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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「ローレライ伝説の謎」 Las Garres de Lorelei (1973)

「ローレライ伝説の謎」 Las Garres de Lorelei  (1973)_f0367483_17440378.jpg
監督:アマンド・デ・オッソリオ
製作総指揮:リカルド・サンス
      リカルド・ムニョス・スアイ
脚本:アマンド・デ・オッソリオ
撮影:ミゲル・フェルナンデス・ミラ
音楽:アントン・ガルシア・アブリル
出演:トニー・ケンドール
   ヘルガ・リーネ
   シルヴィア・トルトーサ
   ホセフィナ・ハルタン
   ロリータ・トヴァール(ロレタ・トヴァール)
   ジョゼフ・テルマン(ホセ・テルマン)
   ルイス・インドゥニ
   フランシスコ・ニエト
   ベトサベ・ルイス
   ルイス・バルボー
スペイン映画/85分/カラー作品




「ローレライ伝説の謎」 Las Garres de Lorelei  (1973)_f0367483_07110591.jpg
ゾンビとなって甦った十字軍の騎士が殺戮を繰り広げる『エルゾンビ』シリーズで有名なスパニッシュ・ホラーの名匠アマンド・デ・オッソリオが、ドイツのライン川流域に伝わる水の精霊「ローレライの伝説」を自己流にアレンジした作品である。川沿いの岩山にたたずむ美少女ローレライが船頭を誘惑して船を沈める…という伝承は、恐らくギリシャ神話に出てくる水の精霊セイレーンがルーツなのだろうと思われるが、本作ではそこにゲルマン神話の「ニーベルンゲン伝説」を絡めつつ、数百年の眠りから目覚めたローレライが、満月の夜になると半魚人の怪物へと変身して人を殺しまくるというモンスター・ホラーに仕上げている。
「ローレライ伝説の謎」 Las Garres de Lorelei  (1973)_f0367483_07112748.jpg
ドイツのライン川沿いにある平和な美しい町で、結婚式を翌日に控えた若い女性(ベトサベ・ルイス)が惨殺される。遺体はズタズタに引き裂かれたうえ、なぜか心臓がえぐり取られていた。人々は獰猛な野生動物の仕業ではないかと噂するが、しかし盲目のバイオリン弾き(フランシスコ・ニエト)は古い伝説で有名な水の精霊ローレライが甦ったのだと主張する。普段は川底の洞窟で黄金と共に眠っているローレライだが、しかし空腹を満たすため数百年に一度だけ目を覚まし、満月の光を浴びては半魚人の妖怪へと変身して人間の心臓を喰らうのだという。町の住民たちはバカバカしいと笑い飛ばしつつも、しかし不安を拭い去れないでいた。
「ローレライ伝説の謎」 Las Garres de Lorelei  (1973)_f0367483_07121246.jpg
この事件を受けて町の郊外にある寄宿制女学校では、か弱い女生徒を守るための対策を町長(ルイス・インドゥニ)に要請し、その道20年のベテラン猟師をボディガードとして派遣する。やって来たのは、子供の頃から猛獣狩りの特訓を積んだハンサムな青年シーグルド(トニー・ケンドール)。異性に対して好奇心旺盛な女学生たちは色めき立ち、リーダー格のマーサ(ロレタ・トヴァール)などは積極的にアプローチをする。その様子を見て眉をひそめる女教師エルケ(シルヴィア・トルトーサ)は、シーグルトを物置小屋に寝泊まりさせて校舎へ立ち入り禁止にするよう学長(ホセフィナ・ハルタン)に訴えるなど、なにかと厳しい態度で臨もうとするのだが、しかし彼女自身も実はシーグルトに強く惹かれていた。
「ローレライ伝説の謎」 Las Garres de Lorelei  (1973)_f0367483_07122947.jpg
そうした中、再び惨劇が起きてしまう。ローレライの仕業だと吹聴していた盲目のバイオリン弾きが、やはり心臓をえぐり取られて殺されたのだ。さらに、シーグルドの漁師仲間も殺害され、町の住民たちは恐怖と不安に怯える。警戒を強めていたシーグルドは、森の中で怪しげな老人を捕まえたところ、老人はボン大学で教鞭を執る生物学者フォン・ランダー教授(アンヘル・メネンデス)だと名乗る。ローレライ伝説を実話だと信じる教授は、満月の光を浴びると野獣化する特異体質が存在すると主張し、シーグルドの目の前で実験を披露。特殊な薬物を注射した実験用の人間の手首に、満月の光と同じ人工光線を照射すると、たちまち醜悪な妖怪の手首へと変貌したのだ。この妖怪を倒すために必要なのが、ニーベルンゲン伝説に出てくる英雄ジークフリートの剣(劇中では短剣)。ジークフリートの剣に秘められた放射能が、妖怪をもとの姿へと戻して息の根を止めるのだという。そう言って大切なジークフリートの剣をシーグルドに見せるフォン・ランダー教授もまた、その直後に殺害されてしまう。
「ローレライ伝説の謎」 Las Garres de Lorelei  (1973)_f0367483_07124574.jpg
そんなある日、ライン川で水浴びをしようとしたシーグルドは、町へ来てから幾度となく見かけていた謎の女性と遭遇し、たちまちその妖艶な美しさの虜となってしまう。自らの正体を水の精霊ローレライ(ヘルガ・リーネ)だと明かす美女。驚きつつもなぜかすんなりと受け入れてしまったシーグルドだが、しかしこの美しい女性が人間の心臓を喰らう妖怪に変身するとは到底思えなかった。その一方で、女教師エルケとも愛し合うようになったシーグルドは、彼女が妖怪に襲われて殺されそうになったことから、心を鬼にしてローレライを倒すことを決意。フォン・ランダー教授の実験室から持ち出したジークフリートの剣を手に、ローレライの棲み処であるライン川底の洞窟へと乗り込んでいくのだったが…?
