なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「宇宙からのツタンカーメン」 Time Walker (1982)
製作:ディミトリ・ヴィラード
ジェイソン・ウィリアムズ
原案:ジェイソン・ウィリアムズ
トム・フリードマン
脚本:トム・フリードマン
カレン・レヴィット
撮影:ロビー・グリーンバーグ
音楽:リチャード・H・バンド(リチャード・バンド)
出演:ベン・マーフィ
ニナ・アクセルロッド
ケヴィン・ブロフィー
ロバート・ランドム
ジェームズ・カレン
サム・チュー・ジュニア
メリッサ・プロフェット
オースティン・ストーカー
ジェラルド・プレンダーガスト
シャリ・ベラフォンテ=ハーパー(シャリ・ベラフォンテ)
アントワネット・バウアー
ダーウィン・ジョストン
グレタ・ブラックバーン
ジョン・ラヴァキエッリ
アメリカ映画/86分/カラー作品
カリフォルニア科学研究所のダグラス・マクファデン教授(ベン・マーフィ)は、エジプトでツタンカーメンの墓を調査していたところ、偶然起きた地震によって姿を現した隠し部屋から一体のミイラを発見する。ミイラは石棺に入ったままアメリカのカリフォルニアへと運ばれ、すぐにX線検査にかけられるものの、学生ピーター(ケヴィン・ブロフィー)が機械の操作を誤って失敗。夜遅くまで研究所に残って、X線写真を撮ったピーター。すると、石棺の中に5つの宝石が隠されていることに気付く。これは高く売れるかもしれないと考えたピーターは、宝石を盗んで新たにX線写真を撮り直し、元の写真を研究所内に隠すのだった。
早速、盗んだ宝石を現金に換えようと宝石店へ持ち込んだピーターだが、これといって値打ちのないクリスタルだと判明。ガッカリした彼は学生仲間たちを騙してクリスタルを売りつける。その頃、研究所ではX線の影響でミイラが息を吹き返し、失われた5つのクリスタルの行方を探し始めていた。
その翌日、研究所ではマスコミを集めて記者会見が行われ、ロスモア所長(ジェームズ・カレン)が意気揚々とミイラを後悔しようとしたところ、石棺の中身がからっぽだった。どよめきに包まれる会場。すると、石棺に付着した緑色の苔に触れた学生の指がみるみるうちに腐り始めて病院へ担ぎ込まれる。メルローズ博士(オースティン・ストーカー)とヘイワース博士(アントワネット・バウアー)によると緑色の苔は未知の細菌だという。その頃、研究所ではミイラの行方不明騒動は学生たちのイタズラと考え、ロスモア所長とその腰巾着のセラーノ博士(サム・チュー・ジュニア)は犯人探しに躍起となっていた。
一方、蘇ったミイラは5つのクリスタルを持つ学生たちを次々と殺し、奪い返したクリスタルを通信機のようなパネルに組み込んでいく。相次ぐ不可解な殺人事件に、警察のプラマー警部補(ダーウィン・ジョストン)は殺人鬼が暗躍しているものと考える。だが、石棺から見つかった古代エジプト文字を解読したマクファデン教授は別の仮説を立てる。ミイラと思われたものは実は古代エジプトに宇宙から飛来したエイリアンではないかと。実際にその通りで、エイリアンは故郷の星へ帰るために必要なクリスタルを取り戻そうとしていたのだ。しかも、そのひとつをマクファデン教授の教え子で恋人のスーザン(ニナ・アクセルロッド)も持っていた…。
<作品レビュー>
エジプトのツタンカーメンの墓から発見されたミイラが実はエイリアンだった…!というアイディアが全ての凡庸なB級SFホラー映画。当然(?)のごとく日本では劇場未公開に終わったが、どういうわけか'84年に淀川長治先生の「日曜洋画劇場」にて『宇宙から来たツタンカーメン/消えたミイラ!全裸美女に迫る古代エジプトの魔神』の邦題でオンエアされ、その仰々しいサブタイトルと拍子抜けする中身のギャップから当時は色々な意味で話題騒然となった。数多のC級~Z級映画を見慣れてしまった今となれば、本作などは数あるポンコツ映画群の中でもだいぶ良心的な部類に入ると思うのだが、しかし当時まだ平均的映画ファンの高校1年生だった筆者にとってはなかなか衝撃的なトンデモ映画だった。恐らく、世間の視聴者の多くも同感だったであろう。
物語の始まりはエジプト。アメリカ人の科学者マクファデン教授(ベン・マーフィ)がツタンカーメンの墓を調査していたところ、たまたま起きた地震によって隠し部屋が姿を現し、石棺に収められた古代のミイラを発見する。早速、カリフォルニアの研究所に石棺とミイラを持ち帰ったマクファデン教授は、教え子のピーター(ケヴィン・ブロフィー)にX線写真を撮るよう指示するのだが、不良学生のピーターはその際に石棺から発見された5つのクリスタルを盗み、小遣い稼ぎのため学生仲間たちに売り捌いてしまう。
