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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「アドルフ・ヒトラー/最後の10日間」 Hitler: The Last 10 Days (1973)

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監督:エンニオ・デ・コンチーニ
製作:ウォルフガング・ラインハルト
原作:ゲルハルト・ボルト
脚色:イワン・モファット
脚本:エンニオ・デ・コンチーニ
   マリア・ピア・フスコ
   ウォルフガング・ラインハルト
撮影:エンニオ・グァルニエリ
編集:ケヴィン・コナー
音楽:ミーシャ・スポリアンスキー
出演:アレック・ギネス
   サイモン・ワード
   ドリス・カンストマン
   アドルフォ・チェリ
   ダイアン・シレント
   ガブリエル・フェルゼッティ
   エリック・ポーター
   ジョス・アックランド
   ジョン・ベネット
   ジュリアン・グローヴァー
   バーバラ・ジェフォード
   マーク・キングストン
   アンジェラ・プレザンス
   フィリップ・ストーン
   ティモシー・ウェスト
ナレーション:アリステア・クック
イギリス・イタリア合作/106分/カラー作品




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<あらすじ>
1945年4月20日、ソ連軍が間近に迫りドイツ敗戦も時間の問題となっていたベルリン。アドルフ・ヒトラー(アレック・ギネス)と愛人エヴァ・ブラウン(ドリス・カンストマン)、主だったナチス高官らが居住する総統地下壕に、若い国防軍士官ホフマン大尉(サイモン・ワード)が緊迫した戦況を伝えるため到着する。総統のお眼鏡に適った彼は、陸軍大将ハンス・クレープス(アドルフォ・チェリ)の補佐役として地下壕に残ることとなった。
当日はヒトラーの誕生日。地下壕内は祝賀ムードに包まれ、エヴァや側近たちに囲まれた誕生パーティにご満悦の総統だったが、しかし誰もが内心では迫りくる敗戦の足音に不安を抱えている。クレープスやヴィルヘルム・カイテル元帥(ガブリエル・フェルゼッティ)、ヴィルヘルム・ブルクドルフ大将(ジョス・アックランド)、ヨーゼフ・ゲッベルス(ジョン・ベネット)らはベルリンからの避難を再三進言していたが、ヒトラーはこれを断固として拒否し、ソ連軍に対する総攻撃をシュタイナー軍集団に指示する。
しかし、頼みの綱であるシュタイナー軍集団も全くの戦力不足で命令を実行できないのが現状。口ごもっていた軍幹部らも、腹をくくって総統に現実を伝えざるを得なかった。激怒して将校たちを罵るヒトラー。さらに、ゲーリング元帥から国家指揮権の委譲を要求する電報が入り、怒り狂ったヒトラーはゲーリングを裏切り者呼ばわりして全権剥奪と逮捕を命令する。
戦況がますます悪化する中、ロベルト・フォン・グライム大将(エリック・ポーター)と女性飛行士ハンナ・ライチュ(ダイアン・シレント)が地下壕に到着。ヒトラーはフォン・グライムをゲーリングの後任に指名する。しかし、その後ヒトラーの右腕ハインリッヒ・ヒムラーが連合軍と和平交渉を行っているとの情報が入り、最も信頼する忠臣ヒムラーの裏切りを知ったヒトラーは発狂せんばかりに激怒。ヒムラーの代理人であるフェーゲライン中将(ジュリアン・グローヴァー)を処刑する。もはやこれまでか。ヒトラーはいざという時の自決を示唆し、エヴァや側近たちも全員一致で同意する…。

