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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「宇宙からのツタンカーメン」 Time Walker (1982)

「宇宙からのツタンカーメン」 Time Walker  (1982)_f0367483_18474612.jpg
監督:トム・ケネディ
製作:ディミトリ・ヴィラード
   ジェイソン・ウィリアムズ
原案:ジェイソン・ウィリアムズ
   トム・フリードマン
脚本:トム・フリードマン
   カレン・レヴィット
撮影:ロビー・グリーンバーグ
音楽:リチャード・H・バンド(リチャード・バンド)
出演:ベン・マーフィ
   ニナ・アクセルロッド
   ケヴィン・ブロフィー
   ロバート・ランドム
   ジェームズ・カレン
   サム・チュー・ジュニア
   メリッサ・プロフェット
   オースティン・ストーカー
   ジェラルド・プレンダーガスト
   シャリ・ベラフォンテ=ハーパー(シャリ・ベラフォンテ)
   アントワネット・バウアー
   ダーウィン・ジョストン
   グレタ・ブラックバーン
   ジョン・ラヴァキエッリ
アメリカ映画/86分/カラー作品




「宇宙からのツタンカーメン」 Time Walker  (1982)_f0367483_12321056.jpg
<あらすじ>
カリフォルニア科学研究所のダグラス・マクファデン教授(ベン・マーフィ)は、エジプトでツタンカーメンの墓を調査していたところ、偶然起きた地震によって姿を現した隠し部屋から一体のミイラを発見する。ミイラは石棺に入ったままアメリカのカリフォルニアへと運ばれ、すぐにX線検査にかけられるものの、学生ピーター(ケヴィン・ブロフィー)が機械の操作を誤って失敗。夜遅くまで研究所に残って、X線写真を撮ったピーター。すると、石棺の中に5つの宝石が隠されていることに気付く。これは高く売れるかもしれないと考えたピーターは、宝石を盗んで新たにX線写真を撮り直し、元の写真を研究所内に隠すのだった。
早速、盗んだ宝石を現金に換えようと宝石店へ持ち込んだピーターだが、これといって値打ちのないクリスタルだと判明。ガッカリした彼は学生仲間たちを騙してクリスタルを売りつける。その頃、研究所ではX線の影響でミイラが息を吹き返し、失われた5つのクリスタルの行方を探し始めていた。
その翌日、研究所ではマスコミを集めて記者会見が行われ、ロスモア所長(ジェームズ・カレン)が意気揚々とミイラを後悔しようとしたところ、石棺の中身がからっぽだった。どよめきに包まれる会場。すると、石棺に付着した緑色の苔に触れた学生の指がみるみるうちに腐り始めて病院へ担ぎ込まれる。メルローズ博士(オースティン・ストーカー)とヘイワース博士(アントワネット・バウアー)によると緑色の苔は未知の細菌だという。その頃、研究所ではミイラの行方不明騒動は学生たちのイタズラと考え、ロスモア所長とその腰巾着のセラーノ博士(サム・チュー・ジュニア)は犯人探しに躍起となっていた。
一方、蘇ったミイラは5つのクリスタルを持つ学生たちを次々と殺し、奪い返したクリスタルを通信機のようなパネルに組み込んでいく。相次ぐ不可解な殺人事件に、警察のプラマー警部補(ダーウィン・ジョストン)は殺人鬼が暗躍しているものと考える。だが、石棺から見つかった古代エジプト文字を解読したマクファデン教授は別の仮説を立てる。ミイラと思われたものは実は古代エジプトに宇宙から飛来したエイリアンではないかと。実際にその通りで、エイリアンは故郷の星へ帰るために必要なクリスタルを取り戻そうとしていたのだ。しかも、そのひとつをマクファデン教授の教え子で恋人のスーザン(ニナ・アクセルロッド)も持っていた…。
「宇宙からのツタンカーメン」 Time Walker  (1982)_f0367483_12313853.jpg
<作品レビュー>
エジプトのツタンカーメンの墓から発見されたミイラが実はエイリアンだった…!というアイディアが全ての凡庸なB級SFホラー映画。当然(?)のごとく日本では劇場未公開に終わったが、どういうわけか'84年に淀川長治先生の「日曜洋画劇場」にて『宇宙から来たツタンカーメン/消えたミイラ!全裸美女に迫る古代エジプトの魔神』の邦題でオンエアされ、その仰々しいサブタイトルと拍子抜けする中身のギャップから当時は色々な意味で話題騒然となった。数多のC級~Z級映画を見慣れてしまった今となれば、本作などは数あるポンコツ映画群の中でもだいぶ良心的な部類に入ると思うのだが、しかし当時まだ平均的映画ファンの高校1年生だった筆者にとってはなかなか衝撃的なトンデモ映画だった。恐らく、世間の視聴者の多くも同感だったであろう。
「宇宙からのツタンカーメン」 Time Walker  (1982)_f0367483_12314470.jpg
物語の始まりはエジプト。アメリカ人の科学者マクファデン教授(ベン・マーフィ)がツタンカーメンの墓を調査していたところ、たまたま起きた地震によって隠し部屋が姿を現し、石棺に収められた古代のミイラを発見する。早速、カリフォルニアの研究所に石棺とミイラを持ち帰ったマクファデン教授は、教え子のピーター(ケヴィン・ブロフィー)にX線写真を撮るよう指示するのだが、不良学生のピーターはその際に石棺から発見された5つのクリスタルを盗み、小遣い稼ぎのため学生仲間たちに売り捌いてしまう。
「宇宙からのツタンカーメン」 Time Walker  (1982)_f0367483_12314960.jpg