すると、X線の放射能を浴びたミイラが息を吹き返し、奪われたクリスタルを取り返すべく学生たちを一人また一人と殺していく。一方、ミイラが行方不明になって大騒ぎの研究所では、石棺に付着した緑色の苔を触った学生が手に大怪我を負ってしまう。それは地球上に存在しない未知の細菌だった。同僚のメルローズ博士(オースティン・ストーカー)や助手で恋人のスーザン(ニナ・アクセルロッド)らと共に調査を進めたマクファデン教授は、やがて衝撃的な真実に辿り着くこととなる。ミイラの正体は古代エジプトに宇宙から飛来したエイリアンで、盗まれた5つのクリスタルは故郷の星へ戻るために必要なパーツだったのだ…!
とりあえず、フランケンシュタインの怪物やドラキュラなどと並ぶ古典的モンスターのミイラ男を、'80年代のSFホラー・ブームに便乗してエイリアンと結び付けたアイディアは悪くない。元ネタを考えついたのは原案と製作を兼ねるジェイソン・ウィリアムズ。あのSFポルノ『フレッシュ・ゴードン』('74)の主演俳優だ。『ファントム・オブ・パラダイス』('74)や『ウォール街』('87)の製作者エドワード・R・プレスマンの助手だったディミトリ・ヴィラードと知り合った彼が、当時独立を考えていたヴィラードに本作の企画を売り込んだことがそもそもの発端。ロジャー・コーマンのニュー・ワールド・ピクチャーズをはじめ合計4社の出資を取りつけ、制作費を抑えるため組合未加入のスタッフを集めて撮影されたという。
やはり最大の問題は少なすぎる制作費にあるといえよう。おかげで、いくらでも面白く出来そうな基本プロットを活かしきれず、ミイラ男がふらふらと徘徊して人を殺していくという、ただのよくあるスラッシャー映画に終始してしまった。しかも、ホラー映画の呼び水となるようなエロもグロも殆どなし。『スター・ウォーズ』シリーズや『インディ・ジョーンズ』シリーズの予告編を制作したトム・フリードマン監督の演出はプロとしての基本をちゃんと押さえているし、後に『ファーノース』('88)や『フリー・ウィリー』('93)などメジャー映画で活躍する撮影監督ロビー・グリーンバーグのカメラワークも見栄え悪くないものの、全体的には見せ場が少なくて締まりのないポンコツ映画となっている。
ただ、完成時はスタッフ一同、映画の出来にかなりの自信を持っていたらしく、実はシリーズ化も念頭に置いていたという。クライマックスに登場する衝撃の「To Be Continued」はそれが理由だ。マジで続編を作る気満々だったようだ。しかし、蓋を開けてみれば批評的にも興行的にも大惨敗。試写を見たロジャー・コーマンも難しい顔をしていたという。ちなみに、全米劇場公開版や現行のビデオソフト版の本編は86分だが、プロデューサーのディミトリ・ヴィラードによると、日本の「日曜洋画劇場」で放送されたバージョンは96分だった。実はもともと本作の完成版は96分だったが、長すぎると感じたロジャー・コーマンの指示で86分に削られたのだという。しかし、それだと2時間のテレビ放送枠に足りないため、日本のテレビ局からの要望で96分に再編集したらしい。今となっては当時の記憶もおぼろげなので、日本放送版ではどんなシーンが追加されていたのか分からないのだが…。
主演はテレビドラマ『西部二人組』('71~'73)で知られる俳優ベン・マーフィ。それ以外のキャストも主にテレビ・スターが集められている。愚かな学生ピーターを演じているケヴィン・ブロフィーは、狼に育てられた少年を描くドラマ『Lucan』('77~'78)で主演デビューした俳優だが、ホラー映画ファンには『ヘルナイト』('81)のおバカ大学生ピーター役でお馴染みだろう。また、ジョン・カーペンター監督の『要塞警察』('76)の主演コンビ、オースティン・ストーカーとダーウィン・ジョストンの再共演も興味深いところ。ラジオDJのリンダを演じているシャリ・ベラフォンテは、あのハリー・べラフォンテの愛娘で、当時はまだデビューしたての新人だった。
