なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「シンバッド七回目の航海」 The 7th Voyage of Sinbad (1958)

製作:チャールズ・H・シュニーア
脚本:ケネス・コルブ
撮影:ウィルキー・キーパー
特殊視覚効果:レイ・ハリーハウゼン
美術:ギル・パレンド
音楽:バーナード・ハーマン
出演:カーウィン・マシューズ
キャスリン・グラント
リチャード・エイヤー
トリン・サッチャー
アレック・マンゴー
ダニー・グリーン
ハロルド・キャスケット
アルフレッド・ブラウン
ナナ・デ・ヘレーラ
ニノ・ファランガ
ルイス・ゲデス
ヴィルジリオ・テイヘイラ
アメリカ映画/88分/カラー作品

婚約者であるチャンドラ王国のパリサ姫(キャスリン・グラント)を連れ、故郷バグダッドへ戻る途中だったシンバッド王子(カーウィン・マシューズ)の船は、食料を求めて地図にない島コロッサへ上陸する。するとそこで一つ目の巨人サイクロプスに追われる魔術師ソクラ(トリン・サッチャー)と遭遇。彼はサイクロプスが守る財宝の山から、魔法のランプを盗もうとしていたのだ。シンバッド王子一行はソクラを助けて船に乗せるも、その途中で魔法のランプはサイクロプスの手に戻ってしまう。
バグダッドではシンバッド王子の父親カリフ(アレック・マンゴー)が、息子と婚約者の帰りを待ちわびていた。2人の結婚はバグダッドとチャンドラの平和と友好を約束するものだ。しかもハンサムで勇敢なシンバッドと美しく朗らかなパリサ姫は深く愛し合っていた。一方、盗み損ねた魔法のランプを諦めきれない魔術師ソクラは、たびたびコロッサ島への遠征をカリフに進言するものの、そのたびに断られてしまう。ソクラに不信感を抱くシンバッド王子が納得しないからだ。
やがてパリサ姫の父親スルタン(ハロルド・キャスケット)も到着し、バグダッドの王子とチャンドラの姫君の結婚式が盛大に行われる。だが、自慢の魔術を披露したソクラが両国の不穏な未来を予言したことから、お祝いムードに水が差されてしまった。さらにその晩、ソクラは就寝中のパリサ姫に魔法をかけ、親指サイズにまで小さくしてしまう。翌朝、カリフの宮殿内は大騒ぎに。助けを求められたソクラは、コロッサ島の山頂に住む巨大な双頭の鷲ロックの卵の殻を使って秘薬を作り、コロッサ島にある彼の島で儀式を行えばパリサ姫は元の姿に戻ると答える。ソクラが犯人だと全く気付かないシンバッド王子は、彼の言葉を鵜呑みにしてコロッサ島への遠征を決める。
足りない船乗りをゴロツキばかりの囚人で補い、小さくなったパリサ姫を箱に入れてコロッサ島へ向け船旅に出たシンバッド王子。途中で極悪人カリム(ダニー・グリーン)に扇動された囚人たちが反乱を起こし、シンバッド王子やソクラが捕虜になる事態が発生するものの、事態を鎮静化させた一行はなんとか無事にコロッサ島へ到着する。秘境であるサイクロプスの谷へと足を踏み入れるシンバッド王子たち。そこには巨人サイクロプスや双頭の鷲ロックばかりか、巨竜ドラゴンや骸骨の騎士などのモンスターが待ち受けていた。そればかりか、悪賢いソクラも策略を張り巡らせる。ランプの妖精バラーニ少年(リチャード・エイヤー)に助けられるシンバッド王子だが、果たしてパリサ姫を救うことは出来るのか…?

