なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「地獄の私刑・黒い欲望の報酬」 Revenge (1971)

監督:シドニー・ヘイヤーズ
製作:ジョージ・H・ブラウン
脚本:ジョン・クルーズ
撮影:ケン・ホッジズ
音楽:エリック・ロジャーズ
出演:ジョーン・コリンズ
ジェームズ・ブース
レイ・バレット
シンニード・キューサック
ケネス・グリフィス
トム・マーシャル
ズレイカ・ロブソン
イギリス映画/89分/カラー作品

<あらすじ>
幼い少女が性的暴行を受けた末に殺されるという事件が相次ぎ、シーリー(ケネス・グリフィス)という一人暮らしの中年男が容疑者として逮捕されるものの、証拠が不十分と見なされて釈放される。これを知って憤慨したのは、それぞれ娘が事件の犠牲となったパブ経営者ジム・ラドフォード(ジェームズ・ブース)と友人ハリー(レイ・バレット)。彼らは自宅へ戻ったシーリーを尾行し、近所の学校で少女を物色するような彼の行動を見て、シーリーが真犯人であると確信する。
ジムの殺された娘ジェニーは妻キャロル(ジョーン・コリンズ)との間の子供だったが、彼には別れた先妻との間に20代の長男リー(トム・マーシャル)と10代の娘ジル(ズレイカ・ロブソン)がいた。息子リーとハリーはシーリーを拉致して自白させようと考えるが、しかしジムは万がいち彼が真犯人でなかったらと考えて躊躇する。しかし、2人に説得されて拉致計画を実行に移すこととなった。
仕事帰りのシーリーを待ち伏せて車に連れ込もうとするジムたち。しかし、予定外のアクシデントが重なったせいで手間取り、その騒音に気付いて目撃していた住民がいたのだが、無我夢中の3人は全く気付かなかった。なんとかシーリーを拉致してパブの地下倉庫に監禁し、事態を知ったキャロルも加わってシーリーに激しい暴行を加える被害者家族たち。その結果、シーリーは大けがを負って意識不明となり、もはや尋問どころではなくなってしまう。狼狽して頭を抱えるジムにキャロル、リー、ハリーの4人。今さら病院へ連れてはいけないし、自分たちが逮捕されることを考えると警察にも通報できない。かといって、いっそのこと息の根を止めて始末するだけの度胸も彼らにはなかった。
そのままシーリーを地下室に閉じ込め、何食わぬ顔をして普段通りにパブを営業しつつ、決断を先延ばしにするジムとキャロル。そうこうしているうちにリーの恋人ローズ(シンニード・キューサック)や娘ジェニーが異変に気付き始め、さらに警察もパブの周辺を捜査するようになり、そのストレスからラドフォード家の人々は徐々に壊れていく。そればかりか、シーリーが無実である可能性まで浮上してしまう…。

<作品レビュー>
第二のエリザベス・テイラーとしてイギリスからハリウッドへと招かれ、'50年代に人気を博した妖艶な英国女優ジョーン・コリンズ。しかし、'60年代後半になると徐々に落ち目となり、イギリスへ戻って低予算のホラー映画やサスペンス映画に出演するようになる。その後、姉ジャッキー・コリンズのベストセラー小説を映画化した『ザ・スタッド』('78)の大ヒットで見事に復活を果たし、'80年代に入るとテレビ『ダイナスティ』('81~'89)の悪女アレクシス役で一世を風靡するわけだが、それ以前の低迷期に数多く出たB級映画のひとつが、この『地獄の私刑・黒い欲望の報酬』('71)である。

「Revenge」という非常にシンプルな原題だが、実際にストーリーのテーマもまさしく「復讐」。ロンドン近郊の田舎町で幼児性愛者による連続幼女暴行殺人事件が発生し、一度は幼稚園の近くに住む独身の中年男性シーリー(ケネス・グリフィス)が容疑者として逮捕されるものの、証拠が不十分で釈放されてしまう。これに憤慨したのが被害者の家族。パブ経営者のジム・ラドフォード(ジェームズ・ブース)は後妻キャロル(ジョーン・コリンズ)との間にもうけた3番目の末っ子ジェニーを殺され、その友人ハリー(レイ・バレット)も同じように幼い娘が犠牲となっていた。これにジムと先妻との間の長男リー(トム・マーシャル)が加わり、3人はシーリーの拉致監禁を計画。自分たちの手で犯行を自供させて制裁しようというのだ。

