なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「捨身の一撃」 A Lawless Street (1955)

製作:ハリー・ジョー・ブラウン
共同製作:ランドルフ・スコット
原案:ブラッド・ウォード
脚本:ケネス・ガメット
撮影:レネ・レナハン
音楽:ポール・ソーテル
出演:ランドルフ・スコット
アンジェラ・ランズベリー
ワーナー・アンダーソン
ジーン・パーカー
ウォーレス・フォード
ジョン・エメリー
ジェームズ・ベル
ルース・ドネリー
マイケル・ペイト
ドン・メゴワン
ジャネット・ノーラン
アメリカ映画/77分/カラー作品

<あらすじ>
西部の町メディスン・ベンドの保安官ケイレム・ウェア(ランドルフ・スコット)は、その正義感の強さゆえにこれまで様々な無法地帯を治め、その実績を買われて町一番の有力者ディーン氏(ジェームズ・ベル)に治安の改善を一任されていた。そのおかげで町の秩序は保たれていたが、一方でケイレムに恨みを持ったり、彼を邪魔者と感じている無法者も少なくない。また、彼にはタリー(アンジェラ・ランズベリー)という妻がいるものの、しかし命が幾つあっても足りない夫の仕事に気が気でない彼女は、何よりも悪人退治を優先するケイレムと一緒では安心できないからと別居し、今は旅回りの一座の花形歌手として各地を公演していた。
そんなある日、ケイレムを恨む無法者ディンゴ・ブリオン(フランク・ハグニー)が町に現れ、床屋で彼の命を狙うものの反撃を受けて射殺される。遺体からは多額の現金が発見され、何者かにケイレムを殺すよう依頼されたことが推測された。引き取りに来たディンゴ夫人(ジャネット・ノーラン)と弟ドゥーリー(ドン・メゴワン)は心当たりがないという。夜になってドゥーリーが酒場で暴れていると医師エイモス(ウォーレス・フォード)から聞いたケイレムは、巨体で怪力のドゥーリーに手こずるものの、乱闘の末になんとかなだめることに成功する。
その頃、劇場主ソーン(ワーナー・アンダーソン)に招待され、タリーの在籍する一座が町へ巡業に訪れていた。久しぶりに再会したケイレムとタリーは改めてお互いへの愛情を確認するものの、一連の騒動を目の当たりにしたタリーは夫が全く変わっていないことに落胆する。一方、ディーン氏の夫人コーラ(ジーン・パーカー)と浮気していたソーンは、もっと若くて美しいタリーに目をつけていたのだが、彼女がケイレムの妻と知って嫉妬心を燃やす。
実は、そのソーンと酒場の店主コディ(ジョン・エメリー)こそが、ケイレムを殺すためにディンゴを雇った張本人だった。近々近隣の炭鉱が再開されると聞いた2人は、これを絶好のビジネスチャンスだと考え、町を暴力支配して荒稼ぎしようと考えていたが、その計画に邪魔なのがケイレムだったのだ。彼らは新たにバスカム(マイケル・ペイト)という腕利きのガンマンを雇い、ケイレムを殺すように指示する。そして、あろうことかケイレムはバスカムの銃弾に倒れてしまった。たちまち無法者たちで溢れかえるメディスン・ベンドの町。しかし、実は医師エイモスやドゥーリーの助けでケイレムは一命を取りとめており、町の治安を取り戻すべく反撃の準備をしていた…。

<作品レビュー>
ハリウッドを代表する西部劇スターとして、アメリカではジョン・ウェインにも匹敵する人気を誇った俳優ランドルフ・スコット。大女優マレーネ・ディートリヒと共演した『スポイラース』('42)のような大作西部劇のほか、ミュージカル映画『ロバータ』('35)やコメディ映画『ママのご帰還』('40)など様々なジャンルの名作映画で活躍し、ジョン・ウェインとは違って現代劇の都会的な紳士を演じても様になる二枚目だったが、しかしそんな彼が本領を発揮したのは低予算のB級ウェスタンであった。特に'50年代はその全盛期で、映画史的にはさほど重要ではないものの、良質なプログラム・ピクチャーとしてのB級西部劇に次々と主演してヒットさせ、斜陽となりつつあったハリウッドで最も観客を呼べる俳優の一人として活躍。その中のひとつが、この『捨身の一撃』である。

