なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「男の叫び」 Island in the Sky (1953)

製作:ジョン・ウェイン
ロバート・フェローズ
原作:アーネスト・K・ガン
脚本:アーネスト・K・ガン
撮影:アーチー・スタウト
空撮:ウィリアム・クローシア
技術監修:アーネスト・K・ガン
音楽:エミール・ニューマン
出演:ジョン・ウェイン
ロイド・ノーラン
ウォルター・エイブル
ジェームズ・アーネス
アンディ・ディヴァイン
アリン・ジョスリン
ジェームズ・ライドン
ハリー・ケリー・ジュニア
ハル・ベイラー
ショーン・マクローリー
ウォリー・カッセル
ゴードン・ジョーンズ
フランク・フェントン
ロバート・キース
レジス・トゥーメイ
ポール・フィックス
ジム・デュガン
ボブ・スティール
タッチ・コナーズ(マイク・コナーズ)
アメリカ映画/109分/モノクロ作品


舞台は第二次世界大戦の真っ只中。当時、米空軍の空輸部隊は各航空会社から民間人のパイロットをリクルートし、最新鋭の輸送機C-47スカイトレインを用いて世界各地の基地へと物資を輸送していた。本作に登場する空輸機コルセアもそのひとつだ。北米-グリーンランド間を運航していたコルセアだったが、その途中で酷い悪天候に見舞われてしまい、なんとか無線でSOS信号を送ることは出来たものの、現在地を確認する余裕もないまま地図にない場所へと不時着することとなる。パイロット歴16年のベテラン機長ドゥーリ―(ジョン・ウェイン)以下の乗組員5名は全員無事だったものの、しかし辺りは深い雪に覆われた広大な森林地帯。C-47の発電機が故障した上に燃料も足りないため、彼らはこの場所でいつ来るか分からぬ救助を待たねばならなくなった。

その頃、不時着直前に発信されたSOS信号によって遭難を知ったメイン州プレスクアイルの空軍基地では、指揮官のフラー大佐(ウォルター・エイブル)がすぐさま捜索隊を招集する。空輸部隊の仲間たちから「オヤジ」と呼ばれて慕われるドゥーリ―の一大事とあって、空軍のスタッツ大佐(ロイド・ノーラン)を筆頭に、気性は荒いが心優しい怪力男マック(ジェームズ・アーネス)や休暇で家族サービス中だったマイホームパパのムーン(アンディ・ディヴァイン)などのパイロットや通信士が集まり、手分けして輸送機に乗り込んでドゥーリ―たちを探すことに。モントリオール付近で通信が途絶えたという以外に情報がないばかりか、乗組員の安否も不明なままの捜索は予想通りに難航する。そんな折、新たに受信した微弱な通信電波によってドゥーリ―の生存が確認されると、束の間ではあれども捜索隊メンバーたちに笑顔と歓喜の声が広がるのだった。

一方、肩を寄せ合いながら零下40度の極寒を耐えているドゥーリ―たち。残り少ない電力を使って無線信号を送り続けるものの、しかし計器が故障したせいで相変わらず自分たちの居場所を特定するのは難しく、なおかつ食料が一週間も持たないような状況で不安と焦りは募る。そんな中、食料の足しになるような動物を探して狩りに出かけた副操縦士フランク(ショーン・マクローリー)が、運悪く吹雪に巻き込まれて命を落としてしまった。このまま俺たちもここで死を待つしかないのか。そんな絶望感に苛まれ始めた矢先、ようやく捜索隊との無線通信に成功し、やがて上空に彼らの行方を探す捜索隊の飛行機群が現れる。これで助かった!生きて家族のもとへ帰れる!そう手を取り合って喜ぶ遭難者たちだったが、しかし飛行機からは眼下の彼らを確認することが出来ず、そのまま捜索隊は飛び去ってしまった。瞬く間に絶望の淵に追いやられ、肩をガックリと落とすドゥーリ―たち。果たして、彼らは無事に生還することが出来るのだろうか…?

先述したように、第二次大戦中に民間人パイロットとして米空軍の輸送部隊に所属していた原作・脚本のアーネスト・K・ガンだが、本作はその時に彼が実際に体験した出来事からインスパイアされているらしい。当時、メイン州プレスクアイルの米軍基地で働いていた彼は、輸送機のトラブルで遭難した仲間を救出するための捜索隊に参加したことがあったという。具体的にガン自身をモデルにしたキャラクターが劇中に存在するのかどうかは定かでないものの、いずれにせよ遭難者側よりも捜索隊側の描写の方がかなり詳細で、なおかつよりリアルな臨場感があってスリリングなのはそのためなのかもしれない。