ところが、なにしろ全くの素人集団。用意周到に手順を練ったはずの拉致計画は、思いがけないハプニングが重なって手間取ってしまう。辛うじてシーリーを拉致してパブの地下倉庫へ監禁するも、まずは尋問から始めるはずが興奮した彼らは寄ってたかってシーリーに暴行を加え、相手は大けがを負って意識不明の重体に陥る。もはや尋問どころではなく、キャロルも加わって途方に暮れる被害者家族たち。確実に自分たちが暴行罪などに問われるため警察や病院に連絡は出来ないし、かといって証拠隠滅のためシーリーを殺すような度胸も彼らにはなかった。そのため、ジムたちは地下倉庫にシーリーを閉じ込めたまま、何食わぬ顔で普段通りの生活をする。放置しとけば自然に死んでしまうだろうと考えたのだ。

しかし、そう簡単に物事は思い通りになど行かない。虫の息だったシーリーが回復して意識を取り戻してしまったのだ。なんとか平静を装ってパブの営業を続けるジムたちだが、しかし中学生の次女ジル(ズレイカ・ロブソン)や店を手伝うリーの恋人ローズ(シンニード・キューサック)が徐々に地下室の異変に気付き始め、さらには忽然と姿を消したシーリーの行方を捜す刑事たちがパブの周辺を捜索し、店に来た業者が酒樽を地下室に運び込もうとする。そのたびに生きた心地のしないジムにキャロル、リーの3人。やがて精神的に追い詰められた彼らは、お互いにいがみ合うようになり、復讐どころか家庭崩壊の危機に。そればかりか、シーリーが無実である可能性まで浮上する…。

警察の捜査に不満を持った殺人事件の被害者家族が、短絡的な素人の浅知恵で容疑者への復讐計画を実行したところ、とんだしっぺ返しを食らってしまうというお話。一般人が刑事の真似事をしてもろくなことにはなりませんよという教訓だが、しかし基本的にはセンセーショナリズムを煽る下世話なエクスプロイテーション映画であるため、これといって崇高な社会派的メッセージがあるわけではない。なので、美人で色っぽい熟女の継母に日頃から欲情していた長男が、癇癪を起したついでに容疑者の目の前で継母をレイプするという強引すぎる展開も。これで、実は容疑者と目された男が無実だった…となれば、それなりに重みのある作品になったのだろうけど、クライマックスがあれですからねえ。まあ、これはこれでカタルシスのあるオチだとは思うのだが、安っぽいB級スリラーに終始してしまった感は否めないだろう。

それもそのはず、なにしろ監督は『殺人鬼登場』('60)や『血臭の森』('71)といった英国産B級スリラー映画でお馴染みのシドニー・ヘイヤーズ。中途半端に生ぬるいショック演出で不完全燃焼することの多いヘイヤーズにしては、なかなかスリリングかつハードなバイオレンス描写の多い作品なので、'70年代のグラインドハウス系エログロ映画を愛するマニアでもそれなりに楽しめるはずだ。ちなみに、アメリカでは「Inn of the Frightened People」というタイトルで劇場公開され、ビデオ発売時には「Terror from Under the House」と改題されている。

レイプシーンでトップレスのヌードまで披露して大熱演する当時38歳のジョーン・コリンズだが、実質的な主演は夫のジムを演じているジェームズ・ブース。『ズール戦争』('64)の軍人役や『大列車強盗団』('67)の刑事役などで知られるコワモテ俳優だが、本作のように平凡な父親役というのはけっこう珍しいかもしれない。そんな彼に拉致計画をたきつける友人ハリー役には、ハマー・ホラー『蛇女の恐怖』('66)に主演したレイ・バレット。テレビ『サンダーバード』('65~'66)の次男ジョン・トレイシー役の声優としても有名な俳優だ。容疑者シーリーを演じているケネス・グリフィスは、『ワイルド・ギース』('78)の衛生兵ウィッティ役や『シーウルフ』('80)の機械工ウィルトン役などのアクション映画でお馴染み。また、後に舞台の名女優となる現ジェレミー・アイアンズ夫人シンニード・キューサックが顔を出しているのも要注目だ。

