なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「アックスマン/悪魔の生贄」 Al filo del Hacha (1987)

製作:ホセ・フラデ
脚本:ホアキン・アミチャティス
ハヴィエ・エロリエタ
ホセ・フラデ
撮影:トテ・トレナス
特殊メイク:コリン・アーサー
音楽:ハヴィエ・エロリエタ
出演:バートン・フォルクス
クリスティーン・マリー・レイン
ペイジ・モーズリー
フレッド・ホリデイ
パティ・シェパード
アリシア・モロ
ジャック・テイラー
コラード・サン・マルティン
ジョイ・ブラックバーン
メイ・ヘザリー
スペイン映画/91分/カラー作品
<あらすじ>
カリフォルニアの地方都市。精神病院の看護婦が洗車中に斧で惨殺されるという事件が発生する。その頃、近隣の小さな町に引っ越してきたのがコンピューター・マニアの若者ジェラルド(バートン・フォルクス)。ある日、害虫・害獣駆除業者の友人リチャード(ペイジ・モーズリー)の仕事に付いて行った彼は、地元のバーで異臭を放つ屋根裏から、行方知れずになっていたウェイトレスの腐乱死体を発見する。死因を特定するのが困難な状態だったため、面倒を避けたい保安官マッキントッシュ(フレッド・ホリデイ)は自殺ということで処理する。
気分転換でリチャードと湖畔の居酒屋へ向かったジェラルドは、そこで店主の娘リリアン(クリスティーン・マリー・レイン)と知り合う。大学の夏休みを利用して帰省した彼女は、新学期が始まるまで姉スーザン(ジョイ・ブラックバーン)と共に店を手伝っているという。お互いに一目で惹かれあった2人は、ジェラルドが使わないパソコンをリリアンにプレゼントしたことがきっかけで急接近し、すぐに恋人同士として付き合うようになる。
一方、今度は地元の美容師リタ(アリシア・モロ)が酒場の帰りに斧でめった打ちにされて殺された。酔って列車に轢かれた事故として処理しようとしたマッキントッシュ保安官だったが、しかし今回ばかりは死因が歴然としており、仕方なく捜査を始めることとなる。小遣い稼ぎに売春をしていたリタの最後の客がリリアンの父親と判明するが、しかし動かしがたいアリバイがあった。そうこうしているうちに、地元農家の主婦や教会の聖歌隊のリーダー、アン・ビクスビー(メイ・ヘザリー)などが次々と殺されていく。
ある日、リリアンはジェラルドのパソコンで殺された女性たちのリストを発見するが、大して気にも留めなかった。しかし、やがて犠牲者が増えていくと彼女は、ある秘密に怯えるようになる。実は、彼女にはサイコパスと診断されて精神病院に隔離されたチャーリーという従兄弟がいたのだ。パソコンの検索でチャーリーが2年前に退院したまま行方不明になっていると知ったリリアンは、一連の事件の犯人がチャーリーではないかと考えて恐ろしくなる。しかも、犠牲者の女性たちはチャーリーが入院していた精神病院の関係者で、なおかつチャーリーの主治医はジェラルドの継父だった。
さらに、リチャードの年上の妻ローラ(パティ・シェパード)と教会のオルガン奏者キャプリン(ジャック・テイラー)も殺害される。その頃、事件について調べていたジェラルドは、犠牲者の女性たちについて、また別の異なる関連性があることに気付いていた…。
<作品レビュー>
'80年代に吹き荒れたスラッシャー映画ブームの末期に登場した猟奇スプラッター。日本ではアメリカ映画としてビデオ発売され、実際にキャストの大半はアメリカ人だし物語の舞台設定もアメリカだが、しかし実は純然たるスペイン映画だった。ロケ地もカリフォルニアのビッグ・ベア・レイク近郊と長年信じられてきたが、しかし主演のバートン・フォルクスやペイジ・モーズリーによると、実際の撮影は全てスペインで行われたという。メインキャストはロサンゼルスのオーディションで選ばれたので、もしかするとその際に風景映像くらいはついでに撮っておいたのかもしれないが、しかし脇役にはスパニッシュ・ホラー映画でお馴染みの面々が名を連ねているので、恐らく彼らの言う通り基本的にはスペインで撮影されたのだろう。
