なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「ただれた関係」 Någon att älskab (1971)

製作:ヴァーノン・P・ベッカー
脚本:ジョセフ・W・サルノ
撮影:マックス・ヴィレン
音楽:ベニー・アンデション
ビョルン・ウルヴァース
出演:マリー・リシュダール
トミー・ブロム
レナルト・リンドバーグ
インガー・スンド
ハリエット・エイレス
リッシー・アランド
レナルト・ノルバック
アメリカ・スウェーデン合作/97分/カラー作品


劇場公開までに時間がかかった正確な理由は定かでないものの、少なくともアメリカに関しては配給会社シネメーションの都合があったのではないかと言われている。というのも、アメリカ公開版では制作陣の全く与り知らないハードな濡れ場があちこちに挿入され、なおかつドラマ部分を大幅にカットした上で再編集されているからだ。シネメーションの社長ジェリー・グロスは配給権を買った映画を勝手に再編集してしまうことで悪名高い人物だったのだが、ちょうど当時のアメリカではポルノ映画が黄金時代を迎えつつあり、より過激な性描写が求められるようになっていたため、恐らくそうした市場のニーズに合わせて追加撮影と再編集を行ったせいで時間がかかってしまったのだろう。ちなみに、オリジナルのスウェーデン語版は97分、英語吹替のアメリカ公開版は87分。残念ながらスウェーデン語版のフィルムが現存しないため、削除されたシーンの内容については今のところ確認する術がないものの、しかし後から追加されたシーンは顔を隠した役者が明らかに別人であるため一目瞭然だ。

物語は前作から3年後。叔母グレタの恋人カールと駆け落ちしてストックホルムに暮らすインガだったが、しかし結婚資金を稼ぐために働かなくちゃと言って職探しに出かけたカールは、それっきり3週間以上経っても帰って来ず、インガは安アパートの家賃も支払えないような有様だった。ちなみに、冒頭の独白ナレーションでは「16歳だった私も今では19歳」、「姉の恋人カールと駆け落ちした」と語られており、あれ?前作では17歳じゃなかったっけ?いやいや、グレタはあなたの死んだ母親の妹でしょ?と首を傾げてしまうのだが、恐らくこれは配給会社シネメーションが吹替版を制作する際に前作の設定をちゃんと確かめなかったせいなのだろう。

で、実はこのアパートの大家アンネ(リッシー・アランド)は怪しげな売春組織の元締めで、家賃滞納を理由にインガを売春の世界へ引きずり込もうと考えていた。これを気の毒に思ったのが、前作にも登場した遊び人ロタール(レナルト・ノルバック)。アンネの組織で働いている彼はインガの事情を知っていたことから、知人の有名作家スティッグ(レナルト・リンドバーグ)の秘書の仕事をインガに紹介する。可憐で美しいインガを一目見て気に入るスティッグ。インガもまた、父親くらい年の離れた裕福な中年紳士スティッグに好感を抱き、いつしか2人は愛し合うようになる。8年前に妻と離婚したスティッグは、つい最近グレタ(!)という若い女性と知り合って恋に落ちたものの、自分勝手な彼女に振り回されて深く傷ついていたという。そんな彼にとって、インガはようやく巡り合った理想の女性だというのだ。

ところが、仕事の用事でニューヨークへ出かけたスティッグは、そのまま音信が途絶えてしまった。またしても棄てられてしまったのか。すっかり落ち込んだインガを支えてくれたのが、同じアパートに暮らすロック・ミュージシャンのロルフ(トミー・ブロム)だった。貧しくとも心優しくて思いやりのあるロルフに惹かれていくインガだったが、しかしスティッグのことも忘れられず優柔不断な態度を取ってしまう。そんなある日、彼女の前に見知らぬ若い女性が現れる。スティッグを振り回した悪女グレタ(インガー・スンド)だ。戸惑いを隠せないインガに、グレタは驚くべき真実を語り始める。

