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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「悪女の構図」 Buried Alive (1990)

「悪女の構図」 Buried Alive  (1990)_f0367483_16585775.jpg
監督:フランク・ダラボン
製作:ニキ・マーヴィン
原作:デヴィッド・A・デイヴィース
脚本:マーク・パトリック・カードゥッチ
撮影:ジャック・ヘイトキン
音楽:ミシェル・コロンビエ
出演:ティム・マシスン
   ジェニファー・ジェイソン・リー
   ウィリアム・アザートン
   ホイト・アクストン
   ジェイ・ガーバー
   ウェイン・グレース
   ドナルド・ハットン
アメリカ映画/99分/カラー作品




『ショーシャンクの空に』('94)や『グリーン・マイル』('99)でお馴染み、寡作の巨匠フランク・ダラボンの監督デビュー作である。もともと『エルム街の悪夢3 惨劇の館』('87)や『ブロブ/宇宙からの不明物体』('88)など、B級ホラー映画の脚本家として頭角を現したダラボン監督。ケーブル局USAネットワークのテレビ映画として製作された本作に、どういう経緯で携わることになったのかは不明だが、'90年代初頭の当時はケーブル局が制作するオリジナル映画の草創期。地上波ネットワークと違って自主検閲のルールが緩く、低予算だが表現の自由がある程度保証されたケーブル局映画は、未経験の新人監督であるダラボンにとって、腕試しをするには格好の現場だったのかもしれない。その後の劇場用映画に比べると地味で平凡なB級スリラーだが、しかし趣向を凝らしたカメラワークとツボを心得た恐怖演出には特筆すべきものがあり、そこかしこで巨匠の片鱗を垣間見ることが出来るだろう。

舞台はアメリカのとある田舎町。ニューヨークから生まれ故郷に戻って来た建築家クリント(ティム・マシスン)は建築工事会社を経営して成功し、最愛の妻ジョアンナ(ジェニファー・ジェイソン・リー)と満ち足りた生活を送っているように見えるが、しかし生まれも育ちもニューヨークのジョアンナは田舎暮らしに不満を募らせており、もはや夫婦仲は破綻したも同然だった。しかも、ジョアンナは地元の医師コートランド(ウィリアム・アザートン)と秘かに不倫しており、2人はクリントを殺害して会社を高値で売却し、その金でビバリーヒルズに豪邸を買う計画を立てていた。コートランドから致死量の毒薬を受け取り、夕食のテーブルで夫のワイングラスに混入するジョアンナ。何も知らないクリントはそれを飲んでしまい、その場で心臓発作を起こして息絶えてしまう。検死を担当したのはコートランド。警察に疑われぬよう死亡診断書を偽造した彼は、葬儀会社にも防腐処理を省いて一番安い棺を使用し、安上がりかつ早急に葬儀を済ませるよう夫人の代理として指示。葬儀を終えたジョアンナはすぐに弁護士を通じて会社を売り払い、150万ドルもの大金を手にするのだった。

その頃、死んだはずのクリントが棺の中で目覚める。実は夫殺しを躊躇したジョアンナの不手際で、ワイングラスに入れた毒薬が致死量に満たなかったのだ。パニックに陥って暴れるクリントだったが、折からの豪雨による浸水で安物の棺は壊れやすくなっており、クリントはなんとか地上へ這い出ることに成功。フラフラになって自宅へ戻った彼は、そこで祝杯をあげるジョアンナとコートランドの姿を目の当たりにし、妻が自分を殺そうとしたのだと悟る。自宅に潜んで機会をうかがい、妻を猟銃で殺害しようと狙うクリント。しかし、殺害計画がジョアンナの単独犯行ではなく、愛人コートランドとの共謀だったことを知った彼は、苦しみが一瞬だけの銃殺では手ぬるいと考え、2人に地獄の苦しみを味わせるための恐るべき復讐計画を立てる。一方、クリントの父親代わりでもある保安官サム(ホイト・アクストン)は、通報を受けて彼の墓が荒らされていることを知り、内側から壊された棺の状態を見てクリントが生きているのではないかと疑い始めていた…。