監督はスパニッシュ・ホラーの隠れた名匠ホセ・ラモン・ララス。日本だと『ドーターズ・オブ・ドラキュラ/吸血淫乱姉妹』('75)と『悪霊伝説』('86)、そして本作の3本くらいしか紹介されていない(しかも劇場公開作は『悪霊伝説』のみ)が、しかし海外ではアート映画ともエクスプロイテーション映画ともつかない、奇妙な味わいの低予算ホラー映画を撮る監督として根強い人気を誇っている。そうした彼の特異な作家性を踏まえて本作を見ると、意外にも普通というか真っ当というか、いい意味でも悪い意味でも職人的な仕事ぶりの貫かれた作品と言う印象だ。
オープニングはカリフォルニアの平均的な地方都市。女性ドライバーの運転する車が、ガソリンスタンドの自動洗車機へ入っていく。車の中でタバコを吸いながら洗車が終わるのを待っている女性。すると、回転するブラシの間を人影がスッと通り抜けていく。ふと気配に気づく女性ドライバーだが、しかし窓には大量の水が打ち付けているためよく見えない。ようやく洗車が終わりかけて出口が見えてくると、車の前に斧を手にした覆面の人物が立ちふさがる。何事かとギョッとする女性。次の瞬間、覆面の人物が勢いよく斧を振り下ろし、フロントガラスを破壊する。悲鳴を上げながらもめった打ちにされ、血まみれになって運転席の窓へ横たわる女性。カメラが僅かに引くと、窓の脇には赤十字マークのシールが貼られており、白衣を着た被害者の彼女が看護婦であることがわかる。この冒頭5分程度の殺人シーンが見事な出来栄えで、たちまち映画の世界へ引き込まれる。
で、舞台は移って近隣ののどかな田舎町。最近引っ越してきた若者ジェラルド(バートン・フォルクス)は大のパソコンマニアで、テクノロジーに疎い田舎社会では少々浮いた存在だ。親友である害虫駆除業者のリチャード(ペイジ・モーズリー)を頼ってこの町に来たものの、自分の家族や過去のことは話したがらない。そのリチャードは決して悪人ではないものの、財産目当てで中年女性ローラ(パティ・シェパード)と結婚しつつ、若くて男前なのをいいことに浮気し放題のクズ男。目下のところ口説いているのは、湖畔で営業する居酒屋店主の長女スーザン(ジョイ・ブラックバーン)だ。しかし、ジェラルドは大学の夏休みを利用して帰省しているその妹リリアン(クリスティーン・マリー・レイン)に惹かれる。
一方、いつもは犯罪と全く無縁の町で、次々と陰惨な殺人事件が起きていく。ことの発端は、地元のバーで発見された腐乱死体。異臭騒ぎでリチャードとジェラルドが呼ばれたのだが、原因は害虫ではなく屋根裏に放置されていた女性の遺体だった。犠牲者は行方不明になっていたウェイトレス。死因の特定が難しい状態だったため、仕事が増えることを嫌ったマッキントッシュ保安官(フレッド・ホリデイ)は自殺として処理したのだが、しかしその直後に鉄道の線路脇で美容師リタ(アリシア・モロ)の惨殺体が見つかり、最初は酔っぱらって列車に轢かれた事故死として片づけようとした保安官だったが、明らかに斧でめった打ちにされているため、さすがに殺人事件と認めざるを得なくなる。
以降も、農家の主婦や教会の聖歌隊リーダー(メイ・ヘザリー)などが相次いで殺され、いずれも凶器が斧であることから、近隣で起きた看護婦の殺人事件と同一犯であることが疑われる。隠れて売春をしていたリタの最後の客であるリリアンの父親、聖歌隊のオルガン奏者をつとめるよそ者のキャプリン(ジャック・テイラー)など、怪し気な人物が次々と捜査線上に上がるものの、しかしいずれも決定的な証拠がない。
