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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき

「Le amanti del mostro(怪物の恋人)」 (1974)

「Le amanti del mostro(怪物の恋人)」 (1974)_f0367483_01211515.jpg
監督:セルジオ・ガローネ
製作:アメデオ・メラーノ
脚本:セルジオ・ガローネ
撮影:エモーレ・ガレアッシ
美術:アメデオ・メラーノ
音楽:エリオ・マエストージ
   ステファノ・リベラティ
出演:クラウス・キンスキー
   カティア・クリスティーヌ
   アイハン・イシク
   マルツィア・ダモン
   ステラ・カルデローニ
   ロマーノ・デ・ジロンコーリ
   アレッサンドロ・ペレーラ
   カルラ・マンシーニ
イタリア・トルコ合作/87分/カラー作品




以前に本ブログで紹介したイタリア産ゴシック・ホラー『La mano che nutre la morire(死者を養う手)』('74)の姉妹編である。監督は『ナチ(卍)第三帝国/残酷女収容所』('76)や『ナチ女収容所/続・悪魔の生体実験』('77)で悪名高いB級映画監督セルジオ・ガローネ。当時のイタリアの娯楽職人監督の多くがそうだったように、もともと国外マーケットで人気のあるマカロニ・ウエスタンを撮っていたガローネだったが、しかし'70年代に入るとマカロニ・ブームも徐々に下火となってしまう。そんな折、知人の紹介でローマを拠点にするトルコ人の映画製作者サキール・V・ソゼンと知り合った彼は、トルコのイスタンブールで2本のホラー映画を撮る契約を結ぶ。それが『La mano che nutre la morire』と本作だった。

舞台は19世紀半ばの東欧某国。若くして引退した科学者アレックス・ニジンスキー教授(クラウス・キンスキー)と妻アン(カティア・クリスティーヌ)は、アンの亡き父親イワン・ラシモフ教授が遺した大豪邸へと移り住む。アレックスの精神的な問題で夫婦関係がギクシャクしていたことから、心機一転を図るつもりだったのだ。しかし、彼の情緒不安定な心理状態は一向に改善せず、近くの屋敷に住む医師イゴール・ワレンスキー(アイハン・イシク)と親しげにする妻アンを見かけたアレックスは、2人の関係を疑って激しい嫉妬に駆られるのだった。

そんなある日、アレックスは書斎で一冊の日誌を発見する。それは、以前にこの屋敷に住んでいた科学者コワルスキーの研究記録だった。どうやら、コワルスキー博士は死体蘇生術を発見したらしい。地下室に残された機材や薬品を見つけたアレックスは、記録に残されている通りに死体蘇生装置を再現する。そんな折、アンの愛犬サーシャが毒を盛られて死亡。試しにアレックスはコワルスキー博士の蘇生装置で犬を生き返らせようとするが、機械の操作を誤って自らが感電してしまう。その日の午後、近隣の村に住む両親と幼子が皆殺しにされる。犯人は感電の影響で狂暴化したアレックスだったが、しかし本人には全く記憶がなかった。

その後も、豹変したアレックスに村人が惨殺される事件が連続して発生。恐怖と復讐に駆られた村人たちは、たまたまアレックスの脱ぎ捨てた上着を拾っただけの浮浪者を犯人と勘違いし、寄って集ってリンチした挙句に殺してしまう。夫の変化に少しづつ気付いていく妻アン、そんな彼女を心配して離婚を勧めるイゴール。アレックスはますます嫉妬に狂っていき、凶暴な殺人鬼へと変貌して村人を血祭りに挙げていく。その頃になると、アレックス本人も自分が犯人であることに気付き始めていた。一方、怒り狂った村人たちはまたもや浮浪者ポランスキーを犯人と決めつけ、アリバイがないことから裁判で有罪が決まってしまう。このまま逃げおおせると考えたアレックスだったが…?

