なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「上と下」 Upstairs and Downstairs (1959)

製作:ベティ・E・ボックス
原作:ロナルド・スコット・ソーン
脚本:フランク・ハーヴェイ
撮影:アーネスト・スチュワード
音楽:フィリップ・グリーン
主題歌歌詞:サニー・ミラー
出演:マイケル・クレイグ
アン・ヘイウッド
ミレーヌ・ドモンジョ
ジェームズ・ロバートソン・ジャスティス
シドニー・ジェームズ
レジナルド・ベックウィズ
クラウディア・カルディナーレ
シリル・チェンバレン
マーガロ・ギルモア
ジョーン・ヒックソン
ダニエル・マッセイ
バーバラ・スティール
シャーリー・アン・フィールド
スーザン・ハンプシャー
オリヴァー・リード
イギリス映画/97分/カラー作品


主人公は新婚ホヤホヤの夫婦リチャード・バリー(マイケル・クレイグ)とケイト(アン・ヘイウッド)。アンの父親マンスフィールド氏(ジェームズ・ロバートソン・ジャスティス)は会社経営者で、リチャードはその部下である。ロンドン市内の閑静な住宅街に一軒家を購入して引っ越した2人だが、そんな彼らにマンスフィールド氏が住み込みの家政婦を雇うように指示。というのも、これまでマンスフィールド氏は会社の得意客を自宅へ招いて接待していたのだが、しかし娘のケイトが嫁いで実家を出てしまった今、男やもめのマンスフィールド氏一人では場が持たない。そこで彼が思いついたのは、リチャードとケイトに接待を任せること。そのためには、キッチンを仕切ってフルコースのディナーを用意する家政婦が必要というわけだ。

まず最初に雇われたのは、マンスフィールド氏が行きつけのイタリア料理店シェフの姪っ子マリア(クラウディア・カルディナーレ)。ところが、このセクシーで陽気なイタリア娘はとんでもない男好きで、新聞にバリー夫妻の自宅住所を載せて遊び相手を募集していたのだ。リチャードとアンが新婚旅行から帰って来ると、マリアはアメリカ兵3人と飲めや歌えやの大騒ぎで、家の中はすっかりメチャクチャ。しかもこのマリア、なかなか図太い神経の持ち主で、怒った夫妻がクビを言い渡してもなかなか引き下がらず、腹いせに玄関の窓ガラスを割って去っていく。やはり、ちゃんと家政婦紹介所から派遣してもらった方がいい。そう考えた夫妻が次に雇ったのは、地味で控えめな中年女性ローズマリー(ジョーン・ヒックソン)。テキパキと仕事をするし料理も上手い。彼女なら大丈夫だろうと一安心したリチャードとアンだったが、実はこのローズマリー、夜な夜な近所に住む妹に会いに行くと言ってはパブをはしごするアル中で、しまいには酔っぱらって料理をしたせいでボヤ騒ぎを起こしてしまう。

そうこうしている間に長男が生まれたバリー夫妻。子守役を兼ねて人の好さそうな老夫婦を雇った2人だが、実はこの老夫婦の正体はベテランの銀行強盗犯で、バリー夫妻の留守中にキッチンのレンガ壁を壊し、隣の銀行から大金を盗み出して姿を消してしまう。その後も次々と家政婦が入れ替わり、やがて今度は長女に恵まれたバリー夫妻。もう家政婦などコリゴリだった2人は、スウェーデンからやって来た若い女性イングリッド(ミレーヌ・ドモンジョ)を住み込みのベビーシッターとして雇う。天真爛漫で好奇心旺盛で純粋なイングリッドに好感を持つリチャードとアン。子供たちもすっかり懐く。そんなある日、バリー夫妻が開いたホームパーティにイングリッドも参加。華やかなドレスに身を包んだ彼女は見違えるような美女に変身し、たちまち男性たちの注目の的となる。マンスフィールド氏まですっかり骨抜きにされ、娘であるアンは複雑な心境。だが、そんなイングリッドが秘かに想いを寄せる相手は、他でもない雇い主のリチャードだった…!

