なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「のろわれた美人学生寮」 The Initiation of Sarah (1978)

製作:ジェイ・ベンソン
製作総指揮:チャールズ・フライズ
原案:トム・ホランド
キャロル・サラセノ
脚本:ドン・インガルス
キャロル・サラセノ
ケネット・グフェラー
撮影:リック・ウェイト
音楽:ジョニー・ハリス
出演:ケイ・レンツ
トニー・ビル
キャサリン・クロスビー
モーガン・フェアチャイルド
モーガン・ブリタニー
ロバート・ヘイズ
ティサ・ファロー
エリザベス・スタック
タリア・バルサム
特別出演:シェリー・ウィンタース
アメリカ映画(テレビ映画)/97分/カラー作品


上流階級の裕福な家庭で何不自由なく暮らす少女サラ(ケイ・レンツ)だが、実は生まれてすぐに引き取られた養女だった。姉妹として育てられた同い年のパティ(モーガン・ブリタニー)とは無二の親友で、片時も離れることがないくらい仲が良い。しかし、母親(キャサリン・クロスビー)は血の繋がった実の娘であるパティをなにかと贔屓にしがちだ。しかも、引っ込み思案な性格で容姿も平凡なサラとは対照的に、パティは明るくて社交的なとびきりの美人。どこへ行っても注目の的となるのはパティで、その陰に隠れたサラはなおさらのこと自分に自信が持てないでいた。

そんなサラとパティの姉妹は、9月から晴れて同じ大学へ通うことになる。20年以上前に母親も卒業した名門ウェルサム大学だ。新入生にとって最大の関心事は、どこのソロリティ(女子寮)に入るのかということ。幾つもあるソロリティの中で学内の全女子が憧れるのは、リッチで美しいお嬢様しか入会を許されない「ANS(アルファ・シグマ・ニュー)」である。反対に一番人気がないのが、負け犬の変わり者ばかりと評判の「PED(フィル・エピルソン・デルタ)」。この両者は何十年も前から犬猿の仲だった。サラとパティが希望するのは、かつて母親が会長を務めたこともあるANS。期待を胸にANSの新入生勧誘パーティを訪れたサラとパティだったが、しかし傲慢で高飛車な会長ジェニファー(モーガン・フェアチャイルド)率いる先輩たちのお眼鏡に適ったのはパティだけで、サラは「あなたにはPEDがお似合いよ」と笑いものにされてしまう。

結局、パティがANSの新メンバーに迎え入れられる一方、サラの入会を許可したソロリティはPEDだけだった。しかも、パティはANSの伝統ルールに従って、PEDのメンバーであるサラとの付き合いを禁じられてしまう。「あんなの本気にする必要ないわよ」と言って、これまで通りにサラと行動を共にしようとするパティだったが、しかしジェニファーたちが常に監視の目を光らせていた。プライドを傷つけられた上に大切なパティまで奪われ、やり場のない怒りを抱えるサラ。すると、彼女は自分に不思議な力が備わっていることに気付き始める。感情が高ぶるとモノを自由に動かしたり、人や動物を操ったりすることが出来るのだ。

これを見逃さなかったのが、PEDの謎めいた寮母ハンター夫人(シェリー・ウィンタース)。実は魔術に傾倒しているハンター夫人は、その特別な才能をもっと伸ばすべきだと励ますものの、しかしサラは自分の未知なる力を恐ろしく感じる。そこで心理学の助教授ポール(トニー・ビル)に悩みを打ち明けるサラだったが、しかし「考えすぎだ」として真面目に取り合ってもらえなかった。そんなある日、同じソロリティの友人マウス(ティサ・ファロー)がジェニファーたちに嫌がらせを受け、頭に来たサラはテレキネシスでジェニファーを噴水に突き落としてしまう。公衆の面前で恥をかかされて怒り心頭のジェニファーは、サラに対して卑劣な報復を計画。これが結果的に、彼女の持つ強大な超能力を本格的に覚醒させてしまう…。

アメリカの大学特有のフラタニティとソロリティのシステムが基本プロットの背景にあるため、日本人としてはちょっと分かりづらい点も少なくない作品だが、しかしまあ、ヒロインのサラがキャリー、姉妹パティは優等生のスー、寮母ハンター夫人はキャリーの母親マーガレット、学園の女王様ジェニファーはいじめっ子クリス…といった具合に、本作の登場人物を『キャリー』の登場人物に当てはめることが出来るくらい、両者の基本的なストーリーはとてもよく似ている。原案には『フライトナイト』('85)や『チャイルド・プレイ』('88)のトム・ホランド監督も名前を連ねているが、まあ、明らかに『キャリー』を元ネタにしたのだろう。監督のロバート・デイはハマー・プロの秘境ファンタジー『炎の女』('65)や『ターザン』シリーズなど、主にアドベンチャー映画で知られる人だが、フラタニティやソロリティの持つ秘密結社的な側面を活かしたゴシック風味が絶妙なスパイスとなっており、当時流行していたオカルト映画の雰囲気も楽しめる。一粒で二度おいしいというやつですな。

