なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「夜の刑事」 Un detective (1969)

製作:マリオ・チェッキ・ゴリ
原作:ルドヴィコ・デンティーチェ
脚本:フランコ・ヴェルッチ
アルベルト・シルヴェストリ
マッシモ・ダヴァク
撮影:ロベルト・ゲラルディ
美術:ジャンティト・ブルキエラーロ
音楽:フレッド・ボングスト
主題歌:シャーリー・ハーマー
出演:フランコ・ネロ
フロリンダ・ボルカン
アドルフォ・チェリ
デリア・ボッカルド
スサンナ・マルティンコワ
レンツォ・パルメール
ロベルト・ビサッコ
マウリツィオ・ボヌリア
マリノ・マゼ
ラウラ・アントネッリ
イタリア映画/103分/カラー作品

ローマ警察の悪評高い汚職刑事ステファノ・ベッリ(フランコ・ネロ)は、裕福な大物弁護士フォンタナ(アドルフォ・チェリ)から高額の謝礼と引き換えにプライベートな仕事を請け負う。フォンタナの放蕩息子ミーノ(マウリツィオ・ボヌリア)が、サンディ・ブロンソン(デリア・ボッカルド)というイギリス人の新進歌手に入れあげているため、2人の仲を裂いて欲しいというのだ。さらに、ミーノは怪しげなディスコ経営者ロマニス(マリノ・マゼ)と共同でレコード会社を設立し、その資本金をフォンタナの後妻でミーノの継母に当たるヴェラ(フロリンダ・ボルカン)が出資しているという。そのロマニスの様子も併せて探るよう、フォンタナはベッリに依頼するのだった。
まずはサンディの住む高級アパートへ向かったベッリは、イタリアでの就労ビザを取り上げると脅し、ミーノと別れるように迫る。その足でロマニスの自宅へ乗り込んでいったところ、ベッリはそこで彼の他殺体を発見する。殺人課のバルサーモ警部(レンツォ・パルメール)から事情を尋ねられるベッリだったが、さすがに無断でアルバイトをしているとは言えない。すると、殺人現場から顔の切り取られた女性のヌード写真が発見される。アパート管理人の証言から、ロマニスの部屋を最後に訪ねた人物がサンディだと気付いたベッリは、すぐさま彼女のところを戻って厳しく問い詰めると、サンディはロマニスと浮気をしており、そのことを知ったミーノがロマニスと口論になったことを白状する。
ロマニス殺しの犯人はミーノの可能性がある。鍵となるのは首なしヌード写真の女性だ。ロマニスの会社と契約したばかりの人気フレンチ・ポップス歌手エマニュエル(スサンナ・マルティンコワ)に加え、サンディやヴェラを怪しむベッリだったが確かな証拠はない。ミーノの友人の写真家クロード(ロベルト・ビサッコ)がヌード写真のネガを探していたと聞き、ベッリは彼の写真スタジオへ押しかけて尋問するものの手がかりを掴めず。やはりサンディが何かしら知っていると睨んだベッリが力づくで脅迫すると、彼女はヌード写真の女性が自分であることを告白するが、既にネガは処分してしまっているという。
ロマニスが写真の主を強請っていた考えていたベッリだが、そのあては完全に外れてしまった。ならば誰が何の目的で彼を殺したのか?そうこうしているうちにミーノが殺され、サンディも自宅で他殺体となって発見される。やがて浮上するフォンタナの前妻の謎めいた死亡事件、主治医だったランディ医師の事故死。ベッリはそれらがロマニス殺害事件と奇妙に繋がっていることに気付く…。

<作品レビュー>
ジャッロ関連本でも言及されることの少なくない映画だが、実際はジャッロというよりも'60年代当時のフレンチ・ノワールに近い印象の作品と言えるだろう。やさぐれた不良刑事が小遣い稼ぎに探偵仕事を請け負ったところ、金持ちのボンボンが絡んだ殺人事件に巻き込まれてしまい、捜査を続けるうちにどんどん死体が増えていく。'70年代にブームとなるポリツィオテスキ(刑事アクション)の先駆的作品として語られることも多いが、基本的にアクションよりも謎解き推理がストーリーの主軸だし、ポリツィオテスキ特有の社会派的なテーマが盛り込まれているわけでもない。あくまでも純然たるフィルムノワール=ハードボイルド映画と見做すべきだろう。

