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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「夜の女」 Lady of the Night (1925)

「夜の女」 Lady of the Night  (1925)_f0367483_15512951.jpg
監督:モンタ・ベル
製作:ルイス・B・メイヤー
原案:アデラ・ロジャース・セント・ジョンズ
脚本:アリス・D・G・ミラー
撮影:アンドレ・バーラティエ
美術:セドリック・ギボンズ
出演:ノーマ・シアラー
   マルコム・マクレガー
   デイル・フラー
   ジョージ・K・アーサー
   フレッド・エスメルトン
   リュー・ハーヴェイ
   グウェン・リー
   ベティ・モリシー
アメリカ映画/64分/モノクロ・サイレント作品




「夜の女」 Lady of the Night  (1925)_f0367483_09590680.jpg
ハリウッド黄金期における最大の映画スタジオMGMの女王として君臨した、伝説的な大女優ノーマ・シアラーの出世作である。女優として鳴かず飛ばずで広告モデルをしながら食いつなぐこと3年、ようやく1923年に当時まだ二流プロデューサーだったルイス・B・メイヤーと専属契約を結んでB級映画に出演するようになったシアラー。そのメイヤーが'24年にメトロ社およびゴールドウィン社との合併スタジオMGMを設立すると、シアラーは同社が得意とするメロドラマでめきめきと頭角を現していく。中でも特に評判となったのが、裕福な上流階級の令嬢と不幸な生い立ちの商売女という1人2役を演じた『夜の女』('25)で、これを機にシアラーはMGMを代表するトップ女優へと成長することとなった。
「夜の女」 Lady of the Night  (1925)_f0367483_09570774.jpg
貧しさゆえに窃盗を働いた男クリス・ヘルマー(リュー・ハーヴェイ)は、生まれたばかりの娘と妻を残して警察に連行され、厳格なバニング判事(フレッド・エスメルトン)によって禁固20年の刑を言い渡される。あまりにも重い量刑に納得がいかないヘルマー。奇しくも、バニング判事にも生まれたばかりの娘がいた。それから17年後、バニング判事の娘フローレンス(ノーマ・シアラー)は私立のお嬢様学校を卒業し、ちょうど同じ頃にヘルマーの娘モリー(ノーマ・シアラー)は女子少年院を出る。母親を亡くして身寄りのないモリーは、仲間と一緒に場末の酒場でタクシー・ダンサー(ダンスの相手をして金を稼ぐホステス)として働き、やがてお人好しのチンピラ、チャンキー(ジョージ・K・アーサー)と付き合うようになる。そんなある日、ヤクザな客に絡まれたモリーは聡明な若者デヴィッド(マルコム・マクレガー)に助けられる。真面目で腕っぷしが強いデヴィッドに一目惚れしてしまうモリー。当然ながらチャンキーは気に食わないものの、愛するモリーの恋路を邪魔するような度胸もなかった。
「夜の女」 Lady of the Night  (1925)_f0367483_09573872.jpg
実は無名の発明家であるデヴィッドは、世界中の金庫を自在に開け閉めできる機械を開発したばかりだった。銀行に売り込んだら防犯システムとして採用して貰えるんじゃないか?とデヴィッドにアドバイスするモリー。その言葉通り、彼の発明は銀行の役員たちから評判となり、破格の契約金で取引が成立した。これで一躍、大金を手にしたデヴィッド。実は、その役員のひとりがバニング判事で、デヴィッドは父親を訪ねて来た娘フローレンスと出会い、お互いにひと目で恋に落ちてしまう。やがて頻繁にデートを重ねるようになったフローレンスとデヴィッド。そうとは知らないモリーは彼への想いを募らせていくが、しかしデヴィッドにとってモリーは気の合う友達でしかなかった。そんな折、フローレンスとデヴィッドの逢引現場にモリーが鉢合わせてしまう。ショックを受けながらも、事情を察して立ち去っていくモリー。そんな彼女の表情を見て、モリーがデヴィッドのことを深く愛していると悟ったフローレンスは身を引く決意をするのだったが…?