ということで、『La mano che nutre la morire』ではジョルジュ・フランジュの『顔のない眼』('60)をパクっていたガローネだが、本作ではロバート・ルイス・スティーブンソンの古典的怪奇小説「ジキル博士とハイド氏」をプロットの下敷きにしている。そこへ、死体の蘇生という「フランケンシュタイン」的な要素を絡めているのだが、しかしどうして死体蘇生実験の最中に感電したせいで人格が分裂してしまったのか、どういうきっかけで殺人鬼へと豹変してしまうのかなど、ストーリーの基本となる設定には一切のロジカルな説明がなされていない。というより、細かいことは全部すっ飛ばしましたという印象だ。

しかも、お話し的には30分もあれば済んでしまいそうな内容を、無理やり1時間半近くまで引き延ばしているため、とにかく無駄に尺の長いシーンが多い。妻への愛情と嫉妬に思い悩むアレックスの独白とか、自分が殺人鬼であることに気付いて取り乱すアレックスとか、森の中で浮浪者を延々と追いかけ回す村人とか。クラシカルな音楽と文学的なセリフを散りばめ、頑張って格調高さを演出しているガローネ監督だが、しかしどう転んでも退屈で間延びした低予算ホラー映画であることは否めないだろう。ぶっちゃけ怖くもなんともない。

ただし、心の闇を抱えて苦悶する主人公アレックスを演じるクラウス・キンスキーの、およそB級ホラーに似つかわしくない気迫に満ちた芝居は一見の価値があると言えよう。これがもう迫力満点!いろいろと問題行動の多いトラブルメーカーとして有名なキンスキーだが、しかしこんな低予算映画でも手を抜かないプロ根性は見上げたもんである。それだけに、肝心のセリフがキンスキーほどの才能のない凡庸な別人によるアフレコなのは惜しまれる。そのほか、妻アン役のカティア・クリスティーヌに医師イゴール役のアイハン・イシクというメインキャストの顔ぶれは『La mano che nutre la morire』と一緒。あちらではクリスティーヌとイシクが夫婦役だった。また、マルツィア・ダモンも引き続き出演しているが、皆殺しにされる一家の母親役でワン・シーンのみの登場だ。

キャストのみならずスタッフもほとんど同じ顔ぶれ。そればかりか、全く同じフィルムをセリフだけ変えて使い回しているシーンまで存在する。舞台となる大豪邸(アイハン・イシクの所有)や地下実験室のセットも同じものを使用。恐らく2本まとめて同時に撮影したのだろう。そういえば、『La mano che nutre la morire』でキンスキーが演じた役柄もニジンスキーだった。で、アイハン・イシクがアレックス。ニジンスキーの名前は、かの有名なバレエダンサーから頂戴したのだろう。アンの父親イワン・ラシモフは、イタリア産B級映画の有名な悪役俳優の名前と一緒。浮浪者ポランスキーは、どう考えてもロマン・ポランスキーが元ネタだ。まあ、いろいろと安直なネーミングですな(笑)。ちなみに、トルコの有名な人気俳優アイハン・イシクはメインキャストにも関わらず本編にクレジットがなく、逆にクレジットのあるステラ・カルデローニやカルラ・マンシーニは名前だけで一切出てこない。

日本では劇場未公開。なおかつテレビ放送もビデオ発売もされた記録のない本作だが、海外でも長いことイタリア本国以外では殆どソフト化されず、画質の悪い海賊版ビデオが出回っていた。しかし、'21年に米フルムーン社からまさかのオフィシャル版ブルーレイが登場。しかも、デジタル修復されたノーカット完全版だ。なにしろ50年近く前の超マイナーなイタリア映画だけあって、決してツルツルピカピカの高画質というわけにはいかないが、しかしそれでもフィルムの状態は十分にキレイ。音声も2.0chモノラルと5.1chサラウンドの2種類から選べる。といっても、サラウンドはほんの気持ち程度というか、オリジナルのモノラル音声をそのまま広げただけという印象で、厳密には疑似サラウンドと呼ぶべきだろう。

評価(5点満点):★★☆☆☆



参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch Dolby Digital Mono・5.1ch Dolby Digital Surround/言語:イタリア語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:87分/発売元:Full Moon Features
特典:関連作品予告編集



by nakachan1045 | 2022-01-11 00:23 | 映画 | Comments(0)

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