厚いフレイザー。しかし、彼は顔が知られ過ぎているため、新人のヴィオレットが単独で実行する。ゲシュタポによるレジスタンス狩りは想像以上の厳しさだったが、彼女は辛うじて任務を成功させてイギリスへ帰国した。
娘のためにも任務はこれきりと考えていたヴィオレット。しかし、ノルマディ上陸作戦の決行が迫る中、彼女はドイツ軍の南下進軍を阻止するという、前回よりも遥かに重要で危険なミッションに参加することになる。反対するフレイザーだったが、ヴィオレットは覚悟を決めて任務を引き受ける。ところが、レジスタンスの青年ジャック(モーリス・ロネ)と2人で移動中、予期せずドイツ軍の部隊と遭遇してしまった彼女は、銃撃戦の末にゲシュタポの捕虜となってしまう…。
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第二次世界大戦中、ナチスドイツの占領下にあったフランスで、対独レジスタンスを支援した実在の英国女性スパイ、ヴィオレット・サボーの半生を映画化した戦争ドラマである。1921年フランスに生まれたヴィオレットは、父親が英国人で母親がフランス人のハーフ。幼少期をフランスで過ごし、11歳の時にロンドンへ移り住んだ彼女は、そのため英語にもフランス語にも堪能だった。しかも、男兄弟4人に囲まれて育ったため、当時の女性としては珍しく様々な陸上スポーツに親しみ、運動神経も発達していたという。もともと、スパイとしての素質を身に着けた女性だったようだ。
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物語は第二次世界大戦の勃発した翌年、まだドイツ軍の空襲もなく平和で穏やかだった1940年のロンドン、ちょうどヴィオレット(ヴァージニア・マッケンナ)が有名百貨店ボン・マルシュの販売員として働いていた頃から始まる。たまたま知り合ったハンガリー系のフランス人士官エティエンヌ・サボ―と恋に落ち、42日間の交際期間を経て結婚したヴィオレット。2年後には娘ターニャを出産したものの、それから僅か4か月後、夫エティエンヌは娘の顔を1度も見ないまま、エル・アラメインの戦場で命を落としてしまう。
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夫の訃報を受けてから半年後、戦時経済省のオフィスに呼び出されたヴィオレットは、そこで特殊作戦執行部、通称SOEへの勧誘を受ける。SOEとはイギリス戦時経済省の管轄下にあった連合軍の諜報機関で、ナチス・ドイツに占領されたヨーロッパ各国での偵察活動や情報収集、さらには現地のレジスタンス組織を非公式に支援することなどが主な役割だった。実際になぜSOEに彼女が勧誘されたかは、現存する当時の資料が少ないためハッキリしないそうだが、しかし劇中で説明されるような語学力や身体能力が買われたであろうことは想像に難くない。また、夫を戦場でドイツ軍に殺されたという事実も、恐らく任務遂行のモチベーションになると考えられただろう。実際、ヴィオレットは夫の死に報いるためSOEのオファーを引き受けたと伝えられ、本作でもそのように描かれている。
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かくして、SOEのスパイ養成所に入って日夜厳しい訓練を受け、やがてフランス国内のレジスタンスを支援するための危険なミッションを任されるヴィオレット。普通に考えれば、スリルとサスペンスとアクションが満載の戦争スパイ映画になりそうな題材だが、しかし本作はあくまでもヒロイン・ヴィオレットの揺れ動く心理や心情に寄り添い、たまたま偶然の巡り合わせで諜報員となった平凡な女性の目から見た戦争の残酷な現実を、映画的な誇張や脚色を極力避けながら淡々とリアルに描いていく。
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もともと結婚する前は、勇敢でカッコいい兵隊さんに憧れる世間知らずの初心な女性だったヴィオレット。「私も男だったら絶対に兵隊さんになるわ。だって、アルジェリアやチュニジア、モロッコみたいな場所へ行けるんだもの。素敵じゃない?」なんて無邪気に語らっていたが、しかしそんな異国の戦場で最愛の夫が無残にも殺され、自らも戦時下における諜報工作活動の最前線に立つことで、ありきたりなヒロイズムが通用するほど世界は単純でないこと、戦争がいかに理不尽で残酷なものかということを、嫌がおうにも思い知らされていくことになる。
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監督・脚本のルイス・ギルバートは、恐らく一般的には『007』シリーズの監督として有名だろうと思うが、しかし実は『リタと大学教授』('83)や『旅する女/シャーリー・バレンタイン』('89)、『ステッピング・アウト』('91)などで、労働者階級の平凡な女性の成長と自立を瑞々しく描いた、女性映画の名手としても高い評価を得ている。そのフェミニスト的な眼差しは、本作でも既に健在だ。
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'40年代といえば、まだまだ女性の社会的な地位が今に比べて格段に低かった時代。上司も同僚も男ばかりという中、ヴィオレットを含んでたった3人のSOE女性訓練生たちは、なにかにつけて「これだから女は」と過小評価されてしまう。そんな偏見と無理解をはねのけ、自らの能力を適正に評価してもらうため、彼女たちは男性よりも遥かに多くの努力を強いられるのだ。しかも、ヴィオレットは働く女性であると同時に子育て中の母親でもある。だが、その特殊性から職務内容を家族にも明かせないため、「小さな娘を放ったらかして何をしているのか!」という周囲の厳しい批判にもじっと耐えなくてはならない。今見ても共感できる点は少なくないだろう。
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さらに、本作はヒロインのヴィオレットを決して完全無欠の立派な女性として英雄視せず、むしろその人間的な葛藤や心の迷い、命の危険と隣り合わせの状況での不安や恐怖を赤裸々に描いていく。だからこそ、ゲシュタポの捕虜となって壮絶な尋問・拷問を受けても屈することなく、最後まで職務に対する責任を貫いて散っていった彼女の本質的な強さと勇敢さ、そしてその尊い犠牲の痛ましさが説得力をもって観客に伝わってくる。こんな悲劇を2度と起こしてはならないと。
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主演女優のヴァージニア・マッケンナは、日本でも大ヒットした『野生のエルザ』('65)でお馴染みだが、可憐で無垢なヒロインが厳しくも逞しい女性へと成長していく姿を力強く演じており、映画の最初と最後では別人のような変貌を遂げる。日本軍の捕虜収容所を生き抜いた女性を演じた『マレー死の行進/アリスのような町』('56)と並ぶ代表作と言えるだろう。そのヴィオレットと淡い恋仲になる指揮官フレイザーは架空のキャラクター。本作において恋愛要素はむしろ邪魔なようにも思えるが、しかし硬派でストイックなイメージの名優ポール・スコフィールドを配することで、甘ったるいロマンスに陥ることは極力回避されている。
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脇役は全体的に地味な顔ぶれだが、『死刑台のエレベーター』('58)で脚光を浴びたばかりのモーリス・ロネがレジスタンスのフランス人青年役、『オーメン』('76)のベイロック夫人役で有名なビリー・ホワイトローがヴィオレットの親友ウィリー役で顔を出している。また、無名時代のマイケル・ケインがエキストラとして出演しているらしいのだが、どこに出ているのかは確認できなかった。なお、ヴィオレットの母親役のフランス女優ドニーズ・グレイは、後にソフィー・マルソー主演の『ラ・ブーム』('80)シリーズでお祖母ちゃん役を演じている。
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評価(5点満点):★★★★☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(1.66:1)※レターボックス収録/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:英語/地域コード:1/時間:114分/発売元:VCI Entertainment
特典:フォト・ギャラリー





by nakachan1045 | 2019-04-14 02:03 | 映画 | Comments(0)

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