<作品レビュー>
特撮映画の神様レイ・ハリーハウゼンが初めて手掛けた特撮ファンタジー映画であり、ストップモーションアニメとライブアクションを融合させたワイドスクリーンのテクニカラー映画、いわゆる「ダイナメーション」の第一号に当たる記念すべき作品である。物語の題材はご存知「アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)」。アリババやシェヘラザードなど数々の名キャラクターを生み、世界中の文学から音楽、演劇から映画にまで多大な影響を及ぼした古代イスラムの説話集だが、本作では中でも特に有名な英雄シンバッド(akaシンドバッド)の冒険が描かれる。

ダグラス・フェアバンクス主演の『バグダッドの盗賊』('24)の時代より、直接的な関連性のないパクリ作品を含め、数えきれないほど映画化されてきた「アラビアン・ナイト」の世界。中でも、イギリスのアレクサンダー・コルダが製作したリメイク版『バグダッドの盗賊』('40)は空前の大ヒットを記録し、これをきっかけに'40年代のハリウッドでは「アラビアン・ナイト」系のファンタジー・アドベンチャー映画がブームとなる。ただし、その多くは低予算で作られたB級映画で、なおかつ基本的にはコスチューム・プレイ、つまり「ロビンフッド」や「三銃士」と同じような時代劇のサブジャンルに過ぎなかった。特撮といっても、空飛ぶ絨毯か役者の扮した巨人くらいが関の山。モンスターやクリーチャーの出番などない。最大の売り物といえば、大勢のエキストラを動員した派手なチャンバラ・アクションか、もしくはマリア・モンテスやイヴォンヌ・デ・カーロらが扮した露出度の高い妖艶な美女のお色気であった。

そんな「アラビアン・ナイト」映画の世界に、ストップモーションで作ったモンスターたちを登場させたい。そう考えたハリーハウゼンは、恩師ウィリス・オブライエンの助手を務めた『猿人ジョー・ヤング』('49)の直後(『原始怪獣現る」の直後という説もあり)にイラストでコンセプト・デザインをまとめ、RKOをはじめとする各映画会社やプロデューサーに企画を売り込んだものの、当時既にコスチューム・プレイ映画の人気が下火になっていたこと、さらにはハリーハウゼン自身が業界ではまだ無名に等しかったことから断られてしまう。その後、コロンビア映画で『水爆と深海の怪物』('55)や『世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す』('56)、『地球へ2千万マイル』('58)といったSF映画の特撮を手掛けたハリーハウゼンは、これらをプロデュースした製作者チャールズ・H・シュニーアと意気投合。共に2カ月違いの同い年で、なおかつ同じような世界観を共有するシュニーアに、ハリーハウゼンは予てから温めていたシンバッド映画の企画を改めて持ちかけたのである。

ハリーハウゼンの描いたコンセプト・デザインを一目見て気に入ったシュニーアは、当時テレビドラマの脚本家だったケネス・コルブを雇い、ハリーハウゼンのイラストを基にしてストーリーを構築。なので、原作に出てくる‟シンバッドの7回目の航海”と映画の内容はほとんど関係がない。さらに、特撮映画といえばスクリーン・プロセスの粗を誤魔化しやすいモノクロが当たり前だった当時にあって、シュニーアは本作をカラーで撮影することを提案。スクリーンプロセスというのは、合成するべき俳優や人形、ミニチュアなどの背景スクリーンに、別撮りしたフィルム映像を投影して撮影するアナログな合成技術のことで、当然ながら前面と背景の画質に差異が生じてしまう。これがモノクロだと分かりづらいのだが、カラーだと如実に違いが現れてしまうのだ。しかも、本作はコマ撮りのストップモーションを特撮に用いる。この前人未到の挑戦を可能にしたのが、当時コダック社が開発した新たなフィルムストックと、ハリーハウゼンの職人技的な創意工夫、そして彼の意図を汲み取ったカメラマン、ウィルキー・クーパーの撮影だった。

ストーリー自体は極めて単純明快。異国の姫君パリサ(キャスリン・グラント)と婚約することになったバグダッドのシンバッド王子(カーウィン・マシューズ)だが、腹黒い魔術師ソクラ(トリン・サッチャー)によってパリサ姫が親指サイズの小人にされてしまい、その魔法を解くために必要な双頭の鷲ロックの卵の殻を手に入れるため、未知のモンスターがひしめく秘境コロッサ島で大冒険を繰り広げることになる。これはハリーハウゼン作品の多くにも言えることだが、あくまでもストップモーションで再現されたモンスターやクリーチャーが映画の目玉であるため、往々にしてストーリーのディテールや辻褄はないがしろにされがち。本作も回収されないまま放置されて終わるサブプロットや、よくよく考えずとも都合の良すぎる展開は少なくない。魔術師ソクラを警戒しつつも肝心なところでコロッと騙されるシンバッド王子も、頭が良いんだか悪いんだか分からないしね(笑)。

