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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「Byleth (Il demone dell'incesto) (ビレト:近親相姦の悪魔)」 (1973)

「Byleth (Il demone dell\'incesto) (ビレト:近親相姦の悪魔)」 (1973)_f0367483_00512961.jpg
監督:レオポルド・サヴォーナ
製作:マリオ・ヴァッカ
原案:ノーバート・ブレイク
脚本:ノーバート・ブレイク
   レオポルド・サヴォーナ
撮影:ジョヴァンニ・クリスチ
音楽:ワシリー・コユチャロフ
出演:マーク・ダモン
   クラウディア・グラヴィ
   アルド・ブフィ・ランディ
   フランコ・ハモンテ
   トニー・デントン
   フェルナンド・チェルッリ
   シルヴァーナ・パンフィリ
   カテリーナ・チアーニ(マルツィア・ダモン)
   フランコ・マルレッタ
イタリア映画/95分/カラー作品




マリオ・バーヴァ監督の『血ぬられた墓標』の世界的な大ヒットを皮切りに量産されたゴシック・ホラーが時代遅れとなり、代わりにダリオ・アルジェント監督の『歓びの毒牙』('69)に触発された猟奇残酷サスペンス=ジャッロがブームとなった'70年代のイタリアン・ホラー。それでもなお、『危険な事情』('72)や『デビルズ・ウェディングナイト』('73)、『踊る吸血鬼』('75)などのチープなゴシック・ホラーが細々と作られた。ただし、いずれの作品もメインは血と恐怖よりもセックス。あられもない濡れ場をフィーチャーしたゴシック・ホラー風味のソフト・ポルノだった。本作もその中のひとつ。ちょうど、看板ジャンルだった時代劇が衰退した同時代の東映で、ポルノ時代劇が矢継ぎ早に作られたのと似たようなものだったのかもしれない。

舞台は19世紀のイタリア。小さな村で売春婦が殺害される。警察の現場検証を遠巻きに見守るのは、地元の若き有力者である英国貴族リオネッロ(マーク・ダモン)。このところ奇妙な悪夢や幻覚に悩まされていた彼だが、最愛の妹バーバラ(クラウディア・グラヴィ)が1年ぶりにイギリスから戻って来たと聞いて舞い上がる。死ぬまで絶対に離れないと幼少期に誓い合った2人は、兄妹の関係を超えた愛情で結ばれていたのである。ところが、リオネッロはバーバラから衝撃的な事実を知らされる。彼女は英国滞在中に知り合ったイタリア貴族ジョルダーノ(アルド・ブフィ・ランディ)と結婚していたのだ。今でも妹と結ばれたいと願うリオネッロに対して、バーバラはそれが決して許されないことだと理解していたのである。

バーバラからジョルダーノを紹介されたものの、はじめから敵意と嫌悪感を剥き出しにするリオネッロ。兄妹の近親相姦的な間柄を知らないジョルダーノは困惑する。そこで彼は、自分の若く美しい従妹フロリアーナ(シルヴァーナ・パンフィリ)をリオネッロに紹介することに。一方、家政婦ジゼラ(マルツィア・ダモン)とその恋人や妹夫婦のセックスを覗き見するリオネッロは、そのたびに精神的な錯乱状態に陥ってしまい、亡き父親の書斎へ閉じこもって不可解な呪文を唱える。そんなある日、リオネッロを誘惑したジゼラが何者かに殺害される。殺しの手口は売春婦の時と同じ。三枚刃のナイフで首元を刺されていた。同一人物の犯行だと断言する医師(フェルナンド・チェルッリ)。やがて、裁判官(フランコ・ハモンテ)ら有力者たちは悪魔ビレトの仕業ではないかと疑うようになる。

白馬に乗ってどこからともなく現れ、罪なき人々を殺めると言われている悪魔ビレト。その凶器は聖三位一体を冒涜する三枚刃のナイフだった。裁判官らの話を聞いていたバーバラは、ビレトという名前を耳にして大きく動揺する。実は、リオネッロとバーバラの亡き父親シャンドヴィル卿は、悪魔崇拝の嫌疑を受けてイギリスからイタリアへ逃亡してきていた。幼少期に父親の書斎へ出入りしていたリオネッロは、そのビレトという名前をつぶやきながら意味不明の呪文を唱えていたのだ。そのことを思い出したバーバラとジョルダーノは、リオネッロがビレトに取り憑かれているのではと疑う。そんな折、リオネッロと乗馬に出かけたフロリアーナが行方不明となり、森の中で死体となって発見される。首元には三枚刃のナイフで刺された跡が。いよいよリオネッロへの疑惑を強めるバーバラだったが…?

