なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
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「恐竜の惑星」 Planet of Dinosaur (1977)


<あらすじ>
大気圏に覆われた未知の惑星を発見する宇宙船オデッセイ号。しかし、マシントラブルによって乗組員たちは偵察機で惑星へ不時着せねばならなくなる。巨大な湖へ突っ込んだ偵察機から脱出する人々。そこは地球と同じように空気が存在し、地球と同じような大自然が広がっていた。全員が辛うじて岸へと辿り着くものの、泳いでいるうちに通信機器を失くしてしまう。女性通信士シンディ(メアリー・アップルセス)が取りに戻ろうとするものの、水中から現れた生物に食い殺されてしまう。不時着する直前に地球へ送ったSOS信号はちゃんと届いているか分からない。指揮官のノーサイス隊長(ルイ・ローレス)は、ひとまず安全な場所を探して移動することにする。
文句ばかり言う副社長ハーヴェイ(ハーヴェイ・シェイン)の小言に悩まされながら、ジャングルの沼地をあてどなく彷徨う一行。やがて彼らは渓谷地帯へと到着するのだが、そこで目の前に現れたのは巨大な恐竜だった。この惑星は地球の原始時代と同じ環境だったのだ。とにかく平地にいては、いつ恐竜に襲われるやもしれない。ひたすら岩山を登って行った彼らは、その途中でセントロサウルスに襲われてハーヴェイを失うも、崖に囲まれた場所を見つけて腰を落ち着けることにする。ここならば、少なくとも大型の恐竜に襲われる心配はないと思えたからだ。
だが、来るあてもない救援を期待してひたすら隠れて待つことにこだわる保守的なノーサイス隊長と、この惑星で生き延びることを前提に恐竜と戦わなくてはと主張する現実的な機械技師ジム(ジェームズ・ホイットワース)の対立が表面化する。ノーサイスの右腕ナイラ(パメラ・ボッタロ)をはじめとする隊員たちも、やがてジムの意見に賛同するようになり、ノーサイスは難しい決断を迫られていく…。

<作品レビュー>
レイ・ハリーハウゼンと恐竜を敬愛する若手の特殊効果マンたちが一堂に集まり、ストップモーション・アニメを駆使して作った低予算のSF恐竜映画である。中心となったのは、これが唯一の監督作であるジェームズ・K・シェアと、後に『ドリームスケープ』('84)のストップモーションを手掛けるスティーブン・チャーカス、『遊星からの物体X』('82)や『死霊のはらわた2』('87)などのストップモーション・アニメで知られるジェームズ・オーパール、その『死霊のはらわた2』の特殊効果でサターン賞を獲得したダグ・ベスウィック、『タイタンの戦い』('81)ではハリーハウゼンの助手も務めたジム・ダンフォースといった面々。特撮ポルノ映画『フレッシュゴードン』('74)のスタッフとして知り合った彼らは、共同でデスビースト・プロダクションという制作会社を設立し、その記念すべき第1回作品として発表したのが本作だった。

舞台は人類が宇宙の彼方へ旅するようになった近未来。マシンのトラブルに見舞われた宇宙船オデッセイ号の乗組員たちは、地球と同じように空気の存在する未知の惑星へ不時着することとなるのだが、そこにはまるで太古の地球のごとく大小の恐竜たちが闊歩する世界が広がっていた。はるか遠く離れた地球との連絡手段も絶たれてしまった今、果たして彼らはこの未知の惑星から生きて脱出することが出来るのか、それとも…?というわけなのだが、とりあえずストーリーは二の次三の次。オープニングからして『猿の惑星』('68)の安易なパクリで、以降もなにかと軽率な乗組員たちによる内輪揉めがダラダラと続く。物語のつまらなさは『SFレーザーブラスト』('78)並み(笑)。おかげで90分以下の上映時間がやたらと長く感じられてしまう。

