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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「ザ・ドリーミング」 The Dreaming (1988)

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監督:マリオ・アンドレアッキオ
製作:クレイグ・ラヒフ
   ウェイン・グルーム
製作総指揮:アントニー・I・ジンネイン
原案:クレイグ・ラヒフ
   テリー・ジェニングス
脚本:マリオ・アンドレアッキオ
   ロブ・ジョージ
   ステファニー・マッカーシー
撮影:デヴィッド・フォアマン
音楽:フランク・ストランジオ
出演:アーサー・ディグナム
   ペニー・クック
   ゲイリー・スウィート
   ローレンス・クリフォード
   クリスティナ・ネーム
   ジョン・ノーブル
オーストラリア映画/87分/カラー作品




「ザ・ドリーミング」 The Dreaming  (1988)_f0367483_06234296.jpg
<あらすじ>
今からおよそ200年前、オーストラリア南部の海岸にアメリカ東部から捕鯨船が漂着し、白人の船乗りたちがアボリジニの男性を虐殺し女性をレイプした。時代は移って現代のオーストラリア。タスマニア地方のカンガルー島でアボリジニの遺跡が発見される。調査へ向かった考古学者ソーントン教授(アーサー・ディグナム)は、それが封印された墓地であることを知り、人骨と遺書に埋葬されていたブレスレットを大学へ持ち帰る。
それから9か月後、大学の考古学展示室へアボリジニの若者たちが押し入り、カンガルー島で見つかったブレスレットを元の場所へ戻すため盗み出すものの、警備員に抵抗した少女ワリンジ(クリスティナ・ネーム)が怪我をして病院に担ぎ込まれる。緊急オペを担当したのはソーントン教授の娘である外科医キャシー(ペニー・クック)。しかし、彼女の目の前でワリンジは首の骨が砕け散って死亡し、その瞬間にキャシーは不可解な幻覚に襲われる。それは、200年前に起きたアボリジニの虐殺事件で女性がレイプされる光景だった。
この件以来、たびたび幻覚を見るようになったキャシー。ワリンジの遺品として保管していたブレスレットを、仲間の若者ナジーラ(ローレンス・クリフォード)が盗み出し、気付いたキャシーは後を追うものの見失ってしまう。そこへ、ソーントン教授から母親が亡くなったとの知らせが入った。葬儀で久しぶりに再会した父と娘。そこでキャシーは、父親とナジーラが口論している姿を目撃する。自分の幻覚とブレスレットに因果関係があると考えた彼女は、その理由を問いただそうとナジーラの後を追うが、しかし若者は彼女の目の前で変死を遂げてしまう。
父親なら何か知っているかもしれない。しかし、ソーントン教授は忽然と姿を消してしまった。その行き先がカンガルー島の遺跡だと察した彼女は、夫ジェフ(ゲイリー・スウィート)に無断でタスマニア地方を目指すのだったが…。
「ザ・ドリーミング」 The Dreaming  (1988)_f0367483_06232057.jpg
'70~'80年代にかけてブームとなったオズプロイテーション(オーストラリア産エクスプロイテーション)映画のひとつである。製作総指揮を手掛けたのは、『パトリック』('78)や『吸血の館』('79)、『ジャンボ・墜落/ザ・サバイバー』('81)、『スローター・ゲーム』('82)などを手掛けた、オズプロイテーション映画の全盛期を代表する大物製作者アントニー・I・ジネイン。ただし、当時量産されていた数多のオズプロイテーション映画とは一味違った、どことなくアート志向の強いシュールなオカルト・ホラーに仕上がっている。
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舞台はオーストラリア南端にあるタスマニア地方のカンガルー島。ここには、植民地化される以前よりアボリジニの女性が捕鯨船の白人によって誘拐されたという過去があり、本作ではその暗い歴史を物語の背景にしつつ、捕鯨船の白人にレイプされ殺されたアボリジニ女性の怨念が宿ったブレスレットを巡って惨劇が起きる。ストーリーそのものは、まことにたわいない。たまたま、アボリジニ女性の怨念に憑依されてしまった女医キャシーが幻覚に悩まされ、遺跡からブレスレットを発掘した父親の考古学者ソーントン教授のもとを訪ねたところ、過去から甦った捕鯨船船員の悪霊と対峙することになるという展開も凡庸だ。そもそも、なぜ犠牲者の怨念が宿ったブレスレットから加害者の悪霊が甦るのか。論理的に考えておかしな点も少なくない。