そんな脚本上の欠点を補って余りあるのが、ハリーハウゼンの豊かな創造力と卓越した技術によって生み出されたモンスターの数々。基本的に、それまでのハリーハウゼン作品に登場するモンスターはせいぜい1~2体といったところだったが、本作では冒頭から強烈なインパクトを放つ一つ目の巨人サイクロプスをはじめ、4本の腕を持つコブラ・ウーマンに巨大な双頭の鷲ロック、火を噴く巨竜ドラゴンに骸骨の騎士といったモンスターが次々と登場。子供ならずともワクワクするような夢と冒険の世界を堪能させてくれる。手作り感溢れるストップモーションアニメの、どこかぎこちなくも丹念な動きがまた、昨今のCGとは違った独特の味わいを醸し出す。しかも、ハリーハウゼンの描くモンスターは実に感情表現が豊か。その細やかな‟演技”にも魅了される。

また、実写パートの演出に美術デザイナー出身のネイサン・ジュランを起用したことも功を奏したと言えよう。あくまでもハリーハウゼンの思い描く世界観を再現することに徹した彼は、限りある予算の中で最大限に煌びやかな「アラビアン・ナイト」の世界を現出させることに成功。美術デザインの仕事で培った映像センスが存分に活かされている。もちろん、スペインのグラナダやマヨルカ島でロケした異国情緒も大きく貢献している。結局、本作にかかった制作費は総額65万ドル(現在の価格に換算すると約590万ドル)。同年公開されたミュージカル映画『南太平洋』の製作費561万ドルと比べると、いかに低予算であったかが分かるだろう。実写パートの撮影期間が6週間であるのに対し、ハリーハウゼンの特撮には9カ月以上を要したという。

さらに、本作では作曲家バーナード・ハーマンによる音楽スコアも特筆すべき要素のひとつであろう。リムスキー=コルサコフの「シェヘラザード」やムソルグスキーの「禿山の一夜」にインスパイアされた、ゴージャスでエキゾチックでスリリングなオーケストラ音楽は素晴らしいの一言。当初、ハリーハウゼンは『キング・コング』('33)のマックス・スタイナーや40年版『バグダッドの盗賊』のミクロス・ローザを想定していたそうだが、若い頃からハーマンに心酔していたシュニーアの猛プッシュで起用されたという。当時のハーマンは『知りすぎていた男』('56)や『めまい』('58)などヒッチコック監督とのコンビ作を連発し、文字通り脂が乗りきっていた時期。これ以降も、『ガリバーの大冒険』('60)や『SF巨大生物の島』('61)、そして『アルゴ探検隊の大冒険』('63)でハリーハウゼンと組むことになる。

シンバッド役のカーウィン・マシューズは当時コロンビア専属だった若手俳優。ハリーハウゼン曰くマシューズは勘の鋭い俳優で、撮影現場には存在しないモンスターとの共演が上手く、続く『ガリバーの大冒険』でも主演を務めることになる。パリサ姫役のキャスリン・グラントもコロンビアのスター候補生だったが、本作の翌年にビング・クロスビーと結婚して映画界を引退した。魔術師ソクラを演じるトリン・サッチャーはイギリスの悪役俳優。また、従来の「アラビアン・ナイト」系映画では大柄な男性が演じることの多かったランプの妖精を、子役俳優リチャード・エイヤーが演じているのも興味深いところだ。

ちなみに、ソニー・ピクチャーズから日本を含む世界統一仕様のブルーレイが発売されている本作だが、'17年にイギリスのみで新たな4Kレストア版を収録したブルーレイ&DVDコンボが、シンバッド三部作のボックスセットの一環として登場。6000セット限定発売だったため既に廃盤となっているが、'19年にバラの単品として再リリースされている。画質は旧盤ブルーレイに比べてもかなり向上。スクリーン・プロセスによる特撮合成パート映像の部分的な粗さは、オリジナル・ネガそのものがそういう状態であるゆえ仕方ないが、それ以外は深みのある色彩ときめ細やかなディテールに目を見張る。特典映像も旧盤より充実しており、なおかつリージョン・フリー(一部通販サイトではリージョンBと表記されているが誤り)というのだから有難い。