その一方で、ストップモーション・アニメで描かれる恐竜たちは文句なしに素晴らしい。滑らかで自然な恐竜の動きも然ることながら、細部まで精巧に作られたアニメーション用モデルは迫力満点。それこそ、ハリーハウゼンも顔負けの見事なクオリティだ。ダイナメーションの伝統技術に則って、俳優と恐竜を共演させた合成シーンもまずまずの仕上がり。終盤には『原始怪獣現わる』('53)のリドサウルスにソックリな恐竜も登場し、噂を聞きつけたハリーハウゼン御大がストップモーションの作業現場を見学に訪れたそうだが、偉大な先駆者を前にして恥ずかしくない仕事ぶりだと言えよう。制作チームによると本作は『原始怪獣現わる』へのオマージュだったらしいが、しかし南カリフォルニアの渓谷地帯で撮影されたビジュアルの印象は、むしろ『恐竜グワンジ』に近いのではないかとも思う。

そんなわけで、とにかく恐竜が大好き!動く恐竜の雄姿が拝めればそれでよし!という特撮ファンのみにおススメできる一本。予算の大半がストップモーション・アニメ製作に注ぎ込まれ、おかげで役者のギャラは分割払いにせねばならなかったそうだが、恐らく制作チームは「レイ・ハリーハウゼンみたいに恐竜を動かしてみせる」こと以外には興味がなかったのかもしれない。実際、本作の元になった短編テスト・フィルムを制作し、特撮班の中心的役割を担ったスティーブン・チャーカスは恐竜好きが高じて、後に映画界から足を洗って古代生物学者になってしまったという。

宇宙船指揮官のノーサイス隊長を演じているルイ・ローレスの本業はドキュメンタリー作家。対立する乗組員ジム役のジェームズ・ホイットワースは、ウェス・クレーヴン監督の出世作『サランドラ』('77)で演じた人喰い一家の父親役で知られる大柄な俳優で、本作のキャスト陣では最も映画出演経験が豊富だったためトップ・ビリングされている。また、若手乗組員マイクを演じているマイケル・セイヤーは、後にフィリピンへ拠点を移してマックス・セイヤーと名前を変え、フィリピンで撮影されるB級アクション映画の売れっ子スターとなった。女優陣では露出度の高い衣装で目を引くエキゾチック美女ダーナ役のダーナ・ワイルドが、一部のコアな映画マニアの間ではカルト女優として人気を集めるように。真っ先に殺されるシンディ役のメアリー・アップルセスも、なぜあんなに可愛いのに出番が少ないんだ!?と不思議がる声が昔から多いが、実はこのシンディ役が一番最後にキャスティングされ、彼女がオーディションに現れた時点で既に他の配役が全て決まっていたため仕方なかったのだとか。しかも、後に撮り直しが決まった際には消息不明となっており、結果的に出番を増やすことが出来なかったようだ。

ちなみに、アメリカでは映画祭で上映されたのみで劇場公開されず、'80年代に入ってビデオ発売されることとなった本作。なにしろ当時は『スター・ウォーズ』ブームの到来に沸いた時代。古式ゆかしいストップモーション・アニメの恐竜映画は需要がないと見做されたのだろう。制作会社デスビースト・プロダクションもこれ一本きりで解散することに。'07年には30周年記念盤DVD(ジャケットには20周年記念と誤表記されている)がリリースされているが、既にオリジナル・プリントは修復が不可能なくらいに傷んでしまっていたらしく、保存状態の良好な35ミリ・フィルムに一部欠損部分を16ミリ・フィルムで補った復元完全版をマスターとして使用している。

