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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「ナチ女収容所/続・悪魔の生体実験」 SS Lager - L'inferno delle donne (1977)

「ナチ女収容所/続・悪魔の生体実験」 SS Lager - L\'inferno delle donne  (1977)_f0367483_07490178.jpg
監督:セルジオ・ガローネ
原案:テクラ・ロマネッリ
脚本:ヴィニチオ・マリヌッチ
   セルジオ・ガローネ
撮影:マウリツィオ・チェンティーニ
音楽:ロベルト・プレガディオ
   ワシリー・コジュチャロフ
出演:パオラ・コラッツィ
   リタ・マンナ
   ジョルジオ・チェリオーニ
   セラフィノ・プロフーモ
   アッティリオ・ドッテシオ
   パトリツィア・メレーガ
   パオロ・デジディオ
   ヴィンチェンツォ・アミチ
   パオラ・レリオ
   マリエッラ・フォルジヴェーレ
イタリア映画/96分/カラー作品




「ナチ女収容所/続・悪魔の生体実験」 SS Lager - L\'inferno delle donne  (1977)_f0367483_07125515.jpg
<あらすじ>
第二次世界大戦の末期。ナチスの第5捕虜収容所では、大勢の女性捕虜がドイツ将校たちの性奴隷として慰みものにされ、もしくはストラッサー大佐(ジョルジオ・チェリオーニ)とカーロ医師(ヴィンチェンツォ・アミチ)による生体実験の犠牲となっていた。彼らはベルリンからの命令で火傷の治療法を研究しており、これまで1000人以上の捕虜が実験台となったが、しかしなかなか有効な結果が出せないでいる。そのため、ストラッサー大佐は政治犯だが有能な科学者であるエイブラハム博士(アッティリオ・ドッテシオ)の協力を仰いでいた。
そのエイブラハム博士の一人娘イディス(パオラ・コラッツィ)も捕虜となっていたが、父親の立場を配慮して収容所内では特別待遇を受けていた。しかし、責任者であるナチ親衛隊のハンス中尉(セラフィノ・プロフーモ)は、いつか彼女を自分のものにしようと狙っている。ある時、女囚デボラ(パオラ・デジディオ)らが脱走を計画するものの、カポのグレタ(パトリツィア・メレーガ)に気付かれてしまい、デボラたちは生きたままガスオーブンで火あぶりとなり、その協力者たちも拷問の末に殺されてしまう。
そうこうしているうちに、ソ連軍が捕虜収容所の近くまで迫って来ていることが分かり、ハンス中尉は捕虜全員を始末して書類を処分したうえで退却するよう部下に指示を出す。そうと知ったイディスとジャマイカ人の女パルチザン、アリーナ(リタ・マンナ)は、ドイツ軍から武器を奪って仲間の女囚たちを先導し、生き残りを賭けて反撃を開始する…。
「ナチ女収容所/続・悪魔の生体実験」 SS Lager - L\'inferno delle donne  (1977)_f0367483_07131417.jpg
言うなれば、ロジャー・コーマンが作った女囚映画『残酷全裸女収容所』('72)のナチスプロイテーション版である。父親が反ナチスの政治犯であるお嬢様育ちの白人女性イディスと、パルチザンの戦士であるジャマイカ系黒人女性アリーナが協力し、ナチス捕虜収容所の生き地獄をサバイブしつつ、やがてドイツ敗退の混乱に乗じて武器を奪い反撃に転じる。一応、主演はイディス役のパオラ・コラッツィとなっているが、しかし実質的なヒロインはアリーナを演じるパム・グリア似の褐色美女リタ・マンナ。このキャスティングも『残酷全裸女収容所』をだいぶ意識しているように思われる。
「ナチ女収容所/続・悪魔の生体実験」 SS Lager - L\'inferno delle donne  (1977)_f0367483_07130280.jpg
監督は『ナチ(卍)第三帝国/残酷女収容所』('76)のセルジオ・ガローネ。キャストの大半が同作と被っており、セットも明らかに同じものが使われていることからも分かるように、本作は『ナチ(卍)第三帝国/残酷女収容所』と同時に製作されている。ガローネ監督によると、撮影は両方まとめて7週間で終えたのだそうだ。ただ、どう見たってこちらの方がお金かかっているように見えるのは興味深いところ。特に、収容所がソ連軍による砲撃に晒される中で展開する、女囚軍団VSナチスの銃撃戦はそれなりに規模が大きい。まあ、予算の都合でソ連軍の戦車も戦闘機も兵士も一切出てこないのだが、大量の火薬を使った戦場パニックはまずまずの迫力である。もちろん、あくまでもこの種の低予算キワモノ映画としては…という断り書きは必要なのだが。
「ナチ女収容所/続・悪魔の生体実験」 SS Lager - L\'inferno delle donne  (1977)_f0367483_07130601.jpg