恐らくアンリ=ジョルジュ・クルーゾーの『悪魔のような女』('55)を参考にしたであろうストーリーは至ってシンプル。妻とその愛人に殺されかけた夫が墓場で息を吹き返し、復讐の鬼と化して2人を罠に追い詰めていくという筋書きはありきたりで、それゆえに先の展開も簡単に読めてしまうことは否めない。その代わり、メインとなる登場人物をたったの4人だけに絞り、あえて余計な伏線やサイドプロットも排除したうえで、あまりに理不尽な目に遭った男性の怒りと復讐のカタルシスを描くことに注力した脚本はなかなか良く出来ている。主人公クリントと保安官サムの親子関係にも似た友情を通して、生まれ育った故郷の田舎町に寄せるクリントの素朴な想いをさりげなく浮き彫りにする一方、どこまでも自分勝手で欲の深い妻ジョアンナと愛人コートランドの悪辣ぶりを際立たせた人物描写もバランスがいい。おかげで、クリントの仕掛けた罠によってジョアンナとコートランドが恐怖と絶望のどん底に突き落とされる後半戦の気持ち良いこと(笑)!スッキリ爽快とはこのことですな。

ステディカムやズームレンズを駆使したユニークな撮影技法も満載。毒を盛られたクリントが悶絶死するシーンの執拗な演出と歪んだアングルは結構ショッキングだし、そのクリントが墓の中で目覚めるシーンの閉塞感も見ているこちらまで息苦しくなるくらいリアルで恐ろしい。この機会にいろいろ試してやろうというダラボン監督の才気と野心を感じるし、その要望に応えた撮影監督ジャック・ヘイトキンの技術力とセンスにも感心する。ヘイトキンと言えば、『エルム街の悪夢』('84)や『ヒドゥン』('87)などで当時絶好調だったカメラマンだ。そんな彼らが最も力を入れただろうと思われるのは、やはり終盤の巨大迷路シーンであろう。覆面姿で正体を隠したクリントは、自宅の地下室にジョアンナとコートランドを閉じ込めることに成功。お互いに相手が裏切ったのではないかと疑心暗鬼になる不倫妻と間男。覆面男が何者なのかと考えあぐねたコートランドは、地下室の窓から脱出しようとするが番犬に襲われて断念する。「上にはジェイソン、目の前にはクジョーかよ!」という捨て台詞に思わずニンマリ。で、その間に建築士のクリントは自宅を複雑に入り組んだ巨大迷路へと大改造し、そこへ怯えるジョアンナとコートランドを放り出して次々とトラップを仕掛けていく。この緻密に計算されたカメラワークとテンポの良いスピード感が絶妙で、さすがはフランク・ダラボン!と唸るしかない。

主演は『アニマルハウス』('78)や『1941』('79)などでもお馴染みの名優ティム・マシスン。どちらかというとコメディ俳優のイメージが強い人だが、お人好しのオールアメリカン・ボーイなイメージは寝取られ男クリント役にピッタリで、本作に続いてスティーブン・キング原作のテレビ映画『ブロス/やつらはときどき帰って来る』('91)にも主演している。その悪妻ジョアンナを演じているのは、『ブルックリン最終出口』('89)で絶賛されたばかりのジェニファー・ジェイソン・リー。また、『ゴーストバスターズ』('84)以降、憎まれ役として引っ張りだこだったウィリアム・アザートンが愛人コートランド役というのも適役と言えよう。さらに、もともとカントリー・ブルース系のシンガーソングライターで、『グレムリン』('83)の心優しいお父さん役でも親しまれたホイト・アクストンが、少年時代に両親を亡くしたクリントを親代わりとして見守ってきた保安官サム役を演じている。こういう、懐が深くて頼りがいのある朴訥としたオジサンを演じさせたら本当に上手い人だ。

なお、アメリカでも日本でも'90年代にビデオ発売されたきりだった本作だが、'20年になってようやくアメリカでブルーレイがリリース。オリジナルネガから2K解像度でレストア作業を施したという本編マスターは、とても30年前の映画とは思えないくらいツルツルピカピカの超高画質だ。ステレオの音声トラックもなかなかの迫力。惜しむらくは、関係者インタビューがウィリアム・アザートンひとりだけという点であろう。まだまだスタッフやキャストの大部分が現役で健在なので、せめてフランク・ダラボン監督の音声コメンタリーくらいは録って欲しかった。

評価(5点満点):★★★★☆



参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/スタンダードサイズ(1.37:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio Stereo/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:99分/発売元:Kino Lorber/Universal Studios
特典:エンターテインメント記者ブライアン・リースマンによる音声解説/俳優ウィリアム・アザートンのインタビュー('20年制作・約7分)/関連作品の予告編集



by nakachan1045 | 2021-10-27 05:29 | 映画 | Comments(0)

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