とはいえ、いろいろと詰めの甘い脚本は正直なところ穴だらけ。サラの産みの母親が今後の展開で重要なカギを握ることを匂わせながらも途中から一切触れられなくなるし、ANSとPEDがなぜ敵対しているのかという根本的な理由も最後まで曖昧なままだし、ジェニファーたちのイジメ体質に嫌悪感を抱きながらも楽しそうに寮生活を送るパティの行動原理は意味不明だし(笑)。これは間違いなく地上波のテレビ映画だから許される適当さであって、お金を払う劇場用映画だったら評価もまた違っていたのではないかとも思う。また、テレビ映画ということもあって恐怖描写は結構マイルドなため、本格的なホラー映画を期待すると肩透かしを食らうかもしれない。

やはり最大の見どころは、当時の若手スター女優たちを揃えたキャスティングであろう。主演はクリント・イーストウッド監督の『愛のそよ風』('73)でヒロインを演じ、当時は国民的アイドル歌手デヴィッド・キャシディの奥さんとしてマスコミを賑わせていたケイ・レンツ。どこか暗い影のある個性の強い顔立ちがサラ役には合っている。その姉妹にして大親友のパティ役には、ロレアルやメイベリンなど化粧品会社のCMで引っ張りだこだった当時の有名モデルで、一時期は日本のカネボウ化粧品のCMにも出ていたモーガン・ブリタニー。映画では3度に渡ってヴィヴィアン・リー役を演じたことでも知られる完全無欠の美女だ。確かに、これだけ非の打ちどころのない美人と比べられ続けたら、そりゃサラの自己肯定感が低くなってしまっても仕方あるまい。そのうえ性格まで抜群に良いんだからね。

そんな本作で最大の儲け役が、動くバービー人形のようなビッチ、ジェニファーを演じているモーガン・フェアチャイルド。日本では知名度の低い女優さんだが、しかしアメリカではテレビ界きってのセレブとして誰もが知るトップスターだ。当時は昼メロ女優として頭角を現していた時期なのだが、氷のように冷たくて女王様然とした美貌は、笑顔を振りまきながら平然と他人を見下す残酷な美女ジェニファー役にピッタリ。おかげで、コッテコテにベタな女同士の虐めバトルも俄然盛り上がる。彼女がいなければ本作は成り立たなかったとも言えよう。そのほか、サラと親しくなる内気で気弱な女の子マウス役にミア・ファローの妹ティサ・ファロー、ひねくれ者の毒舌女子アリソンに名優マーティン・バルサムの娘タリア・バルサムと、後にB級映画で有名になる七光り女優たちも出演している。なお、ジェニファーの腰巾着である性悪美女のひとりローラ役のエリザベス・スタックは、あのロバート・スタックの娘さんだ。

一方、ベテラン勢では見るからに怪しくてコワい寮母ハンター夫人を演じるオスカー女優シェリー・ウィンタースが、『血まみれギャングママ』('70)や『ヘレンに何が起こったのか?』('71)などのサイコパスなイメージを活かしてハマリ役。明るくて優しい上流階級夫人のように見えて、実はジェニファーと同類のビッチだったサラとパティの母親を演じるキャサリン・クロスビーは、あの大御所スター、ビング・クロスビーの奥さん。『シンドバッド七回目の航海』('58)でお姫様役だったキャサリン・グラントと同一人物である。男優陣に目を移すと、自分の超能力に困惑したサラが頼ろうとする助教授ポール役には、映画『スティング』('73)のプロデューサーや『マイ・ボディガード』('80)の監督として知られるトニー・ビル。また、サラへのイジメに加担するチャラ男スコット役を、後に『フライングハイ』('80)シリーズでブレイクするロバート・ヘイズが演じている。

ちなみに、先述したようにアメリカではカルト映画として根強い人気を誇ることもあって、'06年にはミカ・ブーレムとサマー・グローの主演でリメイク版テレビ映画も作られている。こちらはパティの名前がリンジーへと変更され、設定も二卵性双生児の実姉妹となっている。しかも、人気ソロリティANSが闇を崇拝する悪の魔女集団、対するPEDは光を崇拝する善の魔女集団とされ、その両者の因縁のマジックバトルに巻き込まれた姉妹の戦いと冒険が描かれる。ディズニー系列の家族向けケーブル局、ABCファミリーが製作しているため、オリジナル版よりもさらにホラー要素の薄い青春学園ファンタジーに仕上がっており、正直なところ少々期待外れな作品ではあったものの、今回もモーガン・フェアチャイルドがラスボス的な美魔女ビッチとして登場するのはニヤリとさせられる。やはり、『のろわれた美人学生寮』といえばモーガン・フェアチャイルドなのね。

評価(5点満点):★★★☆☆
参考DVD情報(アメリカ盤)※『ハイスクール・レイプ』('78)とのカップリング
カラー/すたんだーどさいず
by nakachan1045
| 2022-01-13 00:31
| 映画
|
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