評価(5点満点):★★★☆☆
参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:83分/発売元:Retromedia
特典:制作チームによる音声解説/テレビ・スポット集/ウィリス・オブライエン短編集
by nakachan1045
| 2020-09-25 06:11
| 映画
|
Comments(6)
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na
at 2021-08-09 09:35
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na
at 2021-08-09 09:38
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na
at 2022-04-10 11:05
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na
at 2025-08-11 13:26
自分、この映画のキャラクターではシンディとダーナに生き残ってほしかったです。二人とも女性たちの中では美人でしたし。とくにダーナはあの腰まで伸びた黒髪ストレートロングが魅力的に感じました。シンディも女性の中で一番かわいかったので最初に死ぬのはもったいなさすぎると思えてなりません。もし、シンディ役のメアリー・アップルセスが消息不明になっていなかったら脚本を修正すればシンディは生き残れたかもしれません。逆にシンディとダーナを残して他の登場人物は全員死亡という展開でも良かったと思います。本編は特撮部分はすごく出来が良いですが、ドラマ部分(および脚本)はひどいですし。なかざわひでゆきさんはどう思いますか。
1
そういえば、今年、恐竜の惑星のDVDが発売されましたね。あまりにもマニアックな作品がDVD化されたのでびっくりしました。
確かに特撮は素晴らしいんですよね。ストーリーはつまらなさ過ぎて半ば拷問みたいなもんですが(笑)。個人的には、正直なところ誰が死んでも生き残っても変わらない気がするので、とりあえずドラマパートをざっくり削って、もっといろんな恐竜をたっぷりと見せてくれたらと思いますね(^^;
①この記事にも書いてある映画「SFレーザーブラスト」についてなかざわひでゆきさんはどう思っていますか?
自分は「恐竜の惑星」と全く同じ評価でストップモーション(トカゲ型宇宙人)だけしか見る価値がないというのが正直な感想です(恐竜の惑星の場合は美女が二人(シンディとダーナ)いますが)。
②「恐竜の惑星」も「SFレーザーブラスト」も特撮シーン(ストップモーション)の長さはそのままで本編を大幅に短くして上映時間を30分から45分にしてほしかったです。それくらいの時間なら見るのが苦痛にならないですし。
自分は「恐竜の惑星」と全く同じ評価でストップモーション(トカゲ型宇宙人)だけしか見る価値がないというのが正直な感想です(恐竜の惑星の場合は美女が二人(シンディとダーナ)いますが)。
②「恐竜の惑星」も「SFレーザーブラスト」も特撮シーン(ストップモーション)の長さはそのままで本編を大幅に短くして上映時間を30分から45分にしてほしかったです。それくらいの時間なら見るのが苦痛にならないですし。
> naさん
『SFレーザーブラスト』はかなり昔に見たきりなんですが、やっぱりストップモーションしか記憶にないですね(笑)。ただ、30分とか45分だと一般的な劇場公開が不可能になってしまうので、さすがにそれは厳しいんじゃないでしょうか。
『SFレーザーブラスト』はかなり昔に見たきりなんですが、やっぱりストップモーションしか記憶にないですね(笑)。ただ、30分とか45分だと一般的な劇場公開が不可能になってしまうので、さすがにそれは厳しいんじゃないでしょうか。
この映画は登場人物を腰まで伸びた黒髪ロングストレートヘアが魅力的な美人のダーナと女性陣の中で一番かわいかったシンディの2人だけにしても良かったと思います。
恐竜を退治するか救助を待つかで揉めるという展開は登場人物が2人だけでも成立すると思いますし。
登場人物が少ない関係で史実の本編以上に強引なストーリーになったかもしれませんが、元からひどいストーリーなので評価は変わらなかったと思います。
それから役者が2人だけなら史実みたいに役者のギャラが分割払いになったりせず、2人にギャラを一括で支払えていたと思います(出演者が9人から2人に減っているので)。
ストーリーはダーナとシンディが恐竜を退治するか救助を待つかで揉めるが最終的には和解して一緒に肉食恐竜を倒した後に無事に救助の宇宙船が来て恐竜の惑星から2人とも脱出してハッピーエンドという展開にしてほしかったですね。その方が王道で史実より作品人気出たと思います。
恐竜を退治するか救助を待つかで揉めるという展開は登場人物が2人だけでも成立すると思いますし。
登場人物が少ない関係で史実の本編以上に強引なストーリーになったかもしれませんが、元からひどいストーリーなので評価は変わらなかったと思います。
それから役者が2人だけなら史実みたいに役者のギャラが分割払いになったりせず、2人にギャラを一括で支払えていたと思います(出演者が9人から2人に減っているので)。
ストーリーはダーナとシンディが恐竜を退治するか救助を待つかで揉めるが最終的には和解して一緒に肉食恐竜を倒した後に無事に救助の宇宙船が来て恐竜の惑星から2人とも脱出してハッピーエンドという展開にしてほしかったですね。その方が王道で史実より作品人気出たと思います。
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