なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「七人の狼・タウンジャック」 The Day of the Wolves (1971)

製作:ファーディ・グローフェ・ジュニア
製作総指揮:チャールズ・グリーンボーム
脚本:ファーディ・グローフェ・ジュニア
撮影:リック・ウェイト
音楽:ショーン・ボニウェル
出演:リチャード・イーガン
マーサ・ハイヤー
リック・ジェイソン
ジャン・マーレイ
ザルディ・ショルナック
アンドレ・マルキー
ヘンリー・キャップス
スモーキー・ロバーズ
フランキー・ランドール
ジョン・ラプトン
ショーン・マクローリー
アメリカ映画/92分/カラー作品


アリゾナ州フェニックスの空港に6名の男たちが次々と降り立つ。その全員がプロの強盗犯。差出人不明の手紙を受け取った彼らは、大きな仕事があると聞いてやって来たのだ。事前に指示された通り全員が髭を伸ばし、送迎リムジンで2時間半かかる目的地まで私語も一切厳禁。お互いに名前を名乗ることすら禁止されていた。到着したのは周囲に何もない荒れ果てたゴーストタウン。彼らを待っていたのはNo.1(ジョン・マーレイ)と名乗る男だった。ここからNo.2(フランキー・ランドール)、No.3(アンドレ・マルキー)。No.4(リック・ジェイソン)、No.5(ザルディ・ショルナック)、No.6(ヘンリー・キャップス)、No.7(スモーキー・ロバーズ)と全員が番号で呼ばれるように。それぞれ5万ドル(現在の貨幣価値に換算すると約33万ドル)の報酬を支払うと約束したNo.1は、わざわざ全米から6名の強盗たちを集めた理由を説明し始める。

それは、3年前にアリゾナの砂漠のど真ん中に出来た人口7420名の小さな町ウェラートンを、そっくり丸ごとタウンジャックしようという大胆な強盗計画だった。中流階級ばかりが暮らす平和で安全な「モデルタウン」を謳うウェラートンは、それゆえに町の警備システムが非常に手薄だった。しかも、周囲を砂漠に囲まれた陸の孤島であるため、仮に隣町の警察に応援を要請しても到着までに数時間かかる。そうした弱点に着目したNo.1は、外部との通信手段や交通手段を遮断することで町全体をジャックし、自身を含む7名の精鋭チームを投入して短時間で2カ所ある銀行やスーパーマーケットなどを襲撃しようと考えたのだ。揃いのユニフォームと手袋、サングラス、そしてショットガンを与えられた彼らは、2日後に控えた作戦決行に備えて入念な打ち合わせとトレーニングを行う。

その頃、ウェラートンでは昔気質の頑固で生真面目な保安官ピート・アンダーソン(リチャード・イーガン)が、マリファナでハイになって車を暴走させた町議会議員のドラ息子を力ずくで懲らしめたことを問題視され、優柔不断な風見鶏の町長からクビを言い渡されてしまう。そもそもウェラートンの保安官事務所にはパトカーが2台しかなく、まともな牢屋も備え付けられていない。以前から警備システムの脆弱さを指摘していたピートだったが、そのたびに犯罪とは無縁の安全な町であることを理由に無視されていた。もはや潮時かもしれないと考えていた彼は、妻マギー(マーサ・ハイヤー)と息子ウィルを連れて、よその町へ引っ越すことを決める。

いよいよ作戦決行の当日。セスナ機に乗ってウェラートンへと向かった強盗一味は、町から高速道路へとつながる橋を封鎖した上で電気と電話を遮断し、さらには無防備な保安官事務所の職員たちを監禁したうえで、銀行やスーパーマーケットを襲撃していく。そこへ引っ越しの準備をしていたピートの妻マギーが息子を連れて通りがかり、スーパーから飛び出してきた強盗たちと鉢合わせる。慌てて逃げ出して自宅へと戻る2人。事態を知ったピートは「あなたはもう保安官じゃない、薄情な町の人たちのために命を危険にさらす必要はない」と止める妻の言葉も聞かず、愛用のライフルを片手にたったひとりで強盗一味に立ち向かっていく…。