評価(5点満点):★★★★☆
参考ブルーレイ&DVD情報(イギリス盤)※「The Sinbad Trilogy」ボックス収録
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(1.66:1)/1080p/音声:5.1ch DTS-HD Master Audio、1.0ch リニアPCM/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:88分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(1.66:1)/音声:5.1ch Dolby Digital、1.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:88分
発売元:Powerhouse Films/Columbia Pictures
特典:レイ・ハリーハウゼン、フィル・ティペット、ランダル・ウィリアム・クック、スティーヴン・スミス、アーノルド・カトナーによる音声解説/フィル・ティペットのインタビュー「The Secrets of Sinbad」('17年制作・約11分)/プロモーション映像「This is Dynamation!」('58年制作・約4分)/ブライアン・トレンチャード=スミスによるプロモーション映像の解説('13年制作・約5分)/レイ・ハリーハウゼンのインタビュー「Remembering The 7th Voyage of Sinbad」('08年制作・約23分)/メイキング・ドキュメンタリー「A Look Behind the Voyage」('95年制作・約12分)/スーパー8バージョン(全4パート・約31分)/プロモーション・ソング('58年制作・約3分)/ドキュメンタリー「The Music of Bernard Herrmann」('08年制作・約27分)/フィル・ティペットからレイ・ハリーハウゼンへのバースデー・メッセージ('06年制作・約1分)/音楽スコア単独再生機能/オリジナル劇場予告編/フォト・ギャラリー(75種類)
by nakachan1045
| 2020-12-09 12:51
| 映画
|
Comments(10)
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by
na
at 2021-08-10 09:22
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na
at 2021-08-10 10:31
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na
at 2021-08-11 12:48
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na
at 2022-08-11 11:11
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by
na
at 2024-08-05 12:25
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by
ken
at 2025-08-30 21:36
ながざわひでゆきさんはウィリス・オブライエンやレイ・ハリーハウゼンの作品だとなにを見ましたか。全部教えてほしいです。また、それらの映画を全部記事にしてほしいです。
0
ハリーハウゼンの出世作、「原子怪獣現わる」は見ましたか?
それと記事を読んで気づいたんですが「キング・コング」は1930年ではなく、1933年ですよ。
それと記事を読んで気づいたんですが「キング・コング」は1930年ではなく、1933年ですよ。
na様
ハリーハウゼンの作品は、代表作と言われるものは一通り見ているはずです。基本的に普段はプロのライターとして依頼された映画やドラマの記事を中心に書いているので、個人のブログでは反対にその時の気分で好きな映画を取り上げています。ハリーハウゼン作品もいずれはチョイスすると思いますので、気を長くしてお待ちいただければと思います。あと、『キング・コング』の件、ご指摘有難うございます。自分でも全然気づきませんでした(^^;
