なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「The Slime People」 (1963)

第二班監督:ウィリアム・マーティン
製作:ジョセフ・F・ロバートソン
脚本:ブレア・ロバートソン
ヴァンス・スカルステッド(ジョセフ・F・ロバートソン)
撮影:ウィリアム・トロイアーノ
特殊効果:ハリー・ウールマン
出演:ロバート・ハットン
レス・トレメイン
ロバート・バートン
スーザン・ハート
ウィリアム・ボイス
ジュディ・モートン
ジョン・クロース
アメリカ映画/77分/モノクロ作品


まずは本作の大前提となる設定から解説していこう。ある日突然、ロサンゼルスの海岸エリアで12名の死体が発見されるという事件が発生。やがて、犯人が「ネバネバ人間」と呼ばれる地底人であることが判明する。彼らは太古から地球の地底に生息していたのだが、地下核実験のせいで棲み処を追われてしまい、地上への侵略を開始したのである。米軍は総力を挙げて勇敢に戦ったものの空しく敗退し、ロサンゼルスは「ネバネバ人間」たちの手に落ちてしまう。彼らはロスの街をドームで囲って霧を充満させ、気温を下げることで自分たちが住みやすい環境に変えてしまった。市民の大部分はロサンゼルスを脱出したものの、逃げ遅れて残されてしまった人々も少なくない。そうした中、米軍は更なる反撃を計画していたが、しかしドームの壁に阻まれてL.A.奪還作戦は難航していた。

…というスペクタクルな侵略パニックの過程が、劇中ではほぼ登場人物のセリフだけで語られる。なので、「ネバネバ人間」と米軍の激しい戦闘シーンもなければ、大勢の群衆が逃げ惑うモブ・シーンもない。そりゃそうだろう。なにしろ、先述したような超低予算映画なのだから。その予算の半分以上は「ネバネバ人間」のクリーチャー・スーツ制作に充てられたらしいのだが、それでも実際に作られたクリーチャー・スーツは8体だけだったという。ただし、本編を見るとひとつのシーンで同時に出てくる「ネバネバ人間」は最大で3体。もしかすると、8体という数は製作者ロバートソンが話を盛っただけなのかもしれない。いずれにせよ、地上を侵略するには少なすぎることは間違いなし。しかも武器はモリですよ、モリ!昔の人がクジラ漁とかに使ってたやつ。あれで米軍の総攻撃に打ち勝ったというのだから恐れ入るというか、「んなわけなねぇだろ!」というか(笑)。むしろ、どんな戦闘が繰り広げられたのか見てみたかったもんである。

で、主人公はセスナ機でロサンゼルスへ帰って来た中年男性トム・グレゴリー(ロバート・ハットン)。飛行場に着陸したものの人影が全くないことに戸惑った彼は、たまたま車で通りがかった科学者ガルブレイス博士(ロバート・バートン)とその長女リサ(スーザン・ハート)、次女ボニー(ジュディ・モートン)から、ロサンゼルスが「ネバネバ人間」によって侵略されたと知らされる。にわかには信じられなかったトムだったが、しかし博士たちの車に乗せてもらって移動中、焼け落ちた民家(たまたま当時起きた山火事の現場)や逃げ遅れた人々の死体(2人だけ!)を見て納得。まだ他にも生存者がいるかもしれない。そう考えたトムは、職場であるテレビ局へ行って詳しい状況を把握しようと博士たちに提案する。実は彼、ニュース番組の人気レポーターだったのだ…って、おい!ニュース・レポーターのくせにこの緊急事態を全く知らなかったんかい(笑)!