スコットが演じるのは、無法者どもがひしめく西部のあちこちの町で保安官を歴任し、悪者たちを一掃して町に平和と秩序をもたらすことをライフワークにする正義の人ケイレム・ウェア。そのおかげで人気歌手の妻タリー(アンジェラ・ランズベリー)には愛想を尽かされてしまったが、今はメディスン・ベンドという町の保安官として善良な住民たちから絶大な信頼を得ている。ところが、長らく閉鎖されていた近隣の炭鉱が再開されることとなり、利権ビジネスを狙う町の有力者たちが邪魔になるケイレムを亡き者にしようと画策し、次々と殺し屋を送り込んでくる。一度は敵の銃弾に倒れて重傷を負ってしまったケイレムだが、友人たちの協力で自らの死を偽装して頃合いを見計らい、やがて反撃に転じていく…というお話だ。

かつてのハリウッド西部劇といえば、勧善懲悪の単純明快なストーリーが基本。日本の時代劇と比較されることの多い所以だ。その後、ロバート・アルドリッチやサム・ペキンパーの登場、セルジオ・レオーネを筆頭とするマカロニ・ウエスタンの台頭、さらにはアメリカン・ニューシネマの時代の到来によって、リアルなバイオレンスとシニカルで複雑なドラマを重視する作品が主流となるものの、しかし'50年代当時はまだまだ古き良き正統派西部劇が健在だった。本作などはまさにその好例で、純然たる善と純然たる悪の戦いはどこまでもシンプルで、最後には必ず正義が勝つというお決まりの展開も分かりやすい。主人公にもこれといって深い葛藤や迷いなどはなく、ただひたすら純粋に正義を信じて突き進んでいく。安直と言えば安直だけれど、しかしそれこそが西部劇本来の醍醐味だ。

監督は『拳銃魔』('49)や『暴力団』('55)などのスタイリッシュなフィルムノワール映画でマニアに評価の高い職人監督ジョゼフ・H・ルイス。これは彼にとって数少ない西部劇のひとつであり、基本的にはジャンルの王道をきっちりと踏襲しているものの、それでもなお随所で表現主義的な技法を用いるなど、なにげにノワール・チックな演出がチラホラと見え隠れするのは面白い。悪役のキャラクターがちょっとばかり小粒で、いまひとつ怖さにも憎らしさにも欠けるうえ、形勢が悪くなると尻尾を巻いてさっさと逃げ出すヘタレなところは物足りないが、細部まできっちりと作り込まれた豪華な美術セットやコスチュームを、鮮やかなテクニカラーの色彩で存分に楽しませてくれる。こういう丹念な職人技の光る良質な2本立て向けプログラム・ピクチャーを作るだけの余裕が、まだ当時のハリウッド映画界にはあったのだ。

ただ、惜しむらくは主演のランドルフ・スコットがいまひとつ精彩に欠いているところか。当時すでに50代後半だったスコットは、ダンディで寡黙な高倉健的ヒーロー像で人気を博したわけだが、本作では明朗快活で実直な保安官という役柄のせいなのか、かえってどこかやつれて見えるのだ。しかも、相手役が親子ほど年の離れた女優アンジェラ・ランズベリーということもあって、必要以上に年齢が強調されてしまった感は否めない。なんというか、オジサンが無理に頑張って若作りしているようにしか見えないのだ。恐らく、一回り以上若い役者が演じるべき役柄だったかもしれない。

そのアンジェラ・ランズベリーはヴォードヴィル一座の歌手という役どころで、劇中ではセクシーなコスチュームでの歌唱パフォーマンスも披露している。お色気担当は意外と珍しいかもしれない。脇役で印象的なのは、心優しき医師エイムス役のウォーレス・フォード。もともとは『怪物團(フリークス)』('32)などホラー映画の主演スターだった人だが、本作の当時は西部劇の名脇役として引っ張りだこだった。ちなみに、ジョン・フォード映画の常連でもあったが血縁関係はない。また、怪力の巨漢で純粋だが酒癖の悪いドゥーリーを演じるドン・メゴワンも好演。使いようによってはかなり美味しいキャラなので、出番があまり多くないのは少々惜しまれる。

そのほか、『若草物語』('33)のベス役でも有名な'30年代の人気女優ジーン・パーカー、『スミス都へ行く』('39)や『聖メリーの鐘』('45)など数多くの名作に出演した老け役専門の名脇役女優ルース・ドネリー、大女優タルラ・バンクヘッドの旦那だったことでも知られるジョン・エメリーなどが脇を固めている。なお、ケイレムの宿敵バスカムを演じているマイケル・ペイトはオーストラリア出身の俳優で、ジョン・ウェイン主演の『ホンドー』('53)で演じたアパッチ族の酋長ヴィットロ役が恐らく最も有名だろう。

評価(5点満点):★★★☆☆
参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:日本語/地域コード:2/時間:77分/発売元:ソニー・ピクチャーズ
特典:予告編
by nakachan1045
| 2020-03-16 13:40
| 映画
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