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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき

「少林寺三十六房」 少林三十六房 (1978)

「少林寺三十六房」 少林三十六房 (1978)_f0367483_23252322.jpg
監督:リュー・チャーリャン
製作:ラン・ラン・ショウ
   モナ・フォン
脚本:イー・クァン
撮影:ファン・ユータイ
武術指導:リュー・チャーリャン
音楽:チェン・ヤンユー
出演:リュー・チャーフィー
   ワン・ユー
   チェン・ウーロン
   ウィルソン・タン
   ウー・ハンシェン
   リー・ホイサン
   ハン・クォツァイ
   ロー・リエ
   ラウ・カーウィン
   ツイ・シウキョン
   ユー・ヤン
   フランキー・ウェイフン
   ユエン・シャオティエン
香港映画/115分/カラー作品




<あらすじ>
明が滅んで清の支配が広がる17世紀半ばの中国。広東では明の復興を目指す鄭成功の抵抗運動に共鳴し、この地で圧政を敷くティエン将軍(ロー・リエ)の打倒を試みる義士たちがいた。その中心人物が、若者たちを集めて私塾を開くホー氏(フランキー・ウェイフン)とその盟友イン将軍(ラウ・カーウィン)。海産物問屋の息子リュー・ユーダ(リュー・チャーフィ)もホー氏の教え子の一人だった。ところが、イン将軍によるティエン将軍の暗殺計画が失敗し、情け容赦のない反乱分子狩りが始まる。
ティエン将軍の部下であるチェン将軍(チェン・ウーロン)とタン・サンヨ(ウィルソン・タン)によって私塾が摘発され、ホー氏は自害。学生たちも次々と捕らえられて処刑される。ユーダもまた家族を皆殺しにされ、親友(ハン・クォツァイ)と共に身を隠す。一般庶民にも武術(カンフー)の心得があれば抑圧者に対して抵抗できるのに…。そう考えたユーダは親友と共に少林寺を目指すものの、その道中でタン・サンヨ一味に見つかり、親友は殺されユーダも怪我を負ってしまう。意識が朦朧としながらも歩き続けたユーダは、親切な茶屋の主人の助けもあって、なんとか少林寺にたどり着くのだった。
意識を取り戻して体調の回復したユーダは、サンダという出家名を与えられて少林寺での修行を許される。最初のうちは雑務ばかりさせられたが、1年を過ぎてようやく武術の修行が許された。ただし、少林寺の修行施設は全部で三十五房があり、最初の三十五~二十六房は基礎体力の訓練、残りの二十五房で本格的な武術を学ぶことが出来る。一日も早く武術の使い手になりたいと焦るサンダは、いきなり最上位の頂房から始めようとするも、そこは武術まで習得した者が精神修行を行う場で、サンダはあえなく追い返されてしまう。順番通りに基礎から学ぶことにしたサンダは、はじめのうちこそ精神的な未熟さゆえ失敗を重ねたが、しかしすぐにメキメキと実力を発揮し、少林寺管長も驚くほどの速さで三十五房全ての訓練を達成する。
そんなサンダを頂房を除く三十五房いずれかの住持に任命しようと考える管長。だが、サンダにティエン将軍一味への復讐という邪心があることを憂慮した戒律院住持(リー・ホイサン)が反対し、自分と勝負して勝てば住持になることを許すと申し出る。圧倒的な強さを誇る戒律院住持に歯が立たないサンダ。しかし、自己鍛錬を重ねるうちに「三節棍」という武器を考案し、ついに戒律院住持に打ち勝つ。そして、下山して三十六番目の房を民間に設立し、そこの住持として庶民に少林寺拳法を広めたいと管長に提案するサンダだったが…。

<作品レビュー>
海外では少林寺映画ブームの火付け役になったとも言われている不朽の名作だ。もちろん、それ以前からも少林寺拳法を題材にした香港のカンフー映画は存在しており、そもそもこの『少林寺三十六房』自体がカンフー映画の巨匠チャン・チェ監督の少林寺映画『洪拳與詠春(Shaolin Martial Arts)』('74・日本未公開)を下敷きにしているのだが、しかし本作が香港映画の年間興行収入ランキングでトップ10に入る大ヒットを記録したことで、ジョセフ・クオ監督の『少林寺への道』('81)など似たような設定の少林寺映画が雨後の筍のごとく作られるようになった。

翌年にはアメリカでも『Master Killer』のタイトルでグラインドハウス上映されて大好評を博し、これを見て強く影響されたラッパーのRZAは、自身のヒップホップ集団ウータン・クランのデビュー・アルバム『燃えよウータン』“Enter the Wu-Tang (36 Chambers)”のタイトルに本作を引用。メンバーであるMasta Killaの芸名も『少林寺三十六房』のアメリカ公開タイトルに由来している。また、同作を熱愛するタランティーノが『キル・ビル』('03)シリーズにリュー・チャーフィーを出演させたのはご存じの通り。日本ではリー・リンチェイ(ジェット・リー)が主演する中国映画『少林寺』('82)の大ヒットを受ける形で、'83年に劇場公開されるというタイミングの遅さだったが、しかし劇中でリュー・チャーフィーが使う三連ヌンチャク「三節棍」は、カンフー映画ファンの少年たちの間で秘かなブームとなった。