「夜の女」 Lady of the Night  (1925)_f0367483_09572200.jpg
ということで、ノーマ・シアラーがモリーとフローレンスの両方を演じているわけだが、別に血の繋がった双子や家族という設定でもないのはちょっと意外。要するに、同じ年ごろの女性でも生まれ育った環境によって人生の明暗が大きく分かれてしまう、その個人の力ではどうしようもない理不尽さを象徴的に描くための1人2役だったのだろう。今で言う「親ガチャ」というやつだが、しかしそれにしては最終的に「分相応の相手と結ばれる」という結末が用意されているのは腑に落ちず、結局のところ貧富の格差という設定が大して生かされないまま、単なる三角関係の恋愛メロドラマに終始してしまった感は否めない。しかも、登場人物がみんなやけに物わかりの良い善人ばかりであるため、これといって逆境や波乱の展開があるわけでもなく、すんなりとストーリーが進んでいくのも物足りなく感じる。脚本の出来はあまり良くない。
「夜の女」 Lady of the Night  (1925)_f0367483_09575756.jpg
その代わりといっては何だが、やはり生い立ちも性格も正反対の女性2人を演じ分けたノーマ・シアラーの実力には舌を巻く。特に、社会の底辺を生き抜くためタフにならざるを得なかったモリーの、蓮っ葉な表情や仕草の裏に隠された乙女の切ない純情は、これがサイレント映画であることを忘れるくらいに雄弁で説得力がある。彼女が女優としての真価を発揮するのはトーキーの時代に入ってからとなるが、しかし本作の時点で既にその演技力はほぼ完成されていたように見受けられる。下積み時代のシアラーは、自身でもコンプレックスだった斜視などの容姿をたびたび批判され、それでも女優として成功する夢を諦めず血の滲むような努力を重ねたと言われているが、彼女の芝居にはそうした揺るぎのない執念のようなものが感じられるのだ。
「夜の女」 Lady of the Night  (1925)_f0367483_09584796.jpg
監督はグレタ・ガルボのハリウッド進出作『イバニエスの激流』('26)で知られるモンタ・ベル。今ではすっかり映画史の彼方に忘れ去られてしまったが、当時は軽妙洒脱で洗練されたロマンティック・コメディを得意とし、映画史研究家の間では「エルンスト・ルビッチの先駆者」との呼び声まである人物だ。本作でもその片鱗を感じさせるスタイリッシュな演出が散見されるものの、しかし全体的として見ると平均点のハリウッド・メロドラマという感じだ。今となっては「大女優ノーマ・シアラーの初期代表作」という以外に語られるべき点はあまりないだろう。
「夜の女」 Lady of the Night  (1925)_f0367483_09583102.jpg
なお、ノーマ・シアラーの相手役を務めるのは、当時ルイス・B・メイヤーが売り出していた若手俳優マルコム・マクレガー。ルドルフ・ヴァレンティノ路線の二枚目スターだったが、これといった当たり役に恵まれないままキャリアは短命に終わってしまった。モリーの恋人である憎めないダメ男チャンキーには、カール・デインとのお笑いコンビ「デイン&アーサー」として人気を集めたサイレント映画の喜劇俳優ジョージ・K・アーサー。フローレンスの口うるさい独身の伯母を演じているのは、セシル・B・デミル作品の常連女優だったデイル・フラーだ。
「夜の女」 Lady of the Night  (1925)_f0367483_09581221.jpg
評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)※オンデマンドDVD-R
モノクロ/スタンダードサイズ(1.33:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Stereo(音楽スコアのみ)/言語:英語(字幕カード)/地域コード:ALL/時間:64分/発売元:Warner Archives
特典:なし



by nakachan1045 | 2021-10-31 05:03 | 映画 | Comments(0)

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