※注意:下記レビューでは映画本編の結末に触れています。
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第二次世界大戦末期、激しい市街戦の繰り広げられるベルリンを舞台に、総統地下壕に立てこもったアドルフ・ヒトラーの最期の日々を描く…というと、誰もが思い浮かべるのは日本でも話題になったドイツ映画『ヒトラー~最期の12日間~』('04)であろう。それとほぼ同じ内容を、30年以上前に映像化していたのがイタリアとイギリスの合作映画『アドルフ・ヒトラー/最後の10日間』である。
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ただし、こちらはヒトラー56回目の誕生日に当たる'45年4月20日から物語が始まり、ヒトラーが愛人エヴァ・ブラウン(前日に結婚して夫婦となっていたが)と共に自決する4月30日までの10日間でキッチリと終る。しかも、『ヒトラー~最期の12日間~』がヒトラーの個人秘書トラウデル・ユンゲの回想録を基にしていたのに対し、『アドルフ・ヒトラー/最後の10日間』は'45年4月20日に総統地下塹壕へ着任し、死の直前のヒトラーから遺書の写しを託された3人の青年士官の1人ゲルハルト・ボルトが記した回想録が原作。それゆえに、どちらの作品も当然ながら基本的な史実の流れはほぼ一緒だが、しかしその視点や着眼点は大きく異なっている。
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イギリスの有名な放送ジャーナリスト、アリステア・クックのナレーションで、ドイツ第三帝国の栄枯盛衰が駆け足のダイジェスト版で語られた後、原作者ボルトをモデルにした国防軍士官ホフマンの総統地下壕到着で幕を開ける本作。戦火に見舞われたベルリン市民の様子なども描かれた『ヒトラー~最期の12日間~』とは対照的に、本作の物語は基本的に地下壕内のみで展開する。ただし、随所で挿入されるドキュメンタリー映像とのバランスを意識してか、一部に出てくる屋外シーン(地下壕の周辺)はセピア色のモノクロ映像で再現。なので、とりあえず地下壕内はカラー、地下壕の外はモノクロという色分けがなされている。
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監督と脚本を手掛けたエンニオ・デ・コンチーニは、巨匠ピエトロ・ジェルミの名作『刑事』('59)や『イタリア式離婚狂騒曲』('61)などの脚本で知られ、ほかにもスペクタクル史劇からマカロニ西部劇まで、幅広いジャンルを網羅したイタリアの超多作な脚本家。ドイツ第三帝国絡みでいうと、ティント・ブラス監督の『サロン・キティ』('76)も彼の仕事なのだが、本作では追い詰められたヒトラーおよび側近たちの愚かとしか言いようのない悪あがきと哀れな末路を、ある種の風刺劇的なスタイルで描いていく。
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閉鎖空間における極限下で右往左往するしかないヒトラーやナチス高官たちの狂気。彼らが誕生日祝賀会で破廉恥に浮かれ騒ぐシーンで挿入されるのは、ホロコーストの山積みになったユダヤ人の死体やベルリン市街戦で犠牲になった一般市民の死体の記録フィルムだ。さらに、地上の激しくなる砲弾の音を聞いて「シュタイナー軍集団の反撃が始まった!」と都合よく解釈したナチス将校たちが浮足立つと、ドイツ軍を次々と撃退していくソ連軍の勇猛果敢な姿が映し出され、ヒトラーが自分の偉大さを大声で力説するシーンには砲撃を受けて崩壊していくベルリンの様子が差し込まれる。
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このように、随所で当時のドキュメンタリー映像を織り込むことによって、目前に迫った敗北の現実を受け入れられず、希望的観測や精神論に逃避するしかなくなった独裁者一味の醜態を痛烈に風刺していく。そうそう、シュタイナー軍集団が兵力不足でまともに戦えないと知らされ、癇癪を起こしたヒトラーが軍司令官たちに八つ当たりするシーンも見どころ。「戦力や経験よりも重要なのは鋼の意志だ!」「必ず勝つという気概があれば勝てる!」「戦争のことは諸君なんかよりも私の方がずっと良く知っておる!」とわめき散らすヒトラーの罵声を、じっと我慢して聞いている司令官たちの顔にウンザリとした表情が浮かんでいくのは面白い。
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とはいえ、全体的には時系列に沿って地下壕内の出来事を追っただけという印象も強く、ドラマ的にはいまひとつ深みや広がりに欠けている。これをもって、ヒトラーの人間性やナチズムの本質が見えてくるわけでもない。ラスト、国家や国民のことよりも自己保身しか頭にないヒトラーの本音が暴露され、彼に心酔してきた愛人エヴァが呆然とするシーンも少なからず陳腐だ。当然、ヒトラーとエヴァが2人きりで自決するこの場面を、原作者ボルトが目撃しているはずなどないので、映画化に際して付け加えられた創作なのだが、ちょっと余計だったかもしれない。
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ただ、ヒトラーの死を知らされた側近たちが、あれだけ事前に「私たちもすぐに後を追って死にます!」と言って毒薬カプセルを受け取っていたにも関わらず、何をするかと思ったら「これでようやくタバコが吸える…」とばかりに、それまで地下壕内で禁じられていたタバコや葉巻を安堵の表情を浮かべながら吸いだす…というクライマックスはなかなか皮肉が効いている。所詮、彼らの忠誠心などその程度のものでしかなかったと。もちろん、その後のさらなる戦況悪化によって、クレープスやボルマン、さらにゲッベルス一家も自決することになるわけだが。
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ヒトラー役にはもともとダスティン・ホフマンが有力候補として挙がっていたらしいが、兼ねてからヒトラー役を熱望していた名優アレック・ギネスが猛アプローチの末に勝ち取ったという。チャップリンのようなカリカチュアを極力避けつつ、常軌を逸した独善的な独裁者の狂気と暴走を大熱演して目を見張る。あえてドイツ語訛りの英語ではなくクィーンズ・イングリッシュを使っているのも興味深い。
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そのほか、イギリスとイタリアの渋い名優ばかりを揃えたキャスティングは豪華だが、しかしエヴァ・ブラウン役のドリス・カンストマン以外にドイツ人役者がいないのは惜しまれる。アドルフォ・チェリやガブリエル・フェルゼッティなんて、どこからどう見たってイタリア人だしね…(笑)。ちなみに、そのチェリとフェルゼッティに加えてジュリアン・グローヴァーと、007映画の悪役俳優3人の顔合わせも見どころ。また、imdbなどのデータではアンジェラ・プレザンス(ドナルド・プレザンスの娘)がトラウデル・ユンゲ役となっているが、実際は総統のサイン入り写真を受け取りに地下壕を訪れるヒトラーユーゲント(青少年団)の少女兵として登場する。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:1/時間:106分/発売元:Legend Films/Paramount Pictures
特典:なし



by nakachan1045 | 2019-05-21 13:29 | 映画 | Comments(0)

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