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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「Behind Office Doors」 (1931)

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監督:メルヴィル・ブラウン
製作:ウィリアム・ルバロン
原作:アラン・ブレナー・シュルツ
脚本:ケイリー・ウィルソン
撮影:J・ロイ・ハント
美術・衣装:マックス・リー
出演:メアリー・アスター
   ロバート・エイムズ
   リカルド・コルテス
   キャサリン・デイル・オーウェン
   キティ・ケリー
   エドナ・マーフィ
   チャールズ・セロン
   ウィリアム・モリス
   ジョージ・マクファーレーン
アメリカ映画/82分/モノクロ作品




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<あらすじ>
とある中堅製紙会社で受付嬢として働くメアリー・リンデン(メアリー・アスター)は、美人で頭が良くて仕事の出来る現代的な女性。当然、言い寄って来る男も数知れずだが、しかし彼女には心に決めた男性がいる。同じ会社で働く叩き上げのセールスマン、ジェームズ(ロバート・エイムズ)だ。といっても、鈍感で単細胞なジェームズはメアリーの気持ちに全く気付いておらず、色恋抜きで分かり合える女友達としてしか見ていない。
そんなある日、社長のリッター氏(チャールズ・セロン)が高齢を理由に引退を決意し、銀行頭取のロビンソン氏(ウィリアム・モリス)と後継者について話し合っていた。そこに居合わせたメアリーは、すかさずジェームズを推薦。彼女のもっともらしく巧みな説得に、ついついリッター氏やロビンソン氏も納得してしまう。
かくして、メアリーのお膳立てによってロビンソン氏から融資を受け、会社を買収して社長の座に収まったジェームズ。社長秘書へと昇格したメアリーは、ビジネスの駆け引きからTPOに合わせた服装まで、ジェームズが成功するためのあらゆる秘策を指南し、おかげで会社はどんどん急成長していく。しかし、それを自分の実力と勘違いしたジェームズは、メアリーの献身に感謝するどころか女遊びにうつつを抜かし、しまいにはセックスフレンドの無能な女デイジー(エドナ・マーフィ)をメアリーの助手として雇う始末。そのたびに深く傷つくメアリーを見て、親友ドロレス(キティ・ケリー)は半ば呆れるが、彼女はジェームズを一途に愛し続けるのだった。
しかし、ようやくジェームズが自分の気持ちに気付いてくれたかと思った翌日、彼がロビンソン氏の娘で甘やかされた社交界の花形エレン・メイ(キャサリン・デイル・オーウェン)と婚約したことが発覚。しかも、メアリーを邪魔者扱いするエレン・メイからクビを言い渡されてしまう。さすがのメアリーもこれには怒り心頭で、自ら辞職することを決意。以前から彼女に夢中のプレイボーイ、ロニー(リカルド・コルテス)とアトランティック・シティへ発ってしまう。
案の定、メアリーがいなくなったことで会社の経営はガタガタに。残された秘書デイジーもまるで役に立たず、むしろ仕事の足を引っ張るばかり。ようやくメアリーの大切さに気付いたジェームズだったが…?