ハリーハウゼンの作品は、代表作と言われるものは一通り見ているはずです。基本的に普段はプロのライターとして依頼された映画やドラマの記事を中心に書いているので、個人のブログでは反対にその時の気分で好きな映画を取り上げています。ハリーハウゼン作品もいずれはチョイスすると思いますので、気を長くしてお待ちいただければと思います。あと、『キング・コング』の件、ご指摘有難うございます。自分でも全然気づきませんでした(^^;
ハリーハウゼンの作品についてどう思いますか。自分はストップモーションなどの特撮シーンはすばらしいですが、ドラマ部分はひどいというのがほぼ共通する評価です。例えば余計な恋愛要素とか(水爆と深海の怪物)。というかストップモーションと使った怪獣映画とかその他の映画って「恐竜の惑星」も含めてストップモーションはすばらしいが、ドラマ部分がひどいという作品が大半だと思います(個人的な意見ですが。)。ハリーハウゼンの作品はどれも余計なドラマ部分を削ればもっと良くなると思います(40分~1時間くらいにする)。なかざわひでゆきさんはどう思いますか。
na様
そうですね、ドラマ部分について酷いとまでは思わないものの、ハリーハウゼン作品はあくまでも特撮がメインですので、どうしてもドラマ部分がオマケになってしまうことは否めませんね。ただ、当時でもドライブインシアターの2本立てでもない限り(それでも70分くらいは必要)、劇場用映画として一般映画館で公開するためには80~90分の尺は最低でも必要であるため、ドラマ部分で時間稼ぎせねばならなかったのだろうと思います。
そうですね、ドラマ部分について酷いとまでは思わないものの、ハリーハウゼン作品はあくまでも特撮がメインですので、どうしてもドラマ部分がオマケになってしまうことは否めませんね。ただ、当時でもドライブインシアターの2本立てでもない限り(それでも70分くらいは必要)、劇場用映画として一般映画館で公開するためには80~90分の尺は最低でも必要であるため、ドラマ部分で時間稼ぎせねばならなかったのだろうと思います。
終盤のサイクロプス対ドラゴンの戦いですが英語版wikipediaを調べたところ準備段階ではサイクロプス同士の戦いの予定だったそうです。
自分はサイクロプス同士の戦いも見てみたかったです。
できればサイクロプス同士の戦いとサイクロプス対ドラゴンの戦いの両方を映画で見たかったです。
なかざわひでゆきさんはどうですか?
自分はサイクロプス同士の戦いも見てみたかったです。
できればサイクロプス同士の戦いとサイクロプス対ドラゴンの戦いの両方を映画で見たかったです。
なかざわひでゆきさんはどうですか?
> naさん
「レイ・ハリーハウゼン大全」にも、水夫の丸焼きを巡って2体のサイクロプスが戦う場面というのが、当初の脚本には含まれていたものの撮影の前段階で削られたと、ハリーハウゼン自身が記していますね。このシーンがなくなったことが一番残念だったとも語っています。確かにこのシーンがあった方が、もっと盛り上がったのではないかとも思いますね。
「レイ・ハリーハウゼン大全」にも、水夫の丸焼きを巡って2体のサイクロプスが戦う場面というのが、当初の脚本には含まれていたものの撮影の前段階で削られたと、ハリーハウゼン自身が記していますね。このシーンがなくなったことが一番残念だったとも語っています。確かにこのシーンがあった方が、もっと盛り上がったのではないかとも思いますね。
自分も「レイ・ハリーハウゼン大全」という本を買って読んでみたのですがハリーハウゼンのほとんどの作品には絵コンテや脚本などの段階ではあったが予算と時間の都合で削除されたシーンや演出がいくつもあることがわかりました。
たとえばこの「シンバッド七回目の航海」でも下記のように予算と時間の都合で実現しなかったシーンがいくつもあります。
・嘆きの悪魔は最初人魚の姿をしたセイレーンたちが嵐が吹き荒れる岩の上に現れるはずだったが時間的な余裕がなかったため変更された。
・初期はコロッサの島にはサイクロプスの居住地があるという設定になっていておそらく本編よりもたくさんサイクロプスが登場する予定だった(本編では「サイクロプスは何匹もいるらしい」と匂わせるだけで本編に登場したサイクロプスは2体のみで撮影用のモデルも3体しか作られなかった)。
・ドラゴンはサイクロプスと戦っている最中に何度も炎を吐く予定だったが予算がかかりすぎるため本編では2回しか炎を吐かない。
もし仮に記事にも書いてある同年公開された『南太平洋』と同じくらいの製作費(561万ドル)と十分な時間を与えられていたとしたら「シンバッド七回目の航海」は間違いなく史実よりももっとすばらしい作品になっていたと思います。例えばサイクロプスが同時に10体くらい登場したり、ドラゴンが口から吐く炎で複数のサイクロプスを倒したりする展開があったんじゃないかと思っています。