そんな本作最大の見どころは、前作よりも残虐度を増した拷問シーンや人体実験シーンの数々であろう。生きたまま力づくで舌を引っこ抜く、5本指の爪の間に長いマッチを刺して火を付ける、頭蓋骨を圧縮機で粉々にするなどなど、あれこれと趣向を凝らした女性への陰惨な身体的暴力描写が、それこそ見世物小屋感覚で次々と描かれていく。もちろん、酒池肉林の乱交パーティなどのエロ描写も盛りだくさん。それだけに、劇中の随所でホロコーストの記録フィルムが使用されているのは少なからず違和感が残る。犠牲となったユダヤ人の方々も、まさか自分たちの映像がこんなC級残酷ポルノ映画の一部として使われるとは思ってもみなかったろう。
「ナチ女収容所/続・悪魔の生体実験」 SS Lager - L\'inferno delle donne  (1977)_f0367483_07125169.jpg
ただ、セルジオ・ガローネ監督のインタビューを見ていると、どうも彼はロベルト・ロッセリーニやアラン・レネにでもなったつもりで、『ナチ(卍)第三帝国/残酷女収容所』や『ナチ女収容所/続・悪魔の生体実験』を撮っていたように見受けられる。なにしろ、ひとまず自分の映画が低予算ポルノであることを一応は認めつつも、「過去の暗い歴史を記憶に留めるためにも、こういう映画を作る意義はあった」と大真面目に語っているのだ。まさかとは思うが、インスピレーションのネタ元は『残酷全裸女収容所』とか『ナチ女収容所/悪魔の生体実験』('74)ではなく、実は『無防備都市』('45)や『夜と霧』('55)だったとか…!?
「ナチ女収容所/続・悪魔の生体実験」 SS Lager - L\'inferno delle donne  (1977)_f0367483_07123488.jpg
さらに、「イタリア映画に繁栄をもたらしたのはセルジオ・レオーネだ」「本来なら政府はレオーネに勲章を与えるべきだった」「私たちの作った西部劇やホラー映画がイタリアに多大な経済効果をもたらした」「私たちの映画はハリウッドにも負けなかった」などと熱弁している。要するに、イタリア映画の黄金時代を築いたのは、フェリーニやヴィスコンティといった巨匠たちによる芸術映画ではなく、リアルタイムでは過小評価された数多の商業娯楽映画であると言いたいのだろう。まあ、実際にそういう面があったことは否定できまい。
「ナチ女収容所/続・悪魔の生体実験」 SS Lager - L\'inferno delle donne  (1977)_f0367483_07130991.jpg
かつてカルロ・ポンティやディノ・デ・ラウレンティスなどイタリアの製作者たちは、金になる低予算娯楽映画を大量に生産し、そこから莫大な利益を得ることで巨匠たちによる芸術映画とのバランスを取った。彼らの作品は、賞レース受けはしても大して金にはならないからだ。生前のセルジオ・ソリーマ監督は「フェリーニやヴィスコンティが映画を作ることが出来たのは我々のおかげだ」「我々が儲けた金で彼らを食わせてやっていた」と語っていたが、恐らくガローネ監督にもそういう自負があったのだろう。とはいえ、彼の映画がエロとグロを売りにしたエクスプロイテーション映画であることには変わりないのだけれどね(^^;
「ナチ女収容所/続・悪魔の生体実験」 SS Lager - L\'inferno delle donne  (1977)_f0367483_07125911.jpg
ちなみに、本作は日本でも大ヒットしたカナダ産ナチスプロイテーション映画『ナチ女収容所/悪魔の生体実験』の続編を装っているが、もちろんこれは日本の配給会社が勝手に付けたタイトルで一切の関連性はない。しかも面白いというより呆れるのは、本作と全く同じタイトルで別の映画がVHS時代にビデオ化されていることだろう。それが、かつて大映ビデオから発売された『ナチ女収容所/続・悪魔の生体実験』。しかしこれ、実際の中身はルイジ・バッツェラ監督の『女囚ファイル・獣人地獄!/ナチ女収容所』('77)だった。どういう経緯でこんな事態が起きたのかは不明だが、当時は似たような作品が量産されていたために混同したのだろう。そのため、本作は『美女集団監禁(卍)ゲシュタポSM収容所』という別タイトルでビデオ化され、さらにDVD時代に入ると『女囚ファイル・美女集団監禁 ゲシュタポSM収容所』という新タイトルで再リリース。さらなる混乱を招くこととなった。
「ナチ女収容所/続・悪魔の生体実験」 SS Lager - L\'inferno delle donne  (1977)_f0367483_07124752.jpg
評価(5点満点):★★☆☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:1/時間:96分/発売元:Exploitation Digital/Kittymdia
特典:セルジオ・ガローネ監督インタビュー('05年制作・約15分)/オリジナル劇場予告編/スチルギャラリー



by nakachan1045 | 2019-09-23 07:15 | 映画 | Comments(0)

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