オープニングクレジットのポップなラウンジ風テーマ曲と、'50年代らしいカラフルなイラストからして、思わずワクワクするようなお洒落感が満載!劇中のファッションやインテリアも洗練されているし、なによりイギリスらしいシニカルで毒気の効いたユーモアが楽しい。'50年代といえば英国コメディの黄金期。ダーク・ボガードの出世作となった「ドクター」シリーズや「キャリー・オン」シリーズなど、イギリスの国民的な人気コメディ映画が次々と誕生した。そんな時代の勢いみたいなものが本作でも如実に感じられるだろう。ストーリー自体は本当にたわいないものの、今さら封建時代みたいな「ご主人様と使用人」の関係なんて時代にそぐわないしダサいよね!身の回りの家事なんか自分たちでやればいいじゃん!というメッセージは、もしかすると当時の英国国民には共感できるものがあったのかもしれない。

そんな本作を生み出したのが、「ドクター」シリーズの名コンビとして有名なラルフ・トーマス監督(ジェレミー・トーマスの父親)と製作者ベティ・E・ボックス。ほかにも『二都物語』('57)や『風は知らない』('58)など文芸映画の名作も世に送り出し、映画会社ランク・オーガニゼーションズで一番の稼ぎ頭だった監督&プロデューサー・チームだ。当時、シリアスな大作映画の製作が立て続いていた2人は、肩の凝らない小規模映画で息抜きをしたいと本作を手掛けたそうだが、それでも予算が十分に潤沢であることは一目瞭然。ロック・ハドソン&ドリス・デイのロマンティック・コメディを彷彿とさせるエレガントな雰囲気が魅力だ。

主演はトーマス監督ご贔屓のマイケル・クレイグと、当時ちょうどブレイクしていたアン・ヘイウッド。ジェームズ・ロバートソン・ジャスティスも「ドクター」シリーズを筆頭にトーマス監督作品の常連組だった。しかし、やはり本作最大の売りは男性陣を虜にして翻弄するスウェーデン娘イングリッドを演じているフランス女優ミレーヌ・ドモンジョであろう。当時はブリジット・バルドーと並んで日本でも大人気だったセックス・シンボルだが、イギリスでも脇役として出演した『悲しみよこんにちは』('58)が評判になったばかり。とにかくまあ天真爛漫でコケティッシュで可愛らしいこと!そりゃ英国紳士たちのハートを鷲掴みにするわけですよ。しかも、脇には当時まだ駆け出しだったクラウディア・カルディナーレにバーバラ・スティールまで登場!ヨーロッパ映画女優ファンにはたまらないキャスティングだ。

さらに、テレビ『ミス・マープル』('84~'92)シリーズのミス・マープル役でお馴染みのジョーン・ヒックソンが、一見したところ上品で可愛らしいけど実はムチャクチャ酒癖が悪い中年の家政婦役を好演。イングリッドに夢中となる冴えないアメリカ人青年役としてダニエル・マッセイも顔を出している。また、当時まだ無名だったシャーリー・アン・フィールドやスーザン・ハンプシャー、オリヴァー・リードが小さな役で出演しているのも要注目だ。シャーリー・アン・フィールドなんか既にスターのオーラを放ちまくりである。

評価(5点満点):★★★★☆
参考DVD(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:1/時間:97分/発売元:VCI Entertainment
特典:オリジナル劇場予告編
by nakachan1045
| 2021-10-09 06:55
| 映画
|
Comments(2)
Commented
by
na
at 2021-10-15 22:52
この映画に関しては僕は原題を直訳するべきだったと思います。
だって記事に書かれている通り、「上と下」ではどんな内容の映画なのか観客には全く想像がつかないですし。
なかざわひでゆきさんはどう思いますか?
だって記事に書かれている通り、「上と下」ではどんな内容の映画なのか観客には全く想像がつかないですし。
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