それゆえ、『生きてこそ』や『アイガー北壁』のように過酷で凄まじいサバイバル劇は期待できないものの、その代わりに本作で心動かされるのは、あまりにも真っ直ぐで純粋なパイロットたちの熱い友情ドラマである。映画の冒頭、「パイロットたちは常に物事をシンプルに考える。なぜなら、物事を複雑に考えてしまうと、空の上では命取りになるからだ」みたいなナレーションが入るのだけれど、その言葉通り本作に出てくる「空の男」たちはみーんな揃って単純明快&単刀直入、少々荒っぽいものの気のいい連中ばかりだ。弱気になって思わず愚痴をこぼす奴はいても、我が身可愛さに仲間を見捨てたり皮肉交じりに冷笑するような奴は一人もおらず、仲間が危機に陥ったと知るや脇目もふらずに馳せ参じ、互いに手を取り合いながら捜索活動に全身全霊を傾けていく。遭難した乗組員たちも同様で、自分だけ助かろうなどとは誰一人として考えない。この損得勘定の一切ない男と男の美しくも熱い友情と絆は、あえて物事を斜に構えて見るような映画が主流となってしまった昨今の映画と比べると、むしろ新鮮であり素直に感動することができる。

また、数々の西部劇や戦争映画で絶対に挫けない不屈のヒーローを演じてきたジョン・ウェインが、そのマッチョな「男の中の男」のイメージを本作では封印し、絶体絶命の危機的な状況に直面してうろたえ、己の弱さと闘いながらも奮起する平凡な中年パイロットを演じて非常に説得力がある。捜索隊の飛行機が素通りして飛び去って行き、あまりのショックにへたへたと座り込んでしまう涙目のジョン・ウェインというのも珍しい。その強烈なパブリック・イメージのせいもあって、なにかと「大根役者」のレッテルを貼られがちなデュークだが、本作では改めて彼の「役者魂」を再認識することができるだろう。いや、普通に上手いですって。

そんな「キング・オブ・ハリウッド」を取り囲む役者たちの顔ぶれもまたいい。'40年代のB級ハードボイルド映画スター、ロイド・ノーランを筆頭に、ハリー・ケリー・ジュニアやジェームズ・アーネス、ハル・ベイラーといったジョン・ウェイン組の常連俳優、ショーン・マクローリーやジョージ・チャンドラー、レジス・トゥーメイなどウィリアム・ウェルマン組の常連俳優がズラリと勢揃い。豪快で気の優しいマイホームパパのムーンを演じているアンディ・ディヴァインは、ウェルマン組とウェイン組の両方を兼ねており、実際に3人は家族ぐるみの親しい付き合いだったそうだ。また、ジョン・ウェインの先輩に当たる往年の西部劇スター、ボブ・スティールが通信士役で顔を出しており、本作をきっかけに『リオ・ブラボー』('59)や『コマンチェロ』('61)などウェイン組の常連俳優となる。

もちろん、ウェルマン監督の本領発揮とも言える空撮シーンも見事な仕上がり。ドラマ・パートの撮影監督はジョン・フォード監督とのコラボで有名なアーチー・スタウトが手掛けている一方、空撮シーンはフォード監督に加えてウェルマン監督との仕事も多かったウィリアム・クローシアが担当。当時既に生産が終了していた飛行機ダグラスDC-3(C-47スカイトレインの民間用機)を8機揃え、ロケ地であるアリゾナのホワイトマウンテンの空を実際に飛ばして撮影している。広大な山岳地帯の上空を横切り、分厚い雲を突き抜けていくダイナミックなエリアルショットの数々は、まだCGなど影も形も存在しない時代によく撮ったもんだと感心せざるを得ない。

ちなみに、今のところ世界で唯一日本だけでブルーレイ化されている本作だが、しかし特典が充実しているのは'05年にパラマウントから発売された米国盤DVD。中でも、生前のハリー・ケリー・ジュニアやアンドリュー・V・マクラグレン(本作では助監督)などのインタビューを収めたメイキング・ドキュメンタリーはファン必見だし、ジェームズ・アーネスが主演したテレビドラマ『ガンスモーク』のプロモーション用に撮影されたジョン・ウェインの番組紹介ムービーも珍しい。

評価(5点満点):★★★★☆
参考DVD情報(アメリカ盤)
モノクロ/スタンダードサイズ(1.33:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:英語/地域コード:1/時間:109分/発売元:Paramount Pictures
特典:映画評論家レナード・マルティン、ウェルマン監督の息子、俳優ジェームズ・ライドンらによる音声解説/映画評論家レナード・マルティンによりイントロダクション('05年制作・約4分)/メイキング・ドキュメンタリー('05年制作・約42分)/ドキュメンタリー「Flying For Uncle Sam」('05年制作・約9分)/プレミア上映会のニュース映像('53年制作・約1分)/ドラマ「ガンスモーク」プロモ映像('55年制作・約1分)/バットジャック製作映画ハイライト集('05年制作・約6分)/オリジナル劇場予告編/フォト・ギャラリー
by nakachan1045
| 2021-05-06 07:55
| 映画
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