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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「華麗なる賭け」 The Thomas Crown Affair (1968)

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監督:ノーマン・ジュイソン
製作:ノーマン・ジュイソン
脚本:アラン・R・トラストマン
撮影:ハスケル・ウェクスラー
編集:ハル・アシュビー
グラフィック・デザイン:パブロ・フェロ
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:スティーヴ・マックイーン
   フェイ・ダナウェイ
   ポール・バーク
   ジャック・ウェストン
   アストリッド・ヒーレン
   アディソン・パウエル
   ゴードン・ピンセット
   ヤフェット・コットー
   シドニー・アーマス
   リチャード・ブル
アメリカ映画/102分/カラー作品




<あらすじ>
若くてハンサムな大富豪の実業家トーマス・クラウン(スティーヴ・マックイーン)は、見ず知らずの男性5人を雇って銀行強盗を計画する。誰もがお互いに接点も面識もなし。トーマスの指示した計画通りに4人が銀行へ乗り込んで強盗を実行し、5人目の運転手ウィーヴァー(ジャック・ウェストン)が車に現金を積み込んで人気のない墓地へと運搬。そして、ゴミ箱に捨てられた現金袋をトーマスが回収し、スイスの銀行へと持ち込んで匿名口座に預ける。トーマス自身は別に金に困ってないので、当面は現金に手を付けることもない。そもそも、彼の目的は現金ではなく、完全犯罪を成し遂げて達成感を得ることだった。
ボストン警察のマローン刑事(ポール・バーク)が銀行強盗事件の捜査を担当するものの、しかし有力な手掛かりを得ることは一向に出来ない。銀行が加入する保険会社の担当者マクドナルド(ゴードン・ピンセット)はしびれを切らし、フリーランスの有能な保険調査員ヴィッキー・アンダーソン(フェイ・ダナウェイ)に独自調査を依頼する。これだけ大胆な犯罪事件には、計画を指示する首謀者がいるに違いないと考えた彼女は、容疑者を絞っていく過程で遊び人の大富豪トーマス・クラウンに着目する。
まずはトーマスを観察することから始めたヴィッキーは、危ないスポーツや賭け事を好んで楽しむ彼こそが事件の黒幕に違いないと直感。美術品のチャリティオークションでトーマスに近づいた彼女は、自ら銀行強盗事件の調査員であることを打ち明けて反応を見る。すると彼は全く動じないばかりか、むしろ興味を掻き立てられるかのごとく、あえて餌に食らいついてい来る。
お互いに危険で巧妙な駆け引きを楽しみつつ、やがて惹かれあっていくトーマスとヴィッキー。そんなある日、トーマスは次なる銀行強盗の計画をヴィッキーに打ち明ける。警察と協力して彼を現行犯逮捕するつもりのヴィッキーだったが…?

『ブリット』('68)や『ゲッタウェイ』('72)と並んで、当時人気絶頂だったスティーヴ・マックイーンの代表作である。しかも相手役は『俺たちに明日はない』('67)で大ブレイクしたばかりの女優フェイ・ダナウェイ。これがハリウッド・デビューだったフランスの大物作曲家ミシェル・ルグランが洗練されたジャジーな音楽スコアを手掛け、ノエル・ハリソンの歌う主題歌「風のささやき」は世界中でカバーされるスタンダード・ヒットとなった。

さらに、当時流行のスプリット・スクリーンを大胆に多用した斬新な演出や、『俺たちに明日はない』でボニー・ルックを大流行させた気鋭の衣装デザイナー、セオドラ・ヴァン・ランクルによるスウィンギンなハイファッションなど、全編に渡ってこれでもかとお洒落な要素が満載。60'sポップ・カルチャー好きにはたまらない作品である。

主人公は三つ揃えのタイトなスリムスーツを粋に着こなす、クールでハンサムな遊び人風の若き実業家トーマス・クラウン。幅広くビジネスを手掛けて巨万の富を築いた彼は、仕事でも趣味でもリスクを好んで達成感を味わうことに悦びを見出している。そんな彼が5人の見ず知らずの男たちを雇い、大都会ボストンのど真ん中で白昼堂々と銀行強盗計画を実行。まんまと警察を出し抜いて大金を手にする。もちろん、金に不自由することのない彼にとって、犯行の目的は現金じゃない。不可能に思える完全犯罪を成し遂げることの快感だ。

そんな犯罪行為をゲーム感覚で愉しむ大富豪の前に立ちはだかるのが、美しくも聡明で大胆不敵なフリーランスの保険調査員ヴィッキー・アンダーソン。狙った獲物を捕らえるためには手段を選ばず、必要とあらば違法行為も辞さない女性だ。しかも、相手が手強ければ手強いほど燃えるタイプ。銀行が加入する保険会社に強盗事件の調査を依頼された彼女は、動物的な嗅覚でトーマス・クラウンこそが事件の黒幕だと見破る。それは恐らく、自分と同じ種類の人間だと本能で直感したからなのだろう。

あえて自分の素性を明かしてトーマスに接近するヴィッキー。対するトーマスもまた、自分が事件の黒幕であることを暗にほのめかす。まるでチェスの試合を楽しむかの如く、お互いの腹の内と戦略を探り合い、巧妙な駆け引きを繰り広げつつ、やがて惹かれあっていく似た者同士の2人。果たしてヴィッキーはまんまとトーマスのしっぽを掴むことが出来るのか、もしくはトーマスが最後までヴィッキーの裏をかいて逃げ切るのか、それとも…?という、いわば大人向けの洒落た犯罪ロマンス映画に仕上がっている。

