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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「見知らぬ人でなく」 Not as a Stranger (1955)

「見知らぬ人でなく」 Not as a Stranger  (1955)_f0367483_23100767.jpg
監督:スタンリー・クレイマー
製作:スタンリー・クレイマー
原作:モートン・トンプソン
脚本:エドナ&エドワード・アンホルト
撮影:フランツ・プラナー
監修:モートン・マックスウェル博士
音楽:ジョージ・アンセイル
出演:オリヴィア・デ・ハヴィランド
   ロバート・ミッチャム
   フランク・シナトラ
   グロリア・グレアム
   ブロデリク・クロフォード
   チャールズ・ビックフォード
   マイロン・マコーミック
   ロン・チェイニー・ジュニア
   ジェシー・ホワイト
   ハリー・モーガン
   リー・マーヴィン
   ヴァージニア・クリスティ
   ウィット・ビッセル
   ジャック・レイン
   メエ・クラーク
アメリカ映画/136分/モノクロ作品




「見知らぬ人でなく」 Not as a Stranger  (1955)_f0367483_15090189.jpg
<あらすじ>
亡くなった母親の遺産で医科大学に学ぶ青年ルーカス(ロバート・ミッチャム)は、志が高くて生真面目だが他人の欠点を許せない潔癖な性格で、アルコール中毒の父親(ロン・チェイニー・ジュニア)を見下して絶縁状態にある。ところが、その父親が母親の遺産を食いつぶしてしまい、学費が払えないという事態に陥ってしまった。友人アルフレッド(フランク・シナトラ)や恩師アーロンズ(ブロデリク・クロフォード)からの援助を受けるものの、それだけではとても足りない金額だ。
そんなある日、ルーカスは以前から自分に好意を寄せている大学病院の中年看護婦クリス(オリヴィア・デ・ハヴィランド)が、老後のためにコツコツと給料を貯め込んでいると知り、彼女をデートに誘って急接近する。そして、結婚のプロポーズと合わせて学費に困っていることを打ち明けるルーカス。嬉しさに有頂天のクリスは彼の真意にも気付かず、自ら進んで学費を支払うのだった。しかし、ルーカスは生まれも育ちも田舎の労働者階級で、いまだに方言の訛りが抜けないクリスを小ばかにし、他人の失敗や欠点に理解を示す彼女の優しさを愚かな証拠だと見下す。
やがて大学をトップの成績で卒業したルーカスは、大学病院のインターンとなるものの、しかし金儲け主義の俗物なドクターたちを嫌悪し、田舎町グリーンヴィルの小さな病院の職を選ぶ。当然のように、クリスは大学病院を辞めて彼についていき、専業主婦となるのだった。そこで、採算を度外視して患者のため献身的に尽くすランクルマン医師(チャールズ・ビックフォード)に強い感銘を受けるルーカス。しかし、実際の医療の現場は想像以上に過酷で、理想と現実の落差にストレスを溜めたルーカスは、地元の裕福な未亡人ハリエット(グロリア・グレアム)の誘惑になびいてしまう…。
「見知らぬ人でなく」 Not as a Stranger  (1955)_f0367483_15091097.jpg
<作品レビュー>
『手錠のまゝの脱獄』('58)や『ニュールンベルグ裁判』('61)、『招かれざる客』('67)などの名作で知られる巨匠スタンリー・クレイマーの監督デビュー作である。もともと大手スタジオのセット運搬係から身を起こし、編集者や製作助手などを経て自らの製作プロダクションを設立し、『チャンピオン』('49)や『シラノ・ド・ベルジュラック』('50)、『真昼の決闘』('52)などを世に送り出したクレイマー。ハリウッドで最も影響力のある独立系プロデューサーのひとりとなった彼が、満を持して挑んだ監督作がこの『見知らぬ人でなく』だった。
「見知らぬ人でなく」 Not as a Stranger  (1955)_f0367483_15094430.jpg
