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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「戦う幌馬車」 The War Wagon (1967)

「戦う幌馬車」 The War Wagon  (1967)_f0367483_12383145.jpg
監督:バート・ケネディ
製作:マーヴィン・シュワルツ
原作:クレア・ハフェイカー
脚本:クレア・ハフェイカー
撮影:ウィリアム・H・クローシア
音楽:ディミトリ・ティオムキン
主題歌:エド・エイムズ
出演:ジョン・ウェイン
   カーク・ダグラス
   ハワード・キール
   ロバート・ウォーカー・ジュニア
   キーナン・ウィン
   ブルース・キャボット
   ジョアナ・バーンズ
   ヴァロラ・ノーランド
   ブルース・ダーン
アメリカ映画/101分/カラー作品




<あらすじ>
無実の罪で投獄されていた元牧場主トウ・ジャクソン(ジョン・ウェイン)が仮釈放され、故郷の町エメットへと帰ってくる。自分を陥れた悪徳実業家フランク・ピアース(ブルース・キャボット)に復讐するためだ。ピアースはジャクソンの牧場に莫大な金脈が眠っていることを知り、それを奪うためにジャクソンに濡れ衣を着せて土地を奪ったのである。今や巨万の富を築いたピアースは、自ら「戦う幌馬車」と名付けた装甲馬車で砂金を運んでいた。それを奪おうと考えたジャクソンは、長年のライバルである無法者ロマックス(カーク・ダグラス)とタッグを組むことにする。腕利きのガンマンであると同時に金庫破りのプロだからだ。
その頃、2人の計画を知らないピアースは、ジャクソンが戻ったことを聞いてロマックスにジャクソン暗殺を依頼する。報酬は1万ドル。しかし、ジャクソンの持ち掛けた強奪計画が成功すれば取り分は10万ドルだ。迷うことなく後者を選んだロマックスは、ピアースの差し向けた連絡係ハモンド(ブルース・ダーン)らをジャクソンと2人で始末する。
早速、ジャクソンはさらなる仲間を招集する。ピアースの部下として潜入させておいた旧友フレッチャー(キーナン・ウィン)、牢屋で知り合った爆薬専門家ビリー(ロバート・ウォーカー・ジュニア)、怪力の先住民リーヴァイ(ハワード・キール)の3人だ。いずれも一筋縄ではいかない連中で、ロマックスは一抹の不安を禁じ得ない。特に若くて未熟なビリーは大酒飲みで口が軽く、そのうえフレッチャーが金で買った若妻ケイト(ヴァロラ・ノーランド)に横恋慕するなど、次々とトラブルを起こして計画を危険に晒してしまう。
一方、リーヴァイを通じて先住民部族の協力を取り付けたジャクソンは、逃げ場のない平野部で「戦う幌馬車」を襲うべく綿密な計画を立てるのだが、しかしピアースらは装甲馬車に最新鋭の武器を搭載していた。元祖機関銃「ガトリング砲」である。しかも、思いがけない裏切り行為がジャクソンらを待ち受けていた…。

<作品レビュー>
いやあ、これはシンプルに面白い!ジョン・ウェインにカーク・ダグラスという、2大タフガイ・スターの顔合わせによる正統派のハリウッド西部劇である。'67年といえば『俺たちに明日はない』や『卒業』が公開された、いわばアメリカン・ニューシネマ元年とも呼ぶべきターニングポイントの年。既に当時の多くのハリウッド西部劇は古典的な勧善懲悪のヒロイズムから脱却し、さらには『荒野の用心棒』('64)に始まるマカロニ西部劇ブームの洗礼を受ける中で大きく変容していたわけだが、本作はあえてそうしたコンテンポラリーな西部劇を志向せず、古き良きハリウッド産B級西部劇の明朗快活&痛快なエンタメ精神を貫いたのが吉と出たのかもしれない。

主人公は無実の罪で投獄された元牧場主トウ・ジャクソン(ジョン・ウェイン)。彼の所有する土地に莫大な金脈が眠っていたことから悪徳実業家フランク・ピアース(ブルース・キャボット)に狙われ、犯罪者の濡れ衣を着せられて土地を奪われてしまったのだ。それから3年後。模範囚として仮釈放されたジャクソンは故郷の町へ戻り、今や町の支配者となったピアースに復讐しようとする。といっても、別にヤツを殺してしまおうというわけじゃない。それじゃあ、あまりにも芸がないし面白くないもんね。それよりも、金の亡者であるピアースの大切な財産をかすめ取って、相手の鼻をあかしてやる方がずっとスマート。ってことで、ジャクソンはピアース一味が砂金を運搬する装甲馬車を襲撃し、50万ドル分の砂金を奪ってやろうとするわけだ。

そこでジャクソンが強盗計画のパートナーに選んだのが、自他ともに認める長年のライバル、ロマックス(カーク・ダグラス)。なぜジャクソンとロマックスが敵対しているのか劇中では詳しく説明されないが、どうやらお互いに勝るとも劣らぬ凄腕のガンマンゆえ、相手の存在を鬱陶しく感じているようだ。特にロマックスの方がね。とはいえ、どちらも決して相手のことが嫌いなわけじゃない…というより、むしろ大好きなんじゃないか?と思えるくらい、お互いに憎まれ口をたたきながらも仲は良さげ。まるで、気心の知れた腐れ縁の夫婦みたいだ。そんな好敵手ジャクソンとロマックスの、さながら夫婦漫才のごときユーモラスな共犯関係こそが、本作最大の魅力であり見どころと言えるだろう。昔気質の頑固で石頭なジョン・ウェインと、ヤンチャで抜け目ないカーク・ダグラスの好対照な個性もバランス良し。2人とも実に楽しそうだ。