舞台は17世紀半ばの中国。明が滅んで清が全土に支配を広げる中、日本人の母親を持ち長崎の平戸に生まれた明の軍人・鄭成功が中心となり、明の復興を目指して清に抵抗する反清復明運動が起きていた。そんな動乱の時代を背景に、広東で圧政を敷く明のティエン将軍(ロー・リエ)一味に家族や友人を皆殺しにされた若者ユーダ(リュー・チャーフィー)が、少林寺に入門して拳法の奥義を習得し、さらに門外不出とされた少林寺拳法を反清復明の若き義士たちに伝授することで、ティエン将軍一味を打倒して復讐を果たすまでが描かれる。

まさしく少林寺映画の王道…というよりもカンフー映画の王道とも呼ぶべきストーリーで、それ自体にはなんら特筆すべきものはないのだが、本作がその他の少林寺映画・カンフー映画と比べて特に傑出している見どころは、主人公ユーダ(出家してサンダ)が少林寺拳法を習得するまでの、ウルトラハードかつバラエティに富んだ本格的なトレーニング描写にあると言えるだろう。

劇中で説明されるところによると、少林寺には三十五房…要するに「35種類の訓練施設」があり、各房では特定の肉体部位や技術の鍛錬を集中して行う。最初の三十五~二十六房では、足腰の平衡バランスや視覚的な反射神経など肉体面での基礎訓練を行い、拳術や刀術などの武器を使った実技的な訓練は二十五房以上。さらに、最上位の頂房(一房)では精神修行を行って悟りの境地を開く。さすがに2時間以内の映画でその全てを描くわけにはいかず、見た目的に観客の興味や関心を呼ぶような房をセレクトし、過酷な訓練を経て各房の課題をクリアして技術を習得していくユーダの姿が描かれるわけだ。

これが実に面白い。それこそ奇想天外な離れ業やトレーニング課目が次々と出てくるのだが、しかし決して荒唐無稽というわけではなく、実際に武術訓練としてこれはアリだろう、ぶっちゃけかなり有効なのでは?と素人でも思えるような現実味のさじ加減が絶妙。非常に合理的なのだ。しかも、演じるリュー・チャーフィーは実際に幼少期から武術の英才教育を受けた達人なので、ほとんどシーンでガチなトレーニング風景を見せてくれる。これはカンフー映画ファンでなくともテンションあがること間違いなし。本編の6~7割がたを三十五房の訓練シーンに費やしているのも納得。これこそが、武術監督出身で洪家拳の達人でもあるリュー・チャーリャン(ラウ・カーリョン)監督が本作で描きたかった最大のテーマであろう。

もちろん、終盤で展開するティエン将軍一味を相手にしてのチャンバラ・アクションも大きな見どころ。これは先述した訓練シーンでも同様なのだが、少林寺拳法の巧みな技をロングショットでたっぷりと余すところなく見せてくれる。しかも、ほかのカンフー映画でたびたび用いられる、早回しなどの映像技術的な小細工は一切なし。大勢の敵軍を相手に、ユーダと仲間たちが次々と少林寺拳法の技を繰り出して戦う群衆バトルも、細部まで綿密に計算されたスタントワークとカメラワークに息を呑む。その圧倒的な熱量に比して、クライマックスの呆気なさは意表を突かれるが、それもまた本作独特の味みたいなものと言えよう。

主演のリュー・チャーフィーはこれが初めての大役。デヴィッド・チャンやティ・ロンなど、ルックスと実力を兼ね備えた若手イケメン俳優が活躍していた'70年代当時、堅いイメージで平凡な顔立ちのチャーフィーはなかなか芽が出なかったものの、しかし本作の真面目で一途で素朴な若者ユーダ(サンダ)という役柄はピッタリのはまり役。これを機に一躍注目を集めることとなる。ちなみに、チャーフィーによるとサンダという少林寺の僧侶は実在したらしく、彼が三十六房の始祖となったことも事実であり、本作ではそれを基にして自由な脚色を加えたのだという。

なお、本作は日本を含めて世界各国で既にブルーレイ化されているが、筆者が所有するアメリカ盤にはメイキング・ドキュメンタリーやリュー・チャーフィーのインタビューなどの特典映像をたっぷりと収録。まあ、日本盤に入っている監督インタビューはないので、両者を比べると一長一短ではあるが、ボリューム的にはアメリカ盤の方がお得感はある。本編は恐らく日本盤と同一のHDマスターであろう。惜しむらくは、音声トラックがドルビー・デジタル収録であることか。

評価(5点満点):★★★★☆



参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:広東語・北京語・英語/字幕:英語・スペイン語/地域コード:ALL/時間:112分/発売元:The Weinstein Company/Vivendi Entertainment
特典:RZAと評論家アンディ・クレインによる音声解説/メイキング・ドキュメンタリー「Shaolin: A Hero's Birthplace」('03年制作・約17分)/リュー・チャーフィーのインタビュー('07年制作・約16分)/評論家デヴィッド・シュートとアンディ・クレインのインタビュー('07年制作・約8分)/RZAのインタビュー('07年制作・約10分)/ウータン・クラン「Gravel Pit」ミュージックビデオ(約2分)/ポスター&スチル・ギャラリー/オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2020-03-14 19:37 | 映画 | Comments(0)

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