フランコ・ネロ演じる主人公ステファノ・ベッリは、金のためならどんな裏仕事でも引き受けるローマ警察の悪徳刑事。まあ、根っからの悪人というわけではないようなのだが、しかし男だろうと女だろうと容疑者に殴る蹴るの暴行を加えたり、相手構わず賄賂を受け取ったりなどは朝飯前。捜査の過程で知り得た情報をもとに、弱みを握った金持ちから大金を脅し取ることさえあるんだから恐れ入る。これぞまさしく地獄の沙汰も金次第。もちろん、罪の意識や後ろめたさなど微塵も感じさせない。正義感や倫理観?んなもんで飯なんか食えるわけねえじゃん!ってなノリですな。

そんな彼がある日、知り合いのタブロイド紙記者を介して大物弁護士フォンタナ(アドルフォ・チェリ)からアルバイトを依頼される。要件は2つ。まずは放蕩息子ミーノ(マウリツィオ・ボヌリア)が入れあげているイギリス人の新進歌手サンディ(デリア・ボッカルド)にお灸をすえて、すぐさま息子と別れるように仕向けること。もうひとつは、そのミーノと共同でレコード会社を立ち上げたディスコ経営者ロマニス(マリノ・マゼ)の身辺調査だ。なにしろ、フォンタナの妻でミーノの継母ヴェラ(フロリンダ・ボルカン)が多額の資本金を提供している。万が一詐欺だったら一大事だってことらしい。

ひとまず前金を受け取ってサンディのアパートへ向かい、ミーノと別れなきゃ就労ビザを取り上げて本国へ送還するぞと脅迫し、そのついでに一発やったるでとサンディを押し倒してベッドインするベッリ。スッキリしたところで今度はロマニスの自宅へ押しかけるのだが、なんとそこには銃殺されたロマニスの遺体が転がっていた。ヤバいところへ足を踏み入れちまったと思ったのも束の間、ベッリにとっては天敵である殺人課の生真面目なバルサモーニ警部(レンツォ・パルメール)がアパート管理人の通報を受けて参上。ベッリがあれこれと言い訳をしていたところ、殺人現場から頭の部分を切り取られた女性のヌード写真が発見される。

おのずと、ロマニスがヌード写真を餌に誰かを脅迫したせいで殺されたのではないかと睨むベッリ。その一方で、サンディがロマニスと浮気していたことを知ったミーノが激怒していたらしく、痴情のもつれによる犯行という線も否定しがたい。ひとまず、ヌード写真の女性が誰なのか特定しようとするベッリだったが、サンディは真っ向から頑なに否定するし、ヴェラも身体的特徴が明らかに異なっている。さらに、人気のフレンチ・ポップス歌手エマニュエル(スサンナ・マルティンコワ)がロマニスの会社と契約していたことを知ったベッリは、そんなビッグネームがチンピラまがいの男の会社と関わるなんて怪しい!とばかりにエマニュエルを問い詰める。すると、彼女がドラッグの常用者であることが発覚。さては麻薬取引が絡んでいるのか!?と思いきや、エマニュエルはランディなる医師からドラッグの処方箋を出して貰っていたらしく、しかもそのランディ医師はつい最近事故死したばかりだった。

結局、ヌード写真の女性はサンディだったことが明らかとなる。確かに彼女はロマニスから脅迫されていたが、ミーノと一緒にネガを取り戻しに行った時には既に殺されていたという。これでベッリの捜査も振り出しに戻る。だが、彼はフォンタナの前妻でヴェラの姉がモルヒネの過剰摂取で亡くなっており、その主治医がランディ医師だったことに気付く。さらに、ミーノとサンディが相次いで謎の死を遂げる。かつての事件と今回の事件の奇妙な繋がりを探るベッリが導き出した答えとは…?