テレビ局の取材フィルムを見て詳しい状況を把握した一行は、いきなり現れた「ネバネバ人間」たちに追われながらも撮影スタジオへ避難。そこで海兵隊の若者キャル(ウィリアム・ボイス)に助けられた彼らはテレビでSOSを訴えようとするが、しかし町を囲ったドームのせいでテレビ電波は妨害されていた。霧によって気温がどんどん低くなってきたことに気付いたガルブレイス博士は、このままだと昼夜関係なく「ネバネバ人間」たちが地上をうろついてしまう!一刻も早くロサンゼルスを脱出せねば!と警告。そこで、彼らは博士の山小屋へ立ち寄ってドームの壁を破壊するのに必要な化学薬品(!?)を集め、さらには途中で山羊を抱えた変わり者の作家トリヴァー(レス・トレメイン)を車で拾い、ロスの郊外へ向かって壁を壊そうとするものの失敗。仕方なく市内へ向かったところ車がガス欠となり、一行はもぬけの殻となった肉屋に立てこもる。しかし、そこへ「ネバネバ人間」たちが襲来し、トリヴァーが殺されたうえにボニーが誘拐されてしまう…。

この思わず失笑が漏れるほど適当な脚本を手掛けたのは、もともと名喜劇俳優ジョージ・バーンズのテレビ製作会社の会計士だったプロデューサーのジョセフ・F・ロバートソンと妻ブレア・ロバートソン。2人とも映画の脚本を書くのはこれが初めてだったようだが、それにしてたって筋書きもセリフも稚拙というか未熟というか、まるで小中学生の映画少年が見よう見まねで書いたようなデタラメさが、明らかに作り手の意図していない笑いを引き起こす。それはロバート・ハットン監督の演出も同様だ。主演を兼ねているハットンは、サミュエル・フラー監督の『鬼軍曹ザック』('50)やジョン・クロムウェル監督の『脅迫者』('51)などにも出演したハリウッドの名脇役俳優。どういう経緯で本作の演出を引き受けたのかは定かでないが、恐らく経済的リスクの少ない低予算ホラーは監督デビューのきっかけに丁度良かったのかもしれない。

ただ結論から言うと、監督としての才能は大いに疑問である。ドームの壁に囲まれたロサンゼルスには霧が充満して…という設定なのに、空撮シーンのロサンゼルスは西海岸らしい晴天でドームの壁など影も形もなし、というのは予算の限界ゆえに仕方ないとしても、スモークを焚き過ぎて出演者の芝居が見えなくなってしまうようでは元も子もないだろう。これが最初で最後の監督作となったのも当然と言えば当然。それにしても、米軍が束になっても敵わなかった「ネバネバ人間」たちに、最後はたった5人の一般人が勝ってしまうのだからビックリ仰天である(笑)。ちなみに、劇中に出てくるテレビスタジオはロサンゼルスのローカル局KTLA-TVのスタジオを、主人公たちが籠城する肉屋はハットンの義父が経営する肉屋を借りて撮影されている。

なお、ヒロインのリサ役を演じているスーザン・ハートは、あのAIP社長ジェームズ・H・ニコルソンの奥さんだった人。『パジャマ・パーティ』('64)を筆頭とするAIP制作の「ビーチ・パーティ」映画シリーズのビキニ要員としても知られた女優さんだが、彼女と妹ボニー役のジュディ・モートンの学芸会丸出しな芝居がまた酷い(笑)。どちらもそれなりにキャリアのある女優さんなので、もしかすると「こんな映画やってらんない!」って感じだったのだろうか。そのほか、'30年代のB級映画スター、レス・トレメインやテレビの傍役俳優ロバート・バートンらが出演。ただ、撮影開始から9日目で予算が底をついてしまったこともあって、最終的にハットン監督もスタッフもギャラを払ってもらえず、スーザン・ハートやジュディ・モートンらキャストも週払いの出演料が途中から出なくなったそうだ。

ちなみに、'62年初頭に撮影された本作はジョセフ・F・ロバートソンにとって最初のプロデュース作品だったが、後から撮影された『The Crawling Hand』の方が先に劇場公開されている。やはり出来が悪すぎたせいだろうか(^^; その後、エド・ウッドが主演したセックス・コメディ『Love Feast』('69)で監督に進出したロバートソンは、'70年代半ばからチャールトン・ロバーツやアデル・ロビンズなどの変名を使ってハードコア・ポルノの監督兼プロデューサーへと転身している。

評価(5点満点):★★☆☆☆
参考DVD情報(アメリカ盤)※「The Crawling Hand」を同時収録
モノクロ/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:77分/発売元:VCI Entertainment
特典:女優スーザン・ハートの音声インタビュー/オリジナル劇場予告編
by nakachan1045
| 2021-11-08 01:05
| 映画
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