主人公は将来を嘱望される有能な医学生ルーカス(ロバート・ミッチャム)。他の学生たちは授業が終わるとみんなで遊びへ繰り出すのに対し、ルーカスは脇目もふらずに寮へ戻っては深夜まで予習復習に余念がない。なにしろ、一流のドクターになることだけが少年時代からの夢。それ以外のことには全く興味がないのだ。患者の命を預かるドクターに過ちは絶対許されない、常にパーフェクトでなくてはいけない。有能なだけではなく医師としての志も高く、頑固なまでに生真面目な完璧主義者なのだが、それゆえ他人の欠点や失敗に対しても容赦がないほど厳しく、誘惑に負けてしまう人間を許すことが出来ない。その筆頭が自身の父親(ロン・チェイニー・ジュニア)。母親が亡くなって以来、酒に溺れるようになった父親をルーカスは軽蔑しており、父親の抱えた孤独や哀しみにも想像が至らない。ある意味で、とても冷酷非情な男だ。
「見知らぬ人でなく」 Not as a Stranger  (1955)_f0367483_15101907.jpg
ところが、そんなルーカスに思いがけない試練が立ちふさがる。亡き母親が遺してくれた一族の莫大な財産を、あろうことか父親が食いつぶしてしまったのだ。このままでは大学の学費が払えない。恩師のアーロンズ医師(ブロデリク・クロフォード)は休学して働いて金を貯めればいいと助言するが、しかし完璧主義者であるルーカスの辞書に「挫折」の文字はない。大学の友人アルフレッド(フランク・シナトラ)やアーロンズ医師からささやかな援助を受けたルーカスだが、しかしそれだけではとても学費には足らなかった。そんな時、彼が目を付けたのが大学病院に勤務する中年の独身ナース、クリス(オリヴィア・デ・ハヴィランド)だった。
「見知らぬ人でなく」 Not as a Stranger  (1955)_f0367483_15102457.jpg
アメリカ南部の貧しい家庭に生まれ育ちながらも、困った人たちの役に立ちたいという一心から努力して看護師の資格を取り、大学病院でもドクターたちからの信頼が厚い優秀なナースのクリス。美人だが仕事熱心なあまり婚期を逃してしまった彼女は、老後のためにと給料を節約してコツコツと貯めていた。以前からクリスが自分に好意を寄せていることに気付いていたルーカスは、彼女に多額の貯金があると知ってから急にそれまでの素っ気ない態度を変え、積極的にデートへ連れ出して距離を縮める。はじめのうちこど戸惑っていたクリスだったが、しかし彼から結婚のプロポーズを受けて舞い上がり、学費の相談を受けても疑うことなく支払ってしまう。
「見知らぬ人でなく」 Not as a Stranger  (1955)_f0367483_15100481.jpg
かくして、妻クリスのおかげで大学をトップの成績で卒業し、大学病院のインターンとして働き始めたルーカスだが、しかし利益を重視する病院の経営方針を嫌悪し、給与の待遇ばかり気にする同僚ドクターたちを蔑む。医療は清く正しく崇高な職業だ、金だ利益だなどと薄汚いものを持ち込むな!というわけだ。他人の金で大学を卒業した自分を棚に上げて。しかし、盲目的なまでに誇り高い彼は自らの矛盾に全く気付いておらず、それどころかドクターたちの失敗や気の緩みを断罪せずに許す妻クリスの大らかな優しさを、怠慢な愚かさの証だと決めつけて侮蔑する。
「見知らぬ人でなく」 Not as a Stranger  (1955)_f0367483_15104364.jpg
結局、インターン終了と同時に大学病院を辞め、のどかな田舎町グリーンヴィルの小さな病院で勤務することになったルーカス。そのため、クリスも天職だったナースを引退して専業主婦とならざるを得なくなる。もちろん、そんなことルーカスは気にかけもしない。採算を度外視して患者のため献身的に働く先輩医師ランクルマン(チャールズ・ビックフォード)に強い感銘を受けた彼は、これこそ自分が求めていた理想の職場だと奮起するものの、しかしそんな医療の現場は彼が想像していたよりも遥かに過酷だった。病院は経営難のため人手も機材も慢性的に不足し、ルーカスは夜昼関係なく働き詰めとなる。
「見知らぬ人でなく」 Not as a Stranger  (1955)_f0367483_15105308.jpg
それでも己の弱さを決して認めようとせず、妻クリスのことも顧みることなく馬車馬のように働く彼は、たまたま知り合った美しく妖艶な資産家未亡人ハリエット(グロリア・グレアム)に強く惹かれ、ふとした気の緩みから不倫の関係を結んでしまう。さらに、予てから心臓の持病を抱えていたランクルマン医師が倒れてしまい、緊急手術に臨んだルーカスだったが、自分の能力を過信したせいでミスを犯し、ランクルマン医師を死なせてしまう…。