黒澤明の『七人の侍』では金で雇われた七人の侍が小さな村を盗賊から救ったが、本作では反対に金銭目的の七人の強盗犯が小さな田舎町を襲撃して盗みを働く。そんな彼らの前に立ちはだかるのが、時代遅れの荒っぽいフロンティア精神が仇となって町から追い出された昔気質の中年保安官だったというわけだ。ラブ&ピースな町の人々はいざとなると外敵に対して手も足も出ず、暴力反対!軍備不要!と言ってピートをクビにした町のお偉いさんたちは、住民を守るために戦うどころか我先にと逃げ隠れする。なんだか保守タカ派の匂いがプンプンするようにも思える映画だが、しかしその一方で強盗犯グループを反体制的な頭脳派のヒーロー集団として捉えているような向きもあり、その辺が非常にニューシネマ的でもあって面白い。そもそも、主人公のピート自体が一見したところジョン・ウェイン的な西部劇ヒーローのようでいて、実際はむしろ『真昼の決闘』のゲイリー・クーパーに近いキャラクターだったりする。無能な権力者を嘲笑うような皮肉たっぷりのオチを含め、やはり「アンチ・エスタブリッシュメント」「アンチ・ヒロイズム」「アンチ・ハリウッド」の精神が根底に流れていることは間違いないだろう。

監督はファーディ・グローフェ・ジュニア。その名前を聞いてピンとくる人も少なくないかもしれない。そう、あの「グランド・キャニオン」組曲で有名なアメリカの現代音楽作曲家ファーディ・グローフェの息子である。もともとコロムビア映画のスタッフだった彼は、B級映画界の名物製作者サム・カッツマンの助手を経て独立し、人件費の安いフィリピンや南米コロンビアを基盤に、ドライブイン・シアターやグラインドハウス向けのB級アクション映画を撮っていた。実際にアリゾナで撮影された本作は、彼にとって唯一のアメリカ・ロケ作品だったらしい。

チョイ役やエキストラに素人の一般人を使ったキャスティングといい、現場の雑音まで拾った質の悪い音声トラックといい、かなりの低予算で作られていることは一目瞭然。ファーディ・グローフェ・ジュニア監督の演出にも不安定なところがあり、なんだかアル・アダムソンとかジャック・ヒル、はたまたシリオ・H・サンチャゴとかエディ・ロメロ辺りを彷彿とさせるような胡散臭さがある。そういえば、本作はフィリピンでの配給権と引き換えに制作費の一部をサンチャゴが提供したらしい。いずれにせよ、これをテレビ映画として放送した(劇場公開した地域もあり)というのだから少なからず驚きだが、まあ、恐らくネットワーク放送ではなくシンジケーション放送だったのだろう。

その一方で、アリゾナの厳しくも雄大な自然を捉えたダイナミックな映像美や、元保安官ピートVS強盗プロ集団のスリリングな市街戦をスピーディに活写したカメラワークはなかなかのもの。撮影監督はリック・ウェイト。そう、ウォルター・ヒル監督の『ロング・ライダース』('80)や『48時間』('82)、さらにはジョン・ミリアス監督の『若き勇者たち』('84)やジョルジ・パン・コスマトス監督の『コブラ』('86)を撮った、あのリック・ウェイトがカメラを回しているのである。そりゃカッコいい画が撮れるに決まっているだろう。知る人ぞ知るガレージロック・バンド、ザ・ミュージック・マシーンのリーダー、ショーン・ボニウェルの手掛けたサイケでファンキーなサントラもむちゃくちゃクール。これはかなりテンションが上がる。

主人公ピート役を演じているのは、ヴィクター・マチュアと組んだ『ディミトリアスと闘士』('54)や『恐怖の土曜日』('55)などで有名な往年のタフガイ俳優リチャード・イーガンと、フランク・シナトラ&ディーン・マーティン主演の『走り来る人々』('58)でアカデミー助演女優賞候補になった往年の美人女優マーサ・ハイヤー。そういえば、強盗団No.1役のジャン・マーレイはシナトラ・ファミリーとも近かったラスヴェガスの大物エンターテイナー、No.2役のフランキー・ランドールはシナトラの舎弟だったクルーナー歌手である。2人はラスヴェガスのショーでたびたび共演しており、本作は先にキャスティングされたマーレイがランドールを推薦したらしい。また、終盤でストーリーの要となるNo.4には、テレビドラマ『コンバット!』のヘンリー少尉役で日本でも有名になったリック・ジェイソン。そのほか、ショーン・マクローリーやビフ・エリオット、パーシー・ヘルトンなど、当時は既に忘れかけられた往年の名脇役やB級映画俳優がちらほらと顔を出している。

評価(5点満点):★★★☆☆
参考DVD情報(アメリカ盤)※DVD-BOX「Action Man Collection」に収録
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:92分/発売元:VCI Entertainment
特典:なし
by nakachan1045
| 2021-05-07 21:46
| 映画
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