「Behind Office Doors」 (1931)_f0367483_16495448.jpg
<作品レビュー>
古い映画を見る醍醐味のひとつに、当時の世相や価値観、人々の営みを垣間見ることの面白さがあると思うが、本作の見どころはまさにそれだと言えよう。作られたのは今から90年近くも前。当時のアメリカは女性に参政権が認められてからおよそ10年余り。女性の社会進出は一気に進み、ハリウッド映画にも男性と同じ職場で働く女性が増えていく。それでもなお、女性にとって職種の選択肢はまだまだ限られているのが現実で、オフィスでの仕事も受付嬢や秘書、タイピストなどが関の山。男性と同等の出世などは望むべくもなく、アメリカ女性の社会的地位は依然として低かった。
「Behind Office Doors」 (1931)_f0367483_16511291.jpg
そんな男尊女卑の時代を背景に、本作ではビジネスの才能に長けながらも女性ゆえ事務職に甘んじざるを得ないヒロインが、その代わりに愛する平凡な男を内助の功で一流の経営者へと育て上げるが、すっかり自分ひとりの手柄だと勘違いしてしまった男は、金と地位の次は名誉だとばかりに上流階級の令嬢と結婚してしまう。さすがに21世紀のアメリカでは成立しづらいであろう話だが、しかし「一方的に忍耐ばかり強いられる女性と、自らの特権に無自覚で女性の犠牲に甘える男性」という本作で描かれる男女間の不公平は、あれ?そういうの日本だと今でも普通にあちこちであるよね?と気付かずにはいられないだろう。
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主演はサイレント時代のお姫様女優メアリー・アスター。日本では『マルタの鷹』('41)のファム・ファタール役、『若草物語』('49)や『若草の頃』('44)のお母さん役のイメージが強い人だが、'36年に起きた不倫スキャンダルでキャリアに傷がつくまではハリウッドを代表するトップ女優のひとりだった。そんな彼女が演じるのは、中堅クラスの製紙会社で受付嬢として働く女性メアリー。美人でお洒落でスマートな彼女は、なによりもビジネスの才能に長けているのだが、しかし周りの男性は彼女の美貌にしか目が行かない。ましてや、彼女の才能を正当に評価する男性など皆無だ。
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そのメアリーが秘かに思いを寄せるのが、同じ製紙会社で働く叩き上げのセールスマン、ジェームズ(ロバート・エイムズ)。貧しい家庭に育った苦労人で、愚直だが前向きでエネルギッシュなジェームズに惹かれているメアリーだが、しかし肝心のジェームズは彼女の気持ちにまるで気付かず、恋愛抜きでいろいろ相談できる気心の知れた女友達としか思っていない。なにしろ、彼のタイプはノリが良くて気軽にセックスをさせてくれるパーティガール。それに、色恋を仕事へ持ち込まないがモットーの彼にとって、同じ職場の女性であるメアリーは恋愛対象外だ。
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そんなある日、社長のリッター氏(チャールズ・セロン)が高齢を理由に引退することを決意し、株主である大手銀行の頭取ロビンソン氏(ウィリアム・モリス)と後継者問題について話し合うことになる。たまたまその場に居合わせたメアリーは、なにげない世間話を装いながらジェームズを強力にプッシュし、彼女一流の話術でリッター氏とロビンソン氏をその気にさせてしまう。しかも、ジェームズがリッター氏から会社を買い取るにあたって、ロビンソン氏の銀行からの融資を受けられるよう、ちゃんとお膳立てまで整えるのだった。
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かくして、一介のセールスマンから社長へと上りつめたジェームズ。彼の指名で社長秘書となったメアリーは、経営者として相応しい身だしなみからマナー、ビジネスレターの書き方などをはじめ、業界の勢力図や駆け引きのテクニックまで懇切丁寧にジェームズへ伝授し、彼が重要な決断を下す際にも最善策を選ぶよう仕向けていく。もちろん、彼の男としてのプライドを傷つけぬよう、さりげなくアドバイスをするふりをしながら。しかし、単細胞な彼はそれを自分の実力と勘違いし、会社の急成長を自分の手柄のように考えてしまう。
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それでもなお、とりあえず彼がビジネスの世界で成功することが先決、いつかきっと私に感謝して振り向いてくれるはず…とささやかな希望を胸にジェームズを支え続けるメアリー。ところが、調子に乗ったジェームズはメアリーに感謝するどころか、おつむが弱くて尻の軽い愛人デイジー(エドナ・マーフィ)を勝手にメアリーの助手として雇う。身近に置いて好きな時にセックスを楽しむためだ。あれだけ色恋を仕事へ持ち込まないって言ってたくせに!と、怒りを通り越して呆れてしまうメアリー。しかも、よりによってあんな安っぽい女とは。