実は彼女、スティッグの実の娘だったのだ。離婚してから妻子と音信不通だった彼は、年頃に成長したグレタを実の娘だと気付かずに関係を持ってしまった。ところが、親子だと判明してからもグレタの肉体を求めてきたため、彼女は距離を置いていたというのだ。あなたは所詮私の身代わりよ、というグレタの言葉に傷つくインガ。そんな折、スティッグがニューヨークから帰ってくる。グレタの証言を嘘だと信じたいインガは、わざとスティッグとグレタが再会するように仕向け、2人のやりとりを物陰から見守っていたのだが、そんな彼女の目の前でスティッグとグレタは激しく肉体を求め合う。あまりのショックにスティッグを責めるインガ。すると、彼は予想もしなかった行動に出るのだった…。

あくまでも同名の別人とはいえ、またもや悪女グレタに翻弄されてしまう聖女インガ。いや~、実に因果なもんですなー、ってダジャレ言ってる場合じゃないが、アパートの大家が売春組織の元締めでしかもレズビアンだったり、愛した年上のインテリ紳士が実はロリコン&近親相姦の変態男だったりと、ストーリーは前作以上にドロドロで下世話なソープオペラ状態。一般作としては限界ギリギリの性描写も盛りだくさんで、なんだか随分と安っぽくなってしまったなあという印象を受けるが、しかし今のところ制作陣に無断で追加撮影と再編集を施したアメリカ公開版しか見ることができないため、これをもって本作の評価を下すことはちょっと難しいかもしれない。

やはり、最大の売りはビョルン&ベニーの手掛けたサウンドトラックだろうか。もともと「スウェーデンのビートルズ」と呼ばれたスーパーバンド、ヘップスターズのキーボード奏者だったベニー・アンデションと、男性ボーカル・グループ、フーテナニー・シンガーズのリーダーでソロ歌手としてもアイドル的な人気のあったビョルン・ウルヴァースは、'66年の夏にそれぞれのコンサートツアーの最中に知り合って意気投合し、やがてソングライター・コンビとして様々なアーティストに楽曲を提供するようになる。そんな2人を男性デュオとして本格的に売り出そうと考えていたのが、ビョルンの恩師でもあるポーラー・レコードの社長スティッグ・アンダーソン。本作の製作者ヴァーノン・P・ベッカーは、知り合いだったスティッグに誰かいいソングライターはいないかと相談したところ、紹介されたのがビョルン&ベニーだったというわけだ。

ただし、ビョルンとベニーが手掛けたのは劇中で繰り返し使用されるサイケなインスト・テーマ曲「インガのテーマ」と、後に日本で大ヒットする哀愁フォーク系の主題歌「木枯らしの少女」の2曲のみ。それ以外の音楽スコアについては、ヘップスターズ時代からのベニーの友人で、後にABBAのメンバーとなるフリーダやアグネッタのソロ作品のソングライターも務めたピーター・ヒンメルストランドと、'74年にABBAが「恋のウォータールー」でユーロビジョン・ソングコンテストに出場して優勝した際、ナポレオンの格好をしてオーケストラの指揮を担当したスヴェン=オロフ・ヴァルドルフの2人が手掛けている。なんというか、ABBAファミリーの揃い踏みって感じですな。

評価(5点満点):★★☆☆☆ ※アメリカ公開版
参考DVD情報(アメリカ盤)※DVD-BOX「Joe Sarno's Inga Collection」収録
カラー/スタンダードサイズ(1.37:1)・ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:81分(ソフトバージョン)・87分(グラインドハウスバージョン)/発売元:Retro Seduction Cinema
特典:メイキング・ドキュメンタリー「Inga: Innocence Lost」(約20分)/製作者ヴァーノン・P・ベッカーの音声インタビュー(約12分)/主題歌「Inga's Theme」
by nakachan1045
| 2021-05-14 06:22
| 映画
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