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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「醜聞(スキャンダル)殺人事件」 Affair in Trinidad (1952)

「醜聞(スキャンダル)殺人事件」 Affair in Trinidad  (1952)_f0367483_19333499.jpg
監督:ヴィンセント・シャーマン
製作:ヴィンセント・シャーマン
原案:ヴァージニア・ヴァン・アップ
   バーニー・ジラー
脚本:オスカー・ソール
   ジェームズ・ガン
撮影:ジョセフ・ウォーカー
衣装:ジャン・ルイ
振付:ヴァレリー・ベッティス
出演:リタ・ヘイワース
   グレン・フォード
   アレクサンダー・スコービー
   ヴァレリー・ベッティス
   トリン・サッチャー
   ハワード・ウェンデル
   カレル・ステパネク
   ジョージ・ヴォスコヴァク
   スティーブン・ゲレイ
   ウォルター・コーラー
   フアニタ・ムーア
アメリカ映画/98分/モノクロ作品




フィルムノワールの名作『ギルダ』('46)で一大センセーションを巻き起こし、ハリウッド最高峰のセックスシンボルへと上りつめた女優リタ・ヘイワース。その人気絶頂の最中、カンヌ国際映画祭で知り合ったインドのアリ・ハーン王子と'49年に結婚し、ハリウッド女優として史上初のプリンセスとなった彼女は、夫の住むフランスへと移住して女優業を一時的に引退する。しかし、慣れない異国の地での暮らしやプレイボーイとして有名だった王子との結婚生活に疲れたのか、'51年に幼い娘2人を連れて突然アメリカへと帰国。結局、'53年に夫婦は正式に離婚してしまう。そんな離婚スキャンダルの渦中にあったヘイワースにとって、およそ4年ぶりのハリウッド復帰作となったのが、なんとも皮肉な邦題(単刀直入過ぎてセンスは悪いけど)を付けられたフィルムノワール『醜聞(スキャンダル)殺人事件』('52)であった。

舞台は南米のカリブ海に浮かぶイギリス領トリニダード島(現トリニダード・トバゴ共和国)。その港でアメリカ人男性の遺体が発見される。男性の名前はニール・エメリー。3年前にトリニダード島へ移住してきた無名の画家だ。現場の状況からピストル自殺と考えた警察のスマイス署長(トリン・サッチャー)は、アメリカ領事館のアンダーソン(ハワード・ウェンデル)を伴って、ニールの妻クリス(リタ・ヘイワース)の働くナイトクラブへと訪れる。クリスはナイトクラブの人気歌手にして看板スター、町中の男たちが欲望の眼差しを向ける絶世の美女だ。画家としての収入が殆どないニールは、彼女の稼ぎに頼って生活していた。夫の訃報を聞いて大きなショックを受けながらも、あくまでも冷静で落ち着いた様子のクリス。なにしろ、自己嫌悪の塊みたいなニールは長いこと鬱状態で、自殺したと言われても驚きは少なかったのだ。

ところが詳しい検死の結果、ニールの死因は他殺であることが判明する。重要参考人として警察へ呼ばれたクリスは、そこでスマイス署長とアンダーソンから意外な事実を知らされる。亡き夫が地元の大富豪マックス・ファビアン(アレクサンダー・スコービー)から、多額の現金を受け取っていたというのだ。表向きはファビアンの肖像画を描いた報酬ということになっていたが、しかし無名画家のギャラとしては明らかに高額すぎる。しかも、ニールは死の直前にファビアン邸の近くで姿を目撃されていた。実は、ファビアンは武器から情報までなんでも扱う密売屋で、戦時中に連合国と枢軸国の両方を相手に取引して莫大な富を築いた悪徳ビジネスマン。警察も以前から彼の動向をマークしていた。何らかの秘密を知ったニールが、ファビアンの手下に殺された可能性は高い。そこで、スマイス署長はクリスにファビアンの秘密を探るよう依頼する。というのも、ファビアンは他の男たちと同様、以前から彼女を手に入れようと秘かに狙っていたからだ。

事実、ニールが亡くなってからというもの、ファビアンは頻繁にクリスへ接触してきていた。悲しみに暮れる友人を労わるような素振りだったが、しかしクリスに対する下心があることは誰の目から見ても明らかだ。そんな状況を上手く利用し、ファビアンの身辺へ近づこうと試みるクリス。スマイス署長はニールが他殺だったことをあえて世間に公表せず、クリスも警察の用意したシナリオ通りに「夫を自殺で亡くした妻」を演じなければならない。亡きニールのためにスパイ役を引き受けた彼女だったが、しかし内心ではあまり気が進まなかった。