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その後、メアリーのおかげで大きな商談がまとまり、2人っきりの打ち上げでジェームズはメアリーに感謝。お互いに酔った勢いでなんとなくいい感じになるのだが、翌日にメアリーが出社するとジェームズはいつもの態度で、昨晩のことなどまるで覚えていなかった。それどころか、ロビンソン氏の一人娘である社交界の花形エレン・メイ(キャサリン・デイル・オーウェン)とジェームズの婚約が発覚。会社経営者の地位と財産を得たジェームズは、今度は名門一族と婚姻関係を結んで名誉を手に入れようと考えたのだ。しかも、我がままで甘やかされて育ったエレン・メイはメアリーを一方的にライバル視し、会社から出ていくよう脅すのだった。
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さすがに堪忍袋の緒が切れたメアリーは、こんなのもうやってられない!さんざん人をバカにして!とばかりに自ら辞表を提出し、以前から自分に言い寄っていた裕福なプレイボーイ、ロニー(リカルド・コルテス)と駆け落ちしてしまう。とはいえ、ロニーは既婚者で妻の財産に頼っている婿養子。結ばれる希望は全くない。彼の支払いで高級ホテルに泊まり、高価なネグリジェを買ってもらったメアリーは、デイジーをバカにしていたけど私だって同じじゃない…と我に返る。一方、メアリーがいなくなったことで製紙会社の経営はガタガタとなり、無能な秘書デイジーや自己中な妻エレン・メイに振り回されるジェームズも、ようやくメアリーの存在の大きさに気付くのだった…。
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今見てもかなりフェミニズム色の強い作品だが、しかし最終的にメアリーがジェームズと結婚して社長夫人に収まりハッピーエンド…というところは時代を感じさせる。恐らく今ならば、メアリーがビジネスの才能を駆使して会社を乗っ取り、ジェームズから社長の座を奪ってしまうところだろうが、しかし90年前の当時だとそれこそ現実的にあり得ない夢物語となってしまう。そういえば、筆者の今は亡き明治生まれの祖母も若い頃は女だてらに立身出世を夢見ていたらしいが、最終的に選んだ道は社長夫人だった。昔はそれくらいしか女性が社会的な地位と財産を得る方法はなかったのだ。その代わり、容姿端麗で賢かった祖母は会社経営者の祖父を言いくるめて婿養子にし、ちゃっかりと社名に自分の姓を付けてしまったのだが(笑)。
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また、興味深いなと思ったのは冒頭に出てくるマッチング・ゲーム。メアリーが参加した親友ドロレス(キティ・ケリー)のホーム・パーティで、余興として行われる男女対抗のゲームで、ペアになった男女がお互いの本音を言い当てるわけだが、上手くいたカップルは別室のベッドルームへGO。つまり、セックスを楽しむというわけだ。こういうゲームが実際にあったのかどうかは分からないが、バブル景気に沸いた'20年代のアメリカでは乱交パーティが流行ったらしいので、もしかすると当時もその名残があったのかもしれない。いずれにせよ、ハリウッド映画にヘイズ・コードと呼ばれる自主規制が本格導入された'34年以降は、こういう“不道徳”な描写は一切ご法度となってしまう。
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エレガントで上品で聡明なメアリー・アスターは文句なしのはまり役。その親友ドロレスを演じるキティ・ケリーの、面倒見が良くて頼りになる毒舌姐御っぷりも気持ちいい。ただ、最大の弱点はジェームズ役のロバート・エイムズだろう。これが例えばダグラス・フェアバンクス・ジュニアとかジェームズ・スチュワートだったら、いくら鈍感なダメ男でもあれだけ二枚目だったらメアリーが惚れちゃうのも仕方ないよね…とも思えるのだが、ロバート・エイムズだとただの垢抜けないオッサンだからな。これは完全なミスキャスト。第二のヴァレンティノとして売ったリカルド・コルテスも、これといった見せ場はなく出番も少ない。男優陣の弱さが少々惜しまれる。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
モノクロ/スタンダードサイズ(1.33:)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:82分/発売元:The Roan Group
特典:スタッフ&キャスト情報



by nakachan1045 | 2020-09-11 16:56 | 映画 | Comments(0)

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