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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき

「ザ・アンタッチャブル/暗黒街のハスラー」 The Big Switch (1968)

「ザ・アンタッチャブル/暗黒街のハスラー」 The Big Switch  (1968)_f0367483_01082256.jpg
監督:ピート・ウォーカー
製作:ピート・ウォーカー
脚本:ピート・ウォーカー
撮影:ブライアン・トゥファノ
音楽:ハリー・サウス
出演:セバスチャン・ブレイクス
   ヴァージニア・ウェザレル
   ジャック・アレン
   デレク・エイルワード
   エリカ・ラファエル
イギリス映画/68分/カラー作品




『フライトメア 恐怖!人喰い女達の晩餐』('74)や『拷問の魔人館』('75)などで知られるUKホラーの鬼才ピート・ウォーカーが手掛けたノワール映画である。もともとスタンダップ・コメディアンとしてロンドンのストリップ・クラブに出演していたウォーカーは、やがてテレビCMに出演したり映画の撮影に携わったりするようになり、映画監督を目指して自らの製作会社ピート・ウォーカー・プロダクションズを設立。といっても、ろくに実績のない新参者ゆえ映画業界からは全く相手にされず、当初は場末の映画館向けに短編のヌード映画やストリップ映画を撮っていた。そうした中、中編セックス・コメディ『For Men Only』('67)がアメリカからも買い手が付くほどの評判となり、興行的にもかなりの成功を収めたことから、満を持して長編映画デビューを飾ることとなる。それがこの『ザ・アンタッチャブル/暗黒街のハスラー』だった。

主人公はロンドンの広告会社に勤めるプレイボーイ、ジョン・カーター(セバスチャン・ブレイクス)。いつものようにソーホーのナイトクラブへ繰り出した彼は、初めて見かけるブロンド美女サマンサ(エリカ・ラファエル)をナンパし、彼女のアパートでアバンチュールを楽しもうとする。ところが、ジョンが煙草を買いに出かけているうち、サマンサはバスルームに隠れていた殺し屋によって射殺される。彼女の死体を発見したジョンは慌ててアパートを後にするのだった。その翌日、ジョンは上司ホーンズビー=スミス氏(ジャック・アレン)から理由もなく解雇を言い渡され、さらに自宅へ戻ると待ち構えていたチンピラたちに暴行を受ける。彼を陥れたのはクラブ経営者メンデス(デレク・エイルワード)だった。サマンサ殺しの犯人に仕立て上げると脅されたジョンは、メンデスの指示でブライトンへと向かうことになる。同行するのは初対面のブロンド美女カレン(ヴァージニア・ウェザレル)。彼女もまたメンデスの言いなりにされていた。ブライトンでは極秘の仕事が待っているはずだったが、これが実は2人を犯罪に利用するために仕組まれた罠だった…。

撮影がスタートする前日に、たった7時間で書き上げたという脚本は全く要領を得ず、結局のところメンデス一味が何を企んでいたのかも最後までいまいちハッキリとしない。冒頭のサマンサ殺しも実はメンデスの仕組んだ狂言だったのだが、いやいや、それだったらわざわざ殺し屋を差し向けたり拳銃で撃ったりする必要なくね?目撃者は誰もいないんだからさ!と突っ込まずにはいられない。まあ、これが主人公ジョンではなく観客を騙すための演出だというのは分かるのだが、あまり上手いやり方だったとは言えないだろう。そもそも、ダラダラとしたストーリー展開にはリズム感も緊張感もなし。ウォーカー監督自身、「当時は映画監督として未熟だった」と振り返っているが、これには同意せざるを得ないだろう。中でも、子供のギャングごっこみたいなアクションシーンのへなちょこな演出は、見ていて思わず苦笑いしてしまうくらい酷い。いくら低予算のインディーズ映画とはいえ、さすがにこれはいかんだろう。

ただし、スウィンギン・ロンドン華やかなりし当時のポップカルチャーをふんだんに散りばめたお洒落な雰囲気はとてもいい。カラフルでサイケでスタイリッシュなファッションやインテリアが盛りだくさんだ。海浜リゾートとして有名な観光都市ブライトンの、冬シーズンならではの趣きがある美しい街並みも存分に楽しめる。'60年代末の英国カルチャーが大好きな筆者としてはたまらない。まるで007映画みたいな…というより、明らかに「ジェームズ・ボンドのテーマ」を意識したハリー・サウスの音楽スコアもクール!そういえば、主人公が乗り回しているスポーツカーもアストンマーチンだしね。また、ウォーカー監督曰く大人向けの「セクシーなギャング映画」を目指したという本作は、その言葉通りグラマラスな女性たちの大胆なヌードもたっぷりとフューチャーされており、そのエクスプロイテーション映画らしいアングラな胡散臭さがまた、'60年代末という時代の空気をリアルに伝えてくれる。確かに映画としては欠点だらけなのだが、しかしそのタイムカプセル的な魅力には抗し難いものがある。

なお、本国イギリスではウォーカー監督の『バイオレンス・マン』('69)とのカップリングで、アメリカでは「The Pete Walker Collection Volume 2」の特典コンテンツとしてブルーレイ化されている本作。英国盤はリージョンB、米国盤はリージョンAでそれぞれブロックされているものの、どちらも英国映画協会がレストアした同一のリマスター版素材を使用している。筆者はアメリカ盤を所有しているのだが、画質は50年以上前の映画とは思えないくらいツルツルピカピカ。まるでついさっき撮ってきたばかりのような超高画質で、イーストマンカラーの発色も鮮明で素晴らしい。

評価(5点満点):★★☆☆☆



参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)※「The Pete Walker Collection Volume 2」収録
カラー/スタンダードサイズ(1.33:1)/1080p/音声:2.0ch リニアPCM/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/時間:68分/発売元:Kino Lorber/Redemption Films
特典:ピート・ウォーカー監督のインタビュー('15年制作・約15分)



by nakachan1045 | 2021-11-13 00:05 | 映画 | Comments(0)

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