やはり最大の見どころは、遊び心溢れるノーマン・ジュイソン監督のポップな演出にあると言えよう。監督自身、本作を一言で表すと「Style Over Content」、つまり中身よりもスタイルにこだわった作品だと述べているように、正直なところ脚本がずば抜けてよく出来ているとは言い難い。ギャンブル中毒にも似た主人公2人の危ないキャラ造形や、綱渡りのごとき恋愛と犯罪の駆け引きにそれなりの面白みはあるものの、かといって別に犯罪心理の奥深くへと足を踏み込むわけではないし、全体的な流れだって予定調和の域を出るものではない。むしろここでは、ストーリーが映像表現の手段にしか過ぎないように思える。いや、実際のところそうなのだ。

その一方で、凝りに凝りまくったビジュアルは、さながら実験と遊びの宝庫といった感じ。中でも目を奪われるのは、複雑に計算されたスプリット・スクリーンの技術だ。もともとスプリット・スクリーンという映像表現そのものはサイレント映画の時代から存在したが、しかし当時の技術では画面を2分割ないし3分割するのが限界だった。ところが、'67年のモントリオール万博でカナダの映像作家クリストファー・チャップマンが発表した新技術「マルチ=ダイナミック・イメージ・テクニック」によって、一つのフレームの中で大きさの異なる複数のイメージを同時に表示することが可能に。それをいち早く取り入れたのが、リチャード・フライシャー監督の『絞殺魔』('68)と本作だった。

単に新しい技術を見せびらかすのではなく、ちゃんとそこに意味と役割を与えようと考えたジュイソン監督は、銀行強盗やポロゲームなどの大掛かりな見せ場において、その展開を様々な視点から多角的に捉えた映像を、スプリット・スクリーンの技術を用いて自在にコラージュすることで、ダイナミックな躍動感と臨場感を鮮やかに表現している。この映像処理を任されたのが、キューブリックの『博士の異常な愛情』('64)や『時計じかけのオレンジ』('71)の斬新なタイトル・デザインで有名なグラフィック・デザイナー、パブロ・フェロだ。

もともと開発者チャップマンが万博で披露した映像では、複数に分割されたフレーム自体は常に固定されており、フライシャー監督の『絞殺魔』もそれに倣ってたのだが、本作では各フレームの大きさや数・位置が流動的に変化・移動する。それによって、なぜここで複数の細かい映像を一度に見せるのかという理由や目的が、より明確に観客へ伝わるようになるのだ。この手法は後にブライアン・デ・パルマ監督が好んで模倣することになるわけだが、その立役者がパブロ・フェロだったのである。

ただ、時として過剰にも感じられるスタイルへの傾倒は、おのずと賛否があって然るべきだろう。映画をストーリーで見るのか、それとも映像で見るのか。観客の趣味嗜好によっても好き嫌いは大きく分かれるはずだ。また、中盤のセリフを一切省いたチェス・シーンにおける艶めかしくもスリリングな音楽など、ミシェル・ルグランの音楽スコアも重要な役割を果たしているのだが、その一方で主題歌「風のささやき」の使い方には少なからず疑問が残る。恐らくあえて狙ったのだろうが、映像と音楽の雰囲気がいまひとつミスマッチなのだ。

ちなみに、当初ジュイソン監督は主人公トーマス役に別の俳優を考えていたらしい。ところが、たまたま当時の彼とマックイーンのエージェントが一緒で、なおかつ『シンシナティ・キッド』('65)で初タッグを組んだジュイソン監督にマックイーンが惚れ込んでいたらしく、どうしてもやりたいとマックイーンから直々に猛アプローチがあったという。スーツにネクタイを締めたエリートビジネスマンにマックイーンはイメージが合わない!と難色を示したジュイソンだったが、なにしろ相手は当時のハリウッドでも随一のドル箱スター。断るに断り切れずキャスティングすることになったのだそうだ。

脚本を手掛けたアラン・トラストマンはボストン在住のエリート弁護士。つまり、プロの脚本家ではなかった。当時彼の弁護士事務所はボストン銀行の向かいにあって、なんとなくオフィスの窓から銀行を眺めていた際に本作のアイディアを思いついたらしい。それを20~30ページほどの粗筋にまとめ、当時アカデミー賞5部門を独占した『夜の大捜査線』('67)のジュイソン監督に送ってきたのだという。これを機にトラストマンは映画脚本家へ転じ、マックイーン主演の『ブリット』やシドニー・J・フューリー監督の『黄金のプロジェクター』('73)などを手掛けることになる。

なお、本作のブルーレイは日本でもアメリカでも20世紀フォックスから発売されていたが、'18年にMGMから版権を借り受けた米Kino Lorber社が4Kレストア版ブルーレイをリリースしている。もともとスプリット・スクリーンなどで、アナログな映像の加工処理を多用している作品であるため、そうしたシーンでは依然としてフィルムグレインの濃さが目立ってしまうものの、全体的には旧盤よりも明らかにシャープで明瞭な仕上がり。色調もより自然かつ鮮やかだ。音声に関しては目立った向上は感じられず。また、旧盤の特典はノーマン・ジュイソン監督の音声解説とオリジナル予告編だけだったが、今回はジュイソン監督とパブロ・フェロの最新インタビュー映像を追加。さらに、製作当時のプロモーション用メイキング映像まで収録している。

評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:102分/発売元:Kino Lorber/MGM/20th Century Fox
特典:ノーマン・ジュイソン監督の音声解説/映画評論家レム・ダブスとニック・レッドマンの音声解説/ノーマン・ジュイソン監督のインタビュー('18年制作・約19分)/パブロ・フェロのインタビュー('18年制作・約8分)/メイキング映像「Three's a Company」('68年制作・約9分)/オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2019-04-15 02:50 | 映画 | Comments(0)

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