削除されたシーンや演出がほとんどない作品でもハリーハウゼンは低予算に苦しめられたと「レイ・ハリーハウゼン大全」の中で何度も語っていました(わかりやすい例としては「水爆と深海の怪物」で制作費を抑えるためにタコの足を8本から6本に減らしたのが一番有名かもしれませんね)。
なんというかハリーハウゼンは才能はあるもののスポンサーやパトロンに恵まれなかった印象です。
なかざわひでゆきさんはどう思いますか?
たとえばこの「シンバッド七回目の航海」でも下記のように予算と時間の都合で実現しなかったシーンがいくつもあります。
・嘆きの悪魔は最初人魚の姿をしたセイレーンたちが嵐が吹き荒れる岩の上に現れるはずだったが時間的な余裕がなかったため変更された。
・初期はコロッサの島にはサイクロプスの居住地があるという設定になっていておそらく本編よりもたくさんサイクロプスが登場する予定だった(本編では「サイクロプスは何匹もいるらしい」と匂わせるだけで本編に登場したサイクロプスは2体のみで撮影用のモデルも3体しか作られなかった)。
・ドラゴンはサイクロプスと戦っている最中に何度も炎を吐く予定だったが予算がかかりすぎるため本編では2回しか炎を吐かない。
もし仮に記事にも書いてある同年公開された『南太平洋』と同じくらいの製作費(561万ドル)と十分な時間を与えられていたとしたら「シンバッド七回目の航海」は間違いなく史実よりももっとすばらしい作品になっていたと思います。例えばサイクロプスが同時に10体くらい登場したり、ドラゴンが口から吐く炎で複数のサイクロプスを倒したりする展開があったんじゃないかと思っています。
削除されたシーンや演出がほとんどない作品でもハリーハウゼンは低予算に苦しめられたと「レイ・ハリーハウゼン大全」の中で何度も語っていました(わかりやすい例としては「水爆と深海の怪物」で制作費を抑えるためにタコの足を8本から6本に減らしたのが一番有名かもしれませんね)。
なんというかハリーハウゼンは才能はあるもののスポンサーやパトロンに恵まれなかった印象です。
なかざわひでゆきさんはどう思いますか?
naさん
昔はSFやファンタジーは子供が見るものと一般的に考えられていましたからね。言ってみれば「ニッチなジャンル」だったわけです。なので、ハリーハウゼン作品に限らず当時のSF映画やファンタジー映画は軒並み低予算だったんですよね。特にハリーハウゼン作品のようなストップモーション・アニメは時間も人件費もかかりますから、予算のやり繰りはとても厳しかったろうと思います。『スター・ウォーズ』や『未知との遭遇』の大成功でその認識が徐々に変わり始め、80年代に入ってハリウッドはSFやファンタジーにも巨額の予算を投資するようになりました。そういう意味ではハリーハウゼンは時代に恵まれなかったんだろうと思います。
昔はSFやファンタジーは子供が見るものと一般的に考えられていましたからね。言ってみれば「ニッチなジャンル」だったわけです。なので、ハリーハウゼン作品に限らず当時のSF映画やファンタジー映画は軒並み低予算だったんですよね。特にハリーハウゼン作品のようなストップモーション・アニメは時間も人件費もかかりますから、予算のやり繰りはとても厳しかったろうと思います。『スター・ウォーズ』や『未知との遭遇』の大成功でその認識が徐々に変わり始め、80年代に入ってハリウッドはSFやファンタジーにも巨額の予算を投資するようになりました。そういう意味ではハリーハウゼンは時代に恵まれなかったんだろうと思います。
こちらを参考にさせて頂き、4kレストア版Blu-ray購入しました。より色彩豊かで、クリーチャー達も映えてますね(フィルムグレインはありますが、なかったらあまりにもデジタルすぎると思います)。追加特典のフィル・ティペットによるハリーハウゼンへの「ハッピーバースデイ」も楽しいですし、これは是非とも日本でもリリースしてほしいと思います(やはり一般的には日本語字幕ほしいところ)。「ロスト・ワールド(25)」(新規BGMとともに、ほぼ完全版で素晴らしい)と「キング・コング(33)」(クモガニ場面再現の特典映像あり)のそれぞれ海外盤Blu-ray持ってますが、これらも何故か日本で出ていないので残念です。こちらのブログでは海外盤Blu-rayがリージョンフリーか否かの情報がありますので、大変参考になります。これからも楽しみにしています。
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