その頃、ジェラルドが使わないパソコンをリリアンにプレゼントしたことをきっかけに急接近し、いつしか深く愛し合うようになった2人。犯罪被害者をリストアップするなど奇妙な趣味のあるジェラルドだったが、そんな風変わりなところにもリリアンは妙な親近感を覚える。だが、連続殺人事件の被害者が増えていくたび、彼女は不安に怯えるようになる。というのも、幼い頃に自分のせいで頭に大怪我をし、それが原因でサイコパスと診断されて精神病院へ入院した従弟チャーリーが、パソコンで調べたところ2年前に退院したまま行方をくらましていたのだ。
もしかして犯人はチャーリーなのではないか?さらにパソコンで調べを進めると、犠牲者の女性たちはいずれもチャーリーの入院していた精神病院の関係者であることが分かる。しかも、チャーリーの主治医はジェラルドの継父で、彼はそのことを知りつつ黙っていたようだ。リリアンの父親もチャーリーは死んだなどと嘘を言う。誰を信じてよいのか分からないリリアンは、目に見えぬチャーリーの影に恐怖心を抱くようになっていく…。
クライマックスのバッド・エンドなどんでん返しは想定の範囲内であるものの、それでも最後の最後まで本当の殺人鬼は誰なのか?と謎を引っ張っていく脚本の出来栄えは手堅い。ご都合主義に陥りがちな作品の多いユーロ・ホラーにあって、最後までストーリーが破綻することなく上手くまとまっているのは偉い。ララス監督の演出も非常にオーソドックスで、それなりに過激なスプラッターを随所に交えつつも、決して荒唐無稽に走ったりなどはしない。インパクトやエモーションよりもロジカルを重視する辺りは、ある意味でアメリカ映画的とも言えるだろう。その分、小ぢんまりとした印象を受けることは否めず、トラッシュなスパニッシュ・ホラーを期待する向きには少なからず不満も残るかもしれない。
メインキャストはいずれもロサンゼルスで選抜された、アメリカの無名若手俳優ばかり。ジェラルド役のバートン・フォルクスはこれが初の大役だったが、この1年後に役者を引退して故郷テキサスで教師になったという。リチャード役のペイジ・モーズリーはテレビの昼メロ俳優。マッキントッシュ保安官を演じているフレッド・ホリデイは'50年代から数多くの映画やテレビで端役を演じていた役者だ。そして、脇を固めるのはパティ・シェパードやジャック・テイラーなど、スペインを活動の拠点としていたアメリカ人俳優たち。いずれもスペインやイタリアのホラー映画ではお馴染みの顔だ。
なお、海外では今年に入ってArrow Filmsからアメリカ盤とイギリス盤のブルーレイが同時発売されたばかり。オリジナルのカメラネガから2K解像度でスキャン&修復されたという本編映像は驚くほどの超高画質だ。30年以上前に俳優を引退しているバートン・フォルクスのインタビューと音声解説も、よくぞまあ消息を探したもんだと感心させられる。
評価(5点満点):★★★☆☆
参考ブルーレイ情報(イギリス盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:1.0ch リニアPCM/言語:英語・スペイン語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:91分/発売元:Arrow Films
特典:俳優バートン・フォルクスによる音声解説/The Hysteria Cntiniuesによる音声解説/バートン・フォルクスのインタビュー('20年制作・約11分)/ペイジ・モーズリーのインタビュー(約11分)/特殊メイク担当コリン・アーサーのインタビュー('20年制作・約8分)/イメージ・ギャラリー/オリジナル劇場予告編(英語版・スペイン語版)
by nakachan1045
| 2020-09-15 13:22
| 映画
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