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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「Les cauchemars naissent la nuit(悪夢は夜にやって来る)」 (1970)

「Les cauchemars naissent la nuit(悪夢は夜にやって来る)」 (1970)_f0367483_11581146.jpg
監督:ジェス・フランコ
製作:ジェス・フランコ
脚本:ジェス・フランコ
撮影:ホセ・クリメント
音楽:ブルーノ・ニコライ
出演:ディアナ・ロリス
   ポール・ミュラー
   ジャック・テイラー
   スーザン・コルダ(ソレダード・ミランダ)
   コレット・ジャック
   アンドレ・モンシャル
リヒテンシュタイン映画/83分/カラー作品




「Les cauchemars naissent la nuit(悪夢は夜にやって来る)」 (1970)_f0367483_20231179.jpg
ユーロカルトの帝王ジェス・フランコ監督と言えば、ミューズである女優ソレダード・ミランダと組んだ『シー・キルド・イン・エクスタシー』('71)や『ヴァンピロス・レスボス』('71)などで有名だが、これはそうしたフランコ×ミランダの作品群の中でも長いこと失われたと考えられていた貴重な作品。しかも本作、それまでホラーからサスペンス、アクションから文芸エロスまで幅広いジャンルの低予算娯楽映画を手掛けていたフランコが、いわゆる商業映画の枠組みから解放されて実験的なアングラ映画の世界へ踏み込んだ初めての作品とも言われている。ヨーロッパのタックス・ヘイヴンとして有名なリヒテンシュタインを拠点とする映画会社プロディフ・フィルムのために、フランコが自身のポケットマネーをはたいて製作したという本作は、基本的なプロット以外はこれといって明確なストーリーがなく、まるで映画そのものがヒロインの悪夢的な幻覚もしくは妄想のように仕立て上げられている。要するに、『シー・キルド・イン・エクスタシー』や『ヴァンピロス・レスボス』の原点とも言うべき映画なのだ。
「Les cauchemars naissent la nuit(悪夢は夜にやって来る)」 (1970)_f0367483_20240280.jpg
主人公はクロアチアのザグレフで場末のストリッパーだった美女アンナ(ディアナ・ロリス)。ある晩、客としてやって来たブロンド美女シンツィア(コレット・ジャック)に見初められた彼女は、まるで催眠術でもかけられたかのごとくシンツィアに魅せられ、すぐに彼女の暮らす大豪邸で同居するようになる。シンツィアと女性同士の濃密な愛欲の世界に溺れていくアンナ。しかし、その一方でシンツィアは独占欲の強い冷酷な支配者でもあった。そのうち、アンナは自分が見ず知らずの男を殺す恐ろしい夢を見るようになる。それはあまりにもリアルで生々しい夢だったため、彼女は自分が本当に人を殺したのではないかとの妄想に囚われていく。徐々に精神的なバランスを崩していったアンナは、やがて精神科医ポール(ポール・ミュラー)も手に負えないような状況に。しかも、彼女を隣の家から秘かに監視している怪しいカップル(ソレダード・ミランダ&アンドレ・モンシャル)までいた。そんなある日、アンナの前に夢で出てきた謎の男性(ジャック・テイラー)が姿を現す…。
「Les cauchemars naissent la nuit(悪夢は夜にやって来る)」 (1970)_f0367483_20234237.jpg
というのが大まかな筋書きなのだが、全体的にはアンナ自身が自分の正気を疑って不安と恐怖に怯えるモノローグを軸としながら、夢とも現実とも区別のつかないシュールなイメージシーンと、艶めかしくも官能的なベッドシーンが脈絡もなく散りばめられていく。辻褄の合わない場面も少なくないものの、なにしろジェス・フランコ映画なので細かいことなどお構いなし(笑)。隣の家のカップルなんて、ほとんど本筋とは関係なかったりする。まあ、これはお蔵入りした未公開作品の映像を流用したそうなので、そもそも関係がなくて当たり前と言えば当たり前なのだが。最後の最後で「実はあの男女の正体は…」という言い訳じみた設定が明かされるものの、どう考えたって無理矢理な後付けなんだよね。このハッタリをかました適当さもまたフランコ映画の醍醐味(?)。それを含めて、本作自体が精神を病んで狂気へと駆り立てられていく女性アンナの妄想世界の具現化とも言えるのだ。