主人公兄妹の近親相姦的な愛情と、悪魔憑きが原因と考えられる連続猟奇殺人事件がストーリーの2本柱ではあるものの、しかしこの両者が最後まで平行線をたどったまま、ほとんど交わることなく終わってしまうというのが大きな難点。なんというか、まるで2つの別々の脚本を無理矢理ひとつにしてしまったような印象だ。そのため、よく意味の分からない設定や展開も多々あり。しかし恐らく最大の問題は、曲がりなりにもホラー映画を装っておきながら、肝心の恐怖もゴアもなおざりにされていることだろう。だいたい、悪魔ビレトの見た目からして白馬に乗った黒装束のイケメン貴公子。怖くもなんともない。そのビレトが女性たちを殺害するシーンも、申し訳程度にちょこっと血糊が流れるだけ。あまりにもアッサリし過ぎていて拍子抜けする。

その代わりに盛りだくさんなのがセックス・シーン。ソフトポルノとしては限界ギリギリの濡れ場が延々と描かれる。ただしこれ、どうやら後から追加撮影で付け足されたシーンが多いらしい。もともと'73年にイタリア国内でひっそりと劇場公開され、ほとんど話題になることなく消え去った本作だが、その翌年に西ドイツで公開された際にボディダブルを使ったセックス・シーンが追加されたのだという。そう言われるとなるほど、不自然に役者の顔を隠したクロースアップの絡みがやけに目立つ。ただ、記録に残っているイタリア公開版の尺が95分であるのに対し、現存するドイツ公開版は83分。恐らくドラマ部分を大幅に削ってセックスを増やしたのだろう。

監督は『キラー・キッド』('67)や『必殺のプロガンマン』('67)などのマイナーなマカロニ西部劇を手掛けたレオポルド・サヴォーナ。もともと名匠ジュゼッペ・デ・サンティスの助監督だった人で、『蒙古の嵐』('61)などのスペクタクル史劇でキャリアをスタートした監督だ。総じてホラー要素が希薄に感じられるのも、恐らくジャンルに対する愛着やこだわりがないからなのだろう。ただ、主人公たちが暮らす大豪邸の壮麗な庭園や、迷路のように入り組んだ中世の町の廃墟など、歴史と伝統の国イタリアらしいロケーションを活かした幻想的な映像のムードは悪くない。むしろ、オカルトや猟奇殺人の要素を排除して、禁断の兄妹愛を軸としたダークなゴシック風ロマンスとして仕上げた方が良かったのではないかとも思う。

主演のマーク・ダモンは『アッシャー家の惨劇』('60)や『ヤング・レーサー』('63)などAIPのロジャー・コーマン監督作で有名になったアメリカの二枚目俳優。マリオ・バーヴァ監督の『ブラック・サバス/恐怖!三つの顔』('63)辺りからイタリアに拠点を移し、マカロニ西部劇からホラー映画まで数多くのイタリア産娯楽映画に主演した。'80年代以降は映画プロデューサーへと転身し、『Uボート』('81)や『ネバーエンディング・ストーリー』('84)、『ナイン・ハーフ』('86)、『ロスト・ボーイズ』('87)、『モンスター』('03)、『ビヨンドtheシー 夢見るように歌えば』('04)、『ローン・サバイバー』('13)など、数多くのヒット作を世に送り出している。

なお、先述したように劇場公開時は全くヒットしなかったためか、イタリア公開版はオリジナルのネガフィルムが紛失してしまったと言われている本作。しかし、近年になってスペインのマドリードの倉庫で比較的状態の良いドイツ公開版のネガフィルムが発見され、そこから2K解像度で修復されたレストア版がアメリカでDVD&ブルーレイ化されている。まあ、あくまでも「比較的」状態が良いだけであって、レストア作業でも修復しきれなかったフィルムの変色などはそこかしこに見受けられるのだが、それでも全体的にはシャープできめ細やかな高画質。音声トラックはドイツ語に加えてイタリア語も収録されているのだが、しかし現存する短縮版の上映用プリントから抜き出しているため、一部のシーンはドイツ語のままになっている。

評価(5点満点):★★☆☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:ドイツ語・イタリア語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:83分/発売元:Severin Films
特典:なし



by nakachan1045 | 2021-10-03 14:06 | 映画 | Comments(0)

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