評価(5点満点):★★★☆☆
参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.66:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/地域コード:1/時間:89分/発売元:Scorpio Releasing
特典:カトリーナ・リー・ウォルターズによるイントロ&アウトロ
by nakachan1045
| 2020-03-21 15:37
| 映画
|
Comments(0)
以前の記事
2026年 04月2026年 03月
2026年 02月
2026年 01月
2025年 12月
2025年 11月
2025年 10月
2025年 09月
2025年 08月
2025年 07月
2025年 06月
2025年 05月
2025年 03月
2025年 02月
2025年 01月
2024年 12月
2024年 11月
2024年 10月
2024年 09月
2024年 08月
2024年 07月
2024年 06月
2024年 05月
2024年 04月
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
最新のコメント
| “Hanzo The R.. |
| by Matemu at 07:49 |
| > Matemuさん .. |
| by nakachan1045 at 22:54 |
| 前回の丁寧な御回答に感謝.. |
| by Matemu at 13:32 |
| > にこらさん 書き込.. |
| by nakachan1045 at 08:59 |
| (3)日本におけるシャン.. |
| by にこら at 23:46 |
| なかざわ様、 最近シャ.. |
| by にこら at 23:45 |
| > Matemuさん .. |
| by nakachan1045 at 13:14 |
| 2024/6/5に発売さ.. |
| by Matemu at 05:08 |
| この映画はデンマーク軍が.. |
| by na at 08:27 |
| ランドマスターは本当にか.. |
| by na at 17:53 |
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
ハリウッド映画(546)70年代(357)
ホラー映画(288)
60年代(271)
80年代(217)
イタリア映画(186)
アクション(132)
ダンス(132)
ドラマ(122)
ポップス(113)
50年代(108)
サスペンス(107)
イギリス映画(107)
カルト映画(95)
30年代(70)
70年代音楽(63)
日本映画(61)
ロマンス(60)
40年代(59)
2020年代音楽(50)
80年代音楽(48)
SF映画(46)
コメディ(46)
フランス映画(44)
ノワール(41)
ソウル(40)
90年代(40)
ジャッロ(39)
1920年代(37)
西部劇(35)
K-POP(34)
香港映画(32)
エロス(28)
ドイツ映画(26)
スペイン映画(26)
ファンタジー(23)
サウンドトラック(21)
ミュージカル(21)
歴史劇(21)
ワールド映画(21)
戦争(20)
2010年代音楽(20)
アドベンチャー(19)
ラテン(19)
テレビ(18)
メキシコ映画(18)
イタリア映画音楽(18)
2000年代音楽(18)
90年代音楽(18)
アニメーション(17)
1910年代(16)
ルーマニアン・ポップス(15)
スパイ(14)
ロシア映画(13)
アナウンス(11)
時代劇(10)
60年代音楽(10)
ラウンジ(9)
カナダ映画(9)
ロック(9)
フィリピン映画(9)
ロシア音楽(8)
バルカン・ポップス(7)
青春(7)
ジャズ(7)
フレンチ・ポップ(6)
シットコム(5)
EDM(5)
フリースタイル(5)
連続活劇(4)
2010年代(4)
シャンソン(3)
2000年代(3)
J-POP(3)
LGBT(3)
イタロ・ディスコ(3)
パニック(3)
フランス映画音楽(2)
韓国映画(2)
アンダーグランド(2)
トルコ映画(2)
カントリー・ミュージック(2)
00年代音楽(2)
オーストラリア映画(2)
カントリー(1)
インド映画(1)
伝記映画(1)
文芸(1)
民族音楽(1)
2020年代(1)
ブラジル音楽(1)
1920年代音楽(1)
ヒップホップ(1)
サルサ(1)
ギリシャ音楽(1)
音楽DVD(1)
音楽ライブ(1)
ギャング(1)
ブログパーツ
最新の記事
| DANCE CLASSICS.. |
| at 2026-04-17 00:42 |
| DANCE CLASSICS.. |
| at 2026-04-16 01:46 |
| 「Intégrale Pat.. |
| at 2026-04-15 00:49 |
| DANCE CLASSICS.. |
| at 2026-04-14 00:11 |
| DANCE CLASSICS.. |
| at 2026-04-13 01:43 |