そのほか、マクファデン教授を煙たがる嫌味な所長役は、ご存じ『バタリアン』('85)や『ウォール街』('87)、『ニクソン』('95)などの名優ジェームズ・カレン。ヘイワース博士役のアントワネット・バウアーは、'60年代に『ミステリーゾーン』や『宇宙大作戦』など数多くのドラマにゲスト出演し、アメリカでは熱心なファンの多いテレビ界のカルト女優だ。『プロム・ナイト』('80)の情緒不安定な学長夫人として記憶しているホラー映画ファンも少なくないかもしれない。
評価(5点満点):★★☆☆☆
参考DVD情報(アメリカ盤)※4本立てカップリング
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:なし/地域コード:1/時間:86分/発売元:Shout Factory
特典:製作者ディミトリ・ヴィラードのインタビュー('11年制作・約9分)/俳優ケヴィン・ブロフィーのインタビュー('11年制作・約10分)/オリジナル劇場予告編
by nakachan1045
| 2020-10-23 12:34
| 映画
|
Comments(0)
以前の記事
2024年 03月2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
最新のコメント
> kyonさん コメ.. |
by nakachan1045 at 13:06 |
なな・・、なんて懐かしい.. |
by kyon at 21:40 |
> 牧子嘉丸さん あり.. |
by nakachan1045 at 18:04 |
素晴らしい解説ありがとう.. |
by 牧子嘉丸 at 23:38 |
あんまり気にしなかったけ.. |
by たぬきネコ at 13:13 |
> naさん 確かに、.. |
by nakachan1045 at 00:20 |
今作で使用されている本物.. |
by na at 13:03 |
初めまして! 60年代!.. |
by Alexちゃん at 16:58 |
> naさん そう.. |
by nakachan1045 at 03:12 |
シンドバッドたちが北極で.. |
by na at 14:48 |
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
ハリウッド映画(501)70年代(325)
ホラー映画(258)
60年代(249)
80年代(197)
イタリア映画(165)
アクション(125)
ドラマ(105)
イギリス映画(100)
サスペンス(97)
50年代(94)
カルト映画(92)
ダンス(62)
30年代(61)
40年代(56)
日本映画(55)
ポップス(53)
ロマンス(51)
SF映画(43)
コメディ(40)
2020年代音楽(40)
ノワール(39)
ジャッロ(37)
70年代音楽(36)
フランス映画(34)
1920年代(31)
90年代(31)
西部劇(30)
エロス(25)
K-POP(25)
スペイン映画(24)
香港映画(24)
ドイツ映画(23)
ミュージカル(21)
戦争(20)
ワールド映画(19)
サウンドトラック(18)
ファンタジー(18)
アドベンチャー(17)
歴史劇(17)
イタリア映画音楽(16)
ソウル(15)
テレビ(14)
メキシコ映画(14)
アニメーション(14)
80年代音楽(13)
ルーマニアン・ポップス(12)
1910年代(12)
スパイ(12)
ラテン(11)
ロシア映画(11)
2010年代音楽(11)
フィリピン映画(9)
カナダ映画(7)
60年代音楽(6)
青春(6)
ロック(6)
シットコム(4)
ラウンジ(4)
連続活劇(3)
パニック(3)
LGBT(3)
90年代音楽(3)
2010年代(3)
フランス映画音楽(2)
バルカン・ポップス(2)
アンダーグランド(2)
オーストラリア映画(2)
トルコ映画(2)
ジャズ(2)
2000年代音楽(2)
2000年代(2)
文芸(1)
ディスコ(1)
サルサ(1)
00年代(1)
伝記映画(1)
2020年代(1)
韓国映画(1)
J-POP(1)
ブログパーツ
最新の記事
「馬と呼ばれた男」 A Ma.. |
at 2024-03-27 12:36 |
「The End of th.. |
at 2024-03-26 17:08 |
「Abou Ben Boog.. |
at 2024-03-19 06:58 |
「The Greatest .. |
at 2024-03-19 00:30 |
「上海ドラゴン英雄拳」 馬永.. |
at 2024-03-17 19:13 |