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もともと本作は、ヒッチコック風の猟奇サスペンス映画『コーダ/殺しの戦慄』('87)で知られるクレイグ・ラヒフが監督・脚本を手掛ける予定だったが、直前になってオージー版『発情アニマル』ともいうべき『デス・ゲーム/ジェシカの逆襲』('85)のマリオ・アンドレアッキオに交代するという経緯があった。ラヒフはプロデューサーへ回り、彼の書いたオリジナル脚本もリライトされることに。アンドレアッキオ監督によると、当初の予定ではオーストラリアにおけるアボリジニ迫害の歴史にフォーカスした社会派的な映画となるはずだったが、新たに書いた脚本は映画会社からことごとく却下され、勝手にどんどん書き換えられてしまったらしい。設定が中途半端で辻褄が合わないのはそのためだ。監督としては不本意な脚本だったという。
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だからなのだろう、アンドレアッキオ監督は全編を通して徹底的にスタイリッシュかつ幻想的なカメラワークにこだわり、肝心のストーリーを半ば置き去りにするという大胆な演出を貫いている。そのため、どうしても全体的にイメージショットが多くなってしまい、物語がなかなか先に進まないという弊害は否めないだろう。恐らくそこが賛否の分かれ目になるとも思うのだが、しかしオーストラリア南部の雄大な自然を流れるような空撮ショットで捉えたオープニングをはじめ、思わずハッと目の覚めるような美しい映像も少なくない。アボリジニの少女に応急処置を施そうとしたヒロインのキャシーが最初の幻覚に襲われ、いきなり病院の手術室から200年前の洞窟へとタイムスリップするシーンでは、暗転とセットチェンジと移動撮影を巧みに使ったアナログなトリックが驚くほどの効果を上げている。
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主人公キャシーを演じるのは、オーストラリアの昼メロ女優ペニー・クック。その父親ソーントン教授役には、有名な性格俳優アーサー・ディグナムが扮している。古くは『デュエリスト/決闘者』(77)や『ストレンジ・エクスペリメント』('81)、近いところだと『ムーラン・ルージュ』('01)に『オーストラリア』('08)、『華麗なるギャッツビー』('13)など、映画ファンなら名前は知らずとも顔を見れば分かる名優だ。キャシーの夫ジェフには、その後テレビ界の大物スターとなる俳優ゲイリー・スウィート。また、米ドラマ『FRINGE/フリンジ』('08~'13)でお馴染みのジョン・ノーブルが、ソーントン教授の口うるさい上司リチャーズ博士を演じている。当時まだ40歳。これが映画デビュー作だった。
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なお、アンドレアッキオ監督は本作を最後にオズプロイテーション映画の世界から足を洗い、ファミリー向け映画やドラマ映画を撮るようになる。'94年には日豪合作の動物映画『クルタ/夢大陸の子犬』を発表して評判となった。本人曰く、単なるB級娯楽映画として撮ったつもりの『デス・ゲーム/ジェシカの逆襲』が、いつの間にかカルト的な人気を博したことで、逆に「こんな映画がまともに受け取られるようでは困る」と感じたのだとか。恐らく、基本的に真面目な人なのだろう。
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評価(5点満点):★★★☆☆
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参考DVD情報(アメリカ盤)※アドベンチャー映画『Initiation』とのカップリング
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:87分/発売元:Scorpion Releasing
特典:製作総指揮アントニー・I・ジネインのインタビュー(約11分)



by nakachan1045 | 2019-09-11 06:25 | 映画 | Comments(0)

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