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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「Beyond」 (2012)

「Beyond」 (2012)_f0367483_09523734.jpg
監督:ジョセフ・ラスナック
製作:スティーヴン・ポール
脚本:グレッグ・ギエラス
撮影:エリック・マディソン
視覚効果:ジャック・ストロワイス
音楽:マリオ・グリゴロフ
出演:ジョン・ヴォイト
   テリ・ポーロ
   ダーモット・マルロニー
   ジュリアン・モリス
   スカイラー・シェイ
   ベン・クロウリー
   ブレット・ベイカー
アメリカ映画/90分/カラー作品




「Beyond」 (2012)_f0367483_01313233.jpg
これはちょっとした拾い物である。日本で言いうところの「神隠し」みたいな少女失踪事件が発生。ジョン・ヴォイト演じる叩き上げのベテラン刑事が捜査を担当するのだが、その一方で奇妙な超常現象に襲われた少女の両親はメディアで人気のイケメン霊能者に助けを求める。成り行きから一緒に少女の行方を探すことになった刑事と霊能者。果たして、少女をさらったのは何者なのか…?というオカルトタッチの犯罪ミステリーである。監督はローランド・エメリッヒの門下生でドイツ出身のジョセフ・ラスナック。ストーリーの要である謎解き自体は意外性に乏しく面白みに欠けるものの、しかし極寒のアラスカを舞台にしたハードボイルドな世界観は悪くないし、深い罪の意識を背負ったシニカルな老刑事を演じるジョン・ヴォイトがまた超渋い。地味だけれど捨てがたい魅力のある映画だ。
「Beyond」 (2012)_f0367483_01310547.jpg
雪に覆われた真冬のアラスカ。州都アンカレッジに暮らす主婦サラ・ノーブル(テリ・ポーロ)は、空想の友達ローリとばかり遊んでいる引っ込み思案な7歳の娘エイミー(クロエ・レスリー)のことを心配していた。石油会社の重役を務める夫ジム(ベン・クロウリー)は仕事人間で子育てに非協力的。そればかりか、彼の浮気が原因で夫婦関係は破綻したも同然で、夫を信頼できないサラは離婚を考えていた。そんなある晩、家族が寝静まった深夜のノーブル家宅で奇妙な物音が鳴り響き、不審に思った夫婦が子供部屋を確認したところ、つい先ほど寝かせたはずのエイミーが忽然と姿を消していた。
「Beyond」 (2012)_f0367483_01323629.jpg
エイミー失踪事件の捜査を担当することになったのは、数か月後に引退を控えた老齢のベテラン刑事ジョン・コスキー(ジョン・ヴォイト)。彼は児童誘拐事件の捜査で実績がある優秀な刑事だが、しかし反骨精神旺盛な性格とルール無用の捜査方法で警察上層部と対立することが多く、それゆえに出世街道から外れた一匹狼だった。そんなジョンにはっぱをかけるのが警察署長ジャック・マスカー(ダーモット・マルロニー)。実はエイミーの母親サラはジャックの妹で、ジョンとも古い友人だったのだ。警察が最初に疑惑の目を向けたのはノーブル家のベビーシッター、ミーガン(スカイラー・シェイ)。彼女とジムの不倫関係も疑われたが、しかしどちらも全くのシロだった。やがて、ジムの前職が検察官だったことを知ったジョンは、彼に恨みを持っている犯罪者の線を洗い始める。
「Beyond」 (2012)_f0367483_01322212.jpg
一方その頃、ノーブル家では不可解な出来事が起きていた。エイミーの部屋でポルターガイスト現象が発生するようになったのである。その現場に居合わせたミーガンは、とある知人をサラに紹介する。地元のテレビやラジオで人気のイケメン霊能者ファーリー・コナーズ(ジュリアン・モリス)だ。当初は半信半疑だったサラだが、しかしファーリーが自分しか知らないエイミーの情報を次々と言い当てたことで信頼するように。そんな折、誘拐犯らしき人物から身代金を要求する手紙がノーブル家に届く。ジョンは捜査に口を出す霊能者ファーリーを煙たがるものの、エイミーが監禁されていたと思しき場所を彼が透視したことから、その能力を認めざるを得なくなる。やがて捜査線上に浮かぶ意外な容疑者。さらに、ジョンの捜査に同行していたファーリーは、事件に深く関わる驚くべき事実に気付いてしまう…。
「Beyond」 (2012)_f0367483_01320273.jpg
オカルト要素は単なる謎解きを撹乱させるための目くらましかと思いきや、実は謎解きよりもそちらがストーリーのメイン。鍵となるのは主人公ジョンがかつて担当した未解決事件だ。当時ジョンが愛していた女性の幼い娘が何者かに誘拐されたものの、残念ながら捜査の力が及ばず迷宮入りとなってしまい、それ以来彼は重い罪悪感を背負って生きてきた。このジョンにとって因縁深い未解決事件と彼を悩ませる悪夢、さらにノーブル家でたびたび発生するポルターガイスト現象とエイミーの空想の友達ローリ。捜査が進むにしたがってこれらの関係性が明らかとなり、最終的にジョンの魂が救われることとなる。いわば、これは犯罪ミステリーを装ったスピリチュアルな贖罪と救済の物語なのだ。
「Beyond」 (2012)_f0367483_01315182.jpg
なので、失踪事件の真相は中盤辺りでだいたい目星がついてしまうし、実際にその通りの結末が待っている。意外でも何でもない。謎解きの面白さを期待すると肩透かしを食うことになるだろう。恐らく、魂の不滅や超自然的な世界を信じるか否かが評価の大きな分かれ目だ。そういう意味で、テレビ『ミディアム 霊能者アリソン・デュボワ』辺りが好きな人にはおススメ。荒涼としたアラスカの大自然や寂れかけたアンカレッジの街並みを活かしたノワーリッシュな映像も幻想的で美しいし、90分というコンパクトな尺に収めたテンポの良い演出も観客を飽きさせない。なにより、拭いきれない罪の意識から事件捜査に妄執していく老刑事を演じるジョン・ヴォイトが素晴らしい。あくまでも低予算のB級映画だが、だからといって決して手抜きをしないところが名優の名優たる所以だ。
「Beyond」 (2012)_f0367483_01305168.jpg
評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)※BDもあり
カラー/ワイドスクリーン(2.40:1)/音声:5.1ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:英語・スペイン語/地域コード:1/時間:90分/発売元:Anchor Bay Entertainment
特典:メーカー予告編集



by nakachan1045 | 2021-09-13 01:34 | 映画 | Comments(0)

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