すると、X線の放射能を浴びたミイラが息を吹き返し、奪われたクリスタルを取り返すべく学生たちを一人また一人と殺していく。一方、ミイラが行方不明になって大騒ぎの研究所では、石棺に付着した緑色の苔を触った学生が手に大怪我を負ってしまう。それは地球上に存在しない未知の細菌だった。同僚のメルローズ博士(オースティン・ストーカー)や助手で恋人のスーザン(ニナ・アクセルロッド)らと共に調査を進めたマクファデン教授は、やがて衝撃的な真実に辿り着くこととなる。ミイラの正体は古代エジプトに宇宙から飛来したエイリアンで、盗まれた5つのクリスタルは故郷の星へ戻るために必要なパーツだったのだ…!
「宇宙からのツタンカーメン」 Time Walker  (1982)_f0367483_12315505.jpg
とりあえず、フランケンシュタインの怪物やドラキュラなどと並ぶ古典的モンスターのミイラ男を、'80年代のSFホラー・ブームに便乗してエイリアンと結び付けたアイディアは悪くない。元ネタを考えついたのは原案と製作を兼ねるジェイソン・ウィリアムズ。あのSFポルノ『フレッシュ・ゴードン』('74)の主演俳優だ。『ファントム・オブ・パラダイス』('74)や『ウォール街』('87)の製作者エドワード・R・プレスマンの助手だったディミトリ・ヴィラードと知り合った彼が、当時独立を考えていたヴィラードに本作の企画を売り込んだことがそもそもの発端。ロジャー・コーマンのニュー・ワールド・ピクチャーズをはじめ合計4社の出資を取りつけ、制作費を抑えるため組合未加入のスタッフを集めて撮影されたという。
「宇宙からのツタンカーメン」 Time Walker  (1982)_f0367483_12320571.jpg
やはり最大の問題は少なすぎる制作費にあるといえよう。おかげで、いくらでも面白く出来そうな基本プロットを活かしきれず、ミイラ男がふらふらと徘徊して人を殺していくという、ただのよくあるスラッシャー映画に終始してしまった。しかも、ホラー映画の呼び水となるようなエロもグロも殆どなし。『スター・ウォーズ』シリーズや『インディ・ジョーンズ』シリーズの予告編を制作したトム・フリードマン監督の演出はプロとしての基本をちゃんと押さえているし、後に『ファーノース』('88)や『フリー・ウィリー』('93)などメジャー映画で活躍する撮影監督ロビー・グリーンバーグのカメラワークも見栄え悪くないものの、全体的には見せ場が少なくて締まりのないポンコツ映画となっている。
「宇宙からのツタンカーメン」 Time Walker  (1982)_f0367483_12321671.jpg
ただ、完成時はスタッフ一同、映画の出来にかなりの自信を持っていたらしく、実はシリーズ化も念頭に置いていたという。クライマックスに登場する衝撃の「To Be Continued」はそれが理由だ。マジで続編を作る気満々だったようだ。しかし、蓋を開けてみれば批評的にも興行的にも大惨敗。試写を見たロジャー・コーマンも難しい顔をしていたという。ちなみに、全米劇場公開版や現行のビデオソフト版の本編は86分だが、プロデューサーのディミトリ・ヴィラードによると、日本の「日曜洋画劇場」で放送されたバージョンは96分だった。実はもともと本作の完成版は96分だったが、長すぎると感じたロジャー・コーマンの指示で86分に削られたのだという。しかし、それだと2時間のテレビ放送枠に足りないため、日本のテレビ局からの要望で96分に再編集したらしい。今となっては当時の記憶もおぼろげなので、日本放送版ではどんなシーンが追加されていたのか分からないのだが…。
「宇宙からのツタンカーメン」 Time Walker  (1982)_f0367483_12320058.jpg
主演はテレビドラマ『西部二人組』('71~'73)で知られる俳優ベン・マーフィ。それ以外のキャストも主にテレビ・スターが集められている。愚かな学生ピーターを演じているケヴィン・ブロフィーは、狼に育てられた少年を描くドラマ『Lucan』('77~'78)で主演デビューした俳優だが、ホラー映画ファンには『ヘルナイト』('81)のおバカ大学生ピーター役でお馴染みだろう。また、ジョン・カーペンター監督の『要塞警察』('76)の主演コンビ、オースティン・ストーカーとダーウィン・ジョストンの再共演も興味深いところ。ラジオDJのリンダを演じているシャリ・ベラフォンテは、あのハリー・べラフォンテの愛娘で、当時はまだデビューしたての新人だった。
「宇宙からのツタンカーメン」 Time Walker  (1982)_f0367483_12322502.jpg
そのほか、マクファデン教授を煙たがる嫌味な所長役は、ご存じ『バタリアン』('85)や『ウォール街』('87)、『ニクソン』('95)などの名優ジェームズ・カレン。ヘイワース博士役のアントワネット・バウアーは、'60年代に『ミステリーゾーン』や『宇宙大作戦』など数多くのドラマにゲスト出演し、アメリカでは熱心なファンの多いテレビ界のカルト女優だ。『プロム・ナイト』('80)の情緒不安定な学長夫人として記憶しているホラー映画ファンも少なくないかもしれない。
「宇宙からのツタンカーメン」 Time Walker  (1982)_f0367483_12322138.jpg
評価(5点満点):★★☆☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)※4本立てカップリング
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:なし/地域コード:1/時間:86分/発売元:Shout Factory
特典:製作者ディミトリ・ヴィラードのインタビュー('11年制作・約9分)/俳優ケヴィン・ブロフィーのインタビュー('11年制作・約10分)/オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2020-10-23 12:34 | 映画 | Comments(0)

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