「Les cauchemars naissent la nuit(悪夢は夜にやって来る)」 (1970)_f0367483_20241887.jpg
そういった調子なので、果たして映画として面白いかどうかと言われると大いに疑問なのだが、歪んだカメラアングルや鏡に映るイメージなどを多用したエクスペリメンタルな映像はユニークだし、具体的な撮影場所は不詳だが美しいロケーションを活かしたスタイリッシュなムードも悪くない。大胆でエキゾチックな女優陣のコスチュームや、イタリアの名匠ブルーノ・ニコライによる幻想的な音楽スコアも魅力的だ。'60年代末~'70年代初頭のアート系エロティック・シネマを好む向きにはおススメできるだろう。フランコ自身は本作をいたく気に入っていたらしく、その後もモンセラート・プロー主演の『Los ojos siniestros del Dr. Orloff(オーロフ博士の邪悪な目)』('72)にリーナ・ロマイ主演の『Sola ante del Terror(ひとりの恐怖)』('83)と、2度に渡ってセルフ・リメイクしている。
「Les cauchemars naissent la nuit(悪夢は夜にやって来る)」 (1970)_f0367483_20244915.jpg
当時のジェス・フランコ映画のミューズということもあってか、本作でもなにかと前面に押し出されがちなソレダード・ミランダではあるが、実際は先述したように別の未公開映画の出演シーンを流用しただけの小さな役柄に過ぎない。主人公アンナ役を演じているのは、フランコ監督の出世作『美女の皮をはぐ男』('61)でもヒロイン役を務めたスペイン女優ディアナ・ロリス。『復讐のジャンゴ・岩山の決闘』('66)や『無頼プロフェッショナル』('71)などのマカロニ・ウエスタンでもお馴染みで、スペインで撮影された『テキサス強盗団』('66)や『戦うパンチョ・ビラ』('68)などのハリウッド西部劇にも重宝されたエキゾチック美女である。精神科医ポール役には数えきれないほどのイタリア産B級娯楽映画で悪役を務め、ジェス・フランコ作品の常連組でもあったスイス人俳優ポール・ミュラー。フランコ監督の『悪徳の快楽』('69)や『吸血のデアボリカ』('70)で端役を務めたコレット・ジャックが謎多きブロンド美女シンツィアを演じている。また、フランコ作品のみならずアマンド・デ・オッソリオやホセ・ラモン・ララスなどのスパニッシュ・ホラー映画で常連だったアメリカ人俳優ジャック・テイラーも登場。ただし出番は少ない。
「Les cauchemars naissent la nuit(悪夢は夜にやって来る)」 (1970)_f0367483_20250776.jpg
なお、'70年前半には完成していたとされる本作だが、しかし3年後にフランス語版がベルギーでひっそりと公開されたっきり、そのまま長いことフィルムが行方不明となっていた。しかし、'04年になってフランスの配給会社ユーロシネの倉庫で35ミリのアンサーフィルム(劇場公開前に色合いや状態などをチェックするためのフィルム)が発見され、新たな英語吹替版が制作されたうえで同じ年にアメリカで世界初ソフト化された。筆者が所有しているのはその時のDVD版。画質は可もなく不可もなくだが、しかし30年以上も放置されていたフィルムにしては保存状態も良好だ。その後、イギリスやヨーロッパ各国でもDVD化され、'13年にはアメリカ盤ブルーレイも発売されている。
「Les cauchemars naissent la nuit(悪夢は夜にやって来る)」 (1970)_f0367483_20244059.jpg
評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/スタンダードサイズ(1.33:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:フランス語・英語/字幕:英語/地域コード:1/時間:83分/発売元:Media Blasters
特典:ジェス・フランコ監督のインタビュー('04年制作・約23分)/フォト・ギャラリー/封入ブックレット



by nakachan1045 | 2021-11-10 06:07 | 映画 | Comments(0)

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