一方、ジャクソンが町に舞い戻ったと知って悪漢ピアースは戦々恐々。やられる前にやっちまえ!とばかりに、殺し屋を雇ってジャクソンを始末しようとするのだが、あろうことか白羽の矢を立てた相手はロマックス(!)。なるほど、ジャクソンに敵う相手はロマックスしかいないという理屈はよく分かるのだが、それにしても2人が既にタッグを組んで自分から砂金を奪おうとしているなどとは露も知らず、わざわざ敵に手の内を見せてしまう羽目になるのがなんとも滑稽で情けない。その後も終始こんな感じで、宿敵ピアースは欲深くて狡賢いくせにマヌケなお山の大将、その手下たちも親分の威を借りてふんぞり返っているわりには全くの役立たずばかりと、とにかく本作は悪者たちを徹底的にコケにする。最期の負け方もカッコ悪いことこの上なし。悪人には一瞬たりともいい格好はさせません(笑)。ちなみに、ピアース役を演じるのは『キング・コング』('33)の船乗りジャックことブルース・キャボット。その手下には若き日のブルース・ダーンもいる。すぐに殺されるけど。

さてさて、ひとまずピアースにバレないよう強奪計画を進めつつ、2人だけで馬車を襲うのは無理なので仲間を集めるジャクソンとロマックス。予めピアース側に潜入させておいた短気な運び屋フレッチャー(キーナン・ウィン)に加え、ジャクソンが牢屋で知り合った爆弾屋の若者ビリー(ロバート・ウォーカー・ジュニア)、そして盗賊団の一味であるならず者の先住民リーヴァイ(ハワード・キール)という、どいつもこいつも一癖二癖あるメンバーが召集される。さらに、リーヴァイの仲介で先住民部族の協力も取り付けて準備万端…と行きたいところだったが、若いのに酒癖の悪いビリーが次々とトラブルを起こす。酒場で酔っぱらった勢いで計画をベラベラ喋ろうとしたり、フレッチャーが金で買った若い嫁ケイト(ヴァロラ・ノーランド)に横恋慕して内輪揉めしたり。それでもジャクソンが終始一貫してビリーを庇うのは、なにも彼が計画に必要な爆薬担当だからというだけでなく、どこか疑似親子的な情愛もあるように感じられたりして、ハラハラしつつも微笑ましいのだよね。

さらに、ジャクソンとロマックスがたまたま酒場で鉢合わせてしまい、その場に居合わせたピアースの目を誤魔化すため他の客を巻き込んでの大乱闘を演じ、隙を見て逃げ出すなんて一幕も。なにしろ、2人が仲良くしているところを人前で見られたら、それこそ一巻の終わりみたいなもんですからな。その辺のスリルとユーモアをほど良くブレンドしたバート・ケネディ監督の演出はなかなか秀逸。西部劇のお約束でもある乱闘シーンの描き方にしても、細部まで工夫を凝らしていて非常に見応えがある。基本的にB級西部劇専門だった彼が、ジョン・ウェイン御大の御贔屓だった理由として考えられるのは、恐らくこういう手抜き仕事をしない職人気質なところなのだろう。

そしていよいよ、ピアース一味の馬車を襲撃して50万ドル分の砂金を奪うことになるのだが、その砂金を運搬する馬車というのが通称「戦う幌馬車」と呼ばれる鉄製の装甲馬車、要するに戦車の御先祖様みたいなやつだから一筋縄ではいかない。しかも、機関銃の元祖であるガトリング砲まで搭載している。さあ、主人公たちはいかにして対抗してくのか…!?ということで、銃撃戦や大爆発、乗馬アクションをたっぷりと盛り込んだ手に汗握る強奪劇が繰り広げられるわけだ。見事に成功したと思いきや…?からのどんでん返し的な展開も、まあ、ある程度予想の範疇とはいえニヤリとさせてくれる。

そんなこんなで、ジョン・フォードやハワード・ホークスなどの巨匠たちと組んだジョン・ウェイン作品に比べると明らかにB級路線だが、しかしこの理屈抜きの面白さ・楽しさこそが本作の醍醐味。『ショウ・ボート』('51)や『キス・ミー・ケイト』('53)などMGMミュージカルのトップスターだったハワード・キールが怪力の不良先住民を、早世した二枚目俳優ロバート・ウォーカーの実子として当時アイドル的に注目されていたロバート・ウォーカー・ジュニアが飲んだくれの若者役を、という意外性を狙ったようなキャスティングもユニークだし、相変わらずなキーナン・ウィンの偏屈オヤジっぷりも安定感抜群だ。大御所スター2人の夢の顔合わせを看板にしつつ、いずれ劣らぬベテラン名優や新進の若手を脇に配するバランスの良さ。ジョン・フォードやアンドリュー・V・マクラグレンの西部劇で知られるウィリアム・H・クローシアによる、スコープサイズのスクリーンをフル活用したダイナミックなカメラワークも見応えがある。ジョン・ウェイン作品の中ではわりと見過ごされがちなのが惜しい。

評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:日本語・英語/地域コード:ALL/時間:101分/発売元:NBCユニバーサル
特典:なし



by nakachan1045 | 2020-06-17 00:36 | 映画 | Comments(0)

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