「見知らぬ人でなく」 Not as a Stranger  (1955)_f0367483_15103013.jpg
医者だって所詮は人間。そして、この世に完璧な人間などいない。どれだけ崇高な理想を掲げようとも、どれだけ優れた才能を持っていようとも、人間の弱さや欠点を認めて受け入れ、いつ何時自分も失敗するか分からないということを謙虚に自覚し、他者の痛みや哀しみに共感して寄り添えるようでなければ、そもそも医者である以前に人間として立派とは言えないだろう。そうした本作の描くテーマは極めて普遍的であり、今なお色褪せぬ説得力があると言えよう。また、基本的にはメディカル・ドラマでありながら、全体を包む雰囲気がフィルム・ノワール的であることも興味深い。
「見知らぬ人でなく」 Not as a Stranger  (1955)_f0367483_15101549.jpg
もちろん、65年も前の映画なので古臭く感じられる点は多々ある。中でも、夫ルーカスの精神的な虐待に我慢して耐え続けるクリスの奥ゆかしさは、現代の観客から見ればとてもじゃないが理解に苦しむところだろう。スタンリー・クレイマー監督の演出も、まだどこか未熟で舌足らずなところがある。それでもなお、経済格差や医療格差、教育格差などの問題に鋭く斬り込み、当時はまだ神聖視されていた医師という職業の生臭い部分をえぐり出すクレイマーの姿勢は、さすが「社会派の巨匠」と呼ばれただけのことはある。徹底してリアルな手術シーンも大きな見どころ。胸部を切開して鼓動する心臓にメスを入れる描写などは、今でこそ映画やテレビでも珍しくないものの、当時としては画期的だったはずだ。
「見知らぬ人でなく」 Not as a Stranger  (1955)_f0367483_15104862.jpg
オールスターを揃えた豪華なキャストの顔ぶれも見どころ。ロバート・ミッチャムにフランク・シナトラ、リー・マーヴィンが医大生って、ちょっと年を取り過ぎじゃないか…?という気がしないでもないが、まあ、こればっかりは映画ですからね。ちなみに、当時のミッチャムとシナトラはアラフォー、マーヴィンは意外に若くて30歳くらいなのだが、3人の中で一番老けて見える(笑)。スピーリー・アイズ(眠たそうな目)と呼ばれたミッチャムのポーカーフェイスは傲慢で冷たいルーカス役にハマっているし、医者としては二流だが心優しくて気のいいアルフレッド役のシナトラも『地上より永遠に』('53)のマッジョを彷彿とさせて好演。クリス役のオリヴィア・デ・ハヴィランドは『女相続人』('49)のイメージなのだろうが、いまひとつオスカー女優としての実力に相応しい役柄とは言えないように感じられる。
「見知らぬ人でなく」 Not as a Stranger  (1955)_f0367483_15100940.jpg
さらに、ブロデリク・クロフォードにチャールズ・ビックフォードという芸達者なベテラン名優が脇を固めるほか、ミッチャムの父親役にユニバーサル映画のホラー俳優ロン・チェイニー・ジュニア、グリーンヴィル病院のベテラン・ナースに『フランケンシュタイン』('31)のヒロインで有名なメエ・クラークという配役も面白い。存在感という点で意外に大きいのは、ファムファタール的な美女ハリエット役のオスカー女優グロリア・グレアム。一見したところ付け入る隙のない堅物ルーカスの弱点を直感で見抜き、結局あなただってあたしと同類でしょ?と言わんばかりに刹那的な愛欲の沼へと引きずり込む悪い女をクールに演じて秀逸だ。
「見知らぬ人でなく」 Not as a Stranger  (1955)_f0367483_15103591.jpg
評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)※オンデマンドDVD-R(ブルーレイもあり)
モノクロ/スタンダードサイズ(1.37:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:1/時間:136分/発売元:MGM/20th Century Fox
特典:なし



by nakachan1045 | 2020-09-07 15:13 | 映画 | Comments(0)

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