ということで、全体的に人物の相関関係が入り組み過ぎていて少々分かりづらく、目くらましてきな嘘が多いこともご都合主義に感じられる。特にサンディとエマニュエルは嘘ついてばっかしだもんな。何事も過ぎたるは及ばざるがごとし。確かに登場人物の嘘はストーリーをかく乱させるのに有効だが、そればかり使っていると逆に作品そのものが嘘っぽく見えてしまう。脚本にはアラン・ドロン主演の刑事アクション『ビッグ・ガン』('73)のフランコ・ヴェルッチや、スパイ・アクション『スピードは俺の稼業』('68)のアルベルト・シルヴェストリなど、この手のジャンルを得意とする脚本家が集まっているものの、残念ながらそれほど面白味がない。

むしろ、本作の醍醐味はポップでモダンで洗練されたビジュアルと豪華なキャスト陣によって醸し出される、いかにもヨーロッパ映画的なエレガンスにあると言えよう。ヴィットリオ・デ・シーカやダミアーノ・ダミアーニとのコラボでお馴染みの撮影監督ロベルト・ゲラルディは、クールで渋い男優陣やゴージャスで美しい女優陣を、徹底的にスタイリッシュなカメラワークで撮ることに注力している。いやあ、こういうの大好きです。

さらに、フェリーニの『魂のジュリエッタ』('65)を手掛けたジャンティト・ブルキエラーロによるモダン・アートなセット・デザインも出色だし、大都会ローマのお洒落スポットばかりを選んだロケーションも魅力的。フレッド・ボングストによるメロウなジャズ・ラウンジ・スコアがまた良い。どちらかというとハードなバイオレンス映画のイメージの強いロモロ・グェリエッリ監督だが、本作は『デボラの甘い肉体』('68)と並ぶ“お洒落なグェリエッリ”の代表格だろう。

惜しむらくは、ヒロインであるはずのフロリンダ・ボルカンの出番が少なく、これといった見せ場のないまま終わってしまうこと。むしろ、サンディ役のデリア・ボッカルド(『クルーゾー警部』)の方が実質的なヒロインという印象で、着せ替え人形のごとき華麗な七変化も披露してくれる。着せ替え人形と言えば、全身真っ白のロリータ・ファッションに身を包んでオモチャ箱のような豪邸に暮らすエマニュエル役のチェコ女優スサンナ・マルティンコワもインパクト強烈。しかも、そのいで立ちでジャガーを乗り回してるんだもんね。超イカしてますわ。また、無名時代のラウラ・アントネッリがワン・シーンだけ登場するのも要注目ですな。

フランコ・ネロを筆頭とする男優陣も、イタリア産アクションやジャッロ映画でお馴染みのスターたちがこぞって出演。『影なき淫獣』('73)でも怪しさ抜群だったロベルト・ビサッコや、チャラ男キャラがこれ以上ないくらいにハマるマウリツィオ・ボヌリア、やっぱりあっという間に殺されちゃったマリノ・マゼなど、端役に至るまでイタリア産B級映画ファンのマニア心をくすぐる。それにしても、巨匠のアート映画だろうが低予算のゲテモノ映画だろうが、主役だろうがチョイ役だろうが片っ端から何でも引き受けてしまうマリノ・マゼって、当時のイタリア映画界では一体どういう立ち位置だったのだろう?

なお、本作は過去に日本でビデオソフト化された形跡がなく、今のところ国内で視聴する手段がない。イタリア本国ではDVD発売されているものの、残念ながら英語字幕はなし。一方、アメリカではジョン・マーレイ主演のC級ポリス・アクション『Blade』('73・日本未公開)とのカップリングでDVD化されているが、こちらはイタリア語バージョンよりも短い全米公開版の英語バージョンで収録されている。ちなみに、本作には複数の英語タイトルが存在するのだが、アメリカ盤DVDのパッケージ表記は「Ring of Death」、本編では「Detective Belli」とクレジットされている。

評価(5点満点):★★★☆☆
参考DVD情報(アメリカ盤)※『Blade』とのカップリング
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:91分/発売元:Code Red Releasing
特典:アメリカ版予告編
by nakachan1045
| 2020-09-08 10:41
| 映画
|
Comments(1)
Commented
by
Alexちゃん
at 2023-10-25 16:58
初めまして! 60年代! いいですねぇ。生まれるのが遅ずぎました。あまり知られることのない作品ですね。子供の時、お昼のシアターあたりで見た記憶あります。最近、youtubeで見直しました。佳作だと思いますよ。ただ一つ、オシャレな女性が乗っている車は、ジャガーではなく、私の好きなフェラーリ275GTB4 ではないかと思います。今買えば、四億する代物だそうです。時代的に一致しますね。フランコ・ネロは好きな俳優ですよ。この頃、まだ20代の青年? とても見えず、35歳くらいに思えます。ジャンゴが好きです。とにかく、60年代映画、好きです! ドロンの「サムライ」も...。
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