そんな折、ニールの疎遠だった兄スティーヴ(グレン・フォード)が突然トリニダードへやって来る。直前に弟から遊びに来てくれとの手紙を受け取っていた彼は、思いがけずニールの死を知らされて衝撃を受けるが、しかし前向きな手紙の内容から彼が自殺したとは到底信じられなかった。初対面のクリスを一目見て、お前みたいに男を惑わすような女を妻にしたせいで弟は死んだんだと、これまで連絡ひとつよこさなかった自分を棚上げにして憎悪を剥き出しにするスティーヴ。メイドのドミニク(フアニタ・ムーア)に厳しく諫められて暴言を反省した彼は、派手な印象の見た目とは裏腹に素朴で貞淑な人柄のクリスに少しづつ惹かれ、彼女もまた頑固だが真面目で誠実なスティーヴに好感を持つ。

その一方、弟の死の真相を独自に調べ始めたスティーヴは、町を実質的に牛耳っている大富豪ファビアンに疑いの目を向け、そんな彼と親しげにするクリスにも不信感を募らせていく。さらに、警察のスマイス署長にファビアンの身辺を洗うよう訴えたものの、反対に余計な詮索はするなと釘を刺されてしまうスティーヴ。まさか警察とクリスが手を組んでファビアンの内偵をしているなどと想像だにしない彼は、クリスが愛人のファビアンと結託して邪魔なニールを殺害したのではないか、警察もファビアンに買収されて黙っているのではないかと疑心暗鬼になり、真実を打ち明けたくても出来ないクリスは大に悩む。そんな折、ファビアンの邸宅に招かれたクリスは、彼の妹ヴェロニカ(ヴァレリー・ベッティス)とその夫の高名な科学者フランツ(ジョージ・ヴォスコヴァク)、怪しげな某国外交官ブロネク(ウォルター・コーラー)らと遭遇。彼らが何かを企んでいることに気づいた彼女は、その真相を突き止めようとするのだったが…?

男を手玉に取る妖艶なファム・ファタールに見えて実は純情で古風な淑女…というクリスのキャラクターは、リタ・ヘイワースをスターダムへ押し上げた名作『ギルダ』のヒロイン、ギルダとそっくり。クラブ歌手という設定まで酷似している。その派手な容姿だけで彼女を勝手に悪女と決めつけ、秘かに惹かれながらも疑いと憎しみの目を向けていくタフガイ・ヒーロー、グレン・フォードの存在もそのまんまだし、異国情緒あふれる南米を舞台にしているところも同じ。ヘイワースの4年ぶりのカムバック映画として、代表作『ギルダ』のイメージを利用しようというコロムビアの意図は十分理解できるものの、しかしそれにしたって似すぎているという印象は否めない。

なおかつ、美女ヘイワースを巡って繰り広げられる、クライマックスの男同士の一騎打ちもそのまんま。そうかと思えば、犯罪者一味の根城である大豪邸を舞台にしたスリリングな駆け引きは、明らかにジョン・ヒューストン監督の『キー・ラーゴ』('48)を彷彿とさせる。なので、いろいろと既視感ありまくり。そもそも、スパイでもなんでもないクラブ歌手の女性が、警察の依頼を受けて国際的な陰謀を暴いていくという2時間サスペンス的な筋書きにも少なからず無理がある。まあ、『ギルダ』自体がリター・ヘイワースありきな企画だったことは確かで、ノワール映画として客観的に見ると欠点の少なくない映画ではあった。それだけに、その二番煎じとしか言いようのない本作が見劣りしてしまうのは致し方ないだろう。

それでもなお、『ギルダ』の監督・主演トリオを再集結させながら大凡作となってしまった前作『カルメン』('48)よりはだいぶマシ。監督のヴィンセント・シャーマンはワーナーでベティ・デイヴィスの『愛の終焉』('44)やアン・シェリダンの『愛情のすきま風』('47)、ジョーン・クロフォードの『悪党は泣かない』('50)などを撮った女優映画の達人。なおかつノワール映画の演出経験も豊富なだけあって、リタ・ヘイワースのファム・ファタール的魅力はちゃんと引き出しているし、ノワーリッシュなムード作りやサスペンスの煽り方も手堅いと言えば手堅い。『ギルダ』を見たことがなければ、まあ、それなりに楽しめるのではいかとも思える。

評価(5点満点):★★★☆☆



参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)※6枚組BOX「Rita Hayworh: The Ultimate Collection」収録
モノクロ/スタンダードサイズ(1.37:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:98分/発売元:Mill Creek Entertainment/Sony Pictures
特典:なし



by nakachan1045 | 2021-05-05 04:48 | 映画 | Comments(0)

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