「ローレライ伝説の謎」 Las Garres de Lorelei  (1973)_f0367483_07133624.jpg
ローレライ伝説で有名なライン川沿いの岩山(筆者もその昔、ライン川下りの舟遊びツアーで実物を見たことがある)には、一説によると二―ベルゲンの黄金が眠っているともされており、本作ではその2つの有名な伝説を下敷きにしつつ、満月の光を浴びたローレライが半魚人モンスターに変身するという『大アマゾンの半魚人』×『狼男』的な設定を新たに付け加えている。えっ?なんでお前がジークフリートの剣を持ってんねん!しかもそれ剣じゃなくて短刀な!と突っ込まずにはいられない脚本はご都合主義&荒唐無稽が満載の代物で、『エルゾンビ』シリーズの合間に気分転換で作っちゃいました!みたいなヤッツケ感は拭えないものの、そこはかとなく漂うダークなゴシック伝奇ロマン的ムードは悪くない。舞台となるドイツのライン川沿いの街並みも幻想的で美しい…と思ったら、実はこれ全てドキュメンタリー映画からのフィルム流用で、実際のロケ地はスペインのマドリードとその周辺。マドリード近郊を流れるアルベルチェ川をライン川に見立てて撮影している。
「ローレライ伝説の謎」 Las Garres de Lorelei  (1973)_f0367483_07132257.jpg
さらに、モンスターと化したローレライが犠牲者の心臓をえぐり取ったり、女性の乳房を切り刻んだりする兇悪なスプラッター描写もなかなかの出来栄え。アメリカで劇場公開された際には、心臓の弱い観客への警告として恐怖シーンの直前に赤い光を点滅させたり、入場者全員にゲロ袋を配ったりしたそうだが、まあ、確かに当時としてはかなりショッキングな特殊メイクも含まれているので、それほど大袈裟なギミックというわけでもなかろう。特殊メイクやモンスター・スーツのデザインはアマンド・デ・オッソリオ監督自身が担当。あえてモンスターをハッキリとは画面に映さず、マントを羽織らせたうえで暗闇を徘徊させたのも不気味度を増して賢明だった。
「ローレライ伝説の謎」 Las Garres de Lorelei  (1973)_f0367483_07115824.jpg
ヒロインのローレライ役を演じているのは、スペインの誇るカルト映画の女王ヘルガ・リーネ。実は彼女、もともとは第二次世界大戦中にホロコーストを逃れてスペインへと移住したユダヤ系ドイツ人だった。なので、本作などはうってつけの企画だったとも言えるだろう。バーレスク・ダンサーみたいなフリフリのヒモ付きビキニで、川べりをウロウロと徘徊するローレライの姿がまたちょとシュール。というか、そもそもこの映画、女優さんたちがやたらと無意味にビキニ姿でうろつき歩いているんだけれどね(笑)。しかし意外なのは、スペインとイタリアの両国で数えきれないほどのB級映画に出演していた彼女にとって、デ・オッソリオ監督と組んだ作品がこれ一本だけということ。どうやら監督とはそりが合わなかったらしく、近年のインタビューでもデ・オッソリオのことを「腰抜けの監督で不愉快な人間だった」と一刀両断している。
「ローレライ伝説の謎」 Las Garres de Lorelei  (1973)_f0367483_07135038.jpg
で、もうひとりのヒロインである女教師エルケ役には、エウヘニオ・マルティン監督の『ゾンビ特急地獄行き』('72)でもヘルガと共演していた女優シルヴィア・トルトーサ。あちらではシルヴィアがポジション的にメインのヒロインだったが、本作では反対に準主演的なサポート役へと回っている。それ以外にも彼女はポール・ナッシーやジェス・フランコ、カルロス・アウレドなどのホラー映画に数多く主演しているのだが、しかしスペインでは今も現役のテレビ女優として主に知られており、なぜかカルト映画と紐づけて語られることは少ない。
「ローレライ伝説の謎」 Las Garres de Lorelei  (1973)_f0367483_07130234.jpg
そして、そんな美女2人と恋に落ちることになるイケメン猟師シーグルド役には、『キス!キス!キルキル!』('66)に始まる西ドイツ産のスパイ・アクション映画「コミッサールX」シリーズで、ジェームズ・ボンドばりにクールで女性にモテモテなニューヨークの私立探偵コミッサールXを演じて人気を博したトニー・ランドール。本名をルチアーノ・ステラという生粋のイタリア人で、当時はヨーロッパ各国のB級娯楽映画で引っ張りだこだった。ちなみに実は彼、子供の頃に溺れかけた経験があったことから、泳ぐのが苦手どころか水に入ることすらNGだったため、本作の水泳シーンや水中ダイブシーンは全てスタントマンが演じている。
「ローレライ伝説の謎」 Las Garres de Lorelei  (1973)_f0367483_07114389.jpg
評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語・スペイン語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:85分/発売元:BCI Eclipse
特典:オリジナル劇場予告編/スペイン語クレジット・シークエンス/スチル・ギャラリー



by nakachan1045 | 2021-05